2006年以降に流行した曲を知るためには、CD売上だけでなく、日本レコード協会が認定しているダウンロード売上のチェックが必須であることは、以下の記事「ダウンロード売上 歴代ランキング」にて述べたとおりである。
アーティストに関しても同様のことが言える。かつてアーティストの流行指標として有名だったのはオリコンのトータル・セールスであったが、長きに渡りダウンロード売上がこの指標に組み込まれなかったことや、楽曲人気に関係しない要因でCD売上を積み増す動きが定着した今となっては、オリコンでアーティストの流行を計ることは不適切になっている。
トータル・セールスがアーティストの流行指標として機能していた時代においては、B'zが最も多くのCDセールスを記録したアーティストであることは広く知られているが、最も多くのダウンロードセールスを記録したアーティストは誰なのかは、残念ながら認知普及機会が乏しいのが現状である。
そこで、日本レコード協会のダウンロード認定データを用いて、アーティストごとにフル配信ダウンロード売上を合計し、降順に並べることで、アーティスト・トータル・ダウンロード売上を歴代ランキング化した。
TOP50は以下のとおり。このうち7組が認定総数1,000万ダウンロードを突破しており、錚々たる面々が並んでいる。
この認定総数250万ダウンロードを突破したアーティスト50組は個別解説記事を作成している(2023年11月を以て全楽曲配信停止となった安室奈美恵を除く)。下記にリンクをあいうえお順に並べている。
- あ行
- か行
- さ行
三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE
- た行
- な行
- は行
- ま行
- や行
- ら行
なお、楽曲切り売り形式の着うた売上はここには含めておらず、以下記事にて別途集計している。
TOP10アーティスト&代表曲解説
1位 EXILE
1位は2,065万ダウンロードを記録したEXILE。2001年にデビューした男性ダンス&ボーカルグループである。
この累計ダウンロード売上を構成する楽曲の内訳は以下のとおり。8曲がミリオンセラーを記録している。
自身最多ダウンロード売上を記録した楽曲は「Ti Amo」。松尾潔とJin Nakamuraが手掛けたバラードナンバーである。女性目線の報われない恋を描いた歌詞の切なさや格調高く歌い上げるATSUSHIとTAKAHIROのボーカルが支持され、200万ダウンロードを記録。2008年の日本レコード大賞も受賞した。
2位 西野カナ
2位は1,580万ダウンロードを記録した西野カナ。2008年にデビューした女性ソロアーティストである。
この累計ダウンロード売上を構成する楽曲の内訳は以下のとおり。7曲がミリオンセラーを記録している。
自身最多ダウンロード売上を記録した楽曲は、2010年にリリースされた「会いたくて 会いたくて」。失恋ソングである本曲は、サビの会いたくて震えるという歌詞が強烈なフックとなり大人気を獲得。110万ダウンロードを記録した。
西野カナ 『会いたくて 会いたくて(short ver.)』
3位 AKB48
3位は1,440万ダウンロードを記録したAKB48。2006年にデビューした女性ダンス&ボーカルグループである。ダウンロード販売に握手券は付属していないので、これは楽曲人気相応の数字である。
この累計ダウンロード売上を構成する楽曲の内訳は以下のとおり。6曲がミリオンセラーを記録している。
自身最多ダウンロード売上を記録した楽曲は、2010年にリリースされた「ヘビーローテーション」。同年のAKB48選抜総選挙で1位となった大島優子がセンターを務めたことや、メンバーがナポレオンジャケットやランジェリーに身を包んだMVが話題となり、150万ダウンロードを記録した。
【MV full】 ヘビーローテーション / AKB48 [公式]
4位 GReeeeN
4位は1,395万ダウンロードを記録したGReeeeN。2007年にデビューした男性ボーカルグループである。
この累計ダウンロード売上を構成する楽曲の内訳は以下のとおり。4曲がミリオンセラーを記録している。
代表曲「キセキ」は歴代最多記録となる400万ダウンロードを売り上げた歴史的ヒット曲である。愛に溢れたラブソングは時代を選ばない普遍性を有していたほか、最高視聴率19%を記録した人気ドラマ『ROOKIES』の主題歌だったことも後押しになったことで爆発的に普及した。Billboard JAPAN Hot 100では2008年の年間1位を獲得している。
5位 宇多田ヒカル
5位は1,160万ダウンロードを記録した宇多田ヒカル。1998年にデビューした女性ソロシンガーソングライターである。
この累計ダウンロード売上を構成する楽曲の内訳は以下のとおり。3曲がミリオンセラーを記録している。
自身最速ミリオン認定を受けた楽曲は「Prisoner Of Love」。2008年3月に配信された本曲は最高視聴率22%を記録したドラマ『ラスト・フレンズ』の主題歌で、タイアップに相応しい複雑な大人の恋愛を描いた歌詞やシリアスな楽曲の雰囲気が想像を掻き立てる形で大きな支持を獲得した。
6位 コブクロ
6位は1,145万ダウンロードを記録したコブクロ。2001年にデビューした男性2人組デュオである。
この累計ダウンロード売上を構成する楽曲の内訳は以下のとおり。4曲がミリオンセラーを記録している。
この他、絢香とコラボし絢香×コブクロ名義でリリースした「WINDING ROAD」もミリオンセラーを記録している。
自身最多ダウンロード売上を記録した楽曲は、2007年にリリースされた「蕾(つぼみ)」。この曲はメンバーの小渕健太郎が亡き母親へ贈った感動のバラードであり、最高視聴率18%を記録したドラマ『東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜』主題歌に起用されたこともあって普及し200万ダウンロードを記録した。2007年の日本レコード大賞も受賞した。
7位 いきものがかり
7位は1,000万ダウンロードを記録したいきものがかり。ボーカル吉岡聖恵やギター水野良樹を中心に結成され2006年にデビューしたグループである。
この累計ダウンロード売上を構成する楽曲の内訳は以下のとおり。2曲がミリオンセラーを記録している。
自身最多ダウンロード売上を記録した楽曲は、2010年にリリースされた「ありがとう」。同年に放送され最高視聴率23%を記録したNHK朝の連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の主題歌に起用された本曲は、大切な人への感謝を歌う普遍性がお茶の間に浸透する形で広く普及し、110万ダウンロードを記録した。
8位 米津玄師
8位は990万ダウンロードを突破している米津玄師。2013年にデビューした男性ソロシンガーソングライターである。
この累計ダウンロード売上を構成する楽曲の内訳は以下のとおり。2曲がミリオンセラーを記録している。
自身最多ダウンロード売上を記録した楽曲は、2018年にリリースされた「Lemon」。他界した祖父への想いをベースに「死」をテーマに作られた本曲は、タイアップ先のドラマ『アンナチュラル』の内容ともリンクし、300万ダウンロードを突破する歴史的人気を獲得した。
9位 倖田來未
9位は865万ダウンロードを記録した倖田來未。2000年にデビューした女性ソロアーティストである。
この累計ダウンロード売上を構成する楽曲の内訳は以下のとおり。1曲がミリオンセラーを記録している。
その楽曲は、2007年にリリースされた「愛のうた」。本曲は女性目線のラブバラードとなっており、愛する人への想いをストレートに表現した歌詞や、それを歌い上げる倖田來未の確かな歌唱表現力などが支持を集め、100万ダウンロードを記録した。
倖田來未-KODA KUMI-『愛のうた(album version)』~ 20th Year Special Full Ver. ~
10位 安室奈美恵
10位は安室奈美恵。安室奈美恵の楽曲は2023年11月以降ほぼ全て配信停止となってしまっており、これは本人の意向であるという話もあるため、それを汲み、本記事では言及を割愛する。
まとめ
このアーティスト・トータル・ダウンロード売上ランキングを作成することで、2000年代後半から2010年代にかけて大きな人気を獲得していたアーティストをほぼ漏れなく可視化できた。この時期は高ダウンロード売上曲の人気過小評価と高CD売上曲の人気過大評価が蔓延していた。その結果としてアイドル戦国時代に突入したという偏った認識が既成事実化されていったが、決してダンス&ボーカルグループ以外のアーティスト人気が奮っていなかったわけではないことをこのランキングから確認することができる。
ここで紹介したダウンロード売上データは日本レコード協会ホームページ内の下記サイトで検索することができる。自分の好きな曲がどれだけダウンロードされているのか、検索してみるのも楽しいかもしれない。
なおストリーミング・MV再生回数も考慮した歴代アーティスト・トータル・デジタルランキングは以下別記事で作成しており、こちらを併せて参照すれば、デジタル時代に突入した2006年以降今に至るまでに人気を博した主要アーティストをほぼ漏れなく押さえることができる。