絢香は2006年に「I believe」でデビューした女性ソロアーティスト。デビュー後すぐにブレイクを果たし、ヒット曲を大量輩出した。
絢香がブレイクした2000年代後半はダウンロード購入が楽曲視聴方法の主流であったため、楽曲人気は主にダウンロード売上を通じて把握できる。絢香の累計フル配信ダウンロード売上は685万で歴代13位となっている*1。また、2020年代以降に新たな楽曲人気指標として台頭したストリーミング再生回数においても一定の規模を記録している。
ここではデジタル指標を参照しながら絢香のヒット史を振り返る。当ブログ独自の計算式により作成した、絢香のデジタル人気楽曲ランキングは以下のとおりである。

(ランキング作成方法および歴代デジタルヒット曲ランキングは以下記事参照↓)
2006年-2009年 ~ワーナーミュージック・ジャパン時代~
この時期は音楽の聴き方がCD購入からダウンロード購入へと移行していたが、有力なダウンロード売上チャートが当時誕生しなかったために、CD売上を基準にした楽曲人気評価が実態と異なる形で行われ続け、ダウンロード売上を中心に人気を得た多くの楽曲やアーティストが人気を過小評価された時期でもある。その中で活躍していた絢香の人気に改めてスポットを当てていく。
この期間の楽曲に絞ってリリース順に並べたデジタル人気データは以下のとおり。ダブルミリオンセラーを含む多くのヒット曲を輩出しており、デジタル人気全盛期ともいえるのがこの時期である。

2006年 ~「三日月」~
絢香は早くから歌手になりたいという夢を持ち、高校生の時に音楽プロデューサー西尾芳彦が主宰する音楽教育施設『音楽塾ヴォイス』*2に通い、デビュー前から実力をつけていた。各レコード会社による争奪戦の末、コブクロなどが所属するワーナーミュージック・ジャパンからデビューした。
その期待から、デビュー作「I believe」はいきなりドラマ『輪舞曲』主題歌という好タイアップに抜擢された。このドラマが最高視聴率20%を記録する好調ぶりだったこともあり楽曲も注目を集め、その新人離れした落ち着きのある力強い歌唱力などから、いきなりのヒットを飛ばすことになる。各指標の累計はフル配信75万ダウンロード、着うた100万ダウンロードを記録した。
7月には3rdシングル「Real voice」を発売し、フル配信10万ダウンロード、着うた75万ダウンロードを売り上げた。それだけでなく、c/wの「Peace loving people」もフル配信10万ダウンロードに到達している。この曲はライブでもよく披露される人気曲で、c/wでありながら2007年の『NHK紅白歌合戦』に出場した際にも歌唱曲に選ばれたほどである。
そして9月に発売されたシングル「三日月」は特大ヒットを記録。歴代で9曲しかないフル配信ダウンロード売上ダブルミリオンを達成した。推移は以下のとおり。
- 配信開始から1ヶ月後の2006年10月に10万ダウンロード突破
- 2ヶ月後の2006年11月に25万ダウンロード
- 3ヶ月後の2006年12月に50万ダウンロード
- 5ヶ月後の2007年2月に75万ダウンロード
- 7ヶ月後の2007年4月に85万ダウンロード
- 1年後の2007年9月に110万ダウンロード(ミリオン達成)
- 配信開始から7年4ヶ月後の2014年1月にダブルミリオン達成
見てのとおり非常に高水準な売上をコンスタントに半年間重ね続け、2007年2月に75万ダウンロードを突破。実は国内史上初のフル配信売上75万ダウンロード突破を達成したのはこの曲である。
そして2007年11月には、長いスパンで売れる楽曲が多いデジタル市場の中では早いペースである所要1年でのフル配信ダウンロードミリオン達成を果たした。その後も売上を積み上げ続け、2014年1月に200万ダウンロードに到達するに至っている。
ここまでの大ヒットとなった理由は、充実した楽曲内容とタイアップとの間の親和性が高かったことで、楽曲の魅力の普及にこの上ない成功を収めたことが挙げられる。楽曲はデビュー前に既に完成していて、絢香がデビューのため上京するにあたっての思いをベースに作成された遠距離恋愛を歌うラブバラードとなっている。タイアップはau『LISMO』CMソングだったが、当時若者の間で急速に普及していた携帯電話は遠距離恋愛でも活用されており、楽曲に感情移入させるにはピッタリのタイアップであった。
年末歌番組で注目を浴びる機会も多く、この曲で2006年の日本レコード大賞新人賞を受賞したほか、年末の紅白歌合戦でもこの曲を歌唱したことで、年末年始にかけて配信売上は全く衰えることがなかった。以降も本曲の人気は世代を超えて受け継がれており、各指標の累計はフル配信200万ダウンロード、着うた200万ダウンロード、ストリーミング1.2億再生、MV7,000万再生を記録している。
2007年 ~「WINDING ROAD」~
2007年に入っても活躍は続いた。まず2月にコブクロとのコラボが実現し、絢香×コブクロ名義でシングル「WINDING ROAD」を発売。コブクロも前年に『ALL SINGLES BEST』が大ヒットして勢いに乗っており、上昇気流にある両者のコラボということで抜群の相乗効果が発揮され、フル配信100万ダウンロード、着うた200万ダウンロード、ストリーミング5,000万再生を記録した。フル配信ダウンロード売上推移は以下のとおり。
- CD発売から2ヵ月後の2007年4月に配信解禁
- 2007年4月末時点で早くも10万ダウンロード突破
- 2007年6月に25万ダウンロード
- 2007年12月に35万ダウンロード
- 2008年4月に60万ダウンロード
- 2008年11月に75万ダウンロード
- 配信開始から3年6ヶ月後の2010年10月にミリオン達成
ヒット曲の楽曲人気は世代を超えて継がれてゆくものである。ダウンロード販売解禁がCDリリースよりも遅れたためか、2007年内のダウンロード数は35万に留まっているが、2008年になってもダウンロード売上を積み上げ続けて75万に到達、そして2010年にミリオンを達成するに至った。
絢香もコブクロも、大ヒット曲はバラードナンバーが多いイメージであるが、アップテンポナンバーでも持ち前の歌唱力を存分に活かし、ヒットの実績を残した。曲中の3人の絶妙な掛け合いも人気を集めた。
7月には5thシングル「Jewelry day」をリリース。本曲はシンプルなアコースティックサウンドと落ち着きのあるボーカルが安らぎを与えるラブバラードで、映画『ラストラブ』主題歌として書き下ろされた。恋人を失った喪失感の中でも、ともに過ごしたかけがえのない日々への感謝を綴る内容が支持され、デジタル指標ではフル配信35万ダウンロード、着うた100万ダウンロードを記録した。サウンドスキャンシングルチャートでは自身初にして唯一となる週間1位も獲得した。
9月には6thシングル『CLAP & LOVE/Why』を発売。1曲目と2曲目を入れ替えたシングル『Why/CLAP & LOVE』も併せて発売され、2曲が等しくリードナンバーとして扱われた。各指標の累計は「Why」が2008年12月に、「CLAP & LOVE」が2014年1月にフル配信10万ダウンロードに到達している。同じ売上でも、到達所要時間を比較すると「Why」の方が売れ行きが良かったようである。
11月には配信限定シングル「For today」を発売し、フル配信10万ダウンロードを記録した。
2008年 ~「おかえり」~
2008年3月には7thシングル『手をつなごう/愛を歌おう』を発売。1曲目の「手をつなごう」がフル配信35万ダウンロードを記録するヒットとなった。
5月には8thシングル「おかえり」を発売。表題曲は最高視聴率15%を記録したドラマ『絶対彼氏 〜完全無欠の恋人ロボット〜』主題歌で、「帰る場所」をテーマに作られた温かみのあるナンバー。これまで見せてきた持ち味の力強さとはまた違う自然体な歌唱も支持され、フル配信75万ダウンロード、着うた75万ダウンロードを記録するヒットとなった。フル配信ダウンロード売上推移は以下のとおり。
- 配信開始から2週間で10万ダウンロード突破
- 1ヶ月後の2008年6月に25万ダウンロード
- 3年1ヶ月後の2011年6月に50万ダウンロード
- 配信開始から6年1ヶ月後の2014年6月に75万ダウンロード達成
この曲も「I believe」や「三日月」などと同様、長い時間をかけて売上を積み上げていることが分かる。
6月には2ndオリジナルアルバム『Sing to the Sky』をリリース。アルバム曲の中では、アニメ映画『スカイ・クロラ』主題歌となった「今夜も星に抱かれて・・・」がフル配信10万ダウンロードを記録した。
9月には絢香×コブクロとして2枚目のシングル「あなたと」を発売し、フル配信50万ダウンロード、着うた50万ダウンロードを記録するヒットとなった。アップテンポナンバーだった「WINDING ROAD」とは180度異なるラブバラードで、既に楽曲は2007年からライブで披露されており、音源化を要望する声に応える形でのリリースとなった。
2009年 ~「みんな空の下」~
2009年はバセドウ病の治療に専念するための活動休止前最後の1年となった。
4月には9thシングル『夢を味方に/恋焦がれて見た夢』を発売。1曲目の「夢を味方に」がフル配信10万ダウンロードを記録した。
7月には10thシングル「みんな空の下」を発売。この曲が活動休止前ラストシングルとなった。壁にぶつかったときに優しく寄り添い応援してくれるような楽曲内容は多くの支持を集め、フル配信50万ダウンロード、ストリーミング5,000万再生を記録するヒットとなった。MVではアカペラ歌唱も見せており、歌声を存分に堪能することができる。
年末の活動休止前最後の『NHK紅白歌合戦』ではこの曲で出演したほか、2年後に活動を再開した際には再び同番組で本曲を歌唱しており、重要な楽曲として位置づけられている。
自主レーベル時代 ~「にじいろ」~
絢香は活動休止中にワーナーミュージック・ジャパンとの契約が終了し、2011年にはavexのバックアップのもと設立した自主レーベル『A stAtion』に活動拠点を移した。2011年末より活動を再開し現在に至っている。
この時期の楽曲をリリース順に並べたデジタル人気データは以下のとおり。

2012年2月には3rdオリジナルアルバム『The Beginning』をリリース。収録曲のうち、アルバム発売1週間前からデジタル先行リリースしていたリード曲「はじまりのとき」がフル配信25万ダウンロードを記録した。この曲は2011年末の『ミュージックステーションスーパーライブ』でも披露されており、再始動を飾る1曲として見事にヒットした。
2012年12月には、『NEWS ZERO』のエンディングテーマとなった配信限定シングル「ツヨク想う」をリリースし、フル配信10万ダウンロードを記録した。この曲は、同時発売された映像作品『絢香 LIVE TOUR 2012 “The beginning”〜はじまりのとき〜』にもCDで付属している。
2013年はまず2月に「みんな空の下」以来となるCDシングル『beautiful/ちいさな足跡』を発売。1曲目の「beautiful」は最高視聴率11%を記録したドラマ『シェアハウスの恋人』主題歌となり、フル配信10万ダウンロードを記録した。
10月にはチョーヤ梅酒『チョーヤ 夏梅』のCMタイアップが付いた配信限定シングル「ありがとうの輪」を発売し、フル配信10万ダウンロードを記録した。
2014年には活動再開後では最大のヒット曲が誕生した。13thシングルとしてリリースした「にじいろ」はNHK朝の連続テレビ小説『花子とアン』の主題歌となり、一日の始まりに彩りを与えるような軽やかさと温かさを併せ持った楽曲内容が世代を問わず支持され、フル配信75万ダウンロード、ストリーミング1.2億再生、MV3,000万再生を記録するヒットとなった。フル配信ダウンロード売上推移は以下のとおり。
- 2014年4月にダウンロード販売解禁
- 2014年6月にCDシングルでも発売され、このタイミングで10万ダウンロード突破
- 2014年9月には『花子とアン』がクライマックスを迎えたことで25万ダウンロード突破
- 年末年始には紅白等の歌番組効果が発現し、その勢いのまま2015年3月に50万ダウンロード突破
- 2016年7月になると『UQ mobile』のCMソングという新タイアップが付いたことで再浮上し、その勢いのまま2016年10月に75万ダウンロード達成
以上のようにきっかけがある度にダウンロード売上を伸ばすロングセラー推移を記録している。これらの動きは、Billboard JAPANが提供している、指標ごとの動向が分かるサービスChart Insightで本曲のダウンロード売上動向を検索することで確認できる。

この頃になると、Billboard JAPAN Hot 100も楽曲人気指標としての機能を向上させており、ダウンロード売上の比重を高めていた。CD発売のタイミングで最高5位を獲得した後も、ダウンロード売上を原動力にロングヒットし、上述の年末歌番組効果が出た2015年1月19日付チャートでは10位に再浮上しTOP10に返り咲いた。年間では2014年27位→2015年44位と推移し、2年連続TOP100ランクインを果たした。
まとめ
以上のように絢香はダウンロード売上を中心にして大ヒット曲を連発しており、時代を形成したアーティストの一人として名を連ねてしかるべき存在である。2010年前後の女性アーティスト界は大人数アイドルの時代であったとはよく言われるが、女性ソロも十分に活躍していた。西野カナだけが当時人気だったわけでは決してないということは必ず押さえておきたい。
以上までに紹介したヒット曲を手元に所有したい場合は、2016年7月に発売されたオールタイムベストアルバム『THIS IS ME 〜絢香 10th anniversary BEST〜』がおすすめ。
この記事で紹介したデータのうちストリーミング再生回数やダウンロード売上はBillboard JAPANの公式サイトや日本レコード協会の公式サイトから検索することができる。新たな発見の宝庫なので、時間があれば好きな曲やアーティストのデータを検索してみることをお勧めする。
