歴代ヒットランキングとは、その名のとおり複数年以上に渡って網羅的に各種ヒットデータを集計し序列化することで、分かりやすく歴代人気コンテンツを上位表示したランキングを指す。しかし実際には、網羅性の棄損などによる欠陥を抱えたランキングがこれを自称する不適切なケースが後を絶たない。
この問題意識を踏まえ、本記事では適切なプロセスで歴代アーティスト・トータル・楽曲人気ランキングを作成したらどのような結果になり得るのかをシミュレーションし、一例として提示する。先に結果を示すと、そのTOP50は以下のとおりとなった。
歴代楽曲人気指標
このランキングを作成するにあたって用いられるべき指標は以下のとおり。
- フィジカルシングル・アルバム売上
2000年代中盤までの楽曲聴取方法の主流
- 着うたダウンロード売上
2000年代中盤の楽曲試聴方法の主流
- フル配信ダウンロード売上
2000年代後半~2010年代の楽曲聴取方法の主流
- MV再生回数
2010年代以降の楽曲視聴方法の主流
- ストリーミング再生回数
2010年代後半以降の楽曲聴取方法の主流
アーティスト・トータル・ストリーミング再生回数 歴代ランキング
ランキング作成方法
ここでは各アーティストの楽曲人気総量を計ることに注力している。他にもアーティスト人気を計る指標は数多く、ここで示す結果はその中の一面に過ぎないことには留意していただきたい。参照する指標や作成方法は基本的に先に作成済みの歴代ヒット曲ランキング(以下記事参照)のそれと同じである。
そのうえで数点を再掲・補足するが、マニアックな内容も含むため、読み飛ばしていただいても構わない。
- 各指標間の換算式は、「総合1得点=フィジカルシングル10万点=フル配信10万ダウンロード=着うた50万ダウンロード=ストリーミング・MV5,000万再生」としている。根拠は日本レコード協会(RIAJ)の各指標認定基準の下限値である。各指標においてこの式で挙げたボーダーを超えて初めて日本レコード協会から認定が授与されることを踏まえれば、これがヒットしているか否かのボーダーであり、同時に各指標間の換算目安とも言い換えられる。
- フィジカルシングル売上は、2012年オリコン・リサーチ社出版『SINGLE CHART-BOOK COMPLETE EDITION 1968~2010』記載値を引用し、1万枚未満切り捨て表示。2011年以降のCDシングル売上は、楽曲人気指標として一切機能していないため集計対象外としている。
- フィジカルアルバム売上は、楽曲人気とアーティスト人気の双方が反映される指標と考えられる。2005年までは、シングル化されていないアルバム曲の人気を推し量るために必要な唯一のデータとなっていた。しかし2006年以降にデジタル市場が普及すると、アルバム曲であっても、ダウンロード売上やストリーミング再生回数で人気を把握することが可能となった。よって、楽曲人気をアーティストごとに集計することを目的としている本記事では、アルバム売上は2005年までのデータを参照し、2006年以降のデータは不要と整理する。データは2006年オリコン・リサーチ社出版『ALBUM CHART-BOOK COMPLETE EDITION 1970~2005』記載値を引用し、1万枚未満切り捨て表示。
- アルバム売上は「シングル10万点=アルバム20万点」で換算する。前述したとおり、アルバム売上は楽曲人気とアーティスト人気の双方が反映される指標と考えられるため、半分に割って楽曲人気相当分のポイントを抽出する。半分とするうえで参考としたのはやはり日本レコード協会(RIAJ)の各指標認定基準の下限値である。2003年上半期まで、RIAJのゴールドディスク認定下限値は20万枚だったが、2003年下半期以降はこれが10万枚に引き下げられている。フィジカルシングルは、フル配信ダウンロード売上と揃えて「10万」で換算式を設定しているが、アルバムは「20万」で換算式を設定することとした。
- ダウンロード売上はRIAJが公表している認定数を集計している。このダウンロード指標はこれまでTV番組等が作成する歴代ランキングにおいてしばしば無視されてきた。その理由はダウンロード市場全盛当時国内で有名なヒットチャートだったオリコンランキングがこれを無視してダウンロードランキングを作成しなかったからである。この問題は以下記事に纏めている。
- MV再生回数はYouTubeで視聴回数3,000万以上を記録している公式MVをアーティストごとに集計した(100万未満切り捨て)。ただし国外アーティストに関しては、YouTubeチャートで記録された日本国内累計再生回数をベースとした推定値を使用する。詳細は当ブログ記事『YouTube各種再生回数・チャート解説』参照。
結果の妥当性の確認
TOP50にランクインしたアーティストをデビュー年別に整理した表は以下のとおり。
見てのとおり、各時代の主要楽曲人気指標を網羅的に集計し偏りなく合算したことで、全ての時代においてデビューした人気アーティストを万遍なくピックアップできている。歴代ヒットランキングとしての結果の妥当性が確認できたところで、以下よりTOP5にランクインしたアーティストをピックアップして解説する。
TOP5アーティスト解説
1位 B'z
1位はB'z。ボーカル稲葉浩志、ギター松本孝弘により結成され1988年にデビューしたバンドである。各指標のセールス及び再生回数はフィジカルシングル3,486万枚、アルバム4,025万枚、フル配信310万ダウンロード、着うた200万ダウンロード、ストリーミング2.0億再生を記録しており、このうちCD売上枚数は歴代最多記録である。これらをポイント化すれば総合5,889点となる。その指標別構成内訳を割合表示した円グラフは以下のとおり。
これを見れば分かるとおり、B'zの楽曲人気を可視化する主要構成要素はCD売上である。他方でダウンロード売上でも一定割合を獲得していることは見逃せない。逆にMVは、YouTubeにフルMVを殆ど公開していないため、ポイントを獲得できていない。ストリーミングも、全面解禁が2021年とかなり遅い時期だったため、ポイント獲得規模が小さい。それでも今のところは圧倒的なCDセールスを主力に2位以下に大差をつけての歴代1位となっている。
次に、歴代1位となるほどの楽曲人気ポイントがどの楽曲によって築かれたものなのかを確認する。同じ計算方法でB'zの楽曲を総合ランキング化し、ミリオンセールス相当の楽曲を抽出した表は以下のとおり。
B'zが当時の歴代1位記録である15作ものCDシングルミリオンセラーを輩出したことは有名であるが、他にも2001年発売の「ultra soul」がCD87万枚、フル配信25万ダウンロード、ストリーミング1.0億再生、2009年発売の「イチブトゼンブ」がダウンロードミリオンを記録していることは押さえる必要がある。よってB'zのミリオンセールス相当曲数は17曲となる。
1位は1993年に発売された「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」。この曲はCD202万枚、フル配信10万ダウンロードを記録した。CD売上には、2003年に発売された12cmCD再発盤の売上も含まれる。
表題曲は単発3時間ドラマ『西遊記』の主題歌に起用され、このドラマが視聴率26%を記録したこともヒットに一役買っている。しかし何よりも長いタイトルのインパクト、それでいてそのタイトルをサビ冒頭の歌詞に据えたことによる覚えやすさ、タイアップにマッチしたオリエンタルな楽曲の雰囲気が支持されたことによる特大ヒットであった。
この曲はB'z唯一のCD売上ダブルミリオン達成曲としても有名であるが、他にも1995年発売の「LOVE PHANTOM」がCD186万枚、フル配信25万ダウンロードの合算でダブルミリオンを記録していることは押さえる必要がある。「LOVE PHANTOM」もB'zの代表曲として外せない一曲であり、配信では「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」を上回り、CD売上との合計を見るとその差は1万にも満たない超接戦であった。アルバム売上等も考慮すれば、「LOVE PHANTOM」が自身最大人気曲と言ってしまっても良いかもしれない。
3位以下も基本的にはCD売上順に近い並びとなっているが、やはり押さえておくべきは総合3位・売上177万相当のポイントを獲得した「イチブトゼンブ」の人気である。2009年に発売されたこの曲はCD37万枚、フル配信100万ダウンロード、着うた100万ダウンロード、ストリーミング1億再生を記録し、Billboard JAPAN Hot 100では2週連続1位と2009年の年間1位を獲得するほどの大人気となった。
CD売上だけを見ていては、本曲の人気を大きく過小評価してしまうことになるため、注意が必要である。
デジタル人気にフォーカスした当ブログのB'z特集記事↓
2位 Mr.Children
2位はMr.Children。ボーカル桜井和寿を中心に結成され1992年にデビューしたバンドである。各指標のセールス及び再生回数はフィジカルシングル2,818万枚、アルバム2,285万枚、フル配信55万ダウンロード、ストリーミング13.3億再生、MV7.5億再生を記録している。これらをポイント化すれば総合4,433点となる。その指標別構成内訳を割合表示した円グラフは以下のとおり。
Mr.Childrenも楽曲人気を可視化する主要構成要素はCD売上である。他方でそれ以外の構成要素はB'zと傾向が異なる。Mr.Childrenは楽曲のダウンロード販売を市場全盛期に殆ど解禁しなかったため、それらのポイント獲得割合が小さい。逆にストリーミング・MVにおいてはそこまで致命的な規模の解禁時期の遅れはなかったため、順当にポイントを稼いでいる。
次に、これらの楽曲人気ポイントがどの楽曲によって築かれたものなのかを確認する。同じ計算方法でMr.Childrenの楽曲を総合ランキング化し、ミリオンセールス相当の楽曲を抽出した表は以下のとおり。
Mr.Childrenも記録的なCD売上枚数が有名であり、10作ものミリオンセラー輩出もさることながら、うち「Tomorrow never knows」「名もなき詩」の2作がダブルミリオンとなったことは特筆すべき点である。しかしデジタル人気も総合するとより多くの楽曲人気を可視化できる。例えば1994年発売の「innocent world」はCD193万枚、ストリーミング1.3億再生の合算でダブルミリオン相当となっている。
1位の「Tomorrow never knows」は1994年に発売され、CD276万枚、MV7,000万再生、ストリーミング5,000万再生を記録した。本曲は最高視聴率18%を記録したドラマ『若者のすべて』主題歌。綺麗事ばかりではない達観した生き様に至る境地が、卓越した歌詞表現とサウンド構成によって壮大な名バラードに昇華されており、青春群像劇だったドラマの内容にも嵌ったことで特大楽曲人気を獲得した。
2位の「名もなき詩」もCD230万枚、ストリーミング1.3億再生を記録しており、サウンドスキャン年間シングルチャートでは1996年の年間1位を獲得している。
この曲も含め、Mr.Childrenのミリオン相当曲は90年代に発売された楽曲が多いが、2000年代以降に発売された楽曲も、「HANABI」「Sign」「しるし」等見逃してはならない大ヒットが記録されている。その詳細は以下別記事に纏めている。
3位 宇多田ヒカル
3位は宇多田ヒカル。1998年にデビューした女性ソロシンガーソングライターである。各指標のセールス及び再生回数はフィジカルシングル1,549万枚、アルバム1,827万枚、フル配信1,160万ダウンロード、着うた775万ダウンロード、ストリーミング15.0億再生、MV6.6億再生を記録している。これらをポイント化し合計すれば総合4,210点となる。その指標別構成内訳を割合表示した円グラフは以下のとおり。
宇多田ヒカルはCD市場全盛期の1990年代終盤からダウンロード市場全盛期の2000年代後半に人気絶頂を極めていたため、CD売上だけでなくダウンロード売上も楽曲人気を可視化する主要構成要素となっていることが特徴である。逆に言えば、CD売上しか見ていないと、人気をその半分近くにまで過小評価してしまうことになるため注意しなければならない。MV・ストリーミングにおいても順当にポイントを稼いでいる。
次に、これらの楽曲人気ポイントがどの楽曲によって築かれたものなのかを確認する。同じ計算方法で宇多田ヒカルの楽曲を総合ランキング化し、ミリオン相当の楽曲を抽出した表は以下のとおり。
宇多田ヒカルも5作のCDシングルミリオンセラー輩出などのCD売上枚数記録は有名であるが、「Flavor Of Life」「Beautiful World」「Prisoner Of Love」の3曲がフル配信ダウンロードミリオンを達成していることもCDミリオン記録と同程度に認識しておく必要がある。さらに「First Love」「traveling」「花束を君に」も合算でミリオンセールス相当となっており、これらを総合すると、宇多田ヒカルのミリオンセールス相当曲数は合計11曲となる。
1位は1998年に発売されたデビュー曲「Automatic」。当時まだ15歳でありながら、洗練された楽曲や大人びた歌詞、さらには藤圭子の娘という話題性も手伝ってデビュー作からいきなりの特大ヒットとなった。この曲はCD206万枚、フル配信25万ダウンロード、ストリーミング1.0億再生、MV5,000万再生を記録した。なおCD売上は12cm盤129万枚と8cm盤77万枚の合計である。
2位の「Flavor Of Life」は原曲もさることながら、最高視聴率27%を記録したドラマ『花より男子2(リターンズ)』の挿入歌に起用された「Flavor Of Life -Ballad Version-」が劇中で効果的な使われ方をしたことで特大人気を獲得した。原曲を表題、バラードバージョンをc/wに据えたCDシングル『Flavor Of Life』は65万枚を売り上げ、サウンドスキャン年間シングルチャートでは2007年の2位を記録。デジタル指標では原曲がフル配信125万ダウンロード、着うた100万ダウンロード、ストリーミング5,000万再生、MV4,000万再生、バラードバージョンがフル配信85万ダウンロード、着うた200万ダウンロードを記録した。当ブログ記事では集計ルール上それぞれの最大値のみを計算対象としているが、もし全てを合計すれば「Automatic」を上回るポイントとなる。
当ブログではもし当時適切な総合楽曲人気チャートが日本に存在していれば本曲が2007年の年間1位になり得たと推定している。
このようにダウンロード売上も漏らさず考慮すれば本曲もダブルミリオン相当・年間1位級特大人気曲であると把握できるのである。
ダウンロード売上にフォーカスした当ブログの宇多田ヒカル特集記事↓
3位の「First Love」はCD80万枚、フル配信50万ダウンロード、ストリーミング3.0億再生、MV1.1億再生を記録している。こちらはCDとダウンロードではそれぞれ100万未満だが*1、MVとストリーミングで自身最多再生回数となっており、世代を超えた人気となっていることを押さえておく必要がある。
4位 浜崎あゆみ
4位は浜崎あゆみ。1998年にデビューした女性ソロシンガーソングライターである。各指標のセールス及び再生回数はフィジカルシングル2,142万枚、アルバム2,264万枚、フル配信615万ダウンロード、着うた900万ダウンロード、ストリーミング2.0億再生、MV6,000万再生を記録している。これらをポイント化すれば総合4,122点となる。その指標別構成内訳を割合表示した円グラフは以下のとおり。
浜崎あゆみはCD市場全盛期の1990年代終盤から2000年代前半を中心とした活躍を見せていたため、楽曲人気を可視化する構成要素はCD売上が過半を占めていることが特徴である。他方でダウンロード・着うた市場全盛期の2000年代後半にも一定の存在感を見せていたため、そのポイント割合も無視できない規模になっている。近年は活動ペースが緩やかになっていることから、MV・ストリーミングのポイント割合は小さめである。
次に、これらの楽曲人気ポイントがどの楽曲によって築かれたものなのかを確認する。同じ計算方法で浜崎あゆみの楽曲を総合ランキング化し、ミリオンセールス相当の楽曲を抽出した表は以下のとおり。
浜崎あゆみも5作のCDシングルミリオンセラー輩出などのCD売上枚数記録は有名であるが、「evolution」がフル配信ダウンロード売上との合算でミリオンセールス相当となっており、これらを総合すると、浜崎あゆみのミリオンセールス相当曲数は合計6曲となる。
1位は2000年に発売された「M」。携帯電話のCMソングとして大量OAされたことや、孤独な恋を綴った歌詞が高い共感を呼び大ヒットした。各指標の累計はCD131万枚、フル配信25万ダウンロード、ストリーミング5,000万再生、MV3,000万再生を記録している。サウンドスキャン年間シングルチャートでは集計割れを起こし、2000年20位→2001年40位と推移した。
なおCD売上の自身1位は「M」ではなく『A』であるが、CD以外の指標で「M」が逆転し総合1位という結果となっている。『A』は4曲A面シングルであり、ミニアルバム的お買い得感から売上を伸ばした側面が大きいと思われ、実際に収録曲4曲は何れも殆ど代表曲扱いされる場面が無いどころか、4曲のうちどれが収録曲中最大人気となっているのかすら定かではない。ここではYouTubeに公開されているライブ映像の再生回数から「Trauma」としている。
3位の「SEASONS」はCD136万枚、フル配信25万ダウンロード、ストリーミング5,000万再生を記録している。サウンドスキャン年間シングルチャートでは2000年の9位を獲得した。
4位の『H』は3曲A面シングルであり、『A』同様の分かりにくさを抱えているが、それでもこちらは収録曲中唯一「HANABI」が10万ダウンロードを突破しているため、『A』よりは収録曲中最大人気曲を導き出しやすい。ダウンロード売上はCD売上だけを見ても分からない人気楽曲の把握を助けてくれるのである。
ダウンロード売上にフォーカスした当ブログの浜崎あゆみ特集記事↓
5位 サザンオールスターズ
5位はサザンオールスターズ。ボーカル桑田佳祐を中心に結成され1978年にデビューしたバンドである。各指標のセールス及び再生回数はフィジカルシングル2,484万枚、アルバム2,264万枚、フル配信165万ダウンロード、着うた50万ダウンロード、ストリーミング8.0億再生、MV3,000万再生を記録している。これらをポイント化すれば総合3,958点となる。その指標別構成内訳を割合表示した円グラフは以下のとおり。
サザンオールスターズも楽曲人気を可視化する主要構成要素はCD売上である。それ以外の構成要素のバランスは、B'zとMr.Childrenを足して2で割ったような分布となっている。ダウンロード、ストリーミング配信解禁時期にはそこまで致命的な規模の遅れはなかったため、比較的順当にポイントを稼いでいる。ただしMVについては、未だYouTubeに公開されていない過去曲が多いため、ポイント獲得規模が小さい。
次に、これらの楽曲人気ポイントがどの楽曲によって築かれたものなのかを確認する。同じ計算方法でサザンオールスターズの楽曲を総合ランキング化し、ミリオンセールス相当の楽曲を抽出した表は以下のとおり。
サザンオールスターズも5作のCDシングルミリオンセラー輩出などのCD売上枚数記録は有名であるが、「真夏の果実」「勝手にシンドバッド」の2曲もフル配信ダウンロード売上・ストリーミング再生回数との合算でミリオンセールス相当となっており、これらを総合すると、サザンオールスターズのミリオンセールス相当曲数は合計7曲となる。
1位の「TSUNAMI」、2位の「エロティカ・セブン EROTICA SEVEN」、4位の「愛の言霊 ~Spiritual Message~」、5位の「あなただけを~Summer Heartbreak~」、7位の「勝手にシンドバッド」はいずれもMV等の公式動画*2が未だYouTubeに公開されていないため、早期のアーカイブ充実が望まれる。
ここでは公式ライブ映像が公開されている2曲を取り上げる。「涙のキッス」はドラマ『ずっとあなたが好きだった』主題歌として書き下ろされた一曲。未練のある別れによる夏の恋の終わりを描いた歌詞が切なくもポップなサウンドに乗せて歌われており、ドラマが最高視聴率34%を記録する特大人気となったことも手伝って広く普及する楽曲となった。各指標の累計はCD154万枚、フル配信10万ダウンロード、ストリーミング1.0億再生を記録している。
「真夏の果実」は桑田佳祐自らが監督を務めた映画『稲村ジェーン』主題歌。こちらはアコースティックサウンドに乗せて儚くも美しい夏の恋を情景豊かに描いたバラードナンバーで、数多くのアーティストにカバーされたことなどにより世代を超えた夏の定番曲となった。各指標の累計はCD54万枚、フル配信25万ダウンロード、ストリーミング1.3億再生を記録している。
6位以下
6位以下、TOP50にランクインしたアーティストのうち、個別解説記事を作成しているアーティストに関しては、そのリンクを以下にあいうえお順で並べた。
また、直近で活躍しているアーティストに重点的にスポットを当てるべく、フィジカルシングル・アルバムセールスを除いて、MV・ストリーミング再生回数、フル配信・着うたダウンロード売上を抽出して集計した「歴代アーティスト・トータル・デジタルランキング」も以下記事で別途作成している。
まとめ
以上が歴代アーティスト・トータル・楽曲人気ランキングを作成してみた結果とTOP5ランクインアーティストの簡単な解説となる。
なお、ここで作成した歴代ランキングは、売上・再生回数・RIAJ認定などの客観的指標に基づいたものであるが、それらを纏めてランキング化するうえでは、どうしても作成者である私の考えが介入せざるを得ない。私にRIAJや各種音楽番組・ヒットチャート作成機関が持っているような権威はない。よってここで示したランキングが絶対に正しいと主張するつもりは毛頭ない。
この記事で私が最も主張したいことはランキングの結果ではなく作成過程に係るものである。すなわち、
- ダウンロード市場全盛時代の楽曲人気を無視する形で当時のヒットチャートが作成された不適切性への認識があるか
- それを踏まえ適切な修正を施した歴代ランキングの作成方法になっているか
という点である。この点を無視した歴代ランキング作成を連発している『歌のゴールデンヒット』等にはこの姿勢が全く見られないため、こうした番組は明確に批判対象となる。逆に言えば、この点が満たされていることが分かる歴代ランキング作成方法になっているのであれば、その細かい順位結果はどうなっていても構わない。
全ての時代にヒット曲と人気アーティストは多様に存在する。ヒットチャートは分かりやすくそれらに光を当てることができる重要な存在である。今後もたくさんの素晴らしい楽曲とアーティストに光が当たっていくことを願うばかりである。