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2020年Billboard JAPAN Hot 100週間チャート回顧

この記事では2020に公開されたBillboard JAPAN Hot 100週間チャートのうち、オリコンと1位が異なった全15週をピックアップして回顧する。

 

Billboard JAPAN Hot 100とは、「社会への浸透度を計る」ことを明確に理念に掲げ、複数の要素も加味して作成されている総合チャートである。集計対象は、CD売上ラジオエアプレイダウンロード、ストリーミング、ルックアップ(PCによるCD読取り数)、MVTwitter、カラオケの8指標であった。

 

2020年のBillboard JAPAN年間チャートは下記記事内で総括している。

 

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オリコンは長らくCD売上だけのチャートを大々的に発表し続けており、ダウンロード売上などの配信指標の集計を一向に開始しなかったことなどから、楽曲人気チャートとしては一切機能していない。2017年にBillboard JAPAN Hot 100が楽曲人気チャートとしての合格点を満たすようになると、両チャートの結果は特に年間チャートにおいて一段と乖離するようになった。

 

しかしこうしたビルボードの動きを意識してか、オリコンは前年よりCD、ダウンロード、ストリーミングの3指標を集計対象とした合算ランキングを発足させた。しかし、合算ランキングのチャート設計はCD売上を重視したものとなっており、楽曲人気指標として使用できるものではなかった。そのうえ、CD売上チャートを最前面で取り上げる姿勢も変化はしなかった。

 

本記事で取り上げるBillboard JAPAN Hot 100週間チャート15週の比較対象はオリコン合算ランキングとするが、合算ランキングのCD重視設計により、オリコンの合算ランキングとCD売上ランキングの週間上位はほとんど同一の結果になっている。そのため、実質的にはビルボード総合チャートとCD売上チャートの比較となる。

 

なお本記事連載シリーズの執筆意図は、音楽チャート設計上、高CD売上曲の陰に隠れてしまう「配信指標を主力とした人気曲」に適切に光を当てることにある。*1

 

 

 

1/1公開週1位 Official髭男dism「Pretender」

 

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この週はOfficial髭男dism「Pretender」が3週連続通算5週目の1位を獲得した。CD売上ではBOYS AND MEN「ガッタンゴットンGO!」が約11万枚の売上で1位だったが、BOYS AND MENはCD指標以外の加点が乏しかった一方、年末歌番組出演効果が出た「Pretender」は当週もMV633万再生、ストリーミング616万再生を記録するなど各指標の数値を増加させたため総合では逆転が生じた。

 

「Pretender」は切ないラブソングになっており、印象的な韻を踏むメロディーや共感性の高い歌詞が支持されたことや、タイアップ先の映画「コンフィデンスマンJP -ロマンス編-」が興行収入29億円を記録する人気となったことなどから特大ヒットとなった。現在までの累計は配信100万ダウンロード、ストリーミング5億再生、MV3.2億再生となっており、爆発的な売上と再生数を記録した。

 

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なおCD指標では累計10万枚未満となり、年間TOP100入りすらしていない。Billboard JAPAN Hot 100では「Pretender」は通算7週1位を獲得するが、オリコンCD売上ランキングでは一度も1位を獲得していない。CD売上は楽曲人気指標として一切機能していないのである。


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1/15公開週1位 Official髭男dism「Pretender」

 

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この週はOfficial髭男dism「Pretender」が5週連続通算7週目の1位を獲得した。CD売上ではPoppin'Party「イニシャル/夢を撃ち抜く瞬間に!」が1位だったが、その売上は2万枚程度と多くなかったため、紅白歌合戦出演効果が続いていた「Pretender」が当週もMV743万再生、ストリーミング695万再生を記録して総合1位を守った。 

 

2/12公開週1位 Official髭男dism「I LOVE...」

 

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この週は配信4週目Official髭男dism「I LOVE...」がこの曲初の1位に浮上した。CD発売は次週だったが、Mステ出演効果が配信指標に表れ総合ポイントを前週比23%増加させたCD売上では発売3週目Snow Man vs SixTONESD.D./Imitation Rainが1位だったが、その売上は2万枚程度と、総合1位となるには少なかった。なお当週は「Pretender」も総合2位となりOfficial髭男dismのワンツーフィニッシュとなった。

 

「I LOVE...」は最高視聴率15.4%を記録した人気ドラマ「恋はつづくよどこまでも」主題歌に起用され、恋人に限らない様々な形の愛をテーマにした普遍的な歌詞が大きく支持された。現在までの各指標の累計数値は配信100万ダウンロード、ストリーミング3億再生、MV1.3億再生となっている。

 

この曲の特筆すべき動向はダウンロード売上であり、なんと配信開始から僅か5ヶ月後の2020年6月に「Pretender」よりも早く日本レコード協会よりミリオン認定を受けた。これはミリオン到達所要日数としては歴代でもかなり早い記録になっており、認定所要日数でランキング化している当ブログの歴代ダウンロードランキングでも本曲は配信ミリオン全95曲中19位に入っている。猛烈な勢いで売上を重ねたことが窺える。

 

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なお「I LOVE...」のダウンロード売上は、ミリオン認定を出している日本レコード協会と、50~60万程度の累計売上になっているオリコンビルボードの間で乖離が見られている。しかし、ダウンロード売上に関してはオリコンビルボード共に集計開始が2010年代後半と遅く、2000年代中盤からダウンロード市場が普及していたことを踏まえればあまりにもデータ欠測期間が長すぎるため、歴代データとしての価値は一切ない。ダウンロード売上の実数は2000年代中盤から認定を出している日本レコード協会のデータを用いる以外に選択肢は存在しない。したがって、日本レコード協会が訂正しない限り、「I LOVE...」はダウンロードミリオンとして扱われる。


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3/18公開週1位 Official髭男dism「I LOVE...」

 

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この週はOfficial髭男dism「I LOVE...」が返り咲き通算3週目の1位を獲得した。CD売上ではジェジュン「Brava!! Brava!! Brava!!/Ray of Light」が1位だったが、その売上は5万枚程度と、総合1位となるには少なかった。タイアップ先ドラマ「恋はつづくよどこまでも」の最終回に向けた盛り上がりに連動する形でこの時期人気のピークを迎えていた「I LOVE...」は当週自己ベスト更新となるMV1,022万再生、ストリーミング885万再生を記録するなど各指標で数値を伸ばした。なお当週は「Pretender」も総合2位となりまたもOfficial髭男dismのワンツーフィニッシュとなった。

  

4/15公開週1位 Official髭男dism「I LOVE...」

 

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この週はOfficial髭男dism「I LOVE...」が返り咲き通算4週目の1位を獲得した。CD売上では三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE「Movin' on」が1位だったが、その売上は3万枚程度と、総合1位となるには少なかった。「I LOVE...」はタイアップ先ドラマ「恋はつづくよどこまでも」が放送を終え勢いは漸減傾向となっていたもののまだ十分な余力を残していたため1位に返り咲いた。なお当週は「Pretender」も総合2位となりなんと5度目のOfficial髭男dismによるワンツーフィニッシュとなった。

 

4/22公開週1位 Official髭男dism「I LOVE...」

 

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この週もOfficial髭男dism「I LOVE...」が前週に続き2週連続通算5週目の1位を獲得した。CD売上ではラストアイドル「愛を知る」が1位だったが、その売上は6万枚程度と、総合1位となるには少なかった。ドラマの盛り上がりの余韻がまだ残る「I LOVE...」は当週もMV811万再生、ストリーミング622万再生を記録する粘り強い動きを見せ総合1位を守った。なお当週は「Pretender」も総合2位となり、これでついに6度目のOfficial髭男dismによるワンツーフィニッシュとなった。

 

5/13公開週1位 Official髭男dism「I LOVE...」

 

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この週はOfficial髭男dism「I LOVE...」が前週に続き2週連続通算7週目の1位を獲得した。この時期は新型コロナウィルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言発令で全国のCDショップは休業を余儀なくされ、新作CDも軒並み発売延期となったためCD売上指標は1位が僅か8千枚となるほどの歴史的低水準となり、CD比重が高いオリコン合算ランキングですら、CD未発売曲である瑛人「香水」が配信指標の加点のみで1位になる異常事態となった。

 


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ビルボードでもその「香水」と「I LOVE...」で接戦となったが、ダウンロード指標とMV指標で「I LOVE...」が優位に立っていたことが決め手となりビルボードでは「I LOVE...」が総合1位となった。オリコン合算ランキングではダウンロードの比重が極めて低く設定されており、MVもまだ集計対象にできていなかった一方、ビルボードオリコンよりもダウンロードの比重が高く、MVも集計対象だったことがこの差を生み出した。

 

6/3公開週1位 YOASOBI「夜に駆ける」

 

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この週はYOASOBI「夜に駆ける」が前週に続き2週連続1位を獲得した。CD売上指標は引き続き有力な新作の発売延期が続いていたため低水準となっており、CD売上1位のワルキューレ「未来はオンナのためにある」の売上は2万枚であった。よって当週も配信指標で好調な高人気曲による1位争いとなったが、前週に初の1位を獲得し勢いを急拡大させていたYOASOBIがMV1,381万再生、ストリーミング881万再生を記録するなどして総合1位を継続した。

 

「夜に駆ける」は2019年12月に発売されたYOASOBIのデビュー曲。ネット小説「タナトスの誘惑」を音楽で表現した曲となっている。アニメ仕立てのMVや小説を踏まえた歌詞が視聴者の想像を掻き立てたほか、中毒性のある速いテンポのリズムも支持されたことでじわじわと人気を拡大させ、各指標の累計数値は配信50万ダウンロード、MV2.3億再生、ストリーミング5億再生を突破するほどの歴史的規模となるまでに至った。


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6/10公開週1位 YOASOBI「夜に駆ける」

 

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この週もYOASOBI「夜に駆ける」が制し、これで3週連続1位を達成した。CD売上指標は引き続き有力な新作の発売延期が続いていたため低水準となっており、CD売上1位のStray Kids「TOP -Japanese ver.-」の売上は4万枚であった。よって当週も配信指標で好調な高人気曲による1位争いとなったが、人気拡大を続けていたYOASOBIがMV1,373万再生、ストリーミング938万再生を記録するなどして総合1位を継続した。

 

7/22公開週1位 YOASOBI「夜に駆ける」

 

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この週はYOASOBI「夜に駆ける」が6週ぶり返り咲き通算4週目の1位を獲得した。この間の5週は発売延期となっていた高CD売上アーティストの新作CDシングルのリリースラッシュが続いたため、ビルボードでも高CD売上曲の1位が続いていたが、当週CD売上1位となった山下智久「Nights Cold」の売上は7万枚と多くなかったことでYOASOBIの返り咲き1位となった。YOASOBIは当週もMV1,700万再生、ストリーミング934万再生を記録するなど配信指標で歴史的な高水準を記録し続けており、その勢いは高CD売上曲でないと止められないほどにまで拡大していた

 

9/16公開週1位 YOASOBI「夜に駆ける」

 

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この週はYOASOBI「夜に駆ける」が8週ぶり返り咲き通算5週目の1位を獲得した。この間の7週も発売延期となっていた高CD売上アーティストの新作CDシングルリリースラッシュを受け高CD売上曲の1位が続いていたが、当週CD売上1位となったBOYS AND MEN「Oh Yeah」の売上は5万枚と多くなかったことでYOASOBIの返り咲き1位となった。YOASOBIは当週もMV643万再生、ストリーミング901万再生を記録しており、高CD売上曲でないと止められないほどの人気規模が継続していた。

 

9/30公開週1位 YOASOBI「夜に駆ける」

 

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この週はYOASOBI「夜に駆ける」が2週ぶり返り咲き通算6週目の1位を獲得した。CD売上1位となったV6「It's my life/PINEAPPLE」の売上は10万枚であり、CD指標の加点を主力にYOASOBIを上回れるか否かギリギリの水準だったため当週は大接戦となった。結果はストリーミング934万再生を記録するなど前週までの歴史的高水準を当週も維持したYOASOBIに軍配が上がった。

 

11/11公開週1位 LiSA「炎」

 

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この週はLiSA「炎」が制し、これで発売週以来4週連続での1位となった。CD売上1位となったSexy Zone「NOT FOUND」は25万枚の高水準を記録したが、興行収入歴代1位400億円を記録した映画「鬼滅の刃 無限列車編」主題歌である「炎」は前人未踏の歴史的水準を配信で記録しており、当週は8万ダウンロード、ストリーミング1,792万再生を記録したことから、通常であれば余裕で総合1位獲得が可能なCD売上水準を記録したSexy Zoneですら1位を阻まれる結果となった。

 

「炎」は映画の内容に合わせた重厚なバラードナンバー。既にアニメ「鬼滅の刃」は社会現象となっており、その主題歌となっていた「紅蓮華」も大ヒットしていたLiSAだが、叩きつけるような激しいロックサウンドが展開される「紅蓮華」とはまた違った方向性をアニメファンを超えた領域に見せつけた。歌詞も映画に登場するキャラクターの生きざまを描写したものになっており、映画のエンディングで流れる本曲は多くの感動を呼び起こした。


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11/25公開週1位 LiSA「炎」

 

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この週はLiSA「炎」が2週ぶり返り咲き通算5週目の1位を獲得した。CD売上1位は14万枚を売り上げたNMB48「恋なんかNo thank you!」だったが、NMB48はCD売上以外の指標の加点に乏しかったため、引き続き配信5万ダウンロード、ストリーミング1,526万再生を記録するなど圧倒的な勢いが継続していた「炎」が総合では大差をつけ1位となった。

 

12/2公開週1位 LiSA「炎」

 

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この週はLiSA「炎」が2週連続通算6週目の1位を獲得した。CD売上1位は12万枚を売り上げた=LOVE「青春"サブリミナル"」だったが、=LOVEはCD売上以外の指標の加点に乏しかったため、引き続き配信5万ダウンロード、ストリーミング1,433万再生を記録するなど圧倒的な勢いが継続していた「炎」が当週も総合1位となった

 

まとめ

 

以上が2020年に公開されたBillboard JAPAN Hot 100週間チャートのうちオリコンと1位が異なる週の振り返りとなる。

 

この年はストリーミング市場が急拡大したことでストリーミング1億再生が一気に楽曲人気指標の主役に躍り出た。本記事でピックアップした週間チャートで1位となっていた「Pretender」「I LOVE...」「夜に駆ける」「炎」は何れもストリーミング指標で歴史的な再生数を記録した大人気曲であるが、オリコンではこうしたストリーミング発の大人気曲が高CD売上曲を滅多に上回れないチャート設計になっていた。このこともあってか、この年になるとようやくオリコンが楽曲人気指標として機能していないことへの理解がある程度浸透し、オリコンが楽曲人気指標として誤用される場面も以前と比べれば減少した。

 

ただBillboard JAPAN Hot 100もオリコンほどではないにせよやはりCD売上の比重が高いチャート設計になっており、歴史的高ストリーミング再生曲が平均的高CD売上曲を上回れない週間結果もまだ多く存在した。この問題に対応するため、次年以降はCD売上指標の比重が段階的に引き下げられていくこととなる。

 

(前年2019年のBillboard JAPAN Hot 100週間チャート回顧はこちら↓)

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*1:CD売上指標は楽曲人気指標としては一切使用できなくなっているが、アーティスト人気の濃度を計る目的や、各アーティストがどれほどの利益を生んでいるのかを計る目的としては有用である。