スピッツは、ボーカル草野マサムネを中心に結成され、1991年に「ヒバリのこころ」でデビューしたバンド。数年でブレイクを果たし、2020年代に突入した今に至るまで約30年間という長期に渡り存在感を発揮し続けている。
スピッツは活躍期間が長く、その間音楽業界もダイナミックな変化を複数回遂げているため、楽曲人気を計るうえで見るべき指標は一つではない。最も有名な記録は90年代のCD売上記録だが、例えばCDシングル売上だけを見ていては人気規模を十分に把握できない楽曲もあるため注意しなければならない。
ここでは主にダウンロード売上、ストリーミング再生回数、MV再生回数の3指標を参照し、スピッツのヒット史を振り返る。当ブログ独自の計算式により作成した、スピッツの人気楽曲ランキングは以下のとおりである。

(ランキング作成方法および歴代デジタルヒット曲ランキングは以下記事参照↓)
上記で挙げた楽曲をリリース日順に並べた表も以下に示す。

1990年代
スピッツがブレイクした1990年代はCDバブル期であり、当時の楽曲人気指標の主流はCD売上だった。したがって、デビュー初期の楽曲人気を把握するには、CD売上を中心に見ることになる。一方で、スピッツの楽曲は時代を超えて長期に渡り支持されており、ここではまだあまり有名ではないデジタル3指標の記録を強調していく。
なおCD売上も含む各時代の楽曲人気指標を総合的に考慮した人気楽曲ランキングTOP5は以下のとおりとなる。

ロビンソン
スピッツの大ブレイクをもたらした曲が、デビューから約4年が経過した1995年4月にリリースした11thシングル「ロビンソン」である。この曲は当時平日夕方に放送されていたバラエティ番組のタイアップはあったものの、口コミを中心として徐々に人気を広げていくアクションを見せた。累計CD売上はロングヒットにより自身最多記録となる162万枚*1となった。
リリースからかなりの年月が経っている本曲だが、その人気は時代を超えて後の世代に受け継がれている。ダウンロード売上は2000年代以降の楽曲人気指標の主流であるが、2006年のダウンロード販売解禁から約9年後の2015年に50万ダウンロードを突破した。
さらに2010年代以降の楽曲視聴ツールの主流となったYouTubeにおいても、2010年のMV解禁からの積み上げで累計MV2.0億再生を突破。90年代リリース曲として国内史上初のMV1億再生突破を果たしており、記事執筆現在でも自身最多どころか90年代リリース曲最多MV再生回数記録を保持している。
さらにさらに2020年代以降の楽曲視聴ツールの主流となった各種サブスクリプションサービスにおいても聴かれ続けており、2019年のストリーミング解禁から約6年を経た累計ではストリーミング2.0億再生を突破している。このように「ロビンソン」は、音楽の聴き方が時代とともに移り変わっていく中で、その全ての主要指標でヒットを記録している。
これは、ボーカル草野マサムネのハイトーンボイスが活かされた流麗なメロディーラインや、イントロ等で印象的に繰り返されるアルペジオフレーズ、想像をかき立てる抽象的な歌詞等、この楽曲の魅力が時代の流れに対する極めて強い耐久性を持っていることを意味しており、並大抵の人気では実現できない偉業である。
ちなみに「ロビンソン」のアルバム初収録は、1995年9月にリリースした6thオリジナルアルバム『ハチミツ』で実現している。このアルバムもCD売上累計169万枚*2を記録する大ヒットとなった。このアルバムには、「ロビンソン」に続く12thシングルとしてリリースされ98万枚を売り上げた「涙がキラリ☆」も収録している。
空も飛べるはず
こうしてトップアーティストの仲間入りを果たしたスピッツが次にミリオンセールスを記録した曲が「空も飛べるはず」である。実はこの曲は「ロビンソン」よりも前の1994年に8thシングルとして発表されており、リリース当時は目立ったセールスではなかったが、1996年に最高視聴率12%を記録した人気ドラマ『白線流し』主題歌に起用されたことを受けて再出荷され、このタイミングでCDシングル売上が急上昇。累計売上は148万枚を記録した。
「空も飛べるはず」も時代を超えて支持されており、ダウンロード売上は2006年の解禁から約17年後の2023年にフル配信75万ダウンロードを突破。他指標でもMV1.1億再生、ストリーミング2.0億再生を突破している。
本曲も草野マサムネのハイトーンボイスや抽象的な歌詞等の魅力が時代の流れに対する極めて強い耐久性を有していると言えるが、「ロビンソン」が比較的ドラマティックな曲調であるのに対して本曲はより親近感のあるポップナンバーに仕上がっている。
チェリー
「空も飛べるはず」のチャートインが続く中、1996年4月には13thシングル「チェリー」をリリース。本曲はノンタイアップだったが、人気絶頂期のリリースだったことや口コミでの人気の広がりによって息の長いセールスを記録し、自身3曲目のミリオンセラーを達成。累計売上は161万枚を記録し、自身3曲目の代表曲となるに至った。
やはり本曲も時代を超えて支持されており、ダウンロード売上は2006年の配信解禁から約19年後の2025年に自身最多記録となるフル配信100万ダウンロードを突破。他指標でもMV1.2億再生、ストリーミング2.4億再生を突破している。なおCDミリオン・ダウンロードミリオン・ストリーミング1億再生すべてを達成した楽曲は「チェリー」が史上初となった。冒頭に示したスピッツのデジタル人気楽曲ランキングでは、これらの指標を総合した結果、本曲が1位となっている。
本曲の普遍性は随一であり、ギター初心者向け教本や学校の音楽の教科書へ掲載される機会が多いほか、旅立ちや絆を想起する歌詞も相まって合唱曲としても採用される機会も多い。後年の世代とのタッチポイントの多さが永続的なものになっていることは、一際時代横断的な大ヒットとなっている背景の一つであると考えられる。
渚
1996年9月には14thシングル「渚」をリリース。CD売上は83万枚を記録した。デジタル指標でもフル配信10万ダウンロード、ストリーミング5,000万再生を突破している。壮大かつ幻想的なサウンドと自然体で歌われるボーカルによって一つの世界観が確立された一曲となっている。
1996年10月には「チェリー」や「渚」を収録した7thオリジナルアルバム『インディゴ地平線』をリリースし、134万枚を売り上げた。
楓
1997年には新たに3枚のシングルをリリース。15thシングル「スカーレット」が60万枚、16thシングル「夢じゃない」が33万枚、17thシングル「運命の人」が28万枚を売り上げた。
1998年3月には8thオリジナルアルバム『フェイクファー』をリリース。収録曲の中では特に「楓」が人気となっており、ダウンロード売上は2006年の配信解禁から約3年後の2009年に10万ダウンロードを突破しているほか、他指標でもストリーミング1.1億再生、MV9,000万再生を突破している。
本曲は喪失感を美しく歌い上げた珠玉のバラードナンバーとして時代を超えて支持され続けており、例えば2017年に上白石萌歌がキリン『午後の紅茶』CMで本曲をカバーした際にはBillboard JAPAN Hot 100で週間6位に急浮上するほどの話題性を獲得した。
1999年末にはこれまでのヒット曲を集めたベストアルバム『RECYCLE Greatest Hits of SPITZ』が本人非公認ながらもレコード会社からリリースされ、2005年までの累計で209万枚*3を売り上げる特大ヒットとなった。
2000年代以降
2000年には21stシングル「ホタル」を発売し、22万枚をセールス。2001年には23rdシングル「遥か」を発売し、31万枚を売り上げた。
2004年1月には28thシングル「スターゲイザー」をリリースし、24万枚をセールス。ダウンロード売上でも、2006年の配信解禁から約11年後の2017年にフル配信10万ダウンロードを突破している。本曲は人気恋愛バラエティ番組『あいのり』の主題歌として親しまれ、イントロの爽やかなカッティングギターや開放的なメロディーライン等が支持された。
2004年11月には29thシングル「正夢」をリリースし、14万枚をセールス。2005年1月にはこの曲も収録した11thオリジナルアルバム『スーベニア』をリリースした。アルバム曲の中では、CDでもシングルカットされた「春の歌」が人気となり、デジタル指標では2006年のダウンロード解禁から約10年後の2016年にフル配信10万ダウンロードを突破しているほか、ストリーミング5,000万再生、MV4,000万再生も突破している。
2006年3月にはデビュー15周年を記念した本人公認ベストアルバム『CYCLE HIT 1991-1997 Spitz Complete Single Collection』『CYCLE HIT 1997-2005 Spitz Complete Single Collection』2枚をリリース。過去曲のダウロード販売解禁はこのタイミングであった。
2006年7月には31stシングル「魔法のコトバ」をリリースし、フル配信20万ダウンロード、ストリーミング5,000万再生、MV3,000万再生、CD11万枚を記録。本作以降はCDとダウンロードの同時期リリースが定着していくが、この曲の売上を見ても分かるとおり、楽曲によっては既にCDシングル売上よりもダウンロード売上の方が上回る状況となっていた。
2012年には最高視聴率10%を記録した人気ドラマ『僕とスターの99日』の主題歌に「タイム・トラベル」が起用され、これがフル配信10万ダウンロードを記録した。この曲は原田真二の同名曲のカバーである。
2019年には、42ndシングル「優しいあの子」がNHK朝の連続テレビ小説『なつぞら』主題歌として話題となり、ストリーミング1.0億再生、フル配信10万ダウンロード突破を果たした。
コロナ禍を経た2023年には46thシングル「美しい鰭」をリリース。本曲は興行収入138億円を記録したアニメ映画『名探偵コナン 黒鉄の魚影』主題歌として書き下ろされた。同作でスポットが当てられた人気キャラクター灰原哀の心情を表現したような歌詞や清涼なサウンドは映画の大ヒットとともに多くのリスナーに支持され、フル配信10万ダウンロード、ストリーミング4.0億再生、MV3,000万再生を突破するに至った。
Billboard JAPAN Hot 100の年間でも2023年の10位を記録。ヒットチャート年間TOP10入りはCD売上時代まで遡り、1996年に「チェリー」「空も飛べるはず」で記録して以来実に27年ぶりとなった。
まとめ
以上まで見てきたとおり、スピッツは草野マサムネによる唯一無二のハイトーンボーカル、清涼なロックサウンド、想像を掻き立てる歌詞等の要素によって、その個性を時代を超えた普遍的なものに昇華させ多くの支持を集めていた。その活躍はデビューから30年以上が経過した今なお強い現役感を以て示され続けており、今後も目が離せないものとなっている。
ここで紹介したヒット曲を手元に所有したい場合は、入り口としてベストアルバム『CYCLE HIT 1991-1997 Spitz Complete Single Collection』や、最新オリジナルアルバム『ひみつスタジオ』がおすすめ。
この記事で紹介したデータのうちストリーミング再生回数やダウンロード売上はBillboard JAPANの公式サイトや日本レコード協会の公式サイトから検索することができる。新たな発見の宝庫なので、時間があれば好きな曲やアーティストのデータを検索してみることをおすすめする。
*1:累計シングル売上は、2012年オリコン・リサーチ社出版『SINGLE CHART-BOOK COMPLETE EDITION 1968~2010』p.414-415記載値を引用し、1万枚未満切り捨て表示。以下同様。
*2:累計アルバム売上は、2006年オリコン・リサーチ社出版『ALBUM CHART-BOOK COMPLETE EDITION 1970~2005』p.343記載値を引用し、1万枚未満切り捨て表示。特に注釈がない限り以下同様。
*3:2006年オリコン・リサーチ社出版『ALBUM CHART-BOOK COMPLETE EDITION 1970~2005』修正リスト1記載値を引用し、1万枚未満切り捨て表示。

