Mrs. GREEN APPLEは2015年にミニアルバム『Variety』でメジャーデビューした男性ボーカルロックバンド。平成末期から令和初期にかけて大ブレイクを果たし、ヒット曲を大量輩出している。
Mrs. GREEN APPLEがブレイクした時期は新たな音楽視聴方法としてストリーミングサービスが拡大を始めた時期であるため、楽曲人気はストリーミング再生回数やMV再生回数を通じて把握する。ただしその人気の高さから既に市場が縮小している配信ダウンロード売上でも一定規模の数字を叩き出している。ここではストリーミング、MV、ダウンロードの配信3指標をもとにしながら、Mrs. GREEN APPLEのヒット史を振り返る。
ストリーミング再生回数ランキングは以下のとおり。これまでにストリーミング5,000万再生以上を記録した曲は27曲で、認定総再生回数は67.5億(歴代2位)となっている。
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続いてMV再生回数ランキングは以下のとおり。ここでは3,000万再生以上を記録したMVを抽出する。これまでに16曲が3,000万再生以上を記録している。なお2024/12/26時点で全楽曲を集計した累計MV再生回数(日本国内)は30.8億(歴代6位)となっている。
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最後にダウンロード売上ランキングは以下のとおり。日本レコード協会によれば、これまでにダウンロード売上10万以上を記録した曲は7曲で、認定総ダウンロード売上は100万となっている。
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上記で挙げた楽曲を配信開始日順で並べたうえで楽曲人気データを一覧化した表も以下に示す。
フェーズ1
デビュー~2017年
Mrs. GREEN APPLEは2013年に当時高校生だったボーカル大森元貴を中心に結成された。結成後はメンバーチェンジを経ながらもインディーズで新作発売やライブ活動を重ね、2015年7月に5人組バンドとしてメジャーデビューを果たした。
デビュー作品となったミニアルバム『Variety』収録曲の中では、リード曲「StaRt」がライブの定番曲として発売当初から人気を集めた。当初はノンタイアップだったこの曲だが、人生の節目節目の始まりを彩るポップロックナンバーとして好評を受けて2017年には花王「メリットシャンプー」CMソングにも起用されている。こうして徐々に定番曲としての知名度が浸透した結果、本曲はストリーミング1億再生、MV7,000万再生を突破するヒットとなった。
2015年12月には1stシングル「Speaking」を発売。本曲はアニメ『遊☆戯☆王ARC-V』エンディングテーマに起用されたこともあり、ストリーミング5,000万再生を突破するヒットとなった。翌2016年11月には3rdシングル「In the Morning」を発売し、ストリーミング5,000万再生を記録した。
最初の本格的な大ヒットは2017年に訪れた。8月に5thシングルとして発売された「WanteD! WanteD!」は電子音を主体とした明るいダンサブルなポップナンバー。ドラマ『僕たちがやりました』主題歌に起用されたことや、TikTokにて双子ダンスで使用される機会が多かったことなどから人気が広がり、ストリーミング2億再生、MV5,000万再生、フル配信10万ダウンロードを突破する大ヒットとなった。
なお、本曲で自身初めてBillboard JAPAN Hot 100の年間TOP100入り(2017年99位)を果たしており、このことからも本曲がMrs. GREEN APPLEの出世作として扱われている。
2018年
2018年2月には6thシングル「Love me, Love you」を発売。表題曲はストリーミング5,000万再生、MV3,000万再生を突破しているが、本シングルのc/wに収録された「春愁」が表題曲を上回るヒットとなっており、ストリーミング1億再生、MV5,000万再生を突破している。本曲は発売以前からライブで未発表曲として披露されていた人気曲で、卒業をテーマに多感な学生時代を振り返りながら新たな生活へと向かうさまを印象的に描いたバラードナンバーとなっている。
以降、大ヒット曲が連発されるようになる。2018年7月に配信された7thシングル表題曲「青と夏」は爽快なバンドサウンドで奏でられたアッパーな夏うたで、映画『青夏 きみに恋した30日』主題歌として書き下ろされた。楽曲が持つ瑞々しさは青春を強く感じさせるものであり、特に学生からの支持が集まったことで、新たな夏うたの定番曲の座を獲得。Billboard JAPAN Hot 100の年間では2018年84位→2019年40位→2020年35位→2021年80位→2022年56位→2023年20位→2024年9位と推移しており、毎年夏になると浮上することで6年連続年間TOP100入りを果たしている。
各指標の累計はストリーミング7.3億再生、MV1.7億再生、フル配信25万ダウンロードを突破している。
さらにこのシングルのc/w「点描の唄 (feat. 井上苑子)」も表題曲に劣らない人気を獲得している。この曲は映画『青夏 きみに恋した30日』の挿入歌。「青と夏」が夏恋の始まりがイメージされる楽曲だとすれば、「点描の唄」はその終わりがイメージされる儚げなバラード。大森元貴とゲストボーカル井上苑子による初々しさが表現された歌唱はやはり青春の恋を感じさせるものであり、人気のデュエットナンバーとして支持を広げた。
Billboard JAPAN Hot 100の年間では2020年になって初のTOP100入りを果たし、以降2020年60位→2021年も63位→2022年54位→2023年43位→2024年19位と推移している。累計ではストリーミング6.6億再生、フル配信10万ダウンロードを突破。MVは制作されていないが、代わりにLive Lyric Videoがアップされており(ここでは井上苑子は不参加)、こちらが6,000万再生を突破している。
続いて2018年12月に配信された8thシングル「僕のこと」は第97回全国高校サッカー選手権大会の応援歌として書き下ろされたロックバラード。壮大な人生賛歌に仕上がっており、その歌詞は勝者だけに限らないあらゆる境遇にあるリスナーを鼓舞した。各指標の累計はストリーミング4.3億再生、MV1.1億再生、フル配信10万ダウンロードを突破している。Billboard JAPAN Hot 100の年間では2020年53位、2023年60位→2024年42位を記録するロングヒットとなった。
2019年
2019年3月には9thシングル「ロマンチシズム」を配信。歌詞は人類愛をテーマにしており、前作に続く壮大さを有しているが、曲調は疾走感のあるビートになっており、壮大さとポップな聴きやすさが両立したサウンドになっている。自然体な愛情が表現された煌びやかなMVも人気となるなどして支持が広がり、各指標の累計はストリーミング3.4億再生、MV8,000万再生を突破した。Billboard JAPAN Hot 100の年間では2020年65位→2021年87位、2024年66位と推移するロングヒットとなった。
7月にはシングル「インフェルノ」を配信した。本曲はアニメ『炎炎ノ消防隊』主題歌として、アニメのファンでもある大森元貴が書き下ろした楽曲で、歌詞にはアニメにリンクしたキーワードが散りばめられているほか、曲調もダークなロックナンバーになっている。こうしたアニメとの親和性の高さなどから人気が広がる形でBillboard JAPAN Hot 100の年間では2019年86位→2020年22位→2021年68位、2023年63位→2024年33位と推移するロングヒットとなった。各指標の累計はストリーミング5.5億再生、MV2.8億再生、フル配信25万ダウンロードを突破している。
「インフェルノ」の大ヒットで勢いに乗る中発売された4thオリジナルアルバム『Attitude』もBillboard JAPAN Hot Albumsの年間で2019年85位→2020年63位と推移するロングヒットを記録した。収録曲の中では、先行配信された「lovin'」がストリーミング5,000万再生、同「CHEERS」がストリーミング1億再生(RIAJ)、MV3,000万再生、表題曲「Attitude」がストリーミング5,000万再生を突破している。
フェーズ2
2020年7月には自身初のベストアルバム『5』を発売し、そのタイミングで「フェーズ1完結」と称して活動休止を発表。休止期間は事務所の独立や世界展開を見据えた新プロジェクト「Project-MGA」の立ち上げ、大森元貴のソロ活動などが展開された。この間メンバー2人の脱退もあったが、2022年3月に3人体制で「フェーズ2開幕」を宣言し、活動を再開した。
2022年
活動再開一発目を飾った5th配信シングル「ニュー・マイ・ノーマル」はストリーミング1億再生(RIAJ)突破した。
そして5月にミニアルバム『Unity』から先行配信された「ダンスホール」はフェーズ2での人気急拡大に向けて先陣を切った。朝の情報番組『めざまし8』のテーマ曲に起用されたこの曲は、そのタイアップに相応しくポジティブなエネルギーに溢れており、視聴者の一日の始まりを華やかに彩った。MVではバンドの枠に囚われないファッションとダンスを見せるなど話題性も高く、人気を博したこの曲はストリーミング6.2億再生、MV1.2億再生、フル配信10万ダウンロードを突破。Billboard JAPAN Hot 100の年間では2022年32位→2023年7位→2024年10位と推移している。
続いて6月に同ミニアルバムから先行配信された「ブルーアンビエンス(feat. asmi)」は、ABEMAオリジナル恋愛バラエティ番組『今日、好きになりました。初虹変』の主題歌。純粋かつ等身大な恋愛観を描いた歌詞が瑞々しいサウンドに乗せて歌われており、フューチャーしたasmiのチャーミングな歌声とも化学反応を起こしたことで支持された本曲はストリーミング2億再生を突破。Billboard JAPAN Hot 100の年間では2023年70位→2024年82位と推移している。
11月には10thシングル「Soranji」を発売。本曲は生きることへ向き合ったメッセージ性の強い渾身のピアノバラードになっている。タイアップ先の映画『ラーゲリより愛を込めて』は過酷な戦時中を生き抜いた主人公とその想いを継ぐ仲間が織りなすドラマを描写しており、楽曲とも深くリンクしていた。多くの感動を生み出した本曲は支持を広げ、ストリーミング4.6億再生、MV7,000万再生を突破。Billboard JAPAN Hot 100の年間では2023年19位→2024年12位と推移している。
「Soranji」はCDシングル化もされたが、このc/wに収録されたのが「私は最強」である。この曲はアニメ映画『ONE PIECE FILM RED』のキャラクターであるウタに扮したAdoへ提供した同名曲のセルフカバー。ミセス節全開とも言えるような煌びやかなアッパーチューンとなっており、原曲はストリーミング3億再生を突破したが、セルフカバーも伸びやかなボーカル等が支持されストリーミング2億再生、MV4,000万再生を突破した。Billboard JAPAN Hot 100の年間では2023年55位→2024年85位と推移している。
2023年
2023年にもMrs. GREEN APPLEはヒット曲を連発し、一気にトップクラスの人気を築き上げていった。4月に配信した「ケセラセラ」は「なるようになるさ」という意味を持つタイトルのとおり、懸命に日々を生きる人々の背中を後押しする人生応援歌。ラスサビに向かって盛り上がる楽曲構成も心強さを感じさせてくれる仕上がりになっている。ドラマ『日曜の夜ぐらいは…』に起用されたことでも普及した本曲はストリーミング5.1億再生、MV7,000万再生を突破。年末には2023年の日本レコード大賞を受賞したことにより人気が再燃し、Billboard JAPAN Hot 100の年間では2023年23位→2024年6位と推移している。
6月には5thオリジナルアルバム『ANTENNA』から「Magic」を先行配信した。本曲は塞ぎ込んでしまったり余裕がなくなってしまったりしている人々を自由へと開放してくれるような歌詞がハイトーンボーカルによって高らかに歌い上げられており、まさに魔法のようにポジティブになれるポップナンバーに仕上がっている。「コカ・コーラ Coke STUDIO Magic」篇のCMソングとして起用されたことでも話題となった本曲はストリーミング3.4億再生、MV4,000万再生を突破した。
7月にはアルバム表題曲「ANTENNA」を配信。『ワールドカップバレー2023』日本代表応援ソングに起用された本曲は、ポップかつパワフルなギターサウンドと伸びのある歌唱でその役割を果たしたこともあり、ストリーミング1億再生を突破した。痛みに向き合いながらもポジティブに未来への希望を綴る歌詞も、アルバムのリード曲として印象深い内容となっていた。
2024年
アルバム『ANTENNA』が大好評となったことや、前述した「ケセラセラ」の日本レコード大賞受賞によりMrs. GREEN APPLEは人気絶頂を迎えて2024年に突入した。その機を捉えるようにこの年はこれまで以上に怒濤のリリースラッシュを展開した。
まず1月には8th配信シングル「ナハトムジーク」を発売。本曲は映画『サイレントラブ』の主題歌として書き下ろされたラブバラード。タイトルはドイツ語で「夜の曲」を意味している。不器用ながらも美しい愛情が表現されており、その情景を美しい夜空で表現したMVも話題になったことなどから、本曲はストリーミング1億再生を突破した。
さらに4月からは連続でシングルリリースを敢行。その第一弾となったアニメ『忘却バッテリー』の主題歌「ライラック」は、「青と夏」のアンサーソングとして位置づけられる青春ポップロックナンバーとして自身最大の初動楽曲人気を獲得。Billboard JAPAN Hot 100では自身初の1位を獲得し、2024年の年間5位を獲得。各指標の累計はストリーミング3.6億再生、MV9,000万再生、フル配信10万ダウンロードを突破しており、2024年を代表する大ヒット曲となった。また、本曲で2024年の日本レコード大賞を受賞した。
続けて5月に配信した「Dear」もストリーミング1億再生を記録した。本曲は映画『ディア・ファミリー』主題歌として書き下ろされた。映画は余命10年と宣告された娘の命を救うための医療技術開発に人生を捧げた家族の姿を描く内容で、生命の尊さや家族愛を感じさせる壮大な歌詞やサウンドが作品を盛り立てた。
6月に配信した「コロンブス」もストリーミング1億再生を記録。
そして8月には5ヶ月連続シングルリリースの締めくくりとして「familie」を配信。本曲はHonda新型FREEDのCMソングに起用されており、そのタイアップに相応しく、家族でのドライブにかける曲としてはピッタリな軽快さと温かさを有している。本曲は初登場から所要17週でストリーミング1億再生を突破しているが、これは「ライラック」の10週、「ケセラセラ」の16週に次ぐ自身3位のスピード記録となる。
こうして新譜・旧譜ともに好調な楽曲人気を獲得したことで、Mrs. GREEN APPLEはアーティスト人気チャートBillboard JAPAN Artist 100で2024年の年間1位を獲得した。
まとめ
以上まで見てきたとおりMrs. GREEN APPLEは、瑞々しく勢いのあるポップサウンドや、大森元貴の優しさと壮大さを同居させた圧巻の歌唱が支持される形で大人気を獲得していた。その規模は令和突入とともに幕を開けたストリーミング時代のヒットシーンを牽引するほどのものであることがストリーミング認定総数60億超えの偉業から読み取れる。今後の一層の活躍も楽しみなアーティストである。
ここで紹介したヒット曲を手元に所有したい場合は、4thオリジナルアルバム『Attitude』、4thミニアルバム『Unity』、5thオリジナルアルバム『ANTENNA』がおすすめ。
ちなみにApple music及びiTunesでのみ配信されている『Attitude (Expanded Edition)』には元々未収録となっていた「点描の唄 feat.井上苑子」が追加収録されている。
この記事で紹介したストリーミングやダウンロードのデータはBillboard JAPANの公式サイトや日本レコード協会の公式サイトから検索することができる。新たな発見の宝庫なので、時間があれば好きな曲やアーティストのデータを検索してみることをお勧めする。
(参考)Mrs. GREEN APPLEの総合ヒット曲ランキング
最後に、Mrs. GREEN APPLEの各楽曲・各指標数値を当ブログが採用する一定の計算式で総合ランキング化した表を参考として掲載する。
(ランキング作成方法および歴代総合ヒット曲ランキングはこちら↓)
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