Adoは2020年に「うっせぇわ」でメジャーデビューした女性ソロアーティスト。この曲でいきなり大ブレイクを果たし、以降も現在進行形でヒット曲を輩出し続けている。
Adoがブレイクした時期は新たな音楽視聴方法としてストリーミングサービスが拡大を始めた時期であるため、楽曲人気はストリーミング再生回数やMV再生回数を通じて把握する。ただしその人気の高さから既に市場が縮小している配信ダウンロード売上でも一定規模の数字を叩き出している。ここではストリーミング、MV、ダウンロードの配信3指標をもとにしながら、Adoのヒット史を追っていく。
ストリーミング再生回数ランキングは以下のとおり。これまでにストリーミング5,000万再生以上を記録した曲は19曲で、認定総再生回数は36.2億(歴代10位)となっている。
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続いてMV再生回数ランキングは以下のとおり。ここでは3,000万再生以上を記録したMVを抽出する。これまでに17曲が3,000万再生以上を記録している。なお2024/12/26時点で全楽曲を集計した累計MV再生回数(日本国内)は27.1億(歴代7位)となっている。
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最後にダウンロード売上ランキングは以下のとおり。日本レコード協会によれば、これまでにダウンロード売上10万以上を記録した曲は7曲で、認定総ダウンロード売上は100万となっている。
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上記で挙げた楽曲を配信開始日順で並べたうえで楽曲人気データを一覧化した表も以下に示す。
狂言
Adoはデビュー前から歌い手として活動しており、顔出しはしていないながらも、YouTubeにボカロ楽曲の歌ってみた動画を投稿するなどしていた。このうち2020年6月に投稿した柊キライ「ボッカデラベリタ」の歌ってみた動画はMV4,000万再生を突破している。また、yama「春を告げる」の作者として有名なボカロPくじらにフューチャーされた「金木犀 (feat.Ado)」も2019年12月に公開されて以降の積み上げでMV3,000万再生を突破している。こうした活躍が注目され、2020年10月にメジャーデビューする運びとなった。
そのデビュー曲「うっせぇわ」はボカロPのsyudouが作詞作曲を手掛けた。圧倒的な歌唱表現力やタイトルを連呼するサビ、賛否両論を喚起する歌詞はインパクト抜群であり、アニメ仕様のMVの人気も相まってYouTubeでは配信当初から好調な再生回数を稼いでいた。
本格的に人気に火が付いたのは2021年1月。急逝した人気YouTuberうごくちゃんの遺作として公開された歌ってみた動画が反響を呼んだことでチャートアクションがギアアップし、2021年3月にはBillboard JAPAN Hot 100で自身初の週間1位を獲得するまでに至った。以降も、顔出しをしないスタイルながらも多くの音声インタビューに応じるなど各メディアで特集が組まれたことで話題が持続し、年間でも2021年7位→2022年59位と推移するロングヒットとなった。
各指標の累計はストリーミング4.1億再生、MV3.5億再生、フル配信25万ダウンロードを突破している。
「うっせぇわ」が話題を攫う中で発表された楽曲も軒並み人気を集めた。2020年12月に発売された「うっせぇわ」に続く2nd配信シングル「レディメイド」はストリーミング1億再生(RIAJ)、MV1億再生を突破している。本曲はボカロPのすりぃが手掛けたおしゃれでノリの良い楽曲で、既成概念の打破について描いた歌詞も人気となった。
このほか、同月に公開された柊キライ「ラブカ?」の歌ってみた動画もMV4,000万再生を突破している。
2021年2月に発売された3rd配信シングル「ギラギラ」は容姿コンプレックスに悩む少女がこれを克服しようと決意するさまを描いた楽曲で、ボカロPのてにをはが作詞作曲編曲を手掛けた。その非凡な歌詞表現は大きな話題となったほか、Adoの感情のこもった歌唱表現力の高さを再確認できるミディアムバラードであったことから本曲は多くの支持を集め、ストリーミング2億再生、MV1.8億再生、フル配信10万ダウンロードを記録した。Billboard JAPAN Hot 100の年間では2021年33位→2022年71位と推移するロングヒットとなった。
2021年4月に発売された4th配信シングル「踊」はボカロPのGigaと音楽プロデューサーのTeddyLoidが作曲編曲、ボカロPのDECO*27が作詞を担当し制作されたダンスミュージック。非凡な個性が結集して完成された本曲は、複雑な楽曲構成ながらもリズミカルであり、サウンド・メロディー・歌詞の何れも強いインパクトを残すものであった。Billboard JAPAN Hot 100の年間では2021年18位→2022年25位→2023年100位と推移するロングヒットを記録。各指標の累計はストリーミング4.3億再生、MV2.1億再生、フル配信10万ダウンロードを記録した。
2021年6月には5th配信シングル「夜のピエロ」を、8月には同6th「会いたくて」を発売し、それぞれストリーミング5,000万再生を記録した。
2021年10月には7th配信シングル「阿修羅ちゃん」を発売。最高視聴率19.0%を記録した人気ドラマ『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』第7シリーズの主題歌にも起用された。この曲はボカロPのNeruが作詞作曲を手掛けており、高速なテンポで忙しなく駆け抜けるサウンドと社会風刺的な歌詞が痛快な仕上がりになっている。やはり歌唱難度の高い楽曲だが、それをパワフルに歌いこなすAdoの歌唱も人気となり、各指標の累計はストリーミング1億再生、MV1億再生、フル配信10万ダウンロードを記録した。
このように、Adoはその圧倒的歌唱表現力を武器として、元々のルーツであるボカロ文化をベースに数多くのボカロPと組んで多数のヒット曲を輩出した。それらを纏めた作品が2022年1月に発売された1stオリジナルアルバム『狂言』である。当然大きな注目を集めた本作はBillboard JAPAN Hot Albumsの年間で2022年9位→2023年85位と推移するロングヒットとなった。なお、収録曲のうち8th配信シングルとして先行配信された「心という名の不可解」もストリーミング1億再生(RIAJ)、MV3,000万再生を突破している。
ウタの歌 ONE PIECE FILM RED
『狂言』の次に繰り出された展開はまさに一大プロジェクトと言うべきものであった。人気アニメ「ONE PIECE」の2022年8月公開映画作品『ONE PIECE FILM RED』のメインキャラクターであるウタの歌唱をAdoが担当したのである。この映画は歌の力に焦点を当てた作品になっており、ウタが劇中で歌う複数の楽曲は何れも映画のストーリーの構成上重要な立ち位置を占めるものであった。これらの複数の楽曲が、興行収入200億円を突破するほどの規模だった映画の特大ヒットとともにヒットシーンを席巻した。
その中でも特に重要な楽曲は、映画の公開に先行して6月から順次配信が開始され、公開前から話題となっていた。まず最初に解禁された楽曲が、映画の主題歌という最も重要な位置づけとなっていた「新時代」である。作詞作曲は中田ヤスタカが担当しており、海外でザ・ウィークエンドやハリー・スタイルズが取り入れてトレンドになっていたシンセサウンドが印象的な仕上がりの一曲。そこにAdoの伸びやかな歌唱表現が乗ったことで楽曲は多くのリスナーを惹きつけた。
次に配信された劇中歌が「私は最強」である。Mrs. GREEN APPLEの大森元貴が作詞作曲したこの曲はミセス節全開とも言えるような煌びやかなアッパーチューン。Ado自身も大森元貴の歌い方に似せて歌唱したと公言しており、「新時代」と併せて、これまで「うっせぇわ」等で見せた攻撃的なイメージとは異なる新たなAdoの歌唱表現力の一面を強く印象付けた。
先行配信第3弾として7月に配信された劇中歌が「逆光」である。Vaundyが作詞作曲したこの曲は、「うっせぇわ」で印象付けたAdoのパブリックイメージを踏襲するかの如く、怒りを全面に打ち出した攻撃的ロックナンバー。Adoの感情を爆発させたがなり声はウタの劇中の心情とも強くリンクしており、強いインパクトを与えた。
劇中歌配信第4弾の「ウタカタララバイ」は映画公開初日に配信開始となった。 本曲は新進気鋭の音楽ユニットFAKE TYPE.が作詞作曲を担当した。サウンドや楽曲構成は全く先が読めず、極めて早口なラップは歌詞情報がなければ何を言っているのか全く聴き取れない内容だが、そのアブノーマルさは中毒症状をリスナーに生じさせた。そしてこの高難度楽曲を歌いこなすAdoの縦横無尽に跳ね回るような歌唱は必聴の出来となっていた。
以上の4曲は映画公開を機に一気に人気が普及し、各種ヒットチャートで急上昇を見せた。特にBillboard JAPAN Hot 100の2022/8/17公開週では「新時代」「逆光」「私は最強」がTOP3に入り、チャート発足15年目にして初の同一アーティストによるTOP3独占が達成された。
映画公開翌週には、以上4曲を含む劇中歌7曲を収録したサウンドトラックアルバム『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』が発売され、瞬く間に同年を代表するヒット作となった。Billboard JAPAN Hot Albumsでは1位常連のB'zを退け週間1位を獲得し、年間でも2022年3位→2023年45位と推移した。
収録曲の各指標累計数値や年間チャート成績は以下のとおりとなる。ほぼ全ての収録曲がヒットする異次元のコンテンツ人気となっていたことをこれらのデータが表している。
- 「新時代」:ストリーミング5.6億再生、MV1.7億再生、フル配信25万ダウンロードを記録。Billboard JAPAN Hot 100では通算6週1位を獲得し、年間でも2022年7位→2023年6位→2024年67位と推移。
- 「私は最強」:ストリーミング3.7億再生、MV9,000万再生、フル配信10万ダウンロードを記録。Billboard JAPAN Hot 100の年間では2022年24位→2023年27位と推移。
- 「逆光」:ストリーミング2億再生、MV1.3億再生を記録。Billboard JAPAN Hot 100の年間では2022年37位→2023年59位と推移。
- 「ウタカタララバイ」:ストリーミング2億再生、MV1億再生を記録。Billboard JAPAN Hot 100の年間では2022年45位→2023年87位と推移。
- 「Tot Musica」:ストリーミング1億再生(RIAJ)、MV9,000万再生を記録。
- 「風のゆくえ」:ストリーミング1億再生(RIAJ)、MV3,000万再生を記録。
- 「世界のつづき」:ストリーミング5,000万再生を記録。
これらの楽曲は、これまでのJ-POPのメジャーシーンを走り続けていたアーティストによる提供が多く、ボカロPによる楽曲提供をメインに据えていた『狂言』とは異なるAdoの新たな魅力を存分に見せつけることとなった。
通常のAdoとしての活動も並行的に行われており、2022年9月に配信した12thシングル「リベリオン」がストリーミング5,000万再生を突破している。
こうした活躍により、Adoはアーティスト人気チャートBillboard JAPAN Artist 100で2022年の年間1位を獲得した。
2023年以降
2023年には再びAdoとして新たな大人気楽曲を輩出した。9月に発売した18th配信シングル「唱」はユニバーサル・スタジオ・ジャパンのハロウィンショーイベント「ゾンビ・デ・ダンス」の主題歌に起用されたダンスナンバー。作詞はFAKE TYPE.のTOPHAMHAT-KYO、作曲・編曲はGigaとTeddyLoidが務めており、これまでAdoにしか歌いこなせないような高難度人気曲を輩出してきたクリエイターによる再タッグも話題となった。その期待に違わず本曲はやはり非凡な内容となっており、縦横無尽に飛び跳ねながらも要所を締めるようなメロディーラインとEDMサウンドや、サビのキャッチーな振付けが多くの視聴者を虜にした。
Billboard JAPAN Hot 100では自身最多記録となる通算13週1位を獲得し、年間でも2023年17位→2024年7位と推移している。各指標の累計でも自身最速記録でストリーミング4.5億再生、MV2.1億再生、フル配信10万ダウンロードを突破。自身最大ヒットにもなり得る勢いで現在も各指標の記録を伸ばし続けている。
2023年は他にも2曲のシングル「向日葵」「クラクラ」がストリーミング5,000万再生を突破している。
まとめ
以上まで見てきたとおり、Adoは顔出しをしないながらも類稀なる歌唱表現力とそれを引き出す豪華作詞作曲陣のバックアップによって圧倒的な大人気を獲得しており、その大活躍は各指標の歴代データを塗り替えながら現在進行形で続けられている。今後も各指標に重要なアップデートが生じれば、この記事で言及しているデータも適宜最新のものに置き換えていく予定である。
Adoのヒット曲をフィジカルで所有したい場合は、『狂言』『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』がマストアイテムとなっている。
この記事で紹介したストリーミングやダウンロードのデータはBillboard JAPANの公式サイトや日本レコード協会の公式サイトから検索することができる。新たな発見の宝庫なので、時間があれば好きな曲やアーティストのデータを検索してみることをお勧めする。
(参考)Adoの総合ヒット曲ランキング
最後に、Adoの各楽曲・各指標数値を当ブログが採用する一定の計算式で総合ランキング化した表を参考として掲載する。
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