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フル配信ダウンロード売上、MV再生回数、ストリーミング再生回数、Billboard JAPANランキングデータなどを通じて国内の人気楽曲を把握するブログ

歴代アーティスト・トータル・YouTube再生回数ランキング(日本国内)

この記事では、日本国内のMV再生回数をアーティストごとに集計し、歴代アーティスト・トータル・MV再生回数ランキングを作成することを試みた。先に結果を示すと、そのTOP20は以下のとおりとなった。

 

 

 

ランキング作成方法

 

動画共有プラットフォームとして圧倒的なシェアを誇るYouTubeのデータを通じて「日本国内MV再生回数アーティストごと歴代集計すること」が本記事の目的であるが、実際のところ、それを100%正確に実行する方法を見出すことは困難である。

 

YouTubeにおいて、各動画で表示されている視聴回数は全世界におけるものであるため、例えば海外アーティストの人気MVに占める日本国内における視聴回数を読み取ることはできない。

 

そこで目を向けるのが、YouTubeが国別に再生回数を集計し発表しているYouTube週間アーティストランキングである。このJapan Weekly Top Artistsで表示されている週間再生回数を歴代集計すれば、上記目的に近しい結果を導くことができる。

 

ただし、以下の点に注意が必要である。

 

  • YouTubeチャートが日本で公開を開始したタイミングは2018/4/27-2018/5/3集計週からである。それより前の期間に稼がれた再生回数は含まれない。ここで示す結果の歴代集計期間は2023/12/22-2023/12/28集計週までとした。
  • 本チャートにはアーティストによる公式動画だけでなく、一般ユーザーが許諾された楽曲を使用した動画(所謂UGC)の再生回数も含まれる。
  • 本チャートには動画ストリーミングだけでなくYouTubeにおけるオーディオストリーミングとしての再生回数も含まれる。

 

ここでは、本ランキングをMV再生回数ランキングとして見做すことに問題は無いと考えるが、実態としてはYouTube再生回数ランキングと言った方がより近いものになる。

 

TOP5アーティスト解説

 

1位 BTS

 

1位は累計43.8億再生を記録しているBTS。2014年に日本デビューした男性7人組K-POPダンス&ボーカルグループである。世界的人気を誇るBTSは日本での人気も飛び抜けており、同ランキングにおける週間1位獲得数でも歴代最多となる100週連続通算102週1位を記録している。総合アーティスト人気チャートBillboard JAPAN Artist 100では2018年3位→2019年10位→2020年5位→2021年1位→2022年5位と推移した。

 

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ここではこの43.8億という大規模な累計動画再生回数がどの楽曲によってどれほど稼がれて築かれたものなのか、もう少し深堀りすることを試みる。

 

既述のとおり、YouTubeの各動画で表示されている視聴回数は全世界におけるものである。そのため、国内人気を主とする多くの国内アーティストと異なり、BTSのような世界各地で数多く視聴されているグローバルアーティストの動画の視聴回数を見ても、そのうち何割が日本国内におけるものなのかは分からない。

 

そこで目を向けるのが、YouTubeが国別に再生回数を集計し発表しているYouTube週間楽曲ランキングである。このJapan Weekly Top Songsで表示されている週間再生回数を歴代集計すれば、どの楽曲がBTSの日本国内YouTube再生回数の主要構成要素となっていたのかを推し量ることができる。

 

ただし本ランキングには重大な欠点がある。各曲のランクイン期間が1年に達すると原則殿堂入りとなりランクイン対象外となってしまうことである(所謂リカレントルール)。

 

そのため楽曲ランキングの歴代集計で示される再生回数はあくまでも原則週間TOP100登場52週目までの間において同圏内で記録された再生回数の合計であり、普遍的なオールタイムデータとして使用することはできない。なおアーティストランキングにはリカレントルールは導入されていないため、楽曲ランキングとは集計対象が同一でありながら再生回数規模が一致していない。

 

それでも再生回数の順位や比率がオールタイムのそれらと大きく相違することはないだろうという仮定のもと、ここでは楽曲ランキングの歴代集計データを活用する。この結果から再生回数1,000万以上を記録したBTSの楽曲を抽出したランキングは以下のとおり。

 

 

更に再生回数1,000万未満の楽曲も含めた楽曲別構成割合を一目で表した円グラフは以下のとおり。

 

 

BTSはこのチャートにおいても数々の記録を樹立した。

 

  • 合計1,000万再生以上を記録した楽曲は15曲
  • 1位は合計4.1億再生・週間1位獲得数10週を記録した「Dynamite」
  • 2位は合計3.4億再生・週間1位獲得数14週を記録した「Butter」。初登場週で記録した週間3,300万再生週間再生回数歴代1位記録である。
  • 3位の「Permission to Dance」合計1.7億再生・週間1位獲得数6週を記録した。

 

この表から、BTSの日本国内YouTube再生回数が「Dynamite」「Butter」「Permission to Dance」という3大人気楽曲を中心として築かれたことを読み取ることができる。

 

ただし既述のとおり、この楽曲ランキングは複数の公式動画やUGC等における再生回数を楽曲ごとに集計したものである。となると次に気になるのは、各曲の再生回数がどのような動画再生回数の内訳で築かれたのかということである。

 

そこで目を向けるのが、YouTubeが国別に再生回数を集計し発表しているYouTube週間MVランキングである。MVランキングでは楽曲ごとではなく動画ごとの集計となっている。このJapan Weekly Top Music Videosで表示されている週間再生回数を歴代集計すれば、日本における各曲のより詳細な動画再生回数内訳を推し量ることができる。

 

このランキングにもリカレントルールが導入されており、楽曲ランキング同様の欠点があるが、同様の仮定を置いてデータを活用する。その歴代集計結果から再生回数1,000万以上のBTSの公式動画を抽出したランキングは以下のとおり。

 

 

この表からは以下の点が読み取れる。

 

  • 合計1,000万再生以上を記録した動画は20作
  • 楽曲1位の「Dynamite」は多くの公式動画が注目を集めており、Official MV合計1.1億再生で全MV中でも1位となっているほか、FNS歌謡祭出演動画合計2,600万再生B-side MV合計1,700万再生Choreography MV合計1,400万再生America's Got Talent出演動画合計1,300万再生CDTVライブ!ライブ!特番出演動画合計1,100万再生を記録している。これらの動画が楽曲ランキングにおける合計4.1億再生の主要割合を占めている。なお合計1,000万再生未満のMVの中にも多くの公式動画が存在している。
  • 楽曲2位の「Butter」も多くの公式動画が注目を集めており、Official MV合計8,700万再生Choreography MV合計4,600万再生Billboard Music Awards出演動画合計1,300万再生Hotter Remix MV合計1,100万再生を記録している。これらの動画が楽曲ランキングにおける合計3.4億再生の主要割合を占めている。なお合計1,000万再生未満のMVの中にも多くの公式動画が存在している。
  • 楽曲3位の「Permission to Dance」Official MV合計6,900万再生音楽の日 2021出演動画合計1,300万再生を記録している。

 

例えば再生回数1,000万未満の動画も含めた「Dynamite」の動画別構成割合を示した円グラフを見れば、公式動画の多さを一目で把握することができる。

 

 

以上のことから、BTSは各曲につきOfficial MVだけでなくそこから派生させた数多くの公式動画やメディア出演動画を惜しみなく投稿したことでファンを飽きさせずYouTubeにおけるプレゼンスを高めていたことが分かる。この施策は遅ればせながら日本のダンス&ボーカルグループでも徐々に取り入れられてきており、各曲の人気を最大化させるうえで重要となっている。

 

楽曲ランキング及びMVランキングで何れも自身1位となった「Dynamite」は2020年8月に全世界に配信されたシングル。この曲は当時新型コロナウィルスの流行で落ち込みがちだった世相を元気づけてくれるようなポジティブなダンスナンバーとして人気を博した。自身初の全英詩曲であるこの曲はアメリカでも受け入れられ、Billboard Hot 100でアジア圏のアーティストとしては坂本九以来57年ぶりの週間1位を獲得した。日本でもこの快挙が大きく話題になる等して特大ヒットの軌道に乗り、BTSの大ブレイクをもたらした。

 

なお本曲はオールタイムの日本国内累計でオーディオストリーミング8.7億再生も突破しており、これも自身最多記録となっている。

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Billboard JAPAN Hot 100の年間では2020年18位→2021年2位→2022年14位→2023年86位と推移している。


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2位 米津玄師

 

2位は累計35.9億再生を記録している米津玄師。2013年にデビューした男性ソロアーティストである。同ランキングにおける週間1位獲得数でも通算83週1位を記録しており、これらは国内アーティスト歴代1位である。総合アーティスト人気チャートBillboard JAPAN Artist 100では2017年10位→2018年1位→2019年2位→2020年2位→2021年10位、2023年8位を記録した。

 

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国内アーティストに関しては、基本的に各動画に表示される視聴回数をそのまま国内MV再生回数として扱って支障はない(無論海外からの再生回数も何割かは含まれるが、比較するうえでの順位や比率に大きな誤差は生じないと考える)。その中にあって、米津玄師の代表曲「Lemon」MV8億再生を突破しており、この記録は国内MVでは歴代1位である。

 

 

このランキングに関しては以下別記事で詳述している。

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この国内アーティスト全体の歴代MV再生回数ランキングから、再生回数3,000万以上の米津玄師のMVを抽出したランキングは以下のとおり。これまでに31作のMVが3,000万再生を突破している。なお、このデータは2023/12/31までオールタイム集計であるため、2018/4/27以降の集計となっているYouTube週間アーティストランキングとは累計規模が一致しない。

 

 

このデータを構成割合で示した円グラフは以下のとおり。

 

 

このランキングを含む米津玄師の楽曲人気データは以下別記事で詳述している。

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「Lemon」は、他界した祖父への想いをベースに「死」をテーマに制作された一曲。タイアップ先のドラマ「アンナチュラル」の内容ともリンクしていたことや、2018年末の紅白歌合戦での披露が大きな話題となったことで歴史的ヒットとなり、米津玄師の名を全国に知らしめた。

 

なお本曲はフル配信ダウンロード売上でもトリプルミリオンを突破しており、これは歴代で3曲目となる大偉業であった。

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その他、オーディオストリーミング3億再生も突破している。Billboard JAPAN Hot 100では2018年1位→2019年1位→2020年17位→2021年47位→2022年73位→2023年73位と推移しており、2年連続年間1位を記録する大偉業を成し遂げた。


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3位 TWICE

 

3位は累計32.4億再生を記録しているTWICE。2017年に日本デビューした女性7人組K-POPダンス&ボーカルグループである。TWICEもグローバルに活躍しているが、BTS同様日本での人気も飛び抜けており、同ランキングにおける週間TOP10ランクイン数286週歴代最多記録である。総合アーティスト人気チャートBillboard JAPAN Artist 100では2017年3位→2018年2位→2019年5位→2020年9位と推移した。

 

ここではこの32.4億という大規模な累計動画再生回数がどの楽曲によってどれほど稼がれて築かれたものなのか、BTSと同様の手法で深堀りする。YouTube週間楽曲ランキングの日本国内週間再生回数を歴代集計したデータから再生回数1,000万以上のTWICEの楽曲を抽出したランキングは以下のとおり。

 

 

この表からはまず以下の点が読み取れる。

 

  • 合計1,000万再生以上を記録した楽曲は29曲
  • 1位は合計1.2億再生を記録した「The Feels」自身最多となる通算3週1位・週間1,100万再生を記録した。
  • 2位は合計8,200万再生・週間1位獲得数1週を記録した「Feel Special」合計7,800万再生を記録した「I CAN'T STOP ME」が3位に続いている。

 

目を引くのは上位ランクイン曲のアベレージの高さであり、合計1,000万再生以上を記録した曲に限ればその数はBTSをも上回っている。日本語曲・韓国語曲・英語曲万遍なくランクインさせており、多くの楽曲で日本国内の支持を得ていることが分かる。再生回数1,000万未満の楽曲も含めた楽曲別構成割合を示した以下円グラフにもその多様性が表れている。

 

 

次に、各曲の再生回数がどのような動画再生回数の内訳で築かれたのか深掘りする。YouTube週間MVランキングの週間再生回数を歴代集計したデータから再生回数1,000万以上のTWICEの公式動画を抽出したランキングは以下のとおり。

 

 

この表からは以下の点が読み取れる。

 

  • 合計1,000万再生以上を記録した動画は27作
  • 楽曲ランキングとは1位が入れ替わっており、こちらでは2位とは僅差ながらも「Feel Special」Official MV合計4,460万再生で1位となっている。
  • 「The Feels」Official MV合計4,400万再生で2位となっているが、Choreography MV合計2,200万再生を記録し11位に入っており、楽曲ランキング1位は複数の動画に注目が集まったことを決め手としていることが分かる。

 

BTSのMV再生回数ランキングでは代表曲の派生公式動画の上位進出が目立っていたが、TWICEの場合はOfficial MV以外で合計1,000万再生を記録した公式動画は「The Feels」のChoreography MVのみである。無論、合計1,000万再生未満のMVの中にはこうした派生公式動画も数多く存在しているが、やはり上位ランクイン動画のアベレージの高さが特徴と言える。

 

再生回数1,000万未満の動画も含めた「The Feels」の動画別構成割合を示した円グラフは以下のとおり。BTS「Dynamite」のそれと比べれば、Official MVがより大きな比重を得ており、構成要素の中心となっていることが分かる。

 

 

Official MVの中で日本国内再生回数自身最多となった「Feel Special」は2019年に配信された韓国8thミニアルバムのリード曲。この曲は、例え逆境に遭っても味方となってくれる人がいるからこそ自分らしく輝けることを描いた歌詞が特に強く支持された。ファンとの絆を描いた歌詞としての解釈はファンのロイヤリティを高めたほか、自分事に置き換えて解釈することもできたことで多くの人を鼓舞した。

 

なお本曲はオールタイムの日本国内累計でオーディオストリーミング2.5億再生も突破しており、これも自身最多記録となっている。

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4位 YOASOBI

 

4位は累計28.2億再生を記録しているYOASOBI。2019年にデビューした2人組男女混合(女性ボーカル)ユニットである。同ランキングにおける週間1位獲得数では通算32週1位を記録している。総合アーティスト人気チャートBillboard JAPAN Artist 100では2020年8位→2021年2位→2022年2位→2023年1位と推移している。

 

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YOASOBIの楽曲人気データは以下別記事で詳述している。

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自身MV再生回数1位となっている「アイドル」は公開から所要35日でMV1億再生所要77日でMV2億再生所要142日でMV3億再生所要263日でMV4億再生を突破している。これらは何れも従来記録を大幅更新する歴代最速記録である。

 

2023年に配信された本曲はアニメ「推しの子」主題歌として制作された。本曲のMVはアニメを制作する動画工房が直接手掛けたことで精巧緻密なアニメーションムービーに仕上がっており、歌詞も含めた「推しの子」とのリンクの強さは爆発的な話題性を生み出した。楽曲もそれまでのYOASOBIにない新境地と言えるような内容で、癖になるikuraの歌唱表現や、コーラス・掛け声等多くの要素を取り入れめまぐるしく変化する楽曲構成が強い中毒性を有していた。

 

なお本曲はオーディオストリーミング6億再生史上最速で突破している。こうした数々の歴史的楽曲人気動向から、Billboard JAPAN Hot 100では文句なしで2023年の年間1位に輝いた。


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5位 Official髭男dism

 

5位は累計28.1億再生を記録しているOfficial髭男dism。2018年にデビューした4人組男性バンドである。同ランキングにおける週間1位獲得数では通算43週1位を記録している。総合アーティスト人気チャートBillboard JAPAN Artist 100では2019年3位→2020年1位→2021年3位→2022年3位→2023年3位と推移している。

 

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Official髭男dismの楽曲人気データは以下別記事で詳述している。

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自身MV再生回数1位の「Pretender」は国内史上3曲しか達成していないMV5億再生突破を果たしている。本曲は映画「コンフィデンスマンJP -ロマンス編-」主題歌に起用された切ないラブソングで、印象的な韻を踏むメロディーや共感性の高い歌詞が支持されたことや、映画が興行収入29億円を記録する人気となったことなどから特大ヒットとなった。

 

なお本曲はフル配信ダウンロードミリオン、オーディオストリーミング8.5億再生も突破している。Billboard JAPAN Hot 100年間でも2019年3位→2020年2位→2021年20位→2022年26位→2023年44位と推移している。


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まとめ

 

冒頭でも述べたとおり、日本国内のMV再生回数を外部から100%の精度でオールタイム集計することは困難であり、どうしても様々な制約のあるYouTubeのデータを基に妥協点を見出しながら推定していくことになる。よってここで用いたアプローチと結果が絶対であると言うつもりはない。異なるアプローチを用いれば歴代順位が変動することも十分あり得ると思われる。それでも致命的な規模の順位変動や抜け漏れ等は無いであろうとの考えのもと、一例として作成し提示した次第である。

 

このデータは令和時代突入直前から現在に至るまでに大きな人気を獲得していたアーティストを可視化できていると考えられ、オーディオストリーミング再生回数ランキングと併せて見れば更に高精度でそれを実現できる。更に以下ダウンロード売上データを併せて参照すれば、音楽配信の時代に突入した2006年以降今に至るまでに人気を博した主要アーティストを押さえることができる。

 

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今後も動画ストリーミングはオーディオストリーミングとともに音楽の聴き方の主流に君臨する見込みであるため、YouTube再生回数を稼ぐ大人気アーティストは今後ますます増えていくものと思われる。流行を追ううえでこれらの再生回数の重要性は非常に高く、市場動向も含め今後の動きからも目を離すことはできない。