この記事では2024年上半期のヒット曲をBillboard JAPANを通じて振り返る。
Billboard JAPAN Hot 100の2024年上半期TOP20は以下のとおりとなった。

Billboard JAPAN 2024年上半期チャート発表、Creepy Nuts/SixTONES/Mrs. GREEN APPLEが首位 https://t.co/MwpEwxAOkf
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2024年6月6日
HOT 100
2024年上半期TOP5
Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」
1位はCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」。
Creepy NutsはR-指定とDJ松永により結成され2017年にデビューしたヒップホップユニットであり、これまでにも「のびしろ」がストリーミング1億再生を記録するなどのヒット実績を残す活躍を見せていた。
2024年1月に配信された「Bling-Bang-Bang-Born」は、アニメ『マッシュル-MASHLE-』第2期「神覚者候補選抜試験編」の主題歌として書き下ろされた楽曲。高速ビートに乗せて淀みなく展開される小気味よいラップや、タイトルを呪文のように繰り返すサビが中毒性のある仕様となっている。このリズムに合わせて踊るBBBBダンスがTikTok等を介して瞬く間に国内外で大流行したこともあり、本曲は自身どころか日本音楽業界の歴史上でもトップクラスの楽曲人気を獲得した。
本曲は国外での人気が国内に先んじて沸騰していたことがデータから明らかになっている。国内楽曲の国外人気を計るBillboard JAPANのチャートGlobal Japan Songs Excl. Japanでは、配信2週目の1/12~1/18を集計期間とする週間チャートで早くも1位に浮上。そこで記録された国外ストリーミング再生数1,214万回は、同時期の1/15~1/21に記録された国内ストリーミング再生数894万回よりも多かった。
その後瞬く間に国内人気も国外人気に相応する歴史的規模に膨れ上がり、登場5週目にはBTS「Butter」、Official髭男dism「Subtitle」、YOASOBI「アイドル」に続く史上4曲目となるストリーミング週間2,000万再生超えを達成した。
3月に満を持してアニメとコラボしたMVが公開されると楽曲人気はピークとなり、この人気が波及していく形でSpotifyデイリーチャートでは歴代最多記録となるデイリー再生数74.6万回を3/16付で記録。従来YOASOBI「アイドル」が保持していた歴代最多記録68.3万回を更新した。

こうした歴史的楽曲人気が反映される形でHot 100では通算16週1位を記録。これはYOASOBI「アイドル」に次ぐ1位獲得週数歴代2位記録となる。

各指標の累計はストリーミング3.4億再生、MV1.6億再生、フル配信10万ダウンロードを突破しており、特にストリーミング・MV再生回数は歴代屈指のスピードで伸び続けている。この先の記録更新にも期待がかかっており、その推移から目を離すことはできない。
tuki.「晩餐歌」
2位はtuki.「晩餐歌」。
tuki.はまだ中学生だった2023年からオリジナル曲の配信を始めた女性ソロシンガーソングライターである。「晩餐歌」はその最初のオリジナル曲として2023年9月に配信された。その前の7月よりTikTokでは同曲の一部を小出しに公開していく手法で話題性を高めており、繊細さと力強さが同居したような非凡な歌声と印象的なサビメロは早くから注目されていた。各DSPで配信されると瞬く間に週間チャート上位進出を果たし、ロングヒットモードに突入した。
YouTubeでは楽曲配信の数週前より弾き語りver.が公開されており、この動画がTikTokで先行していた話題性をさらに増幅させるとともに、流麗なメロディーが訴求する形でリスナーによるUGC投稿も活発化させた。2023年11月には優里とコラボしたacoustic ver.が、同年12月には出水ぽすかがアニメーションを手掛けたOfficial Music Videoが公開されている。
2024年1月には、2024年に躍進を期待するアーティスト10組を選出するSpotifyのプログラム「RADAR: Early Noise 2024」に選ばれたことで注目度と楽曲人気が一段高となり、このタイミングで自身初のHot 100総合1位に上り詰めた。またストリーミング2.2億再生も突破しており、弱冠15歳にして数々のソロアーティスト史上最年少記録を更新し続けている。
YOASOBI「アイドル」
3位はYOASOBI「アイドル」。
この曲はアニメ『推しの子』主題歌として制作され、2023年4月に配信された。アニメの内容に即してめまぐるしく変化する楽曲展開、アニメを制作する動画工房が直接手掛けた精巧緻密なアニメMV、癖になるikuraの歌唱表現等、YOASOBIにとって新境地と言えるような数多くの魅力的な要素によって強く支持された本曲は歴史的人気を獲得し、Hot 100では2023年の年間1位を獲得した。
当年度においても2023年末の紅白歌合戦での披露における演出が大きな話題となったこと等により、2024/1/17公開週では4ヶ月ぶりとなる返り咲き1位を獲得し、1位獲得週数歴代最多記録となる通算22週目の1位を獲得。引き続き歴史的楽曲人気動向を見せたことで上半期3位にランクインした。各指標の累計はストリーミング7億再生、MV4.8億再生、フル配信50万ダウンロードにまで伸びており、特にMV・ストリーミング再生回数は今なお歴代最速ペースで伸び続けている。
Ado「唱」
4位はAdo「唱」。
本曲はユニバーサル・スタジオ・ジャパンのハロウィンショーイベント「ゾンビ・デ・ダンス」の主題歌として2023年9月に配信された。作詞はFAKE TYPE.のTOPHAMHAT-KYO、作曲・編曲はGigaとTeddyLoidが務めており、これまでAdoにしか歌いこなせないような高難度人気曲「踊」等を輩出してきたクリエイターによる再タッグが話題となった。その期待に違わず本曲はやはり非凡な内容となっており、縦横無尽に飛び跳ねながらも要所を締めるようなメロディーラインとEDMサウンドや、サビのキャッチーな振付けが多くの視聴者を虜にした。
Hot 100では年度跨ぎで独走状態となり、自身最多記録となる通算13週1位を獲得。各指標においては自身最速記録でストリーミング3億再生、MV1.6億再生、フル配信25万ダウンロードを突破した。
Mrs. GREEN APPLE「ケセラセラ」
5位はMrs. GREEN APPLE「ケセラセラ」。
本曲は2023年4月に配信され、ドラマ『日曜の夜ぐらいは…』の主題歌に起用された。「なるようになるさ」という意味を持つタイトルのとおり、懸命に日々を生きる人々の背中を後押しする人生応援歌となっており、ラスサビに向かって盛り上がる楽曲構成も心強さを感じさせてくれる仕上がりになっている。
当年度においては2023年の日本レコード大賞を受賞したことが大きな話題となったことで、2024年1月に約4ヶ月ぶりにTOP10返り咲きを果たしたほか、この曲の最高位タイである4位を2週記録するなど、配信開始時以来となる新たな楽曲人気のピークが創出された。各指標の累計はストリーミング3億再生、MV5,000万再生を突破している。
週間1位結果の健全性確認
2024年上半期TOP20ランクイン曲の年度内週間1位獲得数は以下のとおり。
- 4週 Ado「唱」(通算では13週1位)
- 1週 Number_i「GOAT」
- 1週 YOASOBI「アイドル」(通算では22週1位)
- 1週 tuki.「晩餐歌」
- 16週 Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」
上半期TOP20ランクイン曲が全て十分な楽曲人気を有していたことに疑義は無い中、全26週中23週の1位結果が上半期TOP20結果とリンクしていることから、週間結果と上半期結果の健全な相関性が確認されている。*1
HOT Albums
2024年のBillboard JAPAN Hot Albums上半期チャートは、以下二点の問題が発生中であるため、ここでは紹介しない。
CD偏重問題
CD偏重問題とは、CD売上を過剰重視するヒットチャート設計となることによってチャートが本来持っていたはずの作品人気指標としての機能が失われることを指すが、現在はアルバムチャートにおいてそれが本格的に顕在化している。詳細は以下記事で説明している。
こうしてアルバムチャートが作品人気指標として使用できなくなった以上、作品人気動向を追っている当ブログにおいては、今後チャート設計変更等の変化が無い限り、アルバムチャートの結果発信は原則行わない。
旧ジャニーズ問題
また、上記CD偏重チャート設計の影響で、ここ数年は上半期・年間アルバムチャート1位を旧ジャニーズ事務所提供コンテンツが占拠する状態となっているが、旧ジャニーズ事務所は2023年以降、重大な社会問題を顕在化させている。事務所前社長ジャニー喜多川氏(故)や事務所スタッフ2名によるタレントへの性加害である。
この問題は紆余曲折を経ながらも事務所が性加害の事実を認め謝罪し、被害者への補償を徐々に始めているが、その被害規模は想像を絶するものとなっている。さらにその補償に際しては、被害者へのケアや誹謗中傷対策が不十分であるとの批判も噴出している。
こうした国連等からの批判を受け、SMILE-UP.は2024/5/30に被害者への誹謗中傷に対する声明を発表。ここでは『被害者の皆様及びその御家族に対する誹謗中傷が終息するまでは被害者救済は終わらない』との認識が表明されている。
また、今後の経営体制に関しては、旧ジャニーズ事務所はSMILE-UP.に名称変更し補償会社としての役割に専念するとともに、タレントのマネジメントを担う新会社STARTO ENTERTAINMENTをそこから独立した形で発足させることが昨年の記者会見で説明されており、今年4月よりSMILE-UP.所属タレントはSTARTO ENTERTAINMENTへ移籍し、新体制が本格始動した。しかし、未だファンクラブビジネスがSMILE-UP.から切り離されておらず、知財所有権の行方も不透明であり、記者会見で宣言した内容が本当に実行されるのか不透明な状況が続いている。
このような状況から、NHKやテレビ東京では今なおSTARTO ENTERTAINMENT所属タレントの新規起用を見合わせている。
当ブログにおいても、これまでにも説明してきたスタンスを継続し、STARTO ENTERTAINMENTが提供するコンテンツのチャート動向発信を当面の間見合わせる。
なおBillboard JAPANは本件に関連して、以下インタビュー記事を通じて圧力や忖度のないチャート作成を宣言するという非常に重要な発信を行っている。
TOP Artists
2024年上半期TOP20は以下のとおりとなった。

1位はMrs. GREEN APPLE。上半期Hot 100には5位に「ケセラセラ」、13位に「ダンスホール」、18位に「Soranji」、20位に「Magic」、25位に「青と夏」、28位に「ナハトムジーク」、33位に「ライラック」、35位に「点描の唄 feat.井上苑子」、41位に「インフェルノ」、52位に「僕のこと」、82位に「私は最強」、83位に「ブルーアンビエンス (feat.asmi)」、95位に「ロマンチシズム」、99位に「ANTENNA」と、実に14曲もの楽曲をランクインさせ、これらのポイントが牽引する形での1位獲得となった。
Mrs. GREEN APPLE「ナハトムジーク」
このうち2024年配信曲中最高順位となっている「ナハトムジーク」はストリーミング5,000万再生を突破している。本曲は映画『サイレントラブ』主題歌として書き下ろされた渾身のバラードナンバー。不器用ながらも深い愛情が美しいサウンドで表現されており、"ミセス史上最も美しいMV"とともに、大森元貴の繊細なファルセットが駆使されたメロディーに浸ることができる仕上がりとなっている。
まとめ
以上がBillboard JAPANを用いた2024年上半期のヒットシーンの振り返りである。上半期だけでも多くの新たなヒット曲が浮上しており、Billboard JAPAN上半期チャートを通じてそれらを把握することができた。下半期にかけてこのヒットチャートがどのように変動するのか、引き続き要注目である。
(追記)年間チャート結果が公表されたため、結果分析記事をアップしている。
(前年2023年のヒットシーン振り返り記事はこちら↓)
*1:なお残りの3週は全て楽曲人気ではなくアーティスト人気を主因とした1位結果であったが、該当週で1位となった3曲中2曲によって「1位→TOP10圏外」という急落推移が記録されており、うち1曲は「1位→43位」という急落幅であった。週間1位結果のヒットソングチャートとしての健全性を毀損する要因となり得る本推移の発生状況は引き続き注視していく必要がある。