この記事では、フィジカル指標(主にCD売上)とデジタル指標(ダウンロード売上やストリーミング再生回数)で票割れを起こした大ヒット曲を歴代ランキング化し、集中的にピックアップする。
先にランキング結果を示すと、TOP40は以下のとおりとなった。

概要と定義
基本的には、CD売上やフル配信ダウンロード売上の大ヒット基準はミリオンである。これに相当するMV再生回数やストリーミング再生回数は、日本レコード協会の認定基準を参考にすれば5億再生であるが、世間的には分かりやすさの観点から1億再生を目安に用いることが多い。
しかし、これらの指標は市場の移り変わりによって全体規模の盛衰があるため、指標別に見ていると、市場移行期に発売された大ヒット曲には光が当たりにくくなってしまう。例えばCD市場からダウンロード市場へ消費者の楽曲購入動向が移行していた2000年代半ばに発売された楽曲は、CD市場衰退によってCDミリオン到達が困難となっていた一方、ダウンロード市場も黎明期だったためやはりフル配信ダウンロードミリオン到達が困難であった。結果的に、例えばCD75万枚+フル配信75万ダウンロードで合計150万人が購入したミリオン級の大ヒット曲が、「CDミリオンヒット曲特集」「配信ミリオンヒット曲特集」といった企画の何れからも漏れてしまう。
この問題意識から、ここでは「CDシングルミリオン・フル配信ダウンロードミリオン・MV1億再生・ストリーミング1億再生何れも未達となっているが、合計すればミリオン相当になっている大ヒット曲」を抽出し、歴代ランキング化した。
各指標の「大ヒット」の定義については以下記事で詳述している。
集計期間や指標間の換算式については以下記事をベースとしており、後者は「CDシングル10万枚=着うた50万ダウンロード=フル配信10万ダウンロード=MV・ストリーミング5,000万再生」としている。
当ブログで特集した指標別歴代ランキング記事のリンクも以下に並べた。
なお、フル配信ではない楽曲切り売り形式の着うたダウンロード売上に関しては、市場全盛当時こそ「ミリオン」が大ヒットの証明であるかのごとく宣伝文句として飛び交ったが、実際には楽曲切り売り形式である以上、着うた1ダウンロードはCD売上1枚やフル配信1ダウンロードよりも価値が低かったうえ、着うた市場全盛期間が短かったことで、世間一般のコンセンサスとしても「着うたミリオン=大ヒット」の図式が定着することはなかった。よって当ブログでは着うた売上だけを以て大ヒット曲として扱ってはおらず、この記事でも着うたミリオン以上達成曲を含めて構成している。
上位曲ピックアップ
EXILE「ただ・・・逢いたくて」
1位となったのはEXILE「ただ・・・逢いたくて」。その売上はCD56万枚、フル配信75万ダウンロードとなっており、綺麗に票割れした。他指標でも着うた100万ダウンロード、ストリーミング5,000万再生を記録している。これらをポイント化し合計すればセールス161万相当となる。
本曲はau『LISMO』CMソングに起用された珠玉のウィンターラブバラードとして大ヒットした。なお本曲はATSUSHIとSHUNがボーカルだったEXILE第一章の時期の楽曲であるが、YouTubeに公開されているMVは第二章で撮り直したバージョンの短尺版となっている。
柴咲コウ「かたち あるもの」
「かたち あるもの」は2004年に発売された柴咲コウの6thシングル。CD63万枚、フル配信35万ダウンロード、着うた100万ダウンロード、ストリーミング5,000万再生、MV3,000万再生を記録した。これらをポイント化し合計すればセールス134万相当となる。サウンドスキャン年間シングルチャートでは2004年の5位を記録した。
柴咲コウは2003年にもRUI名義で発売した「月のしずく」がCD83万枚、フル配信25万ダウンロード、着うた50万ダウンロードを記録しており、CD売上だけで見れば「月のしずく」が自身最大売上だが、当ブログの換算式でこれらをポイント化し合計するとセールス118万相当となり、「かたち あるもの」が上回っている。
本曲は最高視聴率19%を記録したドラマ『世界の中心で、愛をさけぶ』の主題歌に起用されたことで普及した。元々このドラマは青春恋愛小説が原作となっており、この小説に柴咲コウが寄せた書評が帯に載ったことがベストセラー化のきっかけの一つとなり、ドラマに先立って映画化された際は柴咲コウ自らヒロインを務めるなど、縁が深い作品である。それもあって、落ち着きのある中でも感情のこもった歌唱は一際リスナーの胸に迫るものがあった。
平原綾香「Jupiter」
「Jupiter」は2003年に発売された平原綾香のデビュー曲。CD92万枚、フル配信20万ダウンロード、着うた100万ダウンロードを売り上げた。これらをポイント化し合計すればセールス132万相当となる。サウンドスキャン年間シングルチャートでは2004年の4位を記録した。
この曲はクラシック音楽として有名な組曲『惑星』の第4楽章「木星」の第4主題に歌詞をつけたもので、傷ついた人に寄り添う深い愛が描かれている。荘厳雄大な旋律と当時10代だったとは思えない平原綾香の堂々とした歌唱によって届けられた歌詞は多くのリスナーの胸を打った。
椎名林檎「本能」
「本能」は1999年に発売された椎名林檎の27thシングル。CD99万枚、フル配信10万ダウンロード、MV4,000万再生、ストリーミング5,000万再生を記録した。これらをポイント化し合計すればセールス129万相当となる。ダウンロード売上は2006年の解禁以降で積み上げられたものであり、息の長い人気が窺える。
1stオリジナルアルバム『無罪モラトリアム』がロングヒット中に発売された本曲は大きな注目を集め、MVでナース姿の本人がガラスを叩き割るシーンなど前衛的な楽曲内容が話題となり、自身最大のヒットを記録するに至った。
酒井法子「碧いうさぎ」
「碧いうさぎ」は1995年に発売された酒井法子の27thシングル。CD99万枚、フル配信25万ダウンロードを売り上げており、合計セールスは124万となる。ダウンロード売上は2004年の解禁から17年かけて積み上げ2021年に認定を受けたものであり、息の長い人気が窺える。
本曲は、自身が主演を務め、最高視聴率23%を記録した大人気ドラマ『星の金貨』主題歌に起用されたことで普及し、自身最大売上を記録した。ドラマは聴覚障害を持つ主人公の悲恋を描いており、歌詞もそれに沿った内容となっているほか、MVや紅白歌合戦での手話を交えた歌唱も話題となった。作曲を手掛けた織田哲郎のメロディーラインと酒井法子の透き通った歌声もマッチしていた。
一青窈「ハナミズキ」
「ハナミズキ」は2004年に発売された一青窈の5thシングル。各指標の累計はCD41万枚、フル配信35万ダウンロード、着うた100万ダウンロード、MV9,000万再生、ストリーミング5,000万再生を記録した。これらをポイント化し合計すればセールス124万相当となる。本曲も特筆すべきロングセラーとなり、サウンドスキャン年間シングルチャートでは2004年19位→2005年89位と推移した。カラオケでは一際歴史的な人気となり、DAMが2023年に発表した30年間の歴代ランキングでは1位を獲得した。
こうした記録からも推し量れるとおり、本曲は極めて普遍性の高いスタンダードなバラードナンバーであるが、米同時多発テロ発生時ニューヨークにいた友人の無事を案じながら描いた歌詞には大切な人の末永い幸せを望む想いが反映されており、「君と好きな人が百年続きますように」という愛情溢れる表現と歌唱が多くのリスナーの心を打った。
夏川りみ「涙そうそう」
「涙そうそう」は2001年に発売された夏川りみの3rdシングル。森山良子が1998年に発表した同名曲のカバーである。各指標の累計はCD68万枚、フル配信35万ダウンロード、着うた75万ダウンロードを記録した。これらをポイント化し合計すればセールス118万相当となる。沖縄を発信源にして徐々に楽曲人気が普及していった本曲は類稀なロングセラーとなり、サウンドスキャン年間シングルチャートでは2002年53位→2003年15位→2004年55位と推移し3年連続年間TOP100入りを達成した。
本曲は作曲を手掛けたBEGINによる優しいメロディーと沖縄のサウンド、作詞を手掛けた森山良子による早世した兄への想いを描いた泣きの歌詞が元となっている。2000年に行われた沖縄サミットでBEGINのセルフカバーを偶然聴いた夏川りみがカバーを熱望したことで誕生した本曲は、夏川りみの情感溢れる澄み渡った歌声によって多くのリスナーの心に響き、伝播していった。
Kiroro「未来へ」
「未来へ」は1998年に発売されたKiroroの2ndシングル。CD58万枚、フル配信50万ダウンロードを売り上げており、合計セールスは108万となる。ダウンロード売上は2002年の解禁以降で約16年かけて積み上げられたものであり、息の長い人気が窺える。
本曲は当時ノンタイアップだったが、卒業シーズンにぴったりな普遍性の高いバラードナンバーとして支持された。今でも合唱曲として採用される機会が多く、それも世代を超えた売上推移になっていることの一因となっている。
藤井フミヤ「Another Orion」
「Another Orion」は1996年に発売された藤井フミヤの10thシングル。CD98万枚、フル配信10万ダウンロードを売り上げており、合計セールスは108万となる。ダウンロード売上は2005年の解禁以降で積み上げられたものであり、息の長い人気が窺える。
本曲はドラマ『硝子のかけらたち』主題歌として普及した珠玉のバラードナンバー。少ない音数で歌声に浸ることができ、美しい夜空が思い浮かぶような楽曲になっている。大切な人との別れを意味のあるものとして描いた歌詞もドラマティックな世界観に誘った。
小泉今日子「優しい雨」
「優しい雨」は1993年に発売された小泉今日子の34thシングル。CD95万枚、フル配信10万ダウンロードを売り上げており、合計セールスは105万となる。ダウンロード売上は2008年の解禁以降で積み上げられたものであり、息の長い人気が窺える。
本曲は自身もヒロインとして出演した恋愛ドラマ『愛するということ』主題歌。歌詞もこれに沿ったドラマティックな内容になっており、ドラマとともに多くの女性の共感を集めた。曲調はしっとりとしたバラードとなっており、クールに抑えた歌唱は直感と理性の間で揺らぐ内なる心情から出る吐息を思わせるものとなっている。
41位以下
ここでは41位以下、セールス100万以上に相当するポイントを記録している53位までの楽曲を並べた。
41 「HOT LIMIT」 T.M.Revolution
42 「evolution」 浜崎 あゆみ
43 「刹那」 GReeeeN
44 「Good-bye days」 YUI
45 「夏を抱きしめて」 TUBE
46 「慟哭」 工藤 静香
47 「LIFE」 中島 美嘉
48 「Moon Crying」 倖田 來未
49 「渚」 スピッツ
50 「Share The World」 東方神起
51 「Lifetime Respect -女編-」 RSP
52 「Over Drive」 JUDY AND MARY
53 「たしかなこと」 小田 和正
その他
以下アーティストの楽曲についてはそれぞれの個別記事内で言及しているため、リンクをあいうえお順に並べた。
また、以下の楽曲については別記事で言及している。
- オゾン「恋のマイアヒ」
- I WiSH「明日への扉」
- BENNIE K「Dreamland」
- Whiteberry「夏祭り」
- Crystal Kay「恋におちたら」
- 遊助「ひまわり」
まとめ
以上がフィジカル指標とデジタル指標で票割れを起こした大ヒット曲のピックアップとなる。
こうして該当曲に注目してみれば、例え一指標だけを見るとミリオンセールスに達していなくとも、それに全く遜色しない十分な知名度を有している楽曲ばかりであることが分かる。TVのクイズ番組などで該当曲の一指標のみの売上記録が紹介された際の視聴者の第一印象として「こんな有名な曲がミリオンに達していないのは意外だ」という感想が出ることは多い。しかし、繰り返しになるが、これは一つの指標にしか注目していないがゆえに出力されている数字に過ぎず、総合的な楽曲人気を過小評価してはならない。該当曲が総合的に見ればミリオンセールス級の数字・人気となっていることを本記事から読み取っていただければ幸いである。