YUIは2005年に「feel my soul」でデビューした女性ソロシンガーソングライター。すぐにブレイクを果たし、ソロ活動を休止する2012年までヒット曲を大量輩出していた。現在はバンドFLOWER FLOWERのボーカルとして活動しているが、ここではソロ時代の活躍を振り返る。日本レコード協会によれば、ダウンロード売上10万以上を記録した曲は16曲で、認定総ダウンロード売上は460万(歴代20位)となっている。これらのデータをランキング化した表は以下のとおりである。この表をもとにしながら、YUIのヒット史を振り返る。
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上表を発売日順に並べたダウンロード売上データは以下のとおり。
2005年-2008年
YUIは学生の頃より強い思いで歌手を志し、高校を中退して地元福岡の音楽塾ヴォイスに通っていた。この塾は音楽プロデューサー西尾芳彦が主宰し、「三日月」が配信ダブルミリオンの特大ヒットとなった絢香を輩出したことでも有名である。
17歳の頃にソニーミュージックグループのSDオーディションに応募し、最終審査まで残ったことで、レーベル間の争奪戦の末デビューが決定。デビュー曲「feel my soul」はいきなり最高視聴率18.2%を記録したドラマ「不機嫌なジーン」の主題歌に抜擢されたこともあり、CDで10万枚をセールスして早々のブレイクを果たした。
ただ、この曲が発売された2005年2月はまだ配信市場が本格的に拡大する前だったので、CDでの売上がメインとなり、配信売上認定は受けていない。
配信日順で初めて配信売上認定を受けた曲は、2005年11月に発売された3rdシングル「LIFE」。人気アニメ「BLEACH」のエンディングテーマに起用されたこともあり、10万ダウンロードを記録した。
2006年2月には1stオリジナルアルバム『FROM ME TO YOU』を発売。後述する人気拡大に沿う形で売れ続け、登場週数は121週を数え、累計29万枚をセールスした。
配信2位「Good-bye days」
2006年6月には一つ抜けたヒット曲が誕生した。YUI for 雨音薫名義で発売された5thシングル表題曲「Good-bye days」は映画「タイヨウのうた」主題歌に起用され、配信60万ダウンロード、CD24万枚を売り上げた。
この映画はYUI本人が主演を務めており、雨音薫とは主演の役名である。内容は難病である色素性乾皮症(XP)のため太陽の光を浴びることができない音楽好きの少女・雨音薫が、友人・家族・恋人に支えられながら、夜間の路上弾き語りライブ活動を通じて前向きに生きるさまを描写したものになっている。
役者経験はほぼ0だったYUIだが、元々高校を中退して音楽の道へ進むことを決意するなど人一倍音楽に懸ける強い思いがあり、その思いを楽曲に反映させていた。映画では雨音薫として「Good-bye days」などの自身の楽曲を演奏するシーンが随所に描かれたが、元々説得力を有していた楽曲と、雨音薫の境遇や心情が見事にシンクロし、多くの観客の感情移入を誘った。映画は中規模公開作品としては大ヒットとなる興行収入10億円を記録した。
正に魂の込められた楽曲に多くのリスナーが心を打たれる形でのヒットとなった。配信では自身2位の売上だが、CDでは自身1位の売上を記録していることや、映画での強い印象から、しばしば代表曲として扱われている。
YUI 『Good-bye days-short ver.-』
配信3位「Rolling star」
2007年1月には7thシングル「Rolling star」を発売。表題曲は「LIFE」に続き人気アニメ「BLEACH」オープニングテーマに起用されたこともあり、配信50万ダウンロード、CD16万枚を売り上げるヒットを飛ばした。
これまでのYUIの楽曲は、アコースティックギターによるスローテンポな弾き語り調のサウンドで制作されたものが多かったが、「Rolling star」はシングルCD表題曲としては初めてエレキギターによるテンポの速いロックサウンドを展開した応援歌となった。既存のイメージを変えるような楽曲だったが、歌詞などに込められた説得力は変わっておらず、多くの共感を生み支持を集めた。
MVやCDジャケットで用いられた赤いエレキギターも本曲のアイデンティティとなり、同ギターが同じ音楽を志す女性の間でブームとなる現象も発生した。
CD売上チャートでは、GLAY、EXILE、平井堅、木村カエラ、w-inds.、椎名林檎など多数の新作との同時発売だったうえ、秋川雅史「千の風になって」の確変もあり、過去の売上実績を踏まえれば上位進出は難しいかと思われたが、予想を上回る当時の最高初動を見せ週間4位を記録した。なお配信売上チャートは、実売数が分かるものが当時国内に存在しなかったが、もしCD売上と合算したチャートでもあればより面白い動きになっていたと思われる。
YUI 『Rolling star-short ver.-』
配信1位「CHE.R.RY」
そして「Rolling star」のヒットで勢いに乗る最中、2007年3月に続けて発売された8thシングル「CHE.R.RY」は配信ミリオン、CD16万枚を売り上げる自身最大のヒットを記録した。配信売上の推移は以下のとおり。
- 配信開始3週間で10万ダウンロード突破
- 配信開始1ヶ月で25万ダウンロード
- 配信開始8ヶ月後の2007年11月に50万ダウンロード
- 配信開始3年1ヶ月後の2010年4月に75万ダウンロード
- 配信開始6年10ヶ月後の2014年1月に配信ミリオン達成
見てのとおり2007年内だけで50万ダウンロードを売り上げている。この水準はCD売上の年間チャートで言えば2007年の年間3位に相当する。しかし、当時は数字が見える配信売上チャートがなく、実態と異なり、配信よりCDの方が人気指標としての権威が大きかった。CD売上では前作「Rolling star」とほぼ一緒の売上となり、大ヒットの体感との不一致が違和感として残っていたが、配信売上では「Rolling star」に2倍の売上差をつけていた。楽曲人気は配信売上に表れていたのである。
CD売上だけ見れば自身1位は「Good-bye days」なので、この曲がYUI最大のヒット曲とされることも多いが、2000年代後半に配信売上を無視して楽曲人気を語ることは不可能であり、CDと配信の合計値で自己最高売上を記録している「CHE.R.RY」がYUI最大のヒット曲であることには疑いの余地がない。
本曲ではまた新たなイメージが打ち出され、これまでの楽曲にはないポップでキュートなラブソングに仕上がっている。歌詞は携帯電話のメールで行われる恋の駆け引きを取り上げた内容で、当時の時代を捉えたことで新たな支持を多く獲得することに繋がった。また、これまで多くの楽曲をヒットさせていたau by KDDI「LISMO」CMソングという楽曲内容にリンクするタイアップがついたことで、楽曲の普及を強力に後押しした。
CMにおいてはMVの映像も使用されたが、MVでもキュートさが前面に打ち出されており、明るく開放的な雰囲気が印象的な映像になっている。こちらもこれまでにないイメージで、既存ファンの中には戸惑いを覚える人もいたようだが、売上を見ればこの路線で多くの新規ファンを獲得したことが分かる。
この曲の大ヒットにより、2007年4月に発売された2ndオリジナルアルバム『CAN'T BUY MY LOVE』は自身最大となる69万枚をセールスし、年間でも2007年の9位に入った。
この勢いに乗り、2007年6月には早くも次のシングル『My Generation/Understand』を発売し、13万枚をセールス。収録曲のうち、1曲目の「My Generation」が25万ダウンロードを売り上げた。
2007年9月には10thシングル「LOVE & TRUTH」が配信25万ダウンロード、CD14万枚をセールス。2008年2月には11thシングル「Namidairo」が配信10万ダウンロード、CD11万枚をセールスした。
2008年3月には自身初となる配信限定シングル「Laugh away」を発売。配信で25万ダウンロードを記録するヒットを飛ばした。しかし、繰り返しになるが、当時は配信売上よりもCD売上が実態と異なり楽曲人気指標として重視されており、この曲の人気が可視化される機会はほとんどなかった。CD売上表だけ見ても本作は載っていないので、人気曲を見落とすことにならないよう、十分な注意が必要である。
2008年4月には3rdアルバム『I LOVED YESTERDAY』を発売し、48万枚を売り上げた。
2008年7月には12thシングル「SUMMER SONG」を発売し、配信25万ダウンロード、CD11万枚をセールスした。また、2008年から始まった新たな音楽チャートBillboard JAPAN Hot 100においては、本曲で自身初の週間1位を獲得した。
この曲の発表後に、制作活動に専念するため、「リフレッシュ休暇」と称した一度目の活動休止を発表した。休止直前の2008年11月にはカップリングベスト『MY SHORT STORIES』を発売し、27万枚をセールス。収録曲のうち唯一の新曲「I'll be」が10万ダウンロードを記録している。
2009年-2012年
一度目の活動休止は比較的短い期間となり、2009年6月には13thシングル「again」を発売して活動を再開。配信25万ダウンロード、CD16万枚を売り上げ、Billboard JAPAN Hot 100の週間1位も獲得した。ちなみにCDの発売初週売上では自己最高の11万枚を記録している。
2009年10月には14thシングル『It's all too much/Never say die』を発売し、11万枚をセールス。1曲目の「It's all too much」が配信で10万ダウンロードを記録したほか、Billboard JAPAN Hot 100の週間1位も獲得した。
2010年1月には15thシングル「GLORIA」を発売し、配信25万ダウンロード、CD11万枚をセールス。Billboard JAPAN Hot 100の週間1位も獲得した。結果的にはこれが自身最後のビルボード1位となった。
2010年6月には16thシングル「to Mother」を発売し、配信10万ダウンロードをセールス。
2010年7月には「SUMMER SONG」以降のヒット曲を集めた4thオリジナルアルバム『HOLIDAYS IN THE SUN』を発売し、31万枚を売り上げた。アルバム曲のうち、最高視聴率15.7%を記録したドラマ「夏の恋は虹色に輝く」主題歌に起用された「Please Stay With Me」が発売1週間前から先行配信され、25万ダウンロードを売り上げるヒットになった。この曲のヒットも「Laugh away」や「I'll be」同様、シングルCD売上表を見るだけでは把握できないので注意が必要だ。
2011年には興行収入13.9億円を記録した映画「Paradise Kiss」の主題歌に起用された「HELLO 〜Paradise Kiss〜」が配信25万ダウンロードをセールス。この曲も収録した5thオリジナルアルバム『HOW CRAZY YOUR LOVE』は20万枚をセールスした。
ここまでヒットシーンを駆け抜けてきたYUIだったが、精神的な疲労や所属事務所の方針とのすれ違いなどから、2012年末を以ての二度目の活動休止を表明した。「CHE.R.RY」に代表されるようなタイアップに沿った楽曲制作には窮屈さも感じていたようである。休止前に自身初となるベストアルバム『GREEN GARDEN POP』『ORANGE GARDEN POP』の2枚を同時発売し、前者が21万枚、後者が20万枚を売り上げた。
2013年以降はバンドFLOWER FLOWERを結成し、ボーカル&ギターとして活動を続けている。ヒットシーンには出てこなくなったが、ソロ時代よりも自分のペースを保ちながら自由に表現を追求できているようである。
まとめ
以上までYUIのヒット史を売上という視点からまとめてきたが、代表曲である「Good-bye days」「Rolling star」「CHE.R.RY」の3曲が特に、CD売上に比べて配信売上が多くなっており、他の曲でも、綺麗にCDと配信で半々程度の売上が安定して稼がれていた。CD売上チャートだけでは多くとも当時の勢いの半分しか可視化されないため、配信売上に目を向けることの重要性を改めて確認できる。
楽曲を辿れば、自身の音楽への夢を強い思いで歌う楽曲と、タイアップに沿って制作した楽曲に分けることができるが、両方のケースでヒット曲を出していることからは、それだけ多くの共感を生む力があると言うことができる。その才能は、FLOWER FLOWERという行き着いた居場所で今後も発揮されていくだろう。
これらのヒット曲を手っ取り早く入手するには、2012年に発売されたベストアルバム『GREEN GARDEN POP』『ORANGE GARDEN POP』がおすすめ。
この記事で紹介したダウンロードデータは日本レコード協会HP内の下記サイトで検索することができる。新たな発見の宝庫なので、時間があれば好きな曲やアーティストのダウンロード数を検索してみることをおすすめする。