Billion Hits!

フル配信ダウンロード売上、MV再生回数、ストリーミング再生回数、Billboard JAPANランキングデータなどを通じて国内の人気楽曲を把握するブログ

米津玄師の人気曲【売上・再生回数ランキング】

米津玄師は2013年に「サンタマリア」でメジャーデビューした男性シンガーソングライター。デビューから数年後に大ブレイクを果たし、2010年代後半にヒット曲を大量輩出した。2020年代に突入した今なお音楽シーンを席巻し続けている。

 

米津玄師がブレイクした時期はYouTubeが音楽視聴方法の主流だったため、楽曲人気もMV再生回数を通じて把握する。一方で、既に市場が縮小していた配信ダウンロード売上でも、その圧倒的な人気から歴史的な売上を記録している。同様に、2020年代以降の音楽視聴方法の主流となったオーディオストリーミングサービスでも、全面解禁がやや遅かったながらも無視できない規模を記録している。ここではMV、ダウンロード、ストリーミングの3指標をもとにしながら、米津玄師のヒット史を振り返る。

 

まずMV再生回数ランキング(YouTube)は以下のとおり。MV1億再生超えは13曲(「打上花火」も含めれば14曲)で、これはぶっちぎりの歴代1位記録である。

 

 

(歴代MV再生回数ランキングはこちら↓)

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次にダウンロード売上ランキングは以下のとおり。日本レコード協会によれば、これまでにダウンロード売上10万以上を記録した曲は22曲(「打上花火」も含めれば23曲)で、認定総ダウンロード売上は925万(歴代8位)となっている。

 

 

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(ランキング作成方法および歴代ダウンロード売上ランキングはこちら↓)

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(歴代アーティスト別ダウンロード売上ランキングはこちら↓) 

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そしてストリーミング再生回数ランキングを以下に示す。こちらは日本レコード協会のストリーミング認定と、Billboard JAPANが公表している再生回数を基に作成した。これまでにストリーミング5,000万再生を突破した曲は18曲(「打上花火」も含めれば19曲)で、認定総再生数は19.7億(歴代12位)となっている。

 

 

 

(歴代ストリーミング再生回数ランキングはこちら↓) 

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上記で挙げた楽曲を配信開始日順で並べたうえで楽曲人気データを一覧化した表も以下に示す。

 

 

インディーズ時代

 

米津玄師はメジャーデビュー前はハチ名義でボカロPとして活動し、多くの楽曲をニコニコ動画に投稿し、人気を博していた。ボカロPとは音声合成ソフトVOCALOIDを使用して楽曲制作や動画投稿を行うプロデューサーのことを指す。

 

2010年には自主制作でアルバムを2枚発売しており、2013年には復刻リイシューとして全国流通で再リリースされた。再リリースのタイミングでいくつかの人気曲がYouTubeにアップされており、このうちマトリョシカMV6,000万再生を突破している。

 

2012年からは本人名義で本人歌唱(VOCALOID不使用)の楽曲も発表するようになり、YouTubeでは立て続けに3本のMVを公開。このうち「ゴーゴー幽霊船」MV6,000万再生「vivi」MV5,000万再生を突破している。これらの楽曲を収録したインディーズデビューアルバム『diorama』11万枚をセールスした。 

 

ユニバーサルシグマ時代

 

2013年5月にはユニバーサルシグマからシングル「サンタマリア」を発売してメジャーデビュー。当曲はMV3,000万再生を突破している。

 

2013年10月には2ndシングル『MAD HEAD LOVE/ポッピンアパシー』を発売し、「MAD HEAD LOVE」MV5,000万再生を突破している。また、同じ月にハチとして久々の新曲「ドーナツホール」のMVを公開し、こちらも5,000万再生を突破している。

 

2014年4月にはメジャーデビュー後では初となる2ndオリジナルアルバム『YANKEE』を発売。このアルバム曲から大ヒット曲「アイネクライネ」が誕生した。この曲は自身初となるタイアップが付き、東京メトロのCMソングに起用されたほか、スペースシャワーTVでパワープッシュされた。

 

美しいメロディーに加え想像をかき立てる物語性の高い歌詞やMVなどが支持され、楽曲は米津玄師が知名度を増すごとに時間をかけて徐々に普及していった。2017年になって初めてカラオケJOYSOUND年間ランキング17位に顔を出すと、米津の代表曲としての認知が広まっていった。MVは公開からちょうど4年後の2018年3月に1億再生を突破。以降は「Lemon」の超特大ヒットに引っ張られる形でこの曲も急激に再生数ペースを上げ、1億突破から僅か1年3ヶ月後の2019年6月には当時国内史上5曲目となる2億再生を突破した。足元ではMV3.4億再生を突破している。間違いなく2010年代を代表する大ヒット曲の一つである。

 

この曲は配信売上でも50万ダウンロードを突破しているが、その推移は以下のとおり。

 

  • 配信開始から2年2ヶ月後の2016年9月に10万ダウンロード突破
  • 配信開始から3年8ヶ月後の2017年12月に25万ダウンロード突破
  • 配信開始から4年10ヶ月後の2019年2月に50万ダウンロード達成

 

見てのとおり、2016年以降に米津の知名度は飛躍的に上昇していくが、飛躍を始めたタイミングで10万ダウンロードを突破している。以降はブレイクの過程とともに売上を伸ばし続けていることが分かる。

 

この曲はMVこそ制作されているものの、シングル化されていないアルバム曲のため、音楽チャートでは上位進出しにくかったが、Billboard JAPAN Hot 100では2017年になって最高位となる週間19位をマーク。以降もロングヒットを続け、登場週数は驚異の134週を記録した。年間でも2017年53位→2018年40位→2019年52位と推移した。なお2020年に解禁されて以降の積み上げでストリーミング1億再生も突破している。


米津玄師 MV「アイネクライネ」

 

アルバム『YANKEE』は23万枚をセールスしており、この曲が収録されていることもあって発売から6年以上経過した今なお売れ続けている。Billboard JAPAN Top Albums Salesの年間では2014年84位2018年88位→2019年95位を記録した。

 

「アイネクライネ」以外のアルバム曲では、2013年にハチとして公開した「ドーナツホール」をセルフカバーした「ドーナツホール(COVER)」が配信で10万ダウンロードを記録している。

 

2015年は2枚のシングルと1枚のアルバムを発売。 1月に発売されたシングルFlowerwallMV6,000万再生、配信10万ダウンロードを記録している。

 

9月に発売されたシングルアンビリーバーズMV4,000万再生を突破している。

 

10月にはこの2曲のシングルを収録したアルバム『Bremen』が発売され、17万枚をセールスしており、今なお売れ続けている。Billboard JAPAN Top Albums Salesでは自身初の週間1位を獲得した。収録曲のうち「メトロームMV7,000万再生、配信10万ダウンロードを記録している。

 

ソニー・ミュージックレコーズ時代

 

2016年からはソニー・ミュージックレコーズに移籍。ここから前人未到の快進撃が始まる。

 

9月に発売された移籍第一弾シングル『LOSER/ナンバーナイン』の1曲目に収録された「LOSER」は、ラップを交えたテンポの早い曲調になっており、MVで本人が踊るキレのあるダンスとともに高く支持された。発売当時はノンタイアップだったにもかかわらず楽曲は徐々に普及していき、2018年には「Lemon」の超特大ヒットにより注目が集まったタイミングでホンダのCMソングに起用されたことから本曲の人気にもブーストがかかった。累計ではMV3.2億再生を突破している。

 

この曲は配信売上でも75万ダウンロードを突破している。その推移は以下のとおり。

 

  • 配信開始から5ヶ月後の2017年2月に10万ダウンロード突破
  • 配信開始から1年7ヶ月後の2018年4月に25万ダウンロード
  • 配信開始から1年11ヶ月後の2018年8月に50万ダウンロード
  • 配信開始から2年10ヶ月後の2019年7月に75万ダウンロード達成

 

見てのとおり、CMタイアップが付いた2018年半ばのタイミングで売上にブーストがかかっていることが分かる推移となっている。Billboard JAPAN Hot 100の年間では2017年62位→2018年16位→2019年41位と推移した。なお2020年に解禁されて以降の積み上げでストリーミング5,000万再生も突破している。


米津玄師 MV「LOSER」

 

2017年はまず2月にシングル「orion」を発売。表題曲はアニメ3月のライオン主題歌として書き下ろされた、ストリングスが印象的なスケールの大きい楽曲に仕上がっている。この曲も大人気となり、MV1.7億再生を突破しているほか、配信でも25万ダウンロードを売り上げた。Billboard JAPAN Hot 100の年間では2017年26位→2018年91位と推移した。


米津玄師 MV「orion」

 

続いて6月にはシングルピースサインを発売。この曲はアニメ僕のヒーローアカデミアの主題歌に起用された、疾走感溢れるロックナンバー。アニメの人気も手伝って大ヒットを記録し、累計ではMV2.8億再生、フル配信50万ダウンロードを記録した。また、この曲で自身初となるBillboard JAPAN Hot 100週間1位を獲得した。同週のCD売上はWEST.に及ばなかったものの、配信売上等他指標を決め手として総合では逆転した。

 

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年間では2017年14位→2018年31位→2019年76位と推移した。なお2020年に解禁されて以降の積み上げでストリーミング1億再生も突破している。


米津玄師 MV「ピースサイン」Kenshi Yonezu / Peace Sign

 

「打上花火」大ヒット

 

8月には女性ソロシンガーDAOKOに提供したコラボ曲「打上花火」DAOKO×米津玄師名義で発売した。アニメ映画打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?主題歌のタイアップが付き、興行収入は15億円とまずまずの成績だったが、楽曲は和を感じさせるテイストが花火の情景と見事にマッチしたことで映画以上の成績を残した。

 

累計ではMV5.8億再生、フル配信50万ダウンロード、ストリーミング2億再生を突破している。MV再生数は歴代2位記録となるほどの著しい規模となった。フル配信50万ダウンロード突破も2017年に発売された楽曲では最大となる。

 

また、この楽曲は当時YouTube以外の音楽ストリーミングサービス(Spotifyなど)でも聴くことができる数少ない米津玄師関連曲となっていた。当時米津玄師の楽曲はYouTubeを除きストリーミングサービス未解禁となっていたが、この曲はDAOKOのレコードレーベルから発売されているためストリーミング解禁されていた。

 

Billboard JAPAN Hot 100では通算2週1位を獲得し、年間でも2017年3位→2018年4位→2019年21位→2020年75位と推移した。

 

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DAOKO × 米津玄師『打上花火』MUSIC VIDEO

 

「打上花火」の大ヒットで注目が集まった中で発売された4thオリジナルアルバムBOOTLEGCD61万枚、配信10万ダウンロードをセールス。Billboard JAPAN Hot Albumsの年間では2017年16位→2018年2位→2019年9位→2020年36位と推移した。

 

アルバム曲からは、人気俳優の菅田将暉とコラボしたことで話題になった楽曲「灰色と青(+菅田将暉)」MV2.6億再生、フル配信50万ダウンロードを突破する大ヒットとなった。学生時代の友人との日々を懐かしく思い出させるような楽曲内容にデュエットでの歌唱がより強い説得力を与えたことで大きな支持を得た。なお2020年に解禁されて以降の積み上げでストリーミング5,000万再生も突破している。


米津玄師 MV「 灰色と青( +菅田将暉 )」

 

また、「春雷」もMVが制作されたことで注目を集め、MV1.6億再生配信10万ダウンロードを突破する大ヒットとなった。恋に揺れ動く男性の感情が軽快なリズムと歌詞で紡がれており、イントロの打ち込みと併せて強い印象を残したことから、リピート視聴するリスナーが続出した。なお2020年に解禁されて以降の積み上げでストリーミング5,000万再生も突破している。


米津玄師 MV「春雷」Shunrai

 

他に、2017年に久々となるハチ名義でMV公開した楽曲砂の惑星(+初音ミク)」のセルフカバーが10万ダウンロードを記録している。原曲のMVはハチ名義では自身1位となる8,000万再生を突破している。さらに「打上花火」のセルフカバーも10万ダウンロードを記録している。

 

「Lemon」超特大ヒット

 

2018年には、日本の音楽の歴史を変えたと言って過言ではない超特大ヒット曲「Lemon」が誕生した。8thシングルCD表題曲として発売された本曲は、最高視聴率13.3%を記録した人気ドラマ「アンナチュラル」主題歌に起用された。他界した祖父への想いをベースに「死」をテーマに作られた本曲はドラマの内容ともリンクし、とてつもない支持を獲得した。

 

配信ダウンロード売上

 

本曲はまず2月12日に配信ダウンロードでの発売が解禁された。配信売上は驚異的なペースで積み重ねられ、最終的な売上は国内史上3曲しか達成していない300万ダウンロードを突破した。売上推移は以下のとおり。

 

  • 配信開始から2週間で25万ダウンロード突破
  • 配信開始から2ヵ月で配信ミリオン突破

GReeeeN「キセキ」「愛唄」に次ぐ史上3位*1の速さ>

  • 配信開始から10ヶ月で配信ダブルミリオン突破

青山テルマ feat.SoulJa「そばにいるね」GReeeeN「キセキ」に次ぐ史上3位*2の速さ>

  • 配信開始から1年7ヶ月で配信トリプルミリオン達成

史上最速での達成GReeeeN「キセキ」青山テルマ feat.SoulJa「そばにいるね」に次ぐ史上3曲目のトリプルミリオン>

 

市場縮小で「もうダウンロードミリオンは出ないだろう」とさえ思われていたダウンロードで、まさか着うたバブル期の超特大ヒット曲と肩を並べるほどの数字が出るとは誰も想定していなかっただろう。

 

MV再生回数

 

ダウンロード発売から2週間後の2月26日にはMVが公開された。再生数は驚異的なペースで積み重ねられ、現在ではダントツ国内史上1位となるMV8.4億再生を突破している。推移は以下のとおり。

 

  • 公開から4ヶ月後の2018年6月に1億突破
  • 公開から9ヶ月後の2018年11月に2億突破
  • 公開から1年後の2019年2月に3億突破
  • 公開から1年4ヶ月後の2019年6月に4億突破
  • 公開から1年10ヶ月後の2019年12月に5億突破
  • 公開から2年6ヶ月後の2020年8月に6億突破
  • 公開から3年7ヶ月後の2021年9月に7億突破
  • 公開から5年1ヶ月後の2023年3月に8億突破

 

推移を見ると、1億→2億までに要した期間と比べ、2億→3億までに要した期間が縮まっていることが分かる。これは2018年末の紅白歌合戦に本人が出演し、本曲を歌唱した効果が表れたことによる。米津玄師はほぼ一切TV出演を行わないアーティストとして有名で、後にも先にもTVでの歌唱は2018年末の紅白だけである。このプレミア感が売上・再生数ペースの急回復に繋がった。

 

国内史上、8億どころか6億を突破したMVも本曲しか存在しない。MV再生数歴代2位は上述の「打上花火」である。平成末期の音楽シーンは米津玄師の独壇場となった。

 

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もちろんこれらの大記録はYouTube以外のストリーミングサービスで2020年8月まで楽曲が解禁されなかったことも要因として大きいと思われるが、楽曲が絶大な支持を受けていたことに疑いの余地はない。なお2020年に解禁されて以降の積み上げでストリーミング3億再生も突破している。

 

音楽チャートへの影響 ~楽曲人気指標の開拓~

 

Billboard JAPAN Hot 100では高水準のダウンロード売上とMV再生数を背景に上位を維持し続け、通算7週1位を獲得したほか、年間チャートでも2018年1位→2019年1位→2020年17位→2021年47位→2022年73位→2023年73位と推移。驚異の2年連続1位を獲得した。2年連続1位はビルボード史上初めてで、オリコンまで遡っても宮史郎とぴんからトリオ「女のみち」が1970年代に記録して以来の出来事となった。現在もランクインが続いており、その登場週数歴代2位記録となる277週を数えている。なお米津玄師はアーティスト人気チャートBillboard JAPAN Top Artistsでも2018年の年間1位を獲得した。

 

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「Lemon」は音楽チャートを見ていなくとも体感可能なほどの大ヒットであったため、「Lemon」が好成績をあげた指標は楽曲人気指標としての認知が普及する、という逆転現象が生じた。例えばBillboard JAPAN Hot 100、YouTube日本レコード協会認定などの指標が知名度を向上させた。

 

配信ダウンロード売上については、2000年代後半から楽曲人気指標の主役になっていたにもかかわらず、売上の数字がリアルタイムで把握可能な音楽チャートが長らく存在していなかった*3。2017年12月になり、ようやくCD売上の集計で有名なオリコンがダウンロードチャートを開始したが、ちょうどそのタイミングで「Lemon」の爆発的大ヒットが訪れたため、2018年になってようやく、ダウンロード売上が楽曲人気指標として無視できないという事実が共通認識となった

 

この事実が根付くまでの2000年代後半から10年以上の期間は楽曲人気チャートが存在しなかった状態となっていて、多くのヒット曲やヒット予備群が見過ごされ、高ダウンロード売上曲の楽曲人気の過小評価と、高CD売上曲の楽曲人気の過大評価が蔓延した。

 

この不健全な事態が10年以上続いたことについて業界は大いに反省すべきであるが、何はともあれ「Lemon」の登場で事態は劇的に改善した。

 

配信売上チャートは長らく存在しなかったが、このブログでも取り上げているとおり、日本レコード協会2006年より配信売上認定を月次で実施し続けており、このデータに注目が集まるようになったのも、「Lemon」の史上最速ミリオン認定の記事が出たことによるものである。その経緯は以下記事に記している。

 

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逆に「Lemon」が好成績を残せなかった指標は楽曲人気指標として使用できないという認識も広まった。その最たる指標がCD売上で、他の指標で「Lemon」が軒並み年間1位を獲得していた中、CD売上の年間チャートでは18位に留まった。CD売上は2006年から楽曲人気指標としての役割の大部分を配信売上に譲り、2011年以降は完全に楽曲人気指標として使用できない状態となっていたのだが、その事実が共通認識となるまでにはやはり長い月日を要した。

 

このように「Lemon」は多くの楽曲人気指標の開拓に寄与し、音楽シーンだけでなく音楽チャートの在り方にも歴史的な影響を残した。当ブログでも2010年代を代表する楽曲十選に「打上花火」とともに「Lemon」を選出している。


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米津玄師 MV「Lemon」

 

2018年10月には「Lemon」に続く両A面シングル『Flamingo/TEENAGE RIOT』を発売。1曲目の「Flamingo」MV1.7億再生、フル配信50万ダウンロードを突破する大ヒットとなった。馴染みのない言葉を多くチョイスした歌詞や、MVで本人が踊る地に足のつかないようなダンスなど、楽曲は個性的な内容だったが、その中毒性から多くの人気を集めた。

 

Billboard JAPAN Hot 100では週間1位を獲得し、年間でも2018年20位→2019年12位と推移した。なお2020年に解禁されて以降の積み上げでストリーミング5,000万再生も突破している。


米津玄師 MV「Flamingo」

 

2曲目の「TEENAGE RIOT」MV4,000万、ダウンロード10万を突破している。

 

SME Records時代

 

2019年 -「馬と鹿」大ヒット-

 

2019年にはレーベルを同じソニー系列のSME Recordsに移籍した。移籍第一弾となるシングル「馬と鹿」は最高視聴率13.8%を記録した人気ドラマノーサイド・ゲーム」主題歌として書き下ろされた楽曲。ドラマはラグビーをテーマにした内容になっており、この後に控えていた国内開催のラグビーワールドカップへの機運を高めるものであった。逆境に立ち向かうさまを重厚かつ壮大なサウンドに乗せて歌った本曲は、ワールドカップにおける日本代表の快進撃とともに強い印象を残し、大ヒットを記録。MV1.9億再生、フル配信100万ダウンロードを突破した。なお2020年に解禁されて以降の積み上げでストリーミング1億再生も突破している。

 

Billboard JAPAN Hot 100ではなんと1位常連のを2位止まりにする形で週間1位を獲得した。CD売上では嵐に及ばなかったものの、配信売上等他指標を決定打に総合チャートでは逆転が実現した。年間でも2019年5位→2020年21位と推移した。

 

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米津玄師 MV「馬と鹿」Uma to Shika

 

CDのc/wには、6月から配信開始されていた「海の幽霊」を収録。こちらもBillboard JAPAN Hot 100週間1位を獲得したほか、MV1.1億再生、フル配信25万ダウンロードを突破する大ヒットとなった。本曲はアニメ映画海獣の子供主題歌として書き下ろされた壮大なバラードナンバーで、その世界観に没入できるサウンドなどが支持された。


米津玄師 - 海の幽霊 Kenshi Yonezu - Spirits of the Sea

 

2019年には他に、前年にFoorinに楽曲提供し大ヒットを記録していた「パプリカ」のセルフカバーを公開し、MV1.4億再生を突破している。セルフカバーはFoorinが歌う原曲と大きく異なり、哀愁を感じさせるアレンジとなっており、原曲とは違う支持を集めた。なおこの曲はしばらくYouTubeでしか公式音源が聴けない状態になっていたが、2020年2月にダウンロード解禁、2020年8月にストリーミング解禁され、配信25万ダウンロード、ストリーミング5,000万再生を記録した。


米津玄師 MV「パプリカ」Kenshi Yonezu / Paprika

 

2020年 -『STRAY SHEEP』ミリオンセラー-

 

2020年7月には、ドラマ「MIU404」主題歌に起用された「感電」がアルバム先行シングルとして配信限定発売された。ファンキーな曲調が支持されたことで50万ダウンロードを突破したほか、遊び心に溢れたMVも支持され、累計ではMV2.1億再生を突破している。2020年8月の解禁以降の積み上げでストリーミング3.4億再生も突破するなど、2020年を代表する大ヒット曲の一つになった。


米津玄師 MV「感電」

 

そして8月には『BOOTLEG』以来となるオリジナルアルバム『STRAY SHEEP』が発売された。このタイミングで長らく未解禁状態になっていたYouTube以外のサービスにおけるストリーミング配信を全面的に解禁し、ストリーミングチャートを席巻するなど、大きな話題を集めた。Billboard JAPAN Hot Albumsの年間では2020年1位→2021年11位→2022年72位と推移。2020年の年間集計期間内ではCD147万枚、配信18万ダウンロードを売り上げており、CD売上は嵐『Japonism』以来5年ぶりとなるオリジナルアルバムのミリオンセラー達成となった。

 

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アルバム曲の中ではPLACEBO野田洋次郎」「まちがいさがし菅田将暉に提供し大ヒットした楽曲のセルフカバー)がストリーミング5,000万再生「カムパネルラ」MV3,000万再生、ストリーミング5,000万再生「カナリヤ」MV3,000万再生を突破している。

 

2021年

 

2021年には5月に11thシングル表題曲「Pale Blue」を配信。6月にはCDシングルでも発売されており、CD、ダウンロード、MV、ストリーミング全てでほぼ同時に解禁された自身初の楽曲となった。本曲はドラマ「リコカツ」主題歌に起用された、クラシカルなラブバラードナンバー。ドラマの内容に沿って別れから始まる恋を描いた歌詞などが人気となり、ストリーミング1億再生、MV6,000万再生、フル配信10万ダウンロードを突破した。


米津玄師 - Pale Blue / Kenshi Yonezu

 

なおこのシングルのc/wに収録された「死神」ストリーミング5,000万再生、MV3,000万再生を突破している。

 

2022年以降

 

2022年5月には12thシングル表題曲「M八七」を発売し、配信10万ダウンロード、ストリーミング5,000万再生、MV5,000万再生を記録。このシングルのc/wに収録された「POP SONG」配信10万ダウンロード、MV4,000万再生を突破した。

 

2022年10月には13thシングル表題曲「KICK BACK」を配信。この曲はアニメチェンソーマン」主題歌として発売前から高い注目を集めていたことで、Billboard JAPAN Hot 100ではストリーミング初動1,255万再生という圧倒的初動を見せ、1位常連のJO1などを退け通算2週1位を獲得した。

 

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年間でも2022年30位→2023年4位と推移した。

 

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各指標の累計はストリーミング3.8億再生、MV1.4億再生、フル配信25万ダウンロードを突破している。

 

「KICK BACK」はシリアスさとコミカルさが同居したようなアップテンポナンバー。目まぐるしい楽曲構成と純真な欲望を描いた歌詞で原作世界観が表現されている。その中には仕掛けが多く散りばめられており、例えば歌詞ではモーニング娘。のヒット曲そうだ!We’re ALIVEをサンプリングしたフレーズを織り込んでいる。King Gnu常田大希が参加していることもあってか、がなり立てる歌唱表現などから米津玄師の新たな一面を見出すことも可能となっている。


www.youtube.com

 

2023年に発売された新曲では「LADY」ストリーミング5,000万再生を突破した。

 

まとめ

 

以上まで見てきたとおり、米津玄師は国内音楽の歴史を変えたと言って良いほどの大活躍を残しており、しかもその活躍は現在進行形で続けられている。そのため、各指標に重要なアップデートが生じ次第、この記事で言及しているデータも適宜最新のものに置き換えていく予定である。

 

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特に配信ダウンロード売上に関しては、そもそも市場のピークが2010年代前半で終了しているため、2010年代後半以降に全盛期を迎えたアーティストはダウンロード売上ではなくMV再生数やストリーミング再生数で上位に入ることが多いのだが、米津玄師は多くの2000年代デビューアーティストに割って入る形でトータルダウンロードセールス歴代8位に食い込んでいる。ダウンロード売上の適宜更新が必要なアーティストはトータルセールスTOP10の中では米津玄師以外では宇多田ヒカルくらいしかおらず、圧倒的な人気が分かるデータとなっている。

 

以上までに紹介したヒット曲を手元に所有したい場合は、入り口としてオリジナルアルバム『YANKEE』BOOTLEG』『STRAY SHEEP』の3枚をお勧めする。

 

YANKEE (通常盤)

YANKEE (通常盤)

  • アーティスト:米津玄師
  • 発売日: 2014/04/23
  • メディア: CD
 
BOOTLEG

BOOTLEG

  • アーティスト:米津玄師
  • 発売日: 2017/11/01
  • メディア: CD
 
STRAY SHEEP (通常盤) (特典なし)

STRAY SHEEP (通常盤) (特典なし)

  • アーティスト:米津玄師
  • 発売日: 2020/08/05
  • メディア: CD
 

 

この記事で紹介したダウンロードやストリーミングのデータはBillboard JAPANの公式サイト日本レコード協会の公式サイトから検索することができる。新たな発見の宝庫なので、時間があれば好きな曲やアーティストのデータを検索してみることをお勧めする。

 

(参考)米津玄師の総合ヒット曲ランキング

 

最後に、米津玄師の各楽曲・各指標数値を当ブログが採用する一定の計算式で総合ランキング化した表を参考として掲載する。

 

 

(ランキング作成方法および歴代総合ヒット曲ランキングはこちら↓)

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*1:一部報道では「史上最速ミリオン」と言われており、日本レコード協会も同様のプレスリリースを発行しているが、この「史上最速」は厳密には正しくない。日本レコード協会の配信売上の集計は、2013年末まで「着うたフル」と「PC配信」に分けて集計しており、2014年以降はその2カテゴリを「シングルトラック」に統合して売上認定を出すようになった。「史上最速」はその「シングルトラック」カテゴリでミリオン認定を受けた楽曲の中では史上最速という意味である。しかし、「着うたフル+PC配信=シングルトラック」という数式が成立している以上、着うたフルでミリオン認定を受けたGReeeeN「キセキ」の最速記録を除外して考えるのは適切ではない。

*2:同上

*3:Billboard JAPAN Hot 100では2016年より網羅的なダウンロード売上が集計対象に入っていたものの、ダウンロード数は2018年末まで非公開だった。