浜崎あゆみは1998年に「poker face」でデビューした女性ソロアーティスト。デビュー後すぐにブレイクし、以降10年以上に渡りヒット曲を大量輩出した。日本レコード協会によれば、これまでにダウンロード売上10万以上を記録した曲は42曲(EXILEに次ぎ、倖田來未に並ぶ歴代2位タイ)で、認定総ダウンロード売上は585万(歴代15位)となっている。これらのデータをランキング化した表は以下のとおりである。この表をもとにしながら、浜崎あゆみのヒット史を振り返る。
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1998年-2004年 ~CD売上全盛期~
浜崎あゆみはデビュー前までキッズモデルやアイドルとして活動していたが、現エイベックス会長の松浦勝人にブレイクの可能性を見出され、デビュー当初から全力のプロモーションを受けたことで、すぐにカリスマ性が認知され、爆発的な支持を広げていった。
当時はCDバブル真っ只中であり、CD売上が楽曲人気指標として機能しており、浜崎あゆみが多くのCDをヒットさせたことは既に周知の事実である。そのため、この時期の曲は基本的にCD売上で楽曲人気を把握することになるが、この記事ではまだ認知が進んでいないダウンロード売上を強調して作成している。なおCD売上等の全指標を網羅して総合的に当ブログで作成した「歴代アーティスト・トータル・楽曲人気ランキング」では浜崎あゆみが歴代5位となっている。
配信は2000年代に入ってから徐々に解禁されていき、過去のヒット曲でも人気が持続している曲は配信売上認定を受けている。この時期の楽曲を配信開始日順に並べたダウンロード売上データは以下のとおり。
A song for xx~LOVEppears
デビュー年の1998年は2ヵ月に一作のペースでシングルCDを発売するハイペースな活動を展開。このうち3rdシングル「Trust」は20万枚をセールスしている。
1999年元旦にはこれらのシングルを収録した1stアルバム『A Song for ××』を発売し。いきなり145万枚を売り上げるミリオンヒットに。アルバム曲のうち、タイトルナンバーである「A Song for ××」が10万ダウンロード認定を受けている。この曲が配信売上認定を受けている浜崎あゆみの楽曲の中では最も古い曲となる。
浜崎あゆみ / A Song for ××(ayumi hamasaki countdown live 2000-2001 A)
その後はなんと7枚ものシングルを発売し、全て10万超えを達成。まず6th「WHATEVER」が21万枚、浜崎あゆみ/浜崎あゆみ & つんく名義で発売した7th『LOVE ~Destiny~/LOVE ~since 1999~』が68万枚、8th「TO BE」が35万枚をセールス。
最大売上シングル『A』収録曲中一番人気はどの曲なのか
続く9th「Boys & Girls」は103万枚、10th『A』は163万枚をセールスし、シングルミリオンセラーも達成。ミリオン達成順では『A』の方が早く、自身初のミリオンセラー達成作品となった。『A』は自身最大のシングル売上となり、年間でも1999年の3位を獲得した。
ただ『A』は4曲A面シングルであったことが売上を促進させた面もあり、人気も4曲に分散してしまったようで、収録曲が代表曲扱いされる場面はあまりない。そのせいか4曲何れも配信売上認定は受けていない。ベスト盤における扱いも異なっており、『A BEST』には3曲目「Trauma」、4曲目「End roll」のみ収録された一方、『A COMPLETE ~ALL SINGLES~』には1曲目「monochrome」のみの収録となっている。4曲のうちどれが一番人気なのか全く掴めない事態が続いている。参考程度だが、YouTubeには2曲目の「too late」と「Trauma」の2曲においてライブ映像が公開されており、再生回数は後者の方が多い。
11月に発売された2ndアルバム『LOVEppears』は256万枚をセールスする特大ヒットとなった。年間チャートでは集計割れを起こし、1999年15位→2000年14位と推移。アルバム曲の中では、「Who...」が配信25万ダウンロードを売り上げるヒットを飛ばしている。この曲は「A Song for ××」同様ベストアルバムにも収録されている人気アルバム曲で、シングルCD化されていないためCD売上を見ても人気が把握できないが、配信で人気が可視化されている。
浜崎あゆみ / Who…[Live Lyric Video]【from『A BEST -15th Anniversary Edition-』】
この後、アルバム曲のうち「appears」「kanariya」「Fly High」の3曲が30万枚限定生産シングルとしてシングルカットされ、3曲とも28万枚~29万枚の売上となり、実質完売する凄まじい旋風を起こした。
Duty~A BEST
怒涛のリリースラッシュは止まらず、2000年4月からは「絶望3部作」と題して3ヶ月連続リリースを展開。第一弾「vogue」は76万枚、第二弾「Far away」は51万枚をセールス。
そして第三弾の「SEASONS」は136万枚のミリオンヒットを記録し、年間では2000年の5位を獲得した。配信でも10万ダウンロードを売り上げており、『A』に収録されている4曲よりも代表曲として認知されている。若い世代のカリスマとしての地位を確立する中、平易な言葉で諦観を綴る歌詞や楽曲の雰囲気が共感を呼び大ヒットした。最高視聴率18.1%を記録したドラマ「天気予報の恋人」主題歌となったことも楽曲の普及を後押しした。
この3作を引っ提げて発売した3rdアルバム『Duty』は290万枚をセールスする特大ヒットとなった。年間チャートでも、2000年2位→2001年77位とロングヒット推移を辿った。アルバム曲の中では、「teddy bear」が配信で10万ダウンロードを記録している。この曲もシングルCD化されていない人気曲となる。
さらにアルバム曲からは「SURREAL」がシングルCDとしても同時発売され41万枚をセールスしたほか、「AUDIENCE」が30万枚限定生産でカットされ29万枚を売り上げ、実質完売した。
アルバムの特大ヒットで勢いに乗る中、2000年12月に発売した新曲「M」は131万枚をセールスし、年間でも2001年の2位を獲得した。携帯電話のCMソングとして大量OAされたことや、孤独な恋を綴った歌詞がやはり高い共感を呼び大ヒットした。
この曲は配信でも25万ダウンロードを記録している。CD売上では僅かに「SEASONS」の方が上回っているが、配信売上では逆に「SEASONS」を上回っているのは面白い。
さらに2019年には自伝小説「M 愛すべき人がいて」を発売し、この曲の裏話が明かされて大きな話題を呼んだ。この小説は2020年にはドラマ化され、今なお更なる注目を集めていることから、この曲にスポットが当たる機会が増えている。実際、MVはこの1年で大きく再生数を伸ばし、現在自身ダントツ1位となっている*1。これまで伯仲していた「SEASONS」との代表曲争いだが、今後は「M」が真っ先に代表曲に上がることになっていきそうだ。
2001年3月にはこの曲までを収録範囲にした自身初のベストアルバム『A BEST』を発売し、429万枚をセールスする超特大ヒットを記録した。チャートでは宇多田ヒカルの2ndアルバム『Distance』と同時発売されたことで対決が話題となり、両者競うようにして爆発的な売上を積んだ。2001年の年間では宇多田ヒカルに次ぐ2位となり、歴代でも6位のセールスとなっている。
I am...
2001年1月には20thシングル「evolution」を発売。表題曲は本人が出演するコーセー「VISSE」CMソングとして起用され、ショートヘアへのイメージチェンジや尻尾の付いた衣装が話題となった。楽曲も21世紀の始まりを象徴するような勢いのあるロックナンバーとなっている。
CD売上は95万枚となり、年間でも2001年の7位を記録。また配信でも10万ダウンロードを記録しており、参考程度ではあるがCDとの合算ではミリオンセラーとなる。
その後も2ヶ月おきに新曲が発売されていき、「NEVER EVER」が75万枚、「Endless sorrow」が76万枚、「UNITE!」が57万枚を記録。
そして2001年9月に発売された「Dearest」は75万枚をセールス。表題曲はアニメ「犬夜叉」主題歌に起用されたラブバラードとして支持された。売上はこの年に発売されたシングルの中では特段抜きでいていたわけではないが、この曲で日本レコード大賞にノミネートされ、初の大賞を受賞した*2。これで人気に箔が付いたためか、配信でも10万ダウンロードを記録している。
2001年12月にはglobeのボーカルKEIKOとのコラボが実現し、浜崎あゆみ&KEIKO名義で発売したシングル「a song is born」が44万枚をセールスした。
2002年元旦にはここまでの5枚のシングルを収録した4thアルバム「I am...」を発売。230万枚をセールスする特大ヒットとなり、年間でも2002年の2位を獲得した。
アルバム曲からは「Daybreak」が30万枚限定生産でシングルカットされたが、これまでの限定シングル売上と比べると10万枚ほど売れ残りが発生した。これは当時のエイベックスが「浜崎あゆみに利益を依存し過ぎている」状況に危機感を抱き、リカットシングルである本作への広告宣伝費を抑制し他アーティストへ振り向けたためである。インターネットも黎明期だった当時はこの方針により発売情報が十分に消費者に行き渡らず、結果的に生産枚数を売り捌けない事態となった。
RAINBOW
2002年4月にはシングル「Free & Easy」が48万枚をセールス。
3曲A面シングル『H』収録曲中一番人気はどの曲なのか
7月にはシングル『H』を発売。96万枚に到達したタイミングでジャケットを変えたミリオン出荷記念盤を追加発売するなどの販促商法も功を奏し、101万枚を売り上げる大ヒットとなり2002年の年間1位を獲得した。
ただ、本作は『A』のように複数A面シングルであったことがセールスを押し上げた面もある。収録曲は「Independent」「July 1st」「HANABI」の3曲だが、やはり人気が分散してしまい、収録曲が代表曲扱いされる場面はあまりない。3曲ともMVは制作されておらず、どれが一番人気なのか全く掴めない事態が続いていた・・・のだが、なんと配信売上では、2015年1月になって3曲目の「HANABI」が3曲中唯一となる10万ダウンロードを突破した。3曲の人気は拮抗していると思われるが、配信売上を見ればこの曲が一番人気であることが分かる。本曲は携帯電話のイメージソングに起用されたラブバラードで、別れた恋人を想う女性の気持ちを綴った歌詞が共感を呼んだ。
9月にはシングル「Voyage」を発売し、67万枚を売り上げて2002年の9位を獲得した。表題曲は人生を旅に例えた歌詞で綴られた壮大なバラードナンバーで、ドラマ主題歌や本人主演短編映画の原作にもなるなどのメディア展開が成されヒットを飛ばした。この曲で日本レコード大賞にノミネートされ、ノミネート作品の中では最大売上であったこともあり、文句なしで2年連続の大賞受賞となった。これで人気に箔が付いたためか、配信でも10万ダウンロードを記録している。
ここまでの3枚のシングルを収録した5thアルバム『RAINBOW』は185万枚を売り上げる大ヒットとなり、年間でも2003年の2位を獲得した。
A BALLADS~Memorial Address~MY STORY
2003年はまず3月にバラードベストアルバム『A BALLADS』を発売。92万枚を売り上げ、年間でも2003年の8位を獲得した。
3曲A面シングル『&』収録曲中一番人気はどの曲なのか
7月には前年の『H』に続く3曲A面シングル『&』を発売。59万枚を売り上げ、年間でも2003年の8位を獲得した。
さて、例によって3曲の中でどの曲が一番人気なのかを探る作業に移るが、3曲とも配信売上認定は受けていない。一方でMVはこの手のシングルでは初めて3曲とも制作されている。そこで3曲のMV再生数を見ると、最も再生数が多い曲は2曲目の「Greatful days」*3となっている。例によって団栗の背比べ感は否めないが、この曲が一番人気と見て良さそうだ。『A』『H』『&』全てにおいて、1曲目が一番人気という結果にならなかったことは面白い。
8月にはシングル「forgiveness」が22万枚をセールス。
11月にはシングル「No way to say」が37万枚をセールス。この曲で3年連続の日本レコード大賞を受賞した。この年はSMAP「世界に一つだけの花」や森山直太朗「さくら(独唱)」がミリオンヒットとなっていたが、何れも辞退となり、浜崎あゆみの本曲が僅差ながらもノミネート作品中最大のシングルCD売上*4だったため、当時の判断としては*5妥当と言える。これで人気に箔が付いたためか、配信でも10万ダウンロードを記録している。
以上のシングル3作を収録したミニアルバム『Memorial address』は106万枚を売り上げ、年間でも2004年の5位を獲得した。アルバム曲のうち、表題曲「Memorial address」が10万ダウンロードを記録している。
2004年は3枚のシングルを発売。CD売上は、「Moments」「CAROLS」が30万枚、「INSPIRE」が32万枚となっている。一方で配信売上は「Moments」のみ10万ダウンロードを突破している。この3曲の人気はかなり拮抗しているようだ。これら3曲を収録したアルバム『MY STORY』は113万枚を売り上げ、年間でも2005年の7位に入った。
リミックスアルバムの売上まとめ
ここまで、2004年までに発売された作品を見てきたが、この期間は非常に多くのリミックスアルバムが発売され、軒並み高売上を記録していたという特徴もある。以下に20万枚以上のセールスを記録したリミックスアルバムをまとめた。
- 1999年3月発売『ayumi-x』39万枚
- 2000年2月発売『SUPER EUROBEAT presents ayu-ro mix』64万枚
- 2000年3月発売『ayu-mi-x Ⅱ version US+EU』23万枚
- 2000年3月発売『ayu-mi-x Ⅱ version Acoustic Orchestra』20万枚
- 2000年3月発売『ayu-mi-x Ⅱ version Non-Stop Mega Mix』50万枚
- 2001年2月発売『ayu-mi-x Ⅲ version Non-Stop Mega Mix Version』31万枚
- 2001年9月発売『SUPER EUROBEAT presents ayu-ro mix 2』44万枚
- 2001年9月発売『Cyber TRANCE persents ay trance』30万枚
- 2002年9月発売『Cyber TRANCE presents ayu trance 2』25万枚
見てのとおり、短期間にこれだけ大量の作品を発売しながら安定して20万枚以上売れていることが分かる。通常のシングルやアルバムに加えこれらのリミックスアルバムを全部新品で揃えた場合の出費は相当な額に上るだろう。全盛期の凄まじい人気が伝わるデータである。
2005年-2008年 ~配信売上移行期~
2005年になると音楽環境の配信シフトが本格化。多くのアーティストが売上をCDから配信へシフトさせたが、配信ランキングがなかなかクローズアップされなかったため、CD売上の減少のみが目立つ不健全な事態となっていった。浜崎あゆみも、2005年以降になってシングルCD表題曲が殆ど配信10万ダウンロード以上を記録していくようになる。
この時期の楽曲を配信開始日順に並べたダウンロード売上データは以下のとおり。
(miss)understood
2005年はまず4月に両A面シングル『STEP you/is this LOVE?』を発売し、CDで34万枚をセールス。1曲目の「STEP you」が10万ダウンロードを記録した。その後も「fairyland」がCD31万枚と配信10万ダウンロード、「HEAVEN」がCD32万枚と配信10万ダウンロードをセールス。安定した人気を示した。
11月に発売された『Bold & Delicious/Pride』はCD売上13万枚となり、「No way to say」から7作連続CD売上30万台を維持していたところからかなり売上を落とした。配信に売上が移行したのかと思いきや、配信売上認定も受けていない。アルバム先行シングルだったこともあるが、これまでの楽曲と比べ人気が一段落ちてしまっているのは間違いないようだ。コーラスの効いたゴスペル調の楽曲がこれまでにない挑戦的な路線であったことも影響したかもしれない。
2006年元旦には7thオリジナルアルバム『(miss)understood』を発売し、87万枚をセールス。年間でも2006年の8位を獲得した。
Secret~A BEST 2
2006年3月には39thシングル『Startin'/Born To Be...』が18万枚をセールス。1曲目の「Startin'」は配信でも10万ダウンロードを記録した。
2006年6月には40thシングル「BLUE BIRD」を発売。キウイのCMソングにも起用された。この曲は得意とする爽やかな夏うたに仕上がっており、人気を集めて売上が回復。CDで25万枚、配信で25万ダウンロードを売り上げた。
2006年11月には8thオリジナルアルバム『Secret』を発売し、66万枚をセールス。年間では集計割れを起こし、2006年22位→2007年73位と推移した。アルバム曲のうち、MVが制作された「JEWEL」と「momentum」の2曲が10万ダウンロードを記録している。前者は2006年末の紅白歌合戦でも歌唱曲に選ばれた。
2007年2月には2枚のベストアルバム『A BEST 2 -BLACK-』『A BEST 2 -WHITE-』を発売。前者が70万枚の売上で2007年の年間7位、後者が72万枚の売上で2007年の年間5位を獲得した。『A BEST』の続編だったが、2枚とも収録対象が2005年発売曲までだったのが勿体なく、直近のヒット曲「BLUE BIRD」が入っていたらもう少し売上が伸びたかもしれない。
2枚のうち、『A BEST 2 -BLACK-』にのみ新曲「part of Me」が収録されており、同曲は配信で10万ダウンロードを記録した。
GUILTY~A COMPLETE
2007年7月には41stシングル『glitter/fated』を発売し、16万枚をセールス。このうち「glitter」が25万ダウンロード、「fated」が10万ダウンロードを記録した。このシングルで初めて表題曲のCD売上と配信売上が明確に逆転した。CD売上だけ見ると2年前までの水準からは落ち込んでいるが、配信売上ではここ数作で昇り調子になっていることが分かる。
当時はCD売上の音楽チャートしかなかったため、CD売上の減少のみが目立つ結果となってしまったが、表題曲は安定感のある爽やかな夏うたとして支持されており、CD売上の割に人気になっていると当時感じていた人は多かったのではないだろうか。その人気は配信で可視化されていた。CDと配信の合算売上では数年前から全く衰えていないことが分かる。
2007年9月には42ndシングル「talkin' 2 myself」を発売し、CDで10万枚、配信で10万ダウンロードを売り上げた。
2007年12月には自身初の配信限定シングル「Together When...」を発売。配信限定だったこともあり、これまでにないペースで配信売上を重ね、配信開始から僅か3週間で25万ダウンロードを記録した。浜崎あゆみは11曲で自己最高配信売上である25万ダウンロードを記録しているが、到達所要日数では本曲が自己最速記録となる。このことを以て冒頭に示した配信売上ランキングでは本曲を1位としている。
繰り返しになるが、当時は数字が見える週間配信売上ランキングが国内に存在しなかったため、配信限定シングルは発売が認識されにくく、人気が過小評価されがちとなっていた。実際にはCD売上と遜色ない数字を叩き出しており、適正な人気把握のため参照が必須のデータとなっていたのである。
2008年元旦には9thアルバム『GUILTY』を発売し、56万枚をセールスした。アルバム曲のうち、「MY ALL」が10万ダウンロードを記録した。この曲はファンの間で人気が高く、2015年にコンサート会場で実施したファン投票では1位にもなっている。
「Mirrorcle World」vs「羞恥心」
2008年4月には、『GUILTY』収録曲「Mirror」をアレンジのうえカットした43rdシングル「Mirrorcle World」を発売。CDで19万枚、配信で10万ダウンロードを記録した。
このシングルは週間CD売上チャートにおいて、後に配信ミリオンを達成する大ヒットになった羞恥心「羞恥心」に1位を攫われそうになっていたところ、緊急販促商法を実施して1位を奪取したことが有名であるが、この年から始まったBillboard JAPAN Hot 100では順当に羞恥心1位、本曲2位になっている*6。当時は知名度が低いビルボードであったが、今や楽曲人気指標としての権威と知名度が急拡大しており、当時のビルボードもCD売上チャートよりも楽曲人気指標として機能していた。ビルボードの結果が今後スタンダードになるならば、これ以上本曲の販促商法を批判する必要は一切なくなる。
当時はCD売上チャート連続1位記録の権威が必要以上に肥大化し過ぎてしまっていた。浜崎あゆみも「Free & Easy」から続く17作連続1位記録を更新しないと外野が人気低下に紐付けて騒ぐことが予想されたため、販促商法を実施したものと思われる。しかし、そもそも順位は相対的な数字であるうえ、一度でも2位になれば途切れてしまうような記録が長期的な人気持続の指標になるはずがない。
実際ビルボードに連続1位記録という概念は存在しない。シングルCD表題曲だけでなく、アルバム曲やc/w曲など全ての楽曲がランクイン対象だからである。人気の持続は「連続」よりも「通算」1位獲得週数でチェックすることが適切である。
更に言えば、音楽環境がCDから配信へ移行した今となっては、楽曲人気を確認したいときにシングルCD売上チャートの記録を時代横断的に参照することは一切意味のない行為である。
2008年9月には、デビュー10周年を記念したシングルコレクション『A COMPLETE ~ALL SINGLES~」を発売。85万枚をセールスし、Billboard JAPAN Top Albums Salesでも2008年の年間9位に入った。このアルバムは今でも決定盤として配信を中心に売れ続けており、特に上述の小説「M 愛すべき人がいて」が話題になって以降は売上を伸ばしている。
2008年- ~配信売上全盛期~
『A COMPLETE ~ALL SINGLES~』発売後のシングルは軒並み配信売上がCD売上を上回るようになり、売上の配信シフトが確立した。2011年以降はシングルCDをあまり発売しなくなり、前述の配信ランキング不在の影響で浜崎あゆみの存在感は減少していたが、実際には配信シングルやアルバム曲が安定して10万ダウンロード以上を記録し続けていた。配信売上全盛期とも言えるのがこの時期である。
この時期の楽曲を配信開始日順に並べたダウンロード売上データは以下のとおり。
2010年まで
2008年12月には44thシングル『Days/GREEN』を発売し、19万枚をセールス。このうち「Days」は25万ダウンロードを記録し、Billboard JAPAN Hot 100では自身初の週間1位を獲得した。
「GREEN」もCD発売1ヶ月前から配信で先行発売されており、10万ダウンロードを記録した。
2009年2月には45thシングル『Rule/Sparkle』を発売し、13万枚をセールス。このうち「Rule」は25万ダウンロードを記録し、Billboard JAPAN Hot 100でも自身2曲目の週間1位を獲得した。現在までのところこの曲が最後のビルボード1位獲得曲となっている。
3月には10thオリジナルアルバム『NEXT LEVEL』を発売し、37万枚を売り上げた。アルバム曲のうち、タイトル曲である「NEXT LEVEL」が10万ダウンロードを記録した。
8月には46thシングル『Sunrise/Sunset ~LOVE is ALL~』を発売し、11万枚をセールス。このうち「Sunrise ~LOVE is ALL~」は配信開始から2ヵ月で25万ダウンロードを達成した。これは配信限定シングルを除けば自己最速記録である。
「Sunset ~LOVE is ALL~」も10万ダウンロードを記録した。
12月には47thシングル『You were.../BALLAD』を発売し、11万枚をセールス。このうち「You were...」が25万ダウンロードを記録した。CDと配信の合算売上では2004年から水準が殆ど変わらず維持されており、驚異的な人気の持続が見て取れる。なおCD売上では本作が最後の10万枚突破作となるが、配信売上はこの後も暫く10万以上を維持することになる。
2010年4月には11thオリジナルアルバム『Rock'n'Roll Circus』を発売し、31万枚を売り上げた。
7月には48thシングル『MOON/blossom』を発売。このうち「MOON」が10万ダウンロードを記録した。
9月には2週連続シングルリリースを展開。第一弾となる49thシングル「crossroad」は10万ダウンロードを記録した。
第二弾となる50thシングル『L』は久々の3曲A面シングルだが、配信売上を見ると、1曲目の「Virgin Road」のみ10万ダウンロードを記録している。本作では順当に1曲目が1番人気となっているようだ。
12月には12thオリジナルアルバム『Love songs』を発売し、27万枚をセールス。アルバム曲のうち、リードトラック「Love song」が10万ダウンロードを記録した。
2011年以降
2011年8月には2ndミニアルバム『FIVE』を発売し、21万枚をセールス。収録曲のうち、リードトラック「progress」が25万ダウンロードを記録した。この曲は年末の紅白歌合戦でも歌唱曲に選ばれた。
2012年2月にはアルバム先行シングル「how beautiful you are」を配信限定で発売し、10万ダウンロードを記録した。
2012年3月には13thオリジナルアルバム『Party Queen』を発売し、14万枚を売り上げた。
2012年8月には夏うたを集めたベストアルバム『A SUMMER BEST』を発売し、13万枚をセールス。新曲「You & Me」も収録され、同曲は配信で10万ダウンロードを記録した。
2012年11月には3rdミニアルバム『LOVE』を発売。CD売上は僅かに10万枚を下回ったが、リードトラック「song 4 u」が10万ダウンロードを記録した。
以降はなかなか10万を超える作品は出なくなるが、コンスタントに新作発売が継続しており、安定した活動が続いている。2014年5月に発売された配信限定シングル「Hello new me」が現時点で最後の10万ダウンロード突破曲となっている。
まとめ
以上まで見てきたとおり、浜崎あゆみは大量の作品を輩出しながらもその殆どをヒットさせている。通常は楽曲を出し過ぎると1曲1曲の印象が薄まり売上のアベレージが低くなってしまうことが予想されるが、これだけ高水準の売上を維持し続けたことは、如何に本人のカリスマ性が支持されていたかということを示している。
また、これだけ大量の楽曲がシングルCD化されながらも、シングルCD化されていない楽曲が多く配信売上認定を受けていることは特筆すべき点であり、それだけ大量の人気曲を生み出していたことの証拠でもある。
これらの楽曲を手っ取り早く入手するには、2008年に発売されたシングルコレクション『A COMPLETE ~ALL SINGLES~』がおすすめ。ただし、複数A面曲は機械的に1曲目しか収録されていないので注意が必要だ。ここではその抜けを補完するアイテムとして、2001年発売の『A BEST』と2012年発売の『A SUMMER BEST』も推奨する。特に後者は2009年以降のヒット曲も適度に収録されており、時代網羅性が高い。
なおオールタイムベストは『A COMPLETE ~ALL SINGLES~』以降10年以上発売されていない。2009年以降も多くのヒット曲を輩出していたことは確認したとおりであり、需要は高いと思われる。エイベックスにしては珍しく出し惜しみしていると言えるような状況だが、将来的な発売に期待したいところである。
この記事で紹介したダウンロードデータは日本レコード協会HP内の下記サイトで検索することができる。新たな発見の宝庫なので、時間があれば好きな曲やアーティストのダウンロード数を検索してみることをおすすめする。
*1:2010年に公開されたショートバージョンの再生数。2019年にフルMVが公開されている。
*2:ただ、他のノミネート作品には桑田佳祐「白い恋人達」やEvery Little Thing「fragile」など本曲を上回るCD売上を記録した曲もあり、この結果に納得するにはやや相手が悪い。
*3:ショートバージョン
*4:他のノミネート作品のうち、EXILE『Breezin'~Together~』は36万枚、氷川きよし「白雲の城」は32万枚、水森かおり「鳥取砂丘」は27万枚、中島美嘉「雪の華」は24万枚と、かなりの団子状態だった。
*5:後になって、中島美嘉「雪の華」が配信ミリオンを達成しており、長期的な人気では大きく水を開けられている。
*6:当時の集計対象はCD売上とラジオエアプレイ数。配信が集計対象外だった代わりにラジオが楽曲人気の捕捉にしばしば貢献していた。