Billion Hits!

フル配信ダウンロード売上、MV再生回数、ストリーミング再生回数、Billboard JAPANランキングデータなどを通じて国内の人気楽曲を把握するブログ

EXILEの配信ダウンロード売上ランキング

EXILEは2001年に「Your eyes only 〜曖昧なぼくの輪郭〜」でデビューした男性ダンス&ボーカルグループ。デビュー間もなくブレイクを果たし、以降もメンバーの入れ替えを経ながらも絶大な人気を長期間にわたり持続させた。日本レコード協会によれば、これまでにダウンロード売上10万以上を記録した曲は60曲、うち8曲がダウンロードミリオンを記録しており、認定総ダウンロード売上は2,050万となっている。すべて歴代1位の記録であり、認定総ダウンロード売上2,000万超えは史上唯一である。これらのデータをランキング化した表は以下のとおりである。この表をもとにしながら、EXILEのヒット史を振り返る。

 

 

(ランキング作成方法および歴代ダウンロード売上ランキングはこちら↓)

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(歴代アーティスト別ダウンロード売上ランキングはこちら↓)

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第一章(2001年~2006年)

 

第一章はボーカル2人(ATSUSHI、SHUN)+パフォーマー4人(HIRO、MATSU、USA、MAKIDAI)の6人体制。このうち2020年1月現在もEXILEのボーカルまたはパフォーマーとして活動しているのはATSUSHIのみである。

 

第一章の期間に発表された楽曲に絞って配信開始日順に並べたダウンロードデータは以下のとおり。

 

 

第一章の時期(2001年~2006年)は、音楽を聴く方法の主流がCDからダウンロードに徐々に入れ替わっていった時期である。したがってこの時期の楽曲のヒット規模を知るにはCD売上データと併せて見た方が良いのだが、着うたの普及が進んだ後期になるにつれてダウンロードで目立った成績を残す曲が増えていることが分かる。

 

デビュー曲「Your eyes only 〜曖昧なぼくの輪郭〜」は、最高視聴率21.8%を記録したドラマできちゃった結婚劇中歌に起用されたことでいきなりCDで25万枚を売り上げるヒットとなった。配信でも10万ダウンロードを記録。この勢いで1stアルバム『our style』29万枚をセールスした。

 

2002年4月には4thシングル「song for you」が発売され、10万ダウンロードを記録。

 

2003年2月には2ndアルバム『Styles Of Beyond』を発売し、1stを上回り43万枚をセールスする好調ぶりを記録した。このアルバムにはCDで10万枚を超えたシングルが収録されていないが、それでも前作超えとなった理由の一つには、アルバム発売の1週間前に先行シングルとして発売された「We Will 〜あの場所で〜」の人気も大きい。先行シングルという性質上CD売上はたったの3万枚だが、人気は配信売上で可視化されており、10万ダウンロードを記録している。この曲は第二章で再録されたバージョンも存在するが、そちらも別途10万ダウンロードを記録していることから、偶然ではなく確かな人気曲であると読み取ることができる。

 

2003年5月には8thシングル『Breezin' 〜Together〜』を発売。4曲A面という収録内容の豪華さもあり、CDで36万枚を売り上げるヒットとなった。1曲目に収録されている「Together」は、最高視聴率17.4%を記録したドラマホットマンの主題歌に起用された。今のEXILEのイメージにも通じるキャッチーなアップテンポナンバーで、配信でも10万ダウンロードを記録した。なおYouTubeには第三章の時期のライブ映像、しかもショートバージョンしかアップされていないという惜しい事態になっている。


EXILE / EXILE TRIBE LIVE TOUR 2012 -Together short version-

 

2003年9月にはリミックスアルバム『The other side of EX Vol.1』が発売され、11万枚をセールス。

 

2003年11月には4週連続でシングルCDをリリース。その第一弾は、リーダーのHIROがかつて在籍していたダンス&ボーカルグループZOOのミリオンヒット曲Choo Choo TRAINのカバーで、CD28万枚、配信25万ダウンロードを記録するヒットを飛ばした。

 

第二弾から第四弾は完全限定生産とされたため、全てCD売上は5万枚にも満たなかったが、第二弾の「Eternal...」と第四弾の「O'ver」は配信で10万ダウンロードを記録している。

 

2003年12月に発売された3rdアルバムEXILE ENTERTAINMENT』は自身初のミリオンセラーとなる117万枚を売り上げる大ヒットとなり、年間でも2004年の4位を獲得した。

 

3rdアルバムのミリオンヒットでEXILEの人気は上昇し、2004年に発売されたシングルは軒並み好調なセールスを記録。まず5月に発売された14thシングル『Carry On/運命のヒト』がCDで23万枚を売り上げた。なお配信では「運命のヒト」のみ25万ダウンロードを記録しており、CD1曲目収録の「Carry On」よりも2曲目収録の「運命のヒト」の方が人気が高いことが配信売上から読み取ることができる。

 

続く15thシングル「real world」はCDで12万枚を記録。

 

9月にはEXILEに関連するグループが結集した企画アルバム『HEART of GOLD 〜STREET FUTURE OPERA BEAT POPS〜』47万枚をセールスした。当時の名義はEXILESで、今で言うEXILE TRIBEのイメージである。

 

12月に発売された17thシングル「HERO」もCDで18万枚をセールスした。「HERO」は配信でも10万ダウンロードを記録する人気曲となっている。2005年元旦には第一章の楽曲をまとめたベストアルバム『PERFECT BEST』を発売。162万枚をセールスする大ヒットとなり、年間でも2005年の5位を獲得した。

 

2005年8月には18thシングル「EXIT」がCDで20万枚をセールス。

 

そして12月には第一章最大のヒット曲「ただ・・・逢いたくて」が誕生。auLISMO」CMソングに起用された珠玉のバラードとしてヒットし、CDでは56万枚を売り上げ、年間でも2006年の6位に入った。また、配信でも75万ダウンロードを売り上げた。2005年がCDからダウンロードへの移行期であったことを示すように、見事にCDとダウンロードで売上が二分しており、参考程度ではあるが、合計すればミリオンである。


EXILE / ただ・・・逢いたくて -Short version-

 

なおこの曲に限らず、YouTubeに上がっている第一章の楽曲のMVは第二章で撮り直したバージョンとなっていることが多い。この曲も、TVなどで紹介されるときは必ず第二章のMVと音源が流れる。第一章のMVは本人非出演だがドラマ仕立てになっており、MVの監督は映画「NANA」も手がけた大谷健太郎。個人的には第一章の音源とともにこのMVも楽しめれば良いなと思うのだが、全くスポットを浴びることがなくなっているのは残念だ。

 

ここまで振り返ると、CD売上が低い曲や、両A面シングルの2曲目であっても、配信では好調なダウンロード売上を記録しているケースがいくつか見受けられた。CD売上だけで楽曲人気を測ることは難しいことが分かるだろう。他にも多くのアルバム曲が配信10万または25万ダウンロード認定を受けている。

 

そこで、そういった第一章の人気曲を可視化すべく、CD売上との対比表を以下に示し、該当曲に色を付した。

 

また、この時期は他アーティストとのコラボレーションも積極的に行い、確かな売上実績を残している。2005年にはGLAYとのコラボが実現し、GLAY×EXILE名義で出したシングル「SCREAM」はCDで53万枚を売り上げ、年間でも2005年の5位を獲得。配信でも10万ダウンロードを記録した。

 

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2006年には倖田來未とのコラボも実現し、EXILE & 倖田來未名義で出したシングル「WON'T BE LONG」CD23万枚、配信25万ダウンロードを記録した。

 

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倖田來未とのコラボは第一章と第二章の過渡期の狭間に発売されたため、ボーカルはATSUSHIのみの参加となっている。2006年3月に発売された4thオリジナルアルバム『ASIA』を以て、SHUNが方向性の違いを理由に脱退し、第一章は幕を閉じた。『ASIA』は52万枚を売り上げるヒットとなった。

 

第二章(2006年~2008年)

 

第二章は脱退したSHUNに代わる新ボーカルTAKAHIROとパフォーマーAKIRAが加入した7人体制。先に結論を言ってしまえばこの時期の人気はとにかく絶大であり、最も多くダウンロードミリオンを輩出したほか、CDアルバムのミリオンセラーも多く輩出した。

 

第二章の期間に発表された楽曲に絞って配信開始日順に並べたダウンロードデータは以下のとおり。

 

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まず第二章始動第一弾シングルとして2006年12月に発売された「Everything」配信25万ダウンロード、CD15万枚を記録する上々の滑り出し。そして2007年になるとヒット曲を大連発することになる。

 

まず1月に発売された「Lovers Again」は「ただ・・・逢いたくて」に続くauLISMO」CMソングに起用されたバラードナンバーとして大ヒットし、配信ミリオンを達成。松尾潔Jin Nakamuraが手掛けた美しいメロディーとグルーヴィーなミドルテンポが支持された。なおこの曲のCD売上は25万枚。当時は数字つきのリアルタイムのダウンロードチャートが日本に存在しなかったので、CD売上だけ見ていた当時の私は

 

『体感的には「ただ・・・逢いたくて」と同程度の大ヒットなのになぜ「ただ・・・逢いたくて」から25万以上もCD売上が減ったんだ…?』

 

と不思議で仕方なかったのだが、なんてことはない、25万人が楽曲購入方法をCDからダウンロードに変えただけだったのである(「ただ・・・逢いたくて」75万ダウンロード→「Lovers Again」100万ダウンロード)。

 

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EXILE / Lovers Again

 

さらに、「Lovers Again」から1か月で早くも発売された次のシングル「道」配信ミリオンを達成する大ヒットを記録。なおこの曲を表題にしたシングルCDは完全限定生産とされ、CD売上は11万枚に留まっている。大ヒット曲「Lovers Again」の直後の新曲かつアルバム発売を控えていたこともあって、EXILE陣営はこの曲をCDでたくさん売る気はあまりなかったようだ。しかし、卒業シーズンの定番バラードとして定着し、ダウンロードが売れに売れ、「Lovers Again」に劣らない人気を獲得するに至っている。

 

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EXILE / 道

 

3月にはアルバムEXILE EVOLUTION』が発売され、76万枚をセールス。間髪入れず5月には次のシングル「SUMMER TIME LOVE」を発売し、配信25万ダウンロード、CD13万枚を記録するヒットとなった。

 

9月には早くも2007年4枚目のCDシングル『時の描片 〜トキノカケラ〜/24karats -type EX-』を発売し、CDでは14万枚をセールス。1曲目の「時の描片 〜トキノカケラ〜」は、最高視聴率14.1%を記録したドラマ山おんな壁おんなの主題歌に起用され、50万ダウンロードを記録した。なおこの曲はCDチャートで発売週にL'Arc~en~Ciel「MY HEART DRAWS A DREAM」、宇多田ヒカル「Beautiful World」との僅差の三つ巴となり、ラルクに次ぐ2位となった。


EXILE / 時の描片 ~トキノカケラ~

 

11月には2007年5枚目のシングルとなるI Believeを発売。表題曲はキャッチーなウィンターラブソングで、「music.jp」CMソングなどのタイアップがつき、配信75万ダウンロード、CD14万枚を記録した。2007年のダウンロードにおけるヒット曲の大連発は、12月に発売されたアルバムEXILE LOVE』の売上の爆発につながり、同作は148万枚を売り上げ、Billboard JAPAN Top Albums Salesでは2008年の年間1位となった。また、当時の大人気バラエティ番組「めちゃ2イケてるッ!」内の企画でナインティナイン岡村隆史EXILEがコラボしたユニットオカザイルによるプロモーションも人気を強力に後押しした。


EXILE / I Believe

 

セールス的に大成功に終わった2007年の流れを受け、EXILEは2008年を「EXILE PERFECT YEAR 2008」と銘打ち一大プロジェクトを展開。その中で「ベストアルバムを3枚リリース」することを企画の一つにした。

 

第一弾はEXILE CATCHY BESTで、その名の通りキャッチーなポップス路線の曲を集めたベストアルバム。先行シングルとして発売された両A面CD『Pure/You're my sunshine』が発売され、CDで16万枚をセールスした。配信では、1曲目の「Pure」50万ダウンロード、2曲目の「You're my sunshine」10万ダウンロードを記録した。こうして発売されたアルバムは128万枚を売り上げる大ヒットとなり、Billboard JAPAN Top Albums Salesでも2008年の4位を獲得した。


EXILE / Pure

 

EXILE CATCHY BEST』で初めてCD音源化された曲のうち、特に大人気となったのが銀河鉄道999 feat. VERBAL (m-flo)」。この曲はゴダイゴが1979年に発売し66万枚を売上げたヒットシングル表題曲銀河鉄道999のカバーとして人気を博し、発売4年後の2012年に75万ダウンロードを突破し、9年が経過した2017年にはついに配信ミリオン認定を受けるに至った。

 

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EXILE / 銀河鉄道 999

 

第二弾はEXILE ENTERTAINMENT BESTで、新曲、カバー、第一章のアルバム曲の再録音源などを織り交ぜた構成。アルバムセールスは63万枚を記録した。

 

第三弾はEXILE BALLAD BESTで、その名の通り数多くの大ヒットバラードナンバーを収録したベストアルバム。「ただ・・・逢いたくて」「Lovers Again」「道」が収録されているだけでも非常に強力なのだが、ベストアルバムの先行シングルとして発売された『The Birthday~Ti Amo~』の表題曲「Ti Amo」がダメ押しとなる特大ヒットを記録。自身唯一にして歴代で9曲しか達成していない配信ダブルミリオンを達成した。CDでは32万枚をセールスしている。この曲が2008年のレコード大賞を受賞したことは文句なし*1

 

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本曲は「Lovers Again」に続いて松尾潔Jin Nakamuraが手掛けており、女性目線の報われない恋を描いた歌詞の切なさや格調高く歌い上げるATSUSHIとTAKAHIROのボーカルが支持された。


EXILE / Ti Amo

 

アルバム発売1週前にはWham!の大ヒット曲を日本語でカバーしたLAST CHRISTMASを先行シングルとして発売し、配信25万ダウンロード、CD22万枚を記録した。

 

こうして12月に発売されたEXILE BALLAD BESTは当然のように大ヒットとなり、自身最大のCDアルバムセールスとなる185万枚を記録。Billboard JAPAN Top Albums Salesでは2009年の年間1位を獲得した。年間1位は前年の『EXILE LOVE』に続き2年連続となる。これ以上ない大成功と思われた2007年に劣らないどころか超えるほどの大成功のうちに2008年のPERFECT YEARは締めくくられた。

 

ここまで華々しい活躍となった第二章を振り返ったが、あまりにも絶大な人気であったためアルバム曲やc/w曲もジャンジャン10万以上のダウンロード数を記録するヒットとなっている。こういった曲はCD売上だけ見ても把握しにくいので、第一章同様CD売上との対比表を作成し、該当曲に色を付した。

 

第三章(2009年~2013年)

 

PERFECT YEARの翌年、EXILEは思い切った策にでる。HIROプロデュースのもと、同じ事務所所属のダンス&ボーカルグループとして活動していた(二代目)J Soul Brothersを全員EXILEのメンバーに加入させたのである。(二代目)J Soul Brothersは2007年に始動し、2009年2月25日にアルバムJ Soul Brothersでデビューしたが、そのわずか4日後の3月1日に加入が発表された。アルバムは日本レコード協会より10万枚出荷認定を受けるなど好調な売れ行きであり、それを確認したうえで加入がプラスになるという判断がされたということだろうか。

 

追加されたメンバーはボーカル&パフォーマー2人(NESMITH、SHOKICHI)とパフォーマー5人(KENCHI、KEIJI、TETSUYA、NAOTO、NAOKI)の合計7名となり、既存の7名からメンバーが14名に倍増することとなった。そんな中でも絶大な人気は持続することとなり、第三章でも多くのダウンロードミリオンが輩出された。大人気を維持したまま体制の進化を遂げたことは特筆すべき点である。

 

第三章の期間に発表された楽曲に絞って配信開始日順に並べたダウンロードデータは以下のとおり。

 

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2009年~2010年

 

第三章始動第一弾シングルとして発売されたのは『THE MONSTER~Someday~』。表題曲「Someday」TOYOTA「WISH」CMソングなどのタイアップが付き、配信50万ダウンロード、CD27万枚を記録するヒットとなった。Billboard JAPAN Hot 100では2009年の年間10位に入っている。この曲で2年連続となる2009年の日本レコード大賞を受賞したことに文句はない*2


EXILE / Someday

 

第三章第二弾シングルとして発売されたのは『THE HURRICANE~FIREWORKS~』。表題曲FIREWORKS25万ダウンロードを記録している。このシングルで面白いのは、なんとc/wである「優しい光」が表題曲を上回る50万ダウンロードを記録していることである。このシングルはCDでは27万枚を売り上げたが、実はこの売上を牽引していたのは「FIREWORKS」ではなく「優しい光」だったということかもしれず、これはCD売上だけ見ていては気づくことができない人気である。


EXILE / 優しい光

 

第三章第三弾シングルとして発売されたのは、『THE GENERATION~ふたつの唇~』。表題曲「ふたつの唇」は最高視聴率18.7%を記録したドラマ東京DOGS主題歌に起用されたこともあり、これが大ヒット。CD売上は前作とほぼ変わらない28万枚だったが、配信売上の勢いが凄まじかった。配信開始は2009年10月1日だが、10月のうちに25万ダウンロード、翌11月には75万ダウンロード、そして12月に配信ミリオン認定を受領した。

 

配信から2ヶ月でのミリオン認定は歴代4位となるスピード記録で、これは最終的にダブルミリオンとなった「Ti Amo」をも上回る自身最速記録となる。この曲より速く配信ミリオン認定を受けた作品はGReeeeN「キセキ」「愛唄」、米津玄師「Lemon」の3曲しかない。ダブルミリオンに到達していないのが不思議なほどの爆発的な売れ行きであり、現状100万認定に留まっているものの実数は190万近くに到達しているのではないかと勝手に想像してしまう。

 

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本曲では「Lovers Again」「Ti Amo」で絶大な人気実績を示した松尾潔Jin Nakamuraが手掛けており、まさに当時最強クラスの人気タッグによって作られた王道ウィンターバラードとしてみたび顕著な人気が記録された。


EXILE / ふたつの唇

  

12月には、2009年に発売された多くのヒット曲を収録したオリジナルアルバム愛すべき未来へが発売され、129万枚をセールスする大ヒットとなった。Billboard JAPAN Top Albums Salesでは2010年の年間1位を獲得。これで同チャート3年連続の年間1位となった。

 

翌2010年もEXILEの大活躍は継続したが、奇策も展開された。6月に発売されたCD『FANTASY』ダブル・マキシ・シングルと銘打たれ、新曲を8曲収録したシングルという既存のシングルの定義を揺るがす発想の商品であった。1曲目に収録された「VICTORY」がリード曲として扱われた。この前例のない商品に対して各音楽チャートの判断は異なり、オリコンは「シングルは新曲4曲まで」という定義を厳格に運用してアルバムチャートにランクインさせた一方、Billboard JAPANではアーティストの意向を汲んでシングル扱いとした。その結果「VICTORY」はBillboard JAPAN Hot 1002週連続1位を獲得*3、し、年間でも2010年の7位にランクインした。なお『FANTASY』のCD売上は47万枚だったが、「VICTORY」はダウンロード数25万で、当時のEXILEとしてはあまり多くない「CD売上がダウンロード数を上回るシングルCDリード曲」となった。


EXILE / VICTORY

 

2010年下半期には新たな大ヒット曲が2曲誕生した。1曲目は9月に発売された「もっと強く」。2010年公開の邦画実写映画では第1位となる興行収入80.4億円を記録したヒット映画「THE LAST MESSAGE 海猿主題歌に起用されたことから楽曲も大ヒットし、CD売上は23万枚だったが配信でミリオンを達成した。

 

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なお海猿」の主題歌は必ずヒットするという法則があり、ドラマ主題歌であるB'z「OCEAN」CD売上50万+ダウンロード25万。映画主題歌は一作目のジャーニー「オープン・アームズ」10万ダウンロード、二作目の伊藤由奈「Precious」75万ダウンロード、三作目の本曲が100万ダウンロード、四作目のシェネル「ビリーヴ」100万ダウンロードという凄まじい成績が残されている。


EXILE / もっと強く (full ver. / オフィシャル動画)

 

続いて10月に発売されたのは「I Wish For You」。この曲は「2010年バレーボール女子世界選手権」テーマソングに起用された。同選手権で日本は3位となる活躍となり、3位決定戦の視聴率は20.8%となるなど世間の注目度も高かったことから楽曲の普及にもつながった。CD売上は27万枚だったが、配信でミリオンを達成する大ヒットを記録。この曲で3年連続となる2010年の日本レコード大賞を受賞したことは文句なし*4

 

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EXILE / I Wish For You (full ver. / オフィシャル動画)

 

ここまで第三章のうち2009年から2010年までのヒット史を振り返ったが、やはり絶大な人気であったことから引き続きアルバム曲やc/w曲からも10万以上のダウンロード数を記録するヒットが続出している。再びCD売上との対比表を作成し、CD売上だけでは見えづらいヒット曲に色を付した。

 

2011年~2013年

 

2011年以降になると、音楽業界の様相も激変し、ついにシングルCD売上と楽曲人気との間の相関性が消滅した。そんな中でもEXILEは引き続きダウンロードで好調な成績を上げ続けた。

 

2月には、3月発売のオリジナルアルバム『願いの塔』の先行シングル「Each Other's Way~旅の途中~」が発売され、表題曲が25万ダウンロードを記録。『願いの塔』も、発売時期が震災と重なるという不運がありながらも、76万枚をセールスした。Billboard JAPAN Top Albums Salesでは、初回限定盤のみ丸々1Disc分カバーソング集が付属していたことから別商品扱いされ、通常盤と別々に集計された結果、限定盤が2011年の年間8位通常盤が同29位を獲得した。

 

9月には、東日本大震災の復興支援を目的としたチャリティーソング「Rising Sun」を発売。日本を元気にするという目的のもと、多くの場面で歌われたこともあり、楽曲は時間をかけて普及していき、発売から4年後の2015年9月に配信ミリオンを達成した。なお3年連続で受賞していた日本レコード大賞は、チャリティーソングという性質もあり、辞退することを決断。ただ、普通にノミネートされていれば4連覇していてもおかしくはない大ヒットであった*5

 

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EXILE / Rising Sun -short version-

 

なお、「Rising Sun」はEXILE ATSUSHIのソロ曲「いつかきっと・・・」との両A面シングルとして発売されていたが、ソロ曲も25万ダウンロードを記録するヒットとなっている。ここで、EXILE ATSUSHIのソロナンバーのダウンロード売上ランキングも紹介する。見てのとおり、ソロでも合計6曲10万ダウンロード以上を記録する活躍を見せている。

 

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11月には、両A面シングルCD1曲目「あなたへ」25万ダウンロードを記録。

 

翌2012年1月1日には、オリジナルアルバムEXILE JAPAN』を発売し、76万枚をセールス。Billboard JAPAN Top Albums Salesでは2012年の年間10位を獲得。アルバム収録曲のうち、「NEVER LOSE」10万ダウンロードを記録した。

 

2012年に発売されたシングルからは、「ALL NIGHT LONG」10万ダウンロードを記録。12月にはベストアルバムEXILE BEST HITS -LOVE SIDE / SOUL SIDE-』を発売し、62万枚をセールス。Billboard JAPAN Top Albums Salesでは2013年の6位を獲得した。

 

2013年には奇策が展開された。4月に発売されたシングルEXILE PRIDE 〜こんな世界を愛するため〜CD売上でミリオンを達成させるためにあの手この手を使用。ライブチケットにCDを付属させたり、廉価のMUSIC CARDを大量購入させたりする施策などを通じて100万枚に到達させた。すでに配信ミリオンを多数輩出していたなかでCD売上にこだわる必然性は疑問であった。なお特に販促商法を施していない配信では、25万ダウンロード認定を受けており、楽曲がヒットしていないわけではないので、この曲で2013年の日本レコード大賞を受賞したことに文句は出ない


EXILE / EXILE PRIDE ~こんな世界を愛するため~

 …はずがなかった*6

 

その後もシングル「Flower Song」「No Limit」が発売され、それぞれ10万ダウンロードを記録した。2013年末にはEXILEのリーダーHIROがパフォーマーを引退。EXILEは再び大きな変化を迎えることになった。

 

第四章(2014年~)

 

HIRO引退後の2014年4月、EXILE TRIBEから三代目J Soul Brothersの岩田剛典、GENERATIONSの白濱亜嵐と関口メンディー、さらに山本世界、佐藤大樹の5名がパフォーマーとしてEXILEに加入した(先述3名は既存グループと兼務)。2015年12月末には、第一章からのメンバーであるMATSU、USA、MAKIDAIがパフォーマーを引退。この結果、現在のメンバーの合計は15名となる。


第四章の期間に発表された楽曲でダウンロード認定を受けている曲は以下のとおり。

 

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2019年11月現在、該当認定曲は「Ki・mi・ni・mu・chu」の1曲だけであるが、この曲はYouTubeにおいて自己最高MV再生数となる3,000万回再生を記録している。サントリー「ザ・モルツ」CMソングに起用され、キャッチーなサビが受けたことでダウンロードでも25万認定を受けるヒットとなった。


EXILE / Ki・mi・ni・mu・chu

 

ダウンロード認定曲が少なくなっている要因は外部環境が変化していることも大きく、音楽を聴く手段がダウンロードからYouTubeSpotifyなどのストリーミングサービスに移行していることが挙げられる。今後もヒット曲はダウンロード売上ではなくMV再生数、ストリーミング再生数で顕在化することになるだろう。

 

アルバムは2015年発売の10th『19 -Road to AMAZING WORLD-』28万枚、2016年発売のベスト『EXTREME BEST』24万枚、2018年発売の11th『STAR OF WISH』18万枚を売り上げている。

 

メンバーのソロ活動も展開され、EXILE TAKAHIROによるソロ活動では、2曲が10万ダウンロードを記録した。

 

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他にも、懐かしのヒット曲にもスポットが当たっており、第一章の楽曲でSHUNが作詞した「羽1/2」清木場俊介のベストアルバムでATSUSHIとともにセルフカバーされ、このバージョンが10万ダウンロードを記録した。

 

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このように、途中2016年から2018年にかけてATSUSHIの海外留学に伴う活動休止もあったものの、第四章でもコンスタントにヒット曲は輩出され続けている。

 

EXILE TRIBE・他グループの売上

 

また、この時期になると、既存のグループ枠に囚われない活動形態も増え始めた。EXILEに関連するグループ全体で活動するEXILE TRIBEはその最たる例である。EXILE TRIBE名義ではこれまでにシングル24karats TRIBE OF GOLD、アルバムEXILE TRIBE REVOLUTION』の収録曲「24WORLD」の2曲が10万ダウンロード以上を記録している。アルバムは33万枚を売り上げた。また、2016年にはEXILE TRIBEによる総合エンターテイメントプロジェクト「HiGH&LOW」の一環で、プロジェクトで使用された楽曲を集めたアルバム『HiGH&LOW ORIGINAL BEST ALBUM』を発売し、36万枚をセールス。Billboard JAPAN Hot Albumsでは2016年の年間9位を獲得した。

 

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さらに、EXILE TRIBEの他グループもこの時期それぞれ活躍した。以下に主なグループの売上をまとめた。

 

 

以下個別記事にまとめている。

 

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  • GENERATIONS

 

2012年にデビューした7人組ダンス&ボーカルグループ。10万ダウンロード超えは以下の4曲。

 

 

なおEXILE TRIBEには他にもEXILE THE SECOND、THE RAMPAGE、FANTASTICSなどのグループが存在するが、これらのグループは今のところ10万ダウンロードを超えた曲を持っていない。

 

まとめ

 

以上まで見てきたとおり、EXILEはデビューから約20年に渡りヒット曲を大連発するとともに、規模の拡大による一大勢力を築き、日本を代表するダンス&ボーカルグループの地位を確立することに成功していた。この活躍が記録・記憶ともに後世まで残っていくことは間違いない。

 

あまりにもヒット曲が多すぎるうえに、ベストアルバムも多く発売されているので、初心者が何をまず手に取れば良いのか分かりにくい状況ではあるが、おすすめのベスト盤は2012年発売のEXILE BEST HITS -LOVE SIDE / SOUL SIDE-』配信ミリオン8曲が全て収録されているベスト盤はこれだけである。

 

EXILE BEST HITS -LOVE SIDE / SOUL SIDE- (初回生産限定) (2枚組ALBUM+3枚組DVD)

EXILE BEST HITS -LOVE SIDE / SOUL SIDE- (初回生産限定) (2枚組ALBUM+3枚組DVD)

  • アーティスト:EXILE
  • 出版社/メーカー: rhythm zone
  • 発売日: 2012/12/05
  • メディア: CD
 

  

ただし本作は第二章・第三章からの選曲が中心であるため、全章の楽曲をヒストリカルに押さえるためのアイテムとして、2016年発売の『EXTREME BEST』もおすすめする。

 

EXTREME BEST(CD3枚組+DVD4枚組)(スマプラ対応)

EXTREME BEST(CD3枚組+DVD4枚組)(スマプラ対応)

  • アーティスト:EXILE
  • 発売日: 2016/09/27
  • メディア: CD
 

 

注意すべきは、上記2枚は何れも第一章の楽曲が第二章で録り直されたバージョンでの収録となっていること。SHUNの声が聴きたいという場合は、第一章の時期に発売されたアルバムを入手する以外ない。

 

ちなみに、ここで紹介したダウンロードデータは日本レコード協会HP内の下記サイトで検索することができる。ダウンロード数はCD売上枚数と比べあまり知られていないので、時間があれば検索して新たな発見を楽しむのも良いかもしれない。

 

www.riaj.or.jp

 

 

*1:対抗馬となるノミネート作品には、さらに上をいく配信トリプルミリオンを記録した青山テルマ feat. SoulJa「そばにいるね」がおり、この曲と比べてしまうとさすがに相手が悪いが、絶対値で見れば受賞は何らおかしくない特大ヒットである。

*2:ただし、同年暮れに発売された「ふたつの唇」は「Someday」を上回る配信ミリオンを記録している。また、対抗馬となるノミネート作品には後に配信ミリオンを記録する坂本冬美また君に恋してる」といきものがかり「YELL」がいた。ノミネート作品が発表された2009年11月時点では「Someday」「ふたつの唇」「YELL」は25万ダウンロードで並んでおり、「また君に恋してる」は人気爆発前だったが、発売時期の差を考えれば「ふたつの唇」の方が圧倒的に勢いがあることは自明であり、結果論ではいきものがかり坂本冬美の方がよりヒット規模が大きかった。それでも、絶対値で見れば「Someday」が受賞してもおかしくないヒットを記録していることに変わりはない。

*3:この間オリコンの1位は木村カエラRing a Ding Dong」、TOKIO「-遥か-」が獲得していた。TOKIOに関しては、Sound Horizonとの1位争いで劣勢となる中、緊急販促商法を実施しての1位だったため物議を醸しており、結果的にはビルボードの方が平和的なチャートになっていた。

*4:ただし、EXILE自身、この曲より「もっと強く」の方が人気が高いのではないかと思わせるデータが複数あり、MV再生数は「もっと強く」の方が高いほか、配信ミリオン到達所要時間でも「もっと強く」が2年7ヶ月なのに対し「I Wish For You」は4年10ヶ月を要している。また、対抗馬となるノミネート作品のうち配信ミリオンを記録した曲では、いきものがかり「ありがとう」のミリオン到達所要日数は2年7ヶ月、AKB48「Beginner」は同3年3ヶ月。これらの楽曲と比較してしまうと相手が悪いが、それでも絶対値で見れば「I Wish For You」が受賞しても何らおかしくない大ヒットを記録していることに変わりはない。

*5:ちなみにこの年のノミネート作品には、同じ配信ミリオンを記録したJUJU「この夜を止めてよ」とAKB48フライングゲット」がおり、ミリオン到達所要時間はJUJUが3年2ヵ月、AKB48が2年5ヶ月。大賞はAKB48が受賞したが、EXILEが参戦していたとしてもAKB48の大賞には何の文句もない結果であった。

*6:日本レコード大賞は審査基準の一つに「大衆の支持」を掲げているが、すでにCD売上と大衆の支持の間に相関性はなくなっており、配信ダウンロード数が当時の楽曲人気指標の主流であった。したがって、CDミリオンでは受賞要件を満たさない。「EXILE PRIDE」は25万ダウンロードを記録したヒット曲ではあるが、2013年末時点では10万ダウンロードにすら到達しておらず、2014年7月に10万、2015年2月に25万ダウンロードに達した比較的遅咲きのヒット曲。選考当時はまだ楽曲がヒットしたといえる証拠は何もなかった。一方で対抗馬となるノミネート作品には、2013年11月時点で10万ダウンロード、のちに配信ミリオンを記録するAKB48恋するフォーチュンクッキー」や、2013年11月時点で35万ダウンロード、のちに50万ダウンロードを記録するきゃりーぱみゅぱみゅにんじゃりばんばん」がいた。EXILEの大賞受賞理由は、EXILEのリーダーHIROが2013年末を以て勇退するため、花道として大賞を用意したと言われている。