Vaundyは2019年に「pain」のMV投稿で本格的に活動開始した男性ソロシンガーソングライター。デビューから1年足らずで大ブレイクを果たし、以降も現在進行形でヒット曲を輩出し続けている。これまでにストリーミング再生数5,000万以上を記録した曲は18曲で、認定総再生数は32.9億(歴代7位)となっている。これらのデータをランキング化した表は以下のとおりである。この表をもとにしながら、Vaundyのヒット史を追っていく。
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~2020年
デビューから2020年までに発売された楽曲を配信開始日順に並べたストリーミング再生回数データは以下のとおり。
2000年生まれのVaundyは学生時代から音楽制作ソフトを用いた楽曲制作や歌い手としての活動を行っており、YUI、絢香、家入レオなどを輩出した音楽塾ヴォイスにも通いながら音楽への造詣を深めていった。19歳(大学一年生)だった2019年よりレーベルに所属し本格的にアーティスト活動を開始した。
自身初の配信シングルとなったのが11月に発売した「東京フラッシュ」である。シティポップであるこの曲は当該ジャンルの当時の局所的流行の波に乗る形で人気を獲得し、デビュー早々に初期の代表曲としてVaundyの知名度を広める役割を果たした。退廃的ながらも洒落た韻を踏んだ歌詞や、イントロの印象的なギターリフのほか、本人が深夜の都会を当てなく彷徨うさまをワンカット風に撮影したMVもフックとなった。後続曲の大ヒットや後述する大ブレイクに沿って長く聴かれ続けた本曲はストリーミング2億再生、MV7,000万再生を突破した。
続いて2020年1月に発売された2nd配信シングル「不可幸力」では更なる人気を獲得し、ヒットチャート上でも頭角を現し始めることとなった。この曲が大ヒットしたきっかけは、発売から約7ヶ月後の2020年8月にSpotifyのCMタイアップが付いたことである。Spotifyは同年初頭にネクストブレイクアーティスト「Early Noise 2020」としてVaundyを既に挙げており、期待を込めての起用となった。これに応えるように8月以降チャートアクションが活性化。この世の混沌を表現した、怪しげながらも引き込まれる楽曲構成や雰囲気が支持を広げ、自身最初のストリーミング1億突破曲となった。
この曲も後続曲の大ヒットや後述する大ブレイクに沿って長く聴かれ続け、Billboard JAPAN Hot 100の年間では2021年55位→2022年88位→2023年65位と推移している。現在各指標の累計はストリーミング3.5億再生、MV1億再生を突破している。
2月には3rd配信シングル「僕は今日も」を発売し、5,000万再生を記録した。
3月には4th配信シングル「life hack」を発売。この曲は終始一定のゆったりしたリズムで奏でられた温もりあるラブソングである。その心地よさから、特に当初タイアップはなかったながらも発売当時から根強い支持を得続け、発売から約3年が経過した2023年4月にストリーミング1億再生を突破した。なおこの間ストリーミングチャートTOP100にランクインしたことは一度もなく、まさに水面下で長期的な人気となっていたことによる達成である。なおMV3,000万再生も突破している。
4月には5thシングル「Bye by me」を配信し、ストリーミング5,000万再生を突破。同月に1stアルバム『strobo』収録曲から先行配信された「灯火」もストリーミング1億再生(RIAJ)を突破した。
5月11日には「灯火」に続くアルバムからの先行リリースとして「怪獣の花唄」を配信。この曲は現在に至るまで各指標の累計でストリーミング7億再生、MV1.1億再生、フル配信10万ダウンロードを突破しており、紛れもなく自身最大の人気曲であるが、発売当初から爆発的人気だったわけではない。注目が集まり始めたのは発売翌年の2021年からである。本曲は、ネクストブレイク候補としてVaundyへの注目度が高まっていたタイミングである2021年3月にマルハニチロのCMソングに起用され、これをきっかけに本格的なロングヒットモードに突入した。そして更にそこから1年以上が経過した2022年の年末、Vaundyが満を持してのNHK紅白歌合戦初出場で本曲を歌唱。これが更なる人気爆発を呼び、発売から2年以上を経た2023年に楽曲人気がピークを迎えることとなった。
Billboard JAPANのChart Insight(指標別動向を無料で確認できるサービス)ではこの動向がはっきりと可視化されている。
Spotifyデイリーチャートでは2023/4/8(土)付で自身初の1位を獲得。初登場から所要1046日での1位は当時の歴代1位のスロー記録であった。これは如何に本曲が長期に渡り支持され人気を拡大させていったかを示している。
Billboard JAPAN Hot 100の年間では2021年100位→2022年51位→2023年3位と推移している。
本曲はキャッチーなメロディーにエモーショナルな歌唱、忘れていた少年時代の情熱を取り戻そうとする歌詞等が聴きどころとなっており、これまでの楽曲で見せていたシティポップ路線とはガラッと異なり、王道J-POPとも言えるようなロックサウンドが展開されている。
5月27日には満を持して1stアルバム『strobo』が発売された。アルバム曲の中では「napori」が特に人気となり、3.2億再生を突破しているが、この曲も「怪獣の花唄」と同様、発売当初から人気だったわけではなく、「不可幸力」の大ヒットや、「バズリズム02」でネクストブレイク候補としてピックアップされた2021年から人気を拡大させた。
Billboard JAPAN Hot 100の年間では2021年55位→2022年88位と推移した。Chart Insightを見ればより詳細にこの動向を確認することができる。
本曲はゆったりした曲調のラブソングで、相手への愛情や、相手に見合う自分になれているかといった不安な感情を織り交ぜて歌われており、日常に溶け込むような絶妙な聴き心地の良さとも相まって支持を広げた。
12月には6thシングル「世界の秘密」を配信。この曲も心地よいリズムと印象的なサビのフレーズが特徴で、インターネット社会を風刺するような歌詞とも相まって、ネットの喧噪から離れてリラックスするにはうってつけの楽曲となっている。複数のCMタイアップがついたこともあって人気が普及し、1億再生を突破した。
2021年
2021年に発売された楽曲を配信開始日順に並べたストリーミング再生回数データは以下のとおり。
4月には8thシングル「しわあわせ」を配信し、1億再生(RIAJ)を記録した。
さらに7月に配信した10thシングル「花占い」は、自身初のドラマタイアップとなる『ボクの殺意が恋をした』主題歌に起用されたことなどもあり、ストリーミング2億再生、MV3,000万再生を突破する人気となった。本曲は思わず体が踊り出すようなポップチューンで、ホーンやストリングスも活用されている。歌詞はドラマにも沿っており、実りがたい恋でも強い想いで前進していく内容で、爽やかなラブソングに仕上がっている。
9月に配信された11thシングル「Tokimeki」はトヨタ『カローラ クロス』のCMソングとして書き下ろされた一曲。本人の意図のとおり、ドライブにもぴったりのノリの良いリズムと落ち着きが同居した絶妙な聴き心地に仕上がっている。歌詞も起伏のある日常の中の胸躍る瞬間をポジティブに表現したものになっており、若年層からの支持を集めた。こうした人気を受けて発売から1年以上が経過した2023年にはMVが公開されたほか、NTTドコモのCMソングという新たなタイアップがつく動きもあり、息の長い人気で累計1億再生を突破するに至った。
10月に配信された12thシングル「泣き地蔵」は5,000万再生を突破した。
11月に配信された13thシングル「踊り子」はまた新たなVaundyの魅力が引き出された楽曲。レトロで浮遊感のあるポップサウンドや、終始低いキー設定と抑えめな歌唱、印象的なフレーズが多用された歌詞が中毒性を生み出しており、多くのリスナーから支持を集めた。ちょうど当時菅田将暉との結婚を発表し話題となっていた女優の小松菜奈が出演したMVも強い印象を残した。各指標の累計はストリーミング3億再生、MV8,000万再生を突破しており、Billboard JAPAN Hot 100の年間でも2022年28位→2023年53位と推移した。
2022年~
2022年以降に発売された楽曲を配信開始日順に並べたストリーミング再生数データは以下のとおり。
2022年1月には1stEP表題曲「裸の勇者」をCD発売に先駆けて配信。この曲は自身初のアニメタイアップとなる『王様ランキング』第2期主題歌として書き下ろされた。『“敵味方”や”善悪”といった言葉では分けられない世界で生まれる葛藤や愛』を込めたと本人が語るとおり、歌詞表現やエモーショナルな歌唱によって多くのリスナーを惹きつけ人気を博した本曲は累計ストリーミング1億再生、MV4,000万再生を突破した。
なおEP『裸の勇者』には、前年にmilet×Aimer×幾田りらによるコラボ曲として楽曲提供しストリーミング1億再生、MV6,000万再生を突破する人気となった「おもかげ (produced by Vaundy)」のセルフカバー「おもかげ -self cover-」も収録されており、こちらも5,000万再生を記録している。
2022年3月には14thシングル「恋風邪にのせて」を配信。恋愛リアリティ番組『彼とオオカミちゃんには騙されない』の主題歌として書き下ろされた一曲である。平成初期の歌謡曲を想起するレトロなサウンドや、恋愛をくだらないものとしつつも結局はそれに引き込まれていくさまを描いたリアルな歌詞等が支持されたことで、本曲は1億再生を突破した。
2022年10月には17thシングル「CHAINSAW BLOOD」を配信。タイトルからも連想できるとおり、本曲は人気アニメ『チェンソーマン』のエンディングテーマとして書き下ろされた。サウンド・歌詞・MV等、徹底的にアニメに寄り添った楽曲制作がなされており、特にその中でもガツンと鳴り響くギターロックサウンドはVaundyのヒット史における新たな一面と言える。こうした内容がアニメファンにも支持されたことで本曲は1億再生を突破する人気となった。
2023年3月には22ndシングル「そんなbitterな話」を配信。本曲は「恋風邪にのせて」以来2度目のタッグとなる恋愛リアリティ番組『彼とオオカミちゃんには騙されない』主題歌として書き下ろされた。過去のほろ苦い恋も一つの愛しい経験と解釈する歌詞が心地よいバンドサウンドに乗せて歌われており、その温かい雰囲気も支持されたことで本曲は1億再生を突破した。
11月には約3年ぶりとなる待望の2ndアルバム『replica』が発売された。こちらは『strobo』以降のシングルを一挙にまとめた収録曲数35曲の大作となっている。
2024年1月には25thシングル「タイムパラドックス」を配信。本曲は『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』主題歌として書き下ろされた。シンプルなメロディーと音数で構成されていたことや、タイアップに沿った歌詞表現で未来への希望が歌われていたことで親しみを呼んだ本曲は1.2億再生を突破した。チャート初登場から所要20週という自身最速記録での1億再生突破となった。
まとめ
以上まで見てきたとおり、Vaundyは驚くほどにジャンルレスな幅の広い楽曲群で多くの支持を集め、令和の音楽シーンにおいて確固たる地位を築いている。特に「怪獣の花唄」は未だに再生数を伸ばし続けており、その大活躍は現在進行形で続けられている。この記事で言及しているデータも今後適宜最新のものに置き換えていく予定である。
Vaundyのヒット曲を手元に所有したい場合は、1stアルバム『strobo』、2ndアルバム『replica』がマストアイテムとなっている。
この記事で紹介したストリーミングやダウンロードのデータはBillboard JAPANの公式サイトや日本レコード協会の公式サイトから検索することができる。新たな発見の宝庫なので、時間があれば好きな曲やアーティストのデータを検索してみることをお勧めする。