あいみょんは2016年に「生きていたんだよな」でメジャーデビューした女性ソロアーティスト。2018年にブレイクし、その後も令和時代の幕開けとともに現在進行形でヒット曲を大量輩出している。
あいみょんがブレイクした時期は新たな音楽視聴方法としてストリーミングサービスが拡大を始めた時期であるため、楽曲人気はストリーミング再生回数やMV再生回数を通じて把握する。ただしその人気の高さから既に市場が縮小している配信ダウンロード売上でも一定規模の数字を叩き出している。ここではストリーミング、MV、ダウンロードの配信3指標をもとにしながら、あいみょんのヒット史を振り返る。
ストリーミング再生回数ランキングは以下のとおり。これまでにストリーミング5,000万再生以上を記録した曲は20曲で、認定総再生回数は38.1億(歴代8位)となっている。
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続いてMV再生回数ランキングは以下のとおり。ここでは3,000万再生以上を記録したMVを抽出する。これまでに10曲がMV3,000万再生以上を記録している。
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最後にダウンロード売上ランキングは以下のとおり。日本レコード協会によれば、これまでにダウンロード売上10万以上を記録した曲は5曲で、認定総ダウンロード売上は175万となっている。
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上記で挙げた楽曲を配信開始日順で並べたうえで楽曲人気データを一覧化した表も以下に示す。
インディーズ時代
あいみょんは学生の頃より作詞作曲を始め、オーディションやYouTubeを通じて歌唱も披露していた。その活動が事務所に見出される形でデビューが決定し、2015年3月に「貴方解剖純愛歌 〜死ね〜」をインディーズから発売した。この曲は歌詞のインパクトやタイトルのイメージを裏切る爽快なサウンドが人気となっており、インディーズ作のためRIAJ認定は受けていないものの、MV3,000万再生を突破しており、Billboard JAPAN Hot 100の年間では大ブレイクした2019年になって初めてランクイン(72位)するロングランとなった。
青春のエキサイトメント
2016年11月に発売したメジャーデビューシングル「生きていたんだよな」はやはり歌詞が話題となり、生死に踏み込んだ内容がリスナーの心に刺さる形でストリーミング5,000万再生、MV3,000万再生を記録した。
2017年4月には2ndシングル表題曲「愛を伝えたいだとか」を配信。打ち込みを主体としたファンキーなサウンドに男性目線の女々しい恋愛観が乗った本曲はその緩いグルーヴ感が人気となり、後年のブレイクと共に普及を加速させ、ストリーミング3.4億再生、MV1.1億再生を記録した。Billboard JAPAN Hot 100の年間では2018年69位→2019年23位と推移した。
7月には3rdシングル表題曲「君はロックを聴かない」を配信。本曲はタイトルから推測されるとおりロック好きの少年の片想いをシンプルなバンドサウンドに乗せて歌っている青春ラブソングで、同世代に限らず親世代にも共感が広がる形でじわじわと知名度を普及させ、ストリーミング4.4億再生、MV9,000万再生、フル配信25万ダウンロードを記録した。 Billboard JAPAN Hot 100の年間では2018年68位→2019年11位→2020年52位と推移した。
9月にはこれらのヒット曲を収録した1stオリジナルアルバム『青春のエキサイトメント』を発売。Billboard JAPAN Hot Albumsの年間では2018年67位→2019年32位と推移する上昇型ロングヒットを記録した。アルバム曲の中では、「ふたりの世界」がストリーミング5,000万再生を突破している。
瞬間的シックスセンス
2018年はまず4月に4thシングル「満月の夜なら」を発売し、ストリーミング1億再生(RIAJ)を記録。
そして7月には代表曲が誕生した。5thシングル表題曲として配信で先行発売された「マリーゴールド」である。本曲は夏に合うセンチメンタルなラブソングで、ノンタイアップでありながらも、音楽フェスでの披露などを通じて懐かしさを感じさせるサウンドが支持を広げた。
そして2018年末の歌番組では本曲を集中的に披露し、それを決定打にして人気が爆発することとなった。Billboard JAPANのChart Insight(指標別動向を無料で確認できるサービス)ではその爆発がはっきり記録されている。
(青:ストリーミング、紫:ダウンロード、赤:MV)
この動向を反映した総合チャートBillboard JAPAN Hot 100では2019年に自身初となる週間1位を獲得した。
年間でも2018年48位→2019年2位→2020年8位→2021年38位→2022年36位→2023年39位→2024年38位と推移している。この曲は発売された2018年ではなく翌2019年に人気のピークを迎えたのである。
各指標の累計数値はストリーミング7.3億再生、MV3.4億再生、フル配信75万ダウンロードとなっており、爆発的な売上と再生回数を記録した。特にストリーミングは国内アーティスト史上初の1億再生突破曲になったとBillboard JAPANよりアナウンスされている。
こうした記録によりあいみょんはストリーミング発でブレイクした最初のアーティストと言われるようになり、同時にストリーミング1億再生が新たな楽曲人気指標の主流となったことも世の中に知らしめた。令和突入とともに幕を開けたストリーミング時代のパイオニアとなっていたのである。なおBillboard JAPAN Streaming Songsでは20週連続1位を記録し、2019年の年間1位も獲得した。
「マリーゴールド」の人気が爆発する直前の10月には、6thシングル表題曲「今夜このまま」を配信。本曲は最高視聴率11.5%を記録したドラマ『獣になれない私たち』の主題歌として書き下ろされた。夜に日常の疲れをビールで癒やしながら好きな人に想いを馳せる女性を描いた歌詞が軽やかなメロディーに乗せて歌われており、ドラマの内容とも相まって大きな支持を集め、ストリーミング3億再生、MV7,000万再生、フル配信25万ダウンロードを記録した。Billboard JAPAN Hot 100の年間では2019年8位→2020年74位と推移した。
特にストリーミングチャートでは発売早々独走状態になり、9週連続1位を獲得した。自身かつてない勢いになっていたことを踏まえれば、2018年末の歌番組では「今夜このまま」を披露する選択肢も十分考えられたと思われるが、あえて「マリーゴールド」を集中的に披露する選択が採られたことは大変興味深い戦略であった。
結果として「マリーゴールド」が浮上し「今夜このまま」に代わってストリーミング1位となり、以降20週連続1位を獲得したため、あいみょんの楽曲が29週連続1位を獲得することとなった。あいみょん旋風とでも言うべき状況となった点においてこの戦略は成功したと言えるが、もし「今夜このまま」が年末歌番組披露曲になっていたらどうなっていたかは気になるところである。
「今夜このまま」が9週連続ストリーミング1位を獲得していたころはまだストリーミングチャートの楽曲人気指標としての知名度が高くない状況だったため見過ごされがちだが、実は「マリーゴールド」より先に大ヒットの推移を見せていたのは「今夜このまま」だったのである。
2019年2月にはこれらの大ヒット曲を収録した2ndオリジナルアルバム『瞬間的シックスセンス』を発売し、23万枚をセールス。Billboard JAPAN Hot Albumsでは2019年7位→2020年30位と推移するロングヒットとなった。アルバム曲の中では、「ら、のはなし」「恋をしたから」がストリーミング5,000万再生を突破している。
おいしいパスタがあると聞いて
大ブレイクの勢いに乗り、アルバム発売から僅か2ヶ月後の2019年4月には7thシングル「ハルノヒ」を発売。この曲は興行収入20億円を記録したアニメ映画『クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン 〜失われたひろし〜』の主題歌として書き下ろされた。クレヨンしんちゃんの父親である野原ひろしの視点で家族愛を描いた歌詞が心に沁みるとして支持が広がり、ストリーミング3.7億再生、MV1.1億再生、フル配信25万ダウンロードを突破した。Billboard JAPAN Hot 100の年間では2019年13位→2020年26位→2021年94位と推移するロングランとなった。
以降も好調な動向が続き、7月発売の8thシングル「真夏の夜の匂いがする」はストリーミング5,000万再生、9月配信の9thシングル表題曲「空の青さを知る人よ」はストリーミング1億再生(RIAJ)、MV4,000万再生を記録した。後者はBillboard JAPAN Hot 100の年間でも2019年73位→2020年80位と推移した。
2020年はまず2月に自身初の配信限定シングル「さよならの今日に」を発売し、ストリーミング5,000万再生を記録。
そして5月には頭一つ抜けた人気曲が誕生した。10thシングル表題曲として配信で先行発売された「裸の心」である。最高視聴率19.6%を記録したドラマ『私の家政夫ナギサさん』の主題歌に起用されたこの曲は恋をする女性の心情を描いたラブバラードで、ハートフルなラブコメディだったドラマにマッチした内容になっていた。加えてどこか懐かしさを感じさせるシンプルな楽曲アレンジも支持を集めた。
各指標の累計数値はストリーミング5.3億再生、MV1.8億再生、フル配信25万ダウンロードを突破している。中でもストリーミング1億到達所要週数22週は自身最速記録となった。Billboard JAPAN Hot 100の年間でも2020年10位→2021年22位→2022年65位と推移した。
2020年9月にはこれらの大ヒット曲を収録した3rdオリジナルアルバム『おいしいパスタがあると聞いて』を発売し、29万枚をセールス。Billboard JAPAN Hot Albumsの年間では2020年8位→2021年36位と推移した。
瞳へ落ちるよレコード
2021年も大ヒット曲が連発された。まず2021年2月に配信された「桜が降る夜は」がストリーミング1億再生、MV3,000万再生を記録。本曲は恋愛リアリティーショー『恋とオオカミには騙されない』の主題歌。春の淡く青い恋心を描いた歌詞が支持され、新たな大ヒット桜ソングとなった。
5月に配信された「愛を知るまでは」もストリーミング1億再生を記録した。この曲はドラマ『コントが始まる』主題歌。歌詞は葛藤しつつも夢を追う若者の群像劇を描いたドラマに合わせた内容になっており、爽やかな曲調と併せて前向きな風をもらえる楽曲になっている。
そして10月に配信された12thシングル表題曲「ハート」は「裸の心」に次ぐ自身2番目の速さとなる所要23週でストリーミング1億再生を突破する好調な出足を見せ、累計ではストリーミング2億再生を突破した。本曲は最高視聴率10.7%を記録したドラマ『婚姻届に判を捺しただけですが』主題歌に起用されたバラードナンバー。偽装結婚という偽りの恋が次第に本物になっていくドラマの内容に沿い、複雑な関係性の中でも相手を真っ直ぐに想う恋心を歌詞にしており、多くの共感を集めた。
2022年には6月に配信された「初恋が泣いている」がストリーミング5,000万再生を突破。8月には4thオリジナルアルバム『瞳へ落ちるよレコード』を発売した。収録曲のうち、7月に先行配信された「3636」がストリーミング5,000万再生を記録した。
2023年以降
2023年6月には14thシングル「愛の花」を配信。本曲はNHK連続テレビ小説『らんまん』主題歌として書き下ろされた楽曲で、愛情に溢れた歌詞と温かみのあるサウンドが毎朝の日常を彩る形で人気となり、ストリーミング1億再生を記録した。同年の紅白歌合戦でも本曲を披露した。
まとめ
以上まで見てきたとおり、あいみょんは懐かしさを感じさせるサウンドや等身大の歌詞表現が支持される形で大人気を獲得していた。その規模は令和突入とともに幕を開けたストリーミング時代のヒットシーンを牽引するほどのものであることがストリーミング認定総数30億超えの偉業から読み取れる。今後の一層の活躍も楽しみなアーティストである。
以上までに紹介したヒット曲を手元に所有したい場合は、順当にオリジナルアルバムを辿っていくことをお勧めする。
この記事で紹介したストリーミングやダウンロードのデータはBillboard JAPANの公式サイトや日本レコード協会の公式サイトから検索することができる。新たな発見の宝庫なので、時間があれば好きな曲やアーティストのデータを検索してみることをお勧めする。
(参考)あいみょんの総合ヒット曲ランキング
最後に、あいみょんの各楽曲・各指標数値を当ブログが採用する一定の計算式で総合ランキング化した表を参考として掲載する。
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