Billion Hits!

フル配信ダウンロード売上、MV再生回数、ストリーミング再生回数、Billboard JAPANランキングデータなどを通じて国内の人気楽曲を把握するブログ

第74回(2023年)NHK紅白歌合戦歌唱曲の楽曲人気データ

この記事では、第74回(2023年)NHK紅白歌合戦歌唱曲の楽曲人気データを整理し、注目曲をピックアップする。

 

事前発表された歌唱曲を人気順(詳細後述)に並べた全体表は以下のとおり。過去2年以内に発売された楽曲は発売年を赤字表記している。各項目で大ヒット基準を超えている数字も赤字で記載している。過去2年以内に発売された主要ヒット曲は行を黄色にしている。

 

 

 

 

楽曲人気指標として使用可能なデータ

 

以下別記事で説明している。

 

billion-hits.hatenablog.com

 

この内容に加えて、ここでは紅白過去歌唱回数も参照している。売上がさほど高くない過去の曲でも、長く歌い継いでいくにつれて人気が出る曲もある。紅白で複数回歌われているということは、それだけ世間の需要も大きいということであるとみなせる。過去1回以上歌われているならば人気曲と言えるだろう。

 

なお、以上で示したヒット基準に達していない曲は紅白出場の資格なしなどと言うつもりは毛頭ない。秋川雅史千の風になって」のように、紅白出場前はほとんど知名度がなくとも、紅白歌唱をきっかけに大ヒットに至る曲もある。そのような楽曲も視聴者を満足させる自信があってこその選出であると考える。

 

直近2年発売曲ピックアップ

 

直近2年に発売された歌唱曲を楽曲人気データでランキング化した表は以下のとおりである。

 

 

YOASOBI「アイドル」

 

YOASOBI「アイドル」は間違いなく今年の歌唱曲の中で最大の目玉であると言って良い。本曲は人気アニメ「推しの子」主題歌。「推しの子」は芸能界の裏側を生々しく描いたヒューマンドラマとして人気となっていた。その序盤では予想外の衝撃的な展開が繰り広げられているが、「アイドル」はその展開に即して制作されており、アニメの話題性が楽曲にも大きく波及した。そして本曲のMVはアニメ「推しの子」を制作する動画工房が直接手掛けたことで精巧緻密なアニメーションムービーに仕上がっており、話題性を益々増幅させることとなった。楽曲もそれまでのYOASOBIにない新境地と言えるような内容で、癖になるikuraの歌唱表現や、コーラス・掛け声等多くの要素を取り入れめまぐるしく変化する楽曲構成が強い中毒性を有していた。

 

billion-hits.hatenablog.com

 

こうした背景から本曲は日本音楽史上トップクラスの爆発的楽曲人気となり、数々のヒットレコードを更新した。Billboard JAPAN Hot 100では1位獲得週数史上最多記録となる21週連続1位を獲得するとともに、文句なしで2023年の年間1位を獲得。各指標の累計はストリーミング5.2億再生、MV3.9億再生、フル配信25万ダウンロードを突破しており、特にストリーミングとMVは現在も国内史上最速ペースで再生数を積み上げ続けている。

 

billion-hits.hatenablog.com

 


www.youtube.com

 

Mrs. GREEN APPLEダンスホール

 

Mrs. GREEN APPLEダンスホールは朝の情報番組「めざまし8」のテーマ曲。本曲はそのタイアップに相応しくポジティブなエネルギーに溢れており、視聴者の一日の始まりを華やかに彩った。MVではバンドの枠に囚われないファッションとダンスを見せるなど話題性も高く、人気を博したこの曲はストリーミング3億再生、MV8,000万再生、フル配信10万ダウンロードを突破。Billboard JAPAN Hot 100では2023年の年間7位を獲得した。

 

billion-hits.hatenablog.com

 


www.youtube.com

 

10-FEET「第ゼロ感」

 

10-FEET「第ゼロ感」はアニメ映画「THE FIRST SLAM DUNK主題歌。バスケットボールのドリブルを想起させるリズミカルなサウンドや印象的なギターリフがフックとなっている。「SLAM DUNK」の原作者で映画監督も自ら務めた井上雄彦が楽曲制作にも関与したことで、映画の雰囲気との親和性が非常に高いロックナンバーに仕上がっている。映画が興行収入140億円以上を叩き出す大ヒットとなったこともあって楽曲も強く支持され、累計はストリーミング2.2億再生、MV5,000万再生、フル配信10万ダウンロードを突破。Billboard JAPAN Hot 100では2023年の年間5位を獲得した。


www.youtube.com

 

Ado「唱」

 

Ado「唱」ユニバーサル・スタジオ・ジャパンハロウィンショーイベント「ゾンビ・デ・ダンス」の主題歌に起用されたダンスナンバー。作詞はFAKE TYPE.TOPHAMHAT-KYO、作曲・編曲はGigaTeddyLoidが務めており、Adoにしか歌いこなせないような高難度楽曲となっている。縦横無尽に飛び跳ねながらも要所を締めるようなメロディーラインとEDMサウンドや、サビのキャッチーな振付けが多くの視聴者を虜にした。Billboard JAPAN Hot 100では通算11週1位を獲得しており現在も独走中。各指標の累計はストリーミング1億再生、MV9,800万再生、フル配信10万ダウンロードを突破している。

 

billion-hits.hatenablog.com

 


www.youtube.com

 

MAN WITH A MISSION×milet「絆ノ奇跡」

 

MAN WITH A MISSION×milet「絆ノ奇跡」は大人気アニメ鬼滅の刃 刀鍛冶の里編」主題歌として書き下ろされた。作詞作曲を手掛けたMAN WITH A MISSIONとしては珍しい全編日本語詞と和楽器サウンドが取り入れられた本曲はアニメとの相性も良く、それぞれのボーカルの個性が際立つ歌割りも心地よい疾走感をもたらしている。こうした要素がアニメファンからも支持された本曲はストリーミング1億再生、MV6,000万再生を突破した。


www.youtube.com

 

ano「ちゅ、多様性。」

 

ano「ちゅ、多様性」はアニメチェンソーマン」第7話エンディングテーマに起用された楽曲。この7話では「ゲロチュー」と表現されるインパクトの強いシーンがあるが、そのフレーズが空耳で聞こえるサビや個性の強い歌唱により、一度聴いたら耳から離れないようなキュートなポップ性を持った楽曲に仕上がっている。anoはその個性によりタレントとしても本年大ブレイクを果たしており、その代表曲としての本曲の認知も普及することとなった。各指標の累計はストリーミング5,000万再生、MV5,100万再生を突破している。


www.youtube.com

 

タニタツヤ「青のすみか」

 

タニタツヤ「青のすみか」は人気アニメ「呪術廻戦 懐玉・玉折」主題歌として書き下ろされたロックナンバー。登場人物の関係性を暗喩した歌詞は考察しがいのある非凡な表現となっており、爽やかながらもどこか不穏さも感じるサウンドも物語とリンクしていたことでアニメファンから強い支持を受け、ストリーミング1億再生を突破する人気となった。


www.youtube.com

 

Stray Kids「CASE 143」

 

「CASE 143」は韓国の8人組男性ダンス&ボーカルグループStray Kidsが2022年10月に7thミニアルバム『MAXIDENT』のリード曲としてリリースした楽曲。カラフルなMVからも感じ取れるように、これまでのStray Kidsの楽曲と比べ本曲はかなり明るくポップなラブソングとなっており、その中でもエッジの効いたビートや印象的なリズムも健在であった。こうした要素から本曲は自身一段高の楽曲人気となり、自身初となるストリーミング1億再生を突破。これは男性K-POPグループとしてもBTSに次ぐ史上2組目の達成であった。


www.youtube.com

 

過去曲ピックアップ

 

Superfly「タマシイレボリューション

 

Superfly「タマシイレボリューションは2010年のNHKサッカーW杯のテーマソングだった楽曲。累計売上75万ダウンロードは自身「愛をこめて花束を」に次ぐ2位となっている。持ち前のパワフルな歌唱力や、選手を前向きに鼓舞する楽曲は応援歌としてピッタリの内容であり、歴代のNHKサッカーW杯テーマソングの中でも屈指のダウンロード売上を記録する人気曲となっている。 

 

billion-hits.hatenablog.com

 


www.youtube.com

 

椎名林檎丸ノ内サディスティック」

 

椎名林檎丸ノ内サディスティック」は1999年に発売された1stオリジナルアルバム無罪モラトリアムに収録されていた楽曲。アルバムは当時143万枚をセールスし、年間でも1999年25位→2000年42位と推移する大ヒットを記録していたが、シングルカットされたわけではないながらも多くの他アーティストがカバーしたことなどにより特に本曲の人気が非常に息の長いものとなり、配信では2018年に解禁されて以降の積み上げでストリーミング1億再生を突破した。これは1990年代にリリースされた楽曲としては史上初の達成であった。


www.youtube.com

 

新しい学校のリーダーズ「オトナブルー」

 

新しい学校のリーダーズ「オトナブルー」は2020年に配信シングルとしてリリースされた楽曲。発売から約3年が経過した今年1月になってTikTokで本曲の「首振りダンス」が流行したことに伴い人気に火がつくこととなった。3月にはこの人気を受けて新規制作されたMVが公開され、現在まででMV5,100万再生を突破。4月には人気YouTubeチャンネルTHE FIRST TAKEにも出演し、この曲を披露した動画も現在までで5,300万再生を突破しており、参考までにMVと合計すれば1億再生を超える計算となっている。


www.youtube.com

 

楽曲人気データを用いた紅白勝敗事前予想

 

この項目では、今年2023年の紅白歌唱曲を紅組と白組で分け、楽曲人気を示す数字の合計(最下行)を比較することで、今年の紅白勝敗を事前予想する。

 

 

 

当ブログ記事「ヒット曲の定義」に基づいて本表上のデータを「10ポイント=5,000万ストリーミング再生=5,000万MV再生=10万ダウンロードセールス=10万フィジカルシングルセールス=紅白過去歌唱数1回」でポイント化すると、紅組919点、白組890点となる。そのためここでは紅組優勝を予想する。とはいえその差は僅差であり、昨年は白組が当ブログ計算ポイントでは僅かに紅組に及んでいなかったが結果は白組の優勝であった。まだ未発表となっている歌唱曲や今後サプライズ追加される歌唱曲もあると考えれば、勝敗の行方がどう転ぶかは全く分からないと言って良い。

 

もっとも、そもそも紅白の勝敗は肩の力を抜いて楽しむ余興である。各アーティストによる素晴らしい楽曲パフォーマンスが見られるのであれば他に求めるものは無い。

 

結果振り返り

 

歌唱曲発表以降追加発表分及び当日判明分歌唱曲を追加し歌唱順に並べた歌唱曲データの完全版は以下のとおり。

 

 

歌唱曲発表から当日にかけて追加発表及び当日判明した歌唱曲の楽曲人気データも加えた結果、ポイントは紅組1,176点、白組1,034点となり、やはり紅組が優勢であったが、このデータのとおり実際の結果も会場審査員票、視聴者審査員票、ゲスト審査員票の3部門全てを制した紅組が優勝する結果となった。

 

追加発表組の中で目玉となったのはやはりNewJeansである。企画枠として出場したNewJeansは「OMG」「ETA」「Ditto」を歌唱する豪華メドレーを披露。世界的に大ヒットしたこれらの3曲はそれぞれ日本国内においてもストリーミング1億再生、ストリーミング5,000万再生、ストリーミング1.8億再生を記録しており、紛れもなく2023年のヒット曲群である。

 

「Ditto」などのNewJeansの楽曲は、音数を少なくしたサウンドや、少女性を前面に出したビジュアルイメージが既存K-POPの主流とは一線を画す出来となっており、K-POPに新たな風をもたらすこととなった。


www.youtube.com

 

他、当日はYOASOBI「アイドル」10-FEET「第ゼロ感」などのステージが反響を呼んだ。これらの演出から導かれる文化的考察については音楽ジャーナリストの柴那典氏が以下記事にまとめている。

 

news.yahoo.co.jp

 

なお視聴率に関しては過去最低を更新することとなったが、これは以下記事でも説明されているとおり、配信サービスに視聴動向が一部移行していることも背景にある。また、旧ジャニーズ事務所所属アーティストに関して、所属事務所の性加害問題の顕在化とそれへの対応の進捗が未だ十分に確認できないとしてNHKは出場させない判断を下したが、それは視聴率とは関係の無い判断であり、結果的にそれが視聴率に影響していたとしても「旧ジャニーズ事務所所属アーティストを出すべきだった」とは当然ならない。視聴率や売上といった人気や経済の指標で好成績となっていることが社会問題の免罪符になってはならない。

 

www.sponichi.co.jp

 

何れにしても音楽業界にとって圧倒的高視聴率が見込める紅白歌合戦という番組の存在は非常に重要である。巨大なコンテンツであるがゆえに玉石混交の批判も多く受けているが、この番組を機に人気が大きく普及する楽曲やアーティストも多く、番組が存在するメリットは非常に大きい。時代の変化に応じて番組の形が変わることがあろうとも、多くの素晴らしい楽曲が多くのリスナーにリーチする場所として、紅白歌合戦は確固たる地位を築いているのである。

 

(前年2022年の紅白歌合戦歌唱曲楽曲人気データはこちら↓)

billion-hits.hatenablog.com