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第73回(2022年)NHK紅白歌合戦歌唱曲の楽曲人気データ

この記事では、第73回(2022年)NHK紅白歌合戦歌唱曲の楽曲人気データを整理し、注目曲をピックアップする。

 

事前発表の歌唱曲順に並べた全体表は以下のとおり。過去2年以内に発売された楽曲は発売年を赤字表記している。各項目で大ヒット基準を超えている数字も赤字で記載している。過去2年以内に発売された大ヒット曲は行を黄色にしている。

 

 

 

 

楽曲人気指標として使用可能なデータ

 

以下別記事で説明している。

 

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この内容に加えて、ここでは紅白過去歌唱回数も参照している。売上がさほど高くない過去の曲でも、長く歌い継いでいくにつれて人気が出る曲もある。紅白で複数回歌われているということは、それだけ世間の需要も大きいということであるとみなせる。過去1回以上歌われているならば人気曲と言えるだろう。

 

なお、以上で示したヒット基準に達していない曲は紅白出場の資格なしなどと言うつもりは毛頭ない。秋川雅史千の風になって」のように、紅白出場前はほとんど知名度がなくとも、紅白歌唱をきっかけに大ヒットに至る曲もある。そのような楽曲も視聴者を満足させる自信があってこその選出であると考える。

 

前半歌唱曲ピックアップ

 

前半の歌唱曲を抜粋した楽曲人気データは以下のとおりである。

 

 

緑黄色社会「Mela!」

 

緑黄色社会「Mela!」は2020年4月に配信された2ndオリジナルアルバム『SINGALONG』のリード曲。ヒットのきっかけは情報番組「スッキリ」内で2020年8月に始まった企画「ダンスONE PROJECT」のテーマ曲に採用されたことである。コロナ禍のダンス活動を応援すべく全国の視聴者から動画を募り「Mela!」のダンス動画を完成させるこの企画を通じて、一歩を踏み出すことを後押しするポジティブな楽曲内容が支持を広げていき、2年以上に渡るロングヒットを記録するまでに至ったため、今般満を持しての紅白初歌唱となった。各指標の累計はストリーミング2.5億再生、MV6,000万再生、フル配信10万ダウンロードを突破している。


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Saucy Dog「シンデレラボーイ」

 

Saucy Dog「シンデレラボーイ」は、生々しい歌詞と繊細な歌声が特徴的なラブソング。本曲の配信開始は2021年8月だが、人気に火が付いたのは2021年10月で、きっかけは人気YouTubeチャンネルTHE FIRST TAKEへSaucy Dogが出演したことである。披露曲は「シンデレラボーイ」ではなかったがアーティストへの注目度の高まりが直近の新曲である「シンデレラボーイ」に向けられた。以降2022年にかけて一年以上継続視聴され、各指標の累計はストリーミング3.5億再生、MV6,000万再生を突破した。特にストリーミング3.5億再生は当年の紅白歌唱曲中最高再生数である。


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SEKAI NO OWARI「Habit」

 

SEKAI NO OWARI「Habit」は映画「ホリック xxxHOLiC」の主題歌として4月に配信された。本曲の歌詞は「自分で自分を分類するな」というテーマがセカオワらしさ溢れるアイロニカルな視点で描かれているほか、MVでもそれを表現したコミカルなダンスを披露している。この歌詞とダンスが強いフックとなった本曲はチャートを駆け上がり、Billboard JAPAN Hot 100では自身「SOS」以来約7年ぶりの週間1位を獲得。各指標の累計はストリーミング2.1億再生、MV1.2億再生、フル配信10万ダウンロードを突破している。


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IVE「ELEVEN」

 

IVE「ELEVEN」は2021年12月に配信された記念すべきデビューシングル。IVEは韓国人5名、日本人1名で構成されたK-POPアイドルグループである。メンバーのうち2名はIZ*ONEで活動していた実績があったことや、所属事務所主催オーディションに合格後3年間の練習生時代を経てデビューした日本人レイが所属していたことなどからデビュー当初から日本での話題性も高く、楽曲に注目が集まった。癖になるメロディやオリエンタルサウンドのほか、MVで見せる洗練されたビジュアルとダンスは「成長型ではなく完成型のアイドルグループ」という触れ込みに違わぬものであり、これらの要素が支持されたことで累計ではストリーミング1億再生を突破した。なお紅白では2022年10月に発売された日本語版が披露される。


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Aimer「残響散歌」

 

Aimer「残響散歌」はTVアニメ「鬼滅の刃」シリーズ「遊郭編」の主題歌として2021年12月に配信された。「遊郭編」では宇随天元が主要登場人物として活躍するが、宇随の派手なキャラクターを表現するように「残響散歌」は疾走感のある華やかなサウンドに仕上がっており、Aimerの独特な歌声により楽曲の個性が確立されている。映画が興行収入歴代1位となるほどの歴史的ヒットとなった「鬼滅の刃 無限列車編」の続編シリーズの主題歌とあって本曲の注目度は非常に高く、配信開始当初から歴史的な楽曲人気動向を見せ、Billboard JAPAN Hot 100では1位獲得週数歴代2位記録となる通算9週1位2022年の年間1位を獲得。各指標の累計数値はストリーミング2.8億再生、MV1.3億再生、フル配信50万ダウンロードを突破している。

 

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後半歌唱曲ピックアップ

 

後半の歌唱曲を抜粋した楽曲人気データは以下のとおりである。

 

 

Ado「新時代」

 

Ado「新時代」は映画「ONE PIECE FILM RED」の主題歌として6月に配信された。この映画は音楽の力に焦点を当てた内容になっており、主要オリジナルキャラクターであるウタの歌唱パートをAdoが担当し、劇中では「新時代」を含め7曲を歌唱している。映画が興行収入180億円を超える大ヒットとなったこともあり、主題歌である「新時代」には一際大きな注目が集まった。作詞作曲は中田ヤスタカが担当しており、海外でトレンドになっているシンセサウンドが印象的な仕上がりになっている。そこにAdoの伸びやかな歌唱表現が乗ったことで楽曲は多くのリスナーを惹きつけた。Billboard JAPAN Hot 100では通算6週1位を獲得し、各指標の累計はストリーミング2.6億再生、MV1億再生、フル配信10万ダウンロードを突破。特にストリーミングでは当時史上4曲目となる週間再生数1,800万台を記録する歴史的高動向となった。


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Vaundy「怪獣の花唄」

 

Vaundy「怪獣の花唄」は2020年5月に配信された1stオリジナルアルバム『strobo』収録曲。Vaundyは2020年の時点で「不可幸力」がヒットしており、期待の新人シンガーソングライターとして注目されていたが、2021年1月に「バズリズム02」でネクストブレイク候補として取り上げられたことをきっかけに「怪獣の花唄」にも注目が集まり、2021年3月にはマルハニチロのCMソングに起用されたことでロングヒットモードに突入。累計ではストリーミング2.1億再生を突破しており、2年以上継続視聴されたことで今般満を持しての紅白初出場となった。キャッチーなメロディーにエモーショナルな歌唱、忘れていた少年時代の情熱を取り戻そうとする歌詞などが聴きどころとなっている。


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Official髭男dism「Subtitle」

 

Official髭男dism「Subtitle」はドラマ「silent」の主題歌として10月に配信された壮大なラブバラード。ろう者とのラブストーリーを描いた「silent」は泣けるドラマとして大きな話題となり、民放公式テレビ配信サービス「TVer(ティーバー)」の配信再生数の記録を大きく塗り替えるほどの支持を集めた。「Subtitle」には「字幕」という意味があり、歌詞では音のない世界で想いを届けようとする純粋な感情が丁寧に表現されている。ドラマの大人気とともに圧倒的な共感を集めた「Subtitle」は前例のない規模で爆発的な高動向を記録した。Spotifyでは歴代1位のデイリー再生回数を記録RIAJからは史上最速ストリーミング1億再生認定を受けたBillboard JAPAN Hot 100では通算8週1位を獲得し、史上最速でストリーミング2億再生を突破した

 

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あいみょん「ハート」

 

あいみょん「ハート」は最高視聴率10.7%を記録したドラマ「婚姻届に判を捺しただけですが」主題歌として2021年10月に配信されたバラードナンバー。偽装結婚という偽りの恋が次第に本物になっていくドラマの内容に沿い、複雑な関係性の中でも相手を真っ直ぐに想う恋心を歌詞にしており、多くの共感を集めた。Billboard JAPAN Streaming Songsでは「裸の心」に次ぐ自身2番目の速さとなる所要23週でストリーミング1億再生を突破。累計ではストリーミング1.7億再生を突破している。

 

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福山雅治「桜坂」

 

大トリでの歌唱となる福山雅治「桜坂」は人気バラエティ番組「ウンナンのホントコ!」内の恋愛企画「未来日記」のテーマソングとして2000年4月に発売された。この企画が当時大人気となっており、「桜坂」の前代テーマだったサザンオールスターズTSUNAMIは特大ヒットになっていた。その後を受けた「桜坂」もとてつもない支持を獲得し、CD229万枚、フル配信25万ダウンロードを記録した。本曲は淡白なサウンド福山雅治のしっとりとしたボーカルが乗った春に合うバラードナンバー。サウンドのシンプルさがメロディーの美しさを強調する仕上がりになっていた。恋人との別れを描いた歌詞もタイアップにマッチしていたことでここまでの特大セールスに繋がった。

 

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楽曲人気データを用いた紅白勝敗事前予想

 

この項目では、今年2022年の紅白歌唱曲を紅組と白組で分け、楽曲人気を示す数字の合計(最下行)を比較することで、今年の紅白勝敗を事前予想する。

 

 

 

この楽曲人気データを見ると今年は紅組が圧倒している。昨年は紅組と白組で拮抗しており、実際の結果も紅組の僅差勝利だったが、今年は紅組の方が高人気楽曲を揃えることができている状況が一目で分かる差がついている。

 

仮に当ブログ記事「ヒット曲の定義」に基づいて本表上のデータを「1ポイント=5,000万ストリーミング=5,000万MV=10万ダウンロード=10万シングル=紅白過去歌唱数1回」でポイント化すると、紅組110.6点、白組69.7点となる。そのためここでは紅組優勝を予想する。

 

もっとも、大前提として紅白の勝敗はこれだけで決まるものではない。当日サプライズ歌唱される楽曲がある可能性や、当日の空気やパフォーマンスにも左右されると思われる。さらに言えばそもそも紅白の勝敗は肩の力を抜いて楽しむ余興である。各アーティストによる素晴らしい楽曲パフォーマンスが見られるのであれば他に求めるものは無い。

 

結果振り返り

 

当日判明分歌唱曲やサプライズ歌唱された楽曲も追加した歌唱曲データの完全版は以下のとおり。

 

 

歌唱曲が事前公表されていなかったメドレーの内訳は、郷ひろみ「男の子 女の子」「林檎殺人事件」「GOLDFINGER'99」「ジャンケンポンGO!!」の4曲、PerfumeSpinning World」「チョコレイト・ディスコの2曲、KinKi Kids「硝子の少年」「Amazing Love」の2曲となった。これらの楽曲のデータを合計した結果、事前予想時の紅組の圧倒的大差はなくなった。ポイントでは紅組110.6点、白組103.0点となり、どちらが優勝してもおかしくない僅差となった。そして実際の勝敗は会場審査員票、視聴者審査員票、ゲスト審査員票の3部門によって争われ、結果はこのうちの会場審査員票と視聴者審査員票を制した白組の優勝となった。

 

特に反響を呼んだのが「怪獣の花唄」を熱唱したVaundyのステージである。Spotifyのデイリーチャートでは披露直後から楽曲・アーティストともに最も顕著な上位浮上を見せた。

 

 

 

Vaundyに限らず近年の紅白のステージ演出力の向上は著しいが、こうした素晴らしいステージの影響か、紅白全体(第2部)の視聴率も前年から上昇し、35.3%を記録した。視聴率に関しては前時代的価値観を基にネガティブな書き方をするメディアが非常に多いが、ネットの台頭が著しい近年の動画視聴環境の変化を考えれば、シンプルに年間トップクラスの視聴率というだけでも驚異的な数字である。

 

唯一残念だったのは、足元で前例のない楽曲人気動向を見せているOfficial髭男dism「Subtitle」の歌唱がフル尺ではなかったことである。ストリーミング時代において歴代1位級の人気を示すこの曲がフル尺でないなら何をフル尺にできるのかという話になるので、この点は明確に紅白の時間調整能力の不足を指摘せざるを得ない。次回以降の能力向上に期待したい。

 

音楽業界にとって圧倒的高視聴率が見込める紅白歌合戦という番組の存在は非常に重要である。巨大なコンテンツであるがゆえに玉石混交の批判も多く受けているが、この番組を機に人気が大きく普及する楽曲やアーティストも多く、番組が存在するメリットは非常に大きい。時代の変化に応じて番組の形が変わることがあろうとも、多くの素晴らしい楽曲が多くのリスナーにリーチする場所として、紅白歌合戦は確固たる地位を築いているのである。

 

(前年2021年の紅白歌合戦歌唱曲楽曲人気データはこちら↓)

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