GRe4N BOYZ(旧名:GReeeeN)は2007年に「道」でデビューした男性ボーカルグループ。デビューしてすぐに大ブレイクし、以降10年以上に渡りヒット曲を大量輩出している。
GRe4N BOYZがブレイクした2000年代終盤はダウンロード購入が楽曲視聴方法の主流であったため、楽曲人気は主にダウンロード売上を通じて把握できる。GRe4N BOYZの累計フル配信ダウンロード売上は1,395万となっており、これは歴代4位記録である*1。また、2020年代以降に新たな楽曲人気指標として台頭したストリーミング再生回数においても無視できない規模を記録している。
ここではデジタル指標を参照しながらGRe4N BOYZのヒット史を振り返る。当ブログ独自の計算式により作成した、GRe4N BOYZの人気楽曲ランキングは以下のとおりである。
(ランキング作成方法および歴代デジタルヒット曲ランキングは以下記事参照↓)
当ブログにおけるグループ名表記
グループ名は2007年のデビュー以来17年間GReeeeNだったが、2024年3月19日、所属事務所を退所し新会社を設立するとともに、グループ名をGRe4N BOYZに改名することが発表された。本来であれば新名に表記を統一すべきかもしれないものの、これから本記事で解説していくとおり、GReeeeN時代に築いた数多くの大ヒット曲がグループ名とともに残したインパクト及び記録は歴史的規模であり、簡単に記憶と記録を上書きできるものではないことを踏まえ、少なくとも当面の間、本記事の以降の文章および他の当ブログ記事における表記は基本的に旧名のままととする。
2007年-2009年 ~デビュー、大ブレイク、全盛期~
GReeeeNはデビューから僅か3年の間に大ヒット曲を連発し、フル配信ダウンロードミリオンセラーを4曲輩出した。この期間に発表された楽曲に絞ってリリース順に並べたデジタル人気データは以下のとおり。
2007年 -「愛唄」特大ヒット-
GReeeeNはメンバー4人全員が歯科医師とアーティスト活動を両立しており、顔や本名を一切公開しないという活動スタイルでありながら、デビュー前からデモテープが評価されていたことなどからレコード会社10社以上で争奪戦が繰り広げられ、2007年にユニバーサルミュージックからデビューした。
2007年1月に発売されたデビュー曲「道」は人生の応援歌として支持され、フル配信50万ダウンロード、ストリーミング1.0億再生を記録した。ただし、発売後すぐに売れたというわけではない。フル配信ダウンロード売上推移は以下のとおり。
- 配信開始から6ヶ月後の2007年7月に10万ダウンロード突破
- 1年8ヶ月後の2008年9月に25万ダウンロード
- 配信開始から11年3ヶ月後の2018年4月に50万ダウンロード達成
10万ダウンロードに至るまでには半年を要している。この後発売される「愛唄」が大ヒットしたことを機に認知度が上昇したことで、デビュー曲であるこの曲にも注目が集まり、発売半年後のヒットに繋がった。そして50万ダウンロード達成は何と11年以上が経過してからであり、この曲が非常に長い期間支持されていることが分かる。
大ブレイクはデビュー4ヶ月後の2007年5月に早くも訪れた。3rdシングル表題曲「愛唄」はGReeeeN初のラブソングとして支持され、メディア出演が一切ないにもかかわらずモバイル等を通じて人気が広がり、ダウンロードを中心に記録ずくめの爆発的な特大ヒットとなった。まずはフル配信ダウンロード売上推移を以下に示す。
- 配信開始から2週間で10万ダウンロード突破
- 1ヶ月後の2007年6月に50万ダウンロード
- 2か月後の2007年7月にミリオン達成
- 3ヶ月後の2007年8月に110万ダウンロード
- 8か月後の2008年1月に125万ダウンロード
- 1年3ヶ月後の2008年8月に225万ダウンロード(ダブルミリオン突破)
- 配信開始から2年2か月後の2009年7月に250万ダウンロード達成
この推移がいかに驚異的であるかは以下の記録が物語る。
- 国内史上初のミリオン達成
- ミリオン到達所要日数76日は歴代2位の速さ(1位もGReeeeN「キセキ」)
- 歴代ダブルミリオン達成曲全9曲のうちの1曲
当時ダウンロード市場の拡大がピークに達しつつある状況の中で本曲はフル配信ダウンロードミリオン達成第1号となった。*2
サウンドスキャンCD売上チャートでは本作の通常盤が年間16位となるに留まっているが、CD売上だけでは本曲が爆発的人気を記録していたことが把握できない。既にCD売上の楽曲人気指標としての価値はかなり低下していた。しかし、当時は数値を公開したダウンロード売上チャートが国内に存在せず、CD売上チャートが実態と異なり楽曲人気指標として使われ続けていた。
上記2007年のCD売上年間1位は秋川雅史「千の風になって」であるが、この曲は当時フル配信ダウンロード未解禁であった。もし当時CD売上とダウンロードを合算した音楽チャートがあったならば、「愛唄」は「千の風になって」を上回っていたと当ブログでは推定している。
各指標の累計はフル配信250万ダウンロード、着うた300万ダウンロード、ストリーミング2.2億再生、MV8,000万再生を突破している。本曲の人気は2020年代に突入してもなお根強さを示している。
同年11月発売の4thシングル「人」もフル配信25万ダウンロード、着うた50万ダウンロードを記録した。
2008年 -「キセキ」超特大ヒット-
翌2008年に入ってもダウンロード売上は好調が維持された。1月に発売された両A面シングル『BE FREE/涙空』のうち、「BE FREE」はフル配信25万ダウンロード、「涙空」はフル配信10万ダウンロードを記録した。前者は2008年1月にローンチしたばかりで今や楽曲人気指標としての権威を強固にしている音楽チャートBillboard JAPAN Hot 100において週間1位も獲得している。当時のビルボードはまだダウンロード売上が集計対象外だったが、代わりにラジオ指標で楽曲人気を拾い上げることに成功していた。
続く6thシングル「旅立ち」もフル配信10万ダウンロードを記録した。
そして5月に発売された7thシングル表題曲「キセキ」は「愛唄」に続くラブソングで、最高視聴率19%を記録した人気ドラマ『ROOKIES』の主題歌に起用されたことなどから、日本音楽史上最大級の超特大ヒットを記録した。フル配信ダウンロード売上推移は以下のとおり。
- 配信開始から3週間で75万ダウンロード突破
- 1ヶ月後の2008年7月に110万ダウンロード(ミリオン突破)
- 2ヶ月後の2008年8月に125万ダウンロード
- 7ヶ月後の2009年1月に225万ダウンロード(ダブルミリオン突破)
- 9ヶ月後の2009年3月に250万ダウンロード
- 3年1ヶ月後の2011年7月に275万ダウンロード
- 配信開始から7年1ヶ月後の2015年7月に400万ダウンロード達成
見てのとおり、国内史上初にして唯一となるフル配信400万ダウンロードを達成した。つまり歴代最多記録である。後に続く曲は、青山テルマ feat. SoulJa「そばにいるね」と米津玄師「Lemon」の2曲が記録したフル配信300万ダウンロードとなっている。
この偉業から、当ブログでは「キセキ」を2000年代のヒット曲10選に選出している。
また、これで「愛唄」に続く2曲目のダブルミリオン達成となり、GReeeeNは史上唯一となるフル配信200万ダウンロードを2曲記録したアーティストとなった。そもそもダブルミリオン達成曲は歴代で9曲しかなく、偉業を2度も達成したことになる。
しかし、既述のとおり、当時ダウンロード売上が楽曲人気指標として過小評価されていた影響から、今でもこの偉業が取り上げられる機会はCD売上データを紹介する機会と比べて少ない。例えばTBSで定期的に放送されている特番『歌のゴールデンヒット』はCDやレコードの売上データしか紹介しないため、CD売上だけでは歴史的規模にならない「キセキ」の超特大ヒットはことごとく無視され続けている。
CD販売がダウンロード販売より利益率が良いことや、価格が高いことを理由に、ダウンロード売上をヒット指標として過小評価する声も時折聞かれるが、ここでの目的は「どの曲が人気か」を把握することであり、「売上」の把握は、「人気」と「売上」が相関している限りにおいて有効な、目的達成のための一手段でしかない。基本的には「CD1枚」も「フル配信1ダウンロード」も「1人がその楽曲をフルサイズで購入した」と考えられるため、楽曲人気の広がりを考える上では両者は等価で扱って然るべきである。*3
こうした数々の不遇な扱いを受けている本曲だが、2008年から立ち上がったBillboard JAPAN Hot 100においては2008年の年間1位を獲得している。当時のBillboard JAPANの集計対象指標はCD売上とラジオエアプレイで、ダウンロード売上はまだ集計できていなかったが、ラジオ指標がダウンロード売上の代わりに楽曲人気を拾い上げたことで「キセキ」の年間1位という文句なしの結果が生まれた。
2015年に400万ダウンロードを達成して以降も「キセキ」の人気は衰えておらず、2017年1月には本曲の誕生までの実話をもとにした映画『キセキ -あの日のソビト-』が公開され、興行収入10億円以上を記録。これを機に公開日前後に再び楽曲人気が高まることとなり、Billboard JAPAN Hot 100では2016年88位再登場→2017年43位と推移した。こうした根強い人気から今後も記録が伸び続けるとしても何ら不思議はない。他指標の累計も着うた300万ダウンロード、ストリーミング2.5億再生、MV1.0億再生を突破している。
なお『キセキ』のc/wである「ルーキーズ」もフル配信10万ダウンロードを記録している。
2008年6月には2ndオリジナルアルバム『あっ、ども。おひさしぶりです。』をリリース。アルバム曲の中では、『ランチパック』のCMソング「またね」とNHKドラマ8『七瀬ふたたび』主題歌の「君想い」がフル配信10万ダウンロードを記録している。
10月には、ミクスチャーロックバンドBACK-ON・GReeeeNのプロデューサーJINとコラボレーションしたユニットBAReeeeeeeeeeNにより発売されたシングル「足跡」がフル配信10万ダウンロードを記録した。
12月には8thシングル「扉」を発売し、フル配信35万ダウンロード、着うた50万ダウンロードを記録した。
2009年 -「歩み」「遥か」大ヒット-
2009年も複数の大ヒット曲が輩出された。まず1月にリリースした9thシングル「歩み」は『ユーキャン』のCMキャンペーンソングとなったことで学生を中心に支持され、フル配信100万ダウンロード、着うた100万ダウンロードを記録した。フル配信ダウンロード売上推移は以下のとおり。
- 配信開始から3日で10万ダウンロード突破
- 1ヶ月後の2009年2月に25万ダウンロード
- 2か月後の2009年3月に35万ダウンロード
- 1年3ヶ月後の2010年4月に50万ダウンロード
- 配信開始から10年7ヶ月後の2019年8月にミリオン達成
なんとミリオン到達には10年を要している。「どんな一歩も無駄にはならない」と歌うメッセージが支持され、長い年月をかけてダウンロード売上を積み上げ続けていたことが分かる。
3月には10thシングル「刹那」が発売された。表題曲は最高視聴率17%を記録したドラマ『ヴォイス〜命なき者の声〜』の主題歌に起用され、フル配信75万ダウンロード、着うた100万ダウンロードを記録した。フル配信ダウンロード売上推移は以下のとおり。
- 配信開始から2週間で10万ダウンロード
- 1ヶ月後の2009年4月に25万ダウンロード
- 2か月後の2009年5月に35万ダウンロード
- 4年6ヶ月後の2013年8月に60万ダウンロード
- 配信開始から7年後の2016年3月に75万ダウンロード達成
この曲も長い年月をかけてダウンロード売上を積み上げ続けており、75万ダウンロードに至るまでには7年を要している。生きる意味に迷いながらも理想の自分を追い続けたいと歌うメッセージが長きに渡る支持を集めている。
5月には11thシングル「遥か」をリリース。本曲は夢に向かって旅立つ主人公がこれまで支えてくれた人への感謝を綴ったナンバーで、映画『ROOKIES -卒業-』の主題歌に起用された。タイアップ先がすでに「キセキ」で実績を得ていたことや、映画が興行収入85億円を記録するヒットとなったことも後押しし、各指標の累計はフル配信125万ダウンロード、着うた100万ダウンロード、ストリーミング1.2億再生、MV3,000万再生を記録する大ヒットとなった。フル配信ダウンロード売上推移を以下に示す。
- 配信開始から1週間で25万ダウンロード
- 1ヶ月後の2009年6月に50万ダウンロード
- 2ヵ月後の2009年7月に85万ダウンロード
- 5ヶ月後の2009年10月に110万ダウンロード(ミリオン突破)
- 配信開始から10ヶ月後の2010年3月に125万ダウンロード達成
所要5ヶ月でのミリオンは、「歩み」が10年かけてミリオンに到達したことと比べると驚異的なスピードであり、「愛唄」「キセキ」の爆発的なヒットに匹敵する。しかし既述のとおり、当時ダウンロード売上が楽曲人気指標として過小評価されていた影響から、今でもこの偉業が取り上げられる機会はCD売上データを紹介する機会と比べて少ない。
Billboard JAPAN Hot 100では週間1位を獲得している。既述のとおりラジオ指標が集計対象になっていたことでダウンロード売上の代わりに楽曲人気を拾い上げた結果である。
6月には3rdオリジナルアルバム『塩、コショウ』をリリース。アルバム曲の中では「いつまでも」がフル配信10万ダウンロードを達成している。この曲は特にタイアップがないのだが、ウェディング・ソングとして発売当初より人気を集めた。
11月には初のベストアルバム『いままでのA面、B面ですと!?』をリリースした。これを区切りに、活動休止というわけではないが、この後しばらく新曲の発売が途絶えることになる。
2011年-
2010年はデビュー以来唯一新作が発売されない年となったが、2011年以降は新作発売が再開し、以降もコンスタントに新作リリースが続いている。この時期の楽曲に絞ってリリース順に並べたデジタル人気データは以下のとおり。
2011年-2012年
2011年には3枚のシングルが発売され、このうち「ソラシド」がフル配信10万ダウンロード、「恋文~ラブレター~」がフル配信20万ダウンロードを記録した。
2012年はより精力的な活動となり、4枚のシングルと1枚のオリジナルアルバムがリリースされた。
その第1弾となった15thシングル「ミセナイナミダハ、きっといつか」は、最高視聴率16%を記録したフジテレビ系ドラマ『ストロベリーナイト』主題歌となったこともあり、フル配信50万ダウンロードを記録した。強がることを肯定し、その気高さを歌った内容が支持を集めた。
その後も16thシングル「オレンジ」が『シーブリーズ』CMソングに起用されたこともあり、フル配信25万ダウンロード、ストリーミング5,000万再生、MV3,000万再生を記録した。
6月には4thオリジナルアルバム『歌うたいが歌うたいに来て 歌うたえと言うが 歌うたいが歌うたうだけうたい切れば 歌うたうけれども 歌うたいだけ 歌うたい切れないから 歌うたわぬ!?』をリリース。収録曲のうち、2007年にNEWSに提供したヒット曲「weeeek」のセルフカバーがリリース2週間前から先行配信されており、フル配信10万ダウンロードを記録した。また、『夏の高校野球』2012年度応援ソングに起用されたアルバム曲「pride」も同じくフル配信10万ダウンロードを記録した。
12月には18thシングル「雪の音」をリリース。本曲は『JR SKISKI』のCMソングとなったこともあり、フル配信25万ダウンロードを記録した。
2013年
2013年は新作リリースペースが非常に速い一年となった。CDシングル表題曲においては、22ndシングル「愛し君へ」がフル配信25万ダウンロード、「イカロス」「HEROES」がフル配信10万ダウンロードを記録した。
また、配信限定シングルにおいては「あいうえおんがく♬」がフル配信25万ダウンロード、MV5,000万回再生を記録している*4。MVではLINEのスタンプでお馴染みのムーン・ジェームズ・ブラウン・コニーとのコラボレーションが見られる。
2014年以降
2014年は配信シングル「風」がフル配信10万ダウンロードを記録した。2015年には配信シングル「ビリーヴ」がフル配信10万ダウンロードを記録した。
2016年以降は暫く新曲のダウンロード認定が途絶えたが、新曲発売が1年以上途切れることはなく、オリジナルアルバムも3枚発売されるなど、安定した活動が続いていた。また、様々な形でGReeeeNの活躍が取り上げられる機会があり、「キセキ」の項で既述した、映画『キセキ -あの日のソビト-』のヒットもその一つである。この映画でGReeeeN役を務めた菅田将暉、横浜流星、成田凌、杉野遥亮によるユニットグリーンボーイズが歌ったGReeeeNの楽曲カバーのうち「声」はフル配信10万ダウンロード、MV3,000万再生を記録した。
グリーンボーイズ(菅田将暉、横浜流星、成田凌、杉野遥亮) 『声』Short Ver.
他にも、GReeeeNの妹分としてオーディションで選ばれたメンバーで結成された女性4人組ボーカルグループwhiteeeenが「愛唄」のカバー「愛唄〜since 2007〜」でデビューし、フル配信10万ダウンロードを記録している。
2020年には、6月に発売された34thシングル「星影のエール」が久々にフル配信10万ダウンロードを記録した。本曲はNHK朝の連続テレビ小説『エール』の主題歌としてお茶の間に浸透しており、引き続き親しみやすさが健在であることを示した。2021年には、視聴率19%を記録した人気ドラマ『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』の主題歌に起用された「アカリ」を35thシングルとしてリリースし、ストリーミング5,000万再生を記録した。
以降もコンスタントな新作リリースが続けられていた中、冒頭で触れたとおり、2024年3月19日には所属事務所を退所し新会社を設立するとともに、グループ名をGRe4N BOYZに改名することが発表された。新たな環境となる中で今後どのような活躍が見られるのか、注目が集まっている。
まとめ
以上まで見てきたとおり、GRe4N BOYZ(GReeeeN)は本人たちがメディアに一切顔と名前を出さないというスタイルでありながら、多くのファンや関係者を巻き込み、突き動かしていく形で楽曲を広めることに成功している。この活動スタイルは相当の人気・影響力がないと真似できるものではなく、デジタル人気データによって改めてその大きさが確認できた。
以上までに紹介したヒット曲を手元に所有したい場合は、入り口として2017年に発売された10周年記念ベストアルバム『ALL SINGLeeeeS 〜& New Beginning〜』がおすすめ。
この記事で紹介したデータのうちストリーミング再生回数やダウンロード売上はBillboard JAPANの公式サイトや日本レコード協会の公式サイトから検索することができる。新たな発見の宝庫なので、時間があれば好きな曲やアーティストのデータを検索してみることをお勧めする。