AKB48は2006年に「桜の花びらたち」でデビューした女性ダンス&ボーカルグループ。2008年下旬から勢いを増しはじめ、2010年代前半にかけて大ヒット曲を大量輩出した。
AKB48がブレイクした2000年代終盤はダウンロード購入が楽曲視聴方法の主流であったため、楽曲人気は主にダウンロード売上を通じて把握できる。AKB48の累計フル配信ダウンロード売上は1,440万となっており、これはEXILE、西野カナに次ぐ歴代3位記録である。また、2010年代以降に新たな楽曲視聴ツールとして台頭したYouTubeにおけるMV再生回数においても無視できない規模を記録している。
ここでは上記デジタル指標を参照しながらAKB48のヒット史を振り返る。当ブログ独自の計算式により作成した、AKB48の人気楽曲ランキングは以下のとおりである。

(ランキング作成方法および歴代デジタルヒット曲ランキングは以下記事参照↓)
はじめに ~AKB商法の捉え方~
しばしば批判の対象となるAKB商法については次のように捉えると良い。
AKB商法によるCD売上チャートの独占自体は何の問題もない
AKB48が最も多くCDを売っていることは事実なので、CD売上を集計するチャートであれば、その枚数は漏れなく把握し、反映させなければならない。
CD市場が縮小する中でも利益率が高いCDを売り続ける手法として、AKB商法はビジネスモデルとしては大成功したといえる。その利益が音楽業界の発展への投資に使われるなら願ってもないことである。CD売上チャートを独占していることが気に入らないという理由は個人の好き嫌いの域を出ない。
では何が問題なのかというと、次の点である。
CD売上チャートを楽曲人気指標として使用し続けることが問題である
AKB商法の発明は、CDの売上を音楽ではない付属品に頼るというものであった。
従来は、楽曲人気が高い曲を知りたいときには、シングルCD売上チャートを見れば良かったのだが、AKB商法の普及に伴い、「売上」と「楽曲人気」の間に相関関係がなくなった。
また、楽曲視聴方法がCDからデジタルに移行したことで、楽曲人気はダウンロード売上に表れるようになっていった。
しかし、CD売上の集計で有名なオリコンはダウンロード売上チャートを作らず、CD売上チャートが中心的な楽曲人気指標であるという理論を押し通した。
音楽業界としては、CDで売ったほうがダウンロードで売るよりも利益率が良かったため、CDチャート上位に入った者が脚光を浴びるシステムとなるようにしたいという思惑があったものと思われる。
オリコンはそもそも業界誌であるため、ユーザーの「人気曲が知りたい」というニーズよりも、(売上が生活に直結する)音楽業界関係者の「売れている曲が知りたい」というニーズや上記論理を優先したようである。
このため、ダウンロード売上を稼いでいた人気曲が脚光を浴びづらい状況となる一方、依然としてCD売上チャートが、実態と異なり、楽曲人気指標として扱われ続けた。CD販促施策に長けたグループはチャート上位進出によって、今流行しているのは私たちだとして、広告宣伝の良い機会として利用した。*1
この動きに対して情報の受け手であるユーザーが違和感を抱くことは自然の流れであった。AKB商法の是非が盛んに議論されたが、悲しいことにそのほとんどは「売上」と「人気」の論点が混同したもので、噛み合っていないことが多かった。
※例えば以下記事のように「CDチャート上位だが本当に人気なのか」という問いに対して「売れていれば良い」という論点のズレた回答がよく見られた。前段の疑問がしばしば「日本の音楽は腐った」などと過激な口調で表現されることも問題であった。
売上指標と人気指標を区別して考える
CD売上チャート1位獲得を広告宣伝の場として利用する動きは今後も継続していくと思われる。ここで問題なのは、オリコンが発信するCDチャート1位記事において、CD売上の増加要因としてAKB商法に一切触れないことである。CD売上指標の中身の変質に触れないことが、CD売上の楽曲人気指標としての役割を不適切に延命させることを助長した面は否めない。AKB商法がCD売上に大きな影響を与えている事実は説明必須であり、この点は改善を要する。*2
ただ、もう10年以上、上記問題点への改善が見られないことを考えれば、もはや情報の発し手であるオリコンには期待できない。したがって、情報の受け手であるユーザーが意識して「売上指標」と「楽曲人気指標」をしっかり区別する必要がある。
ユーザーにとって、音楽チャートを見る目的の多くは「今人気となっている曲が知りたい」「自分が好きな曲がどれほど人気となっているのか知りたい」である。
その場合、楽曲人気と相関していない売上指標は見る必要がない。見るべきは人気指標(Billboard JAPAN Hot 100など)である。売上指標上位をAKB48が独占していることに対して、「本当に人気なのか分からない」と不満を抱いている人は、そもそも見るべき指標を間違えている。
この記事の目的も、AKB48の「どの曲が人気となっていたのか」を把握することである。「どの曲が売れたのか」ではない。AKB48の全盛期に楽曲人気指標として機能していたのはダウンロード売上やMV再生回数であるであるため、それらのデータを用いる。CD売上枚数についてはほぼ言及しない。
2006年-2009年 ~発足・体制確立~
この最初の4年の期間に発表された楽曲に絞ってリリース順に並べたデジタル人気データは以下のとおり。

AKB48は、総合プロデューサー秋元康主導の下、2005年にメンバーを募集し、2006年にレコードレーベルAKSからインディーズデビュー。同年10月にソニーミュージックのレコードレーベルであるデフスターレコーズからメジャーデビューを果たした。
メジャーデビュー作「会いたかった」は、「会いに行けるアイドル」をコンセプトとして掲げているAKB48を象徴するアイドルポップス。本曲は上表のとおりフル配信75万ダウンロード、着うた50万ダウンロードを記録しており、デビューしていきなりブレイクしたのかと思ってしまうが実はそうではない。フル配信ダウンロード売上の推移は以下のとおり。
- 配信開始から3年3ヶ月が経過した2010年1月に10万ダウンロード突破
- 2010年8月に25万ダウンロード突破
- 2011年2月に50万ダウンロード突破
- 配信開始から7年3ヶ月が経過した2014年1月に75万ダウンロード達成
2006年発売曲でありながら、ダウンロード売上の大半を2010年〜2011年に稼いでいる。紛れもなく2010年〜2011年の年跨ぎヒット曲である。2010年はAKB48の知名度が急拡大し、AKB48を紹介する曲として、サビで「会いたかった~!」と連呼する本曲がうってつけであったため、メディアで大量OAされたことなどが背景にある。
ちなみに2009年に実現したアイドリング!!!とのコラボシングル「チューしようぜ!」がAKBアイドリング!!!名義で発売された際にc/wに収録されたアイドリング!!!による本曲のカバー「会いたかった(アイドリング!!!バージョン)」もフル配信10万ダウンロードを記録している。

2008年にはレコード会社をキングレコードへ移籍。移籍第一弾となるCDシングル「大声ダイヤモンド」はフル配信50万ダウンロード、MV4,000万再生を記録している。本曲のフル配信ダウンロード売上推移は以下のとおり。
- 配信開始から1年8ヶ月が経過した2010年6月に10万ダウンロード突破
- 2011年6月に35万ダウンロード突破
- 配信開始から5年3ヶ月が経過した2014年1月に50万ダウンロード達成
この曲も「会いたかった」同様、ダウンロード売上の大半を2010年~2011年に稼いでいる。告白を後押ししてくれるエネルギッシュなポップナンバーとなっており、AKB48の若さと勢いを象徴する楽曲として人気を博した。当時11歳の松井珠理奈がいきなり抜擢され、前田敦子とダブルセンターを務めたことも話題となった。
【MV full】 大声ダイヤモンド / AKB48 [公式]
2009年に発売されたシングル表題曲もすべて2010年になってからダウンロード売上を積み上げた。累計は、「10年桜」がフル配信25万ダウンロード、「涙サプライズ!」がフル配信25万ダウンロード、MV4,000万再生、「言い訳Maybe」がフル配信35万ダウンロード、MV3,000万再生を記録した。
既述のとおり、当時はCDチャート上位に入った者が脚光を浴びるシステムとなっていたことから、AKB48の知名度は、AKB商法によってCD売上が拡大を始めた2009年になって上昇した。そのような中で10月にリリースされた14thシングル「RIVER」はフル配信50万ダウンロード、MV3,000万再生を記録した。本曲では、困難や不確実な未来を川に例え、それでも泳ぎ進んでいくことが力強く歌われた。
また、『RIVER』のc/wである「君のことが好きだから」も人気となり、フル配信10万ダウンロードを記録した。
2010年-2011年 ~全盛期~
この時期になるとAKB48の人気はピークを迎え、AKB商法の効果の発現が顕著になっただけでなく、人気楽曲も大量に輩出した。この期間に発表された楽曲に絞ってリリース順に並べたデジタル人気データは以下のとおり。

2010年
まず2月に発売された15thシングル「桜の栞」はフル配信25万ダウンロードを記録。また、本作のc/w「マジスカロックンロール」もフル配信10万ダウンロードを記録した。続いて4月にリリースした2ndアルバム『神曲たち』はBillboard JAPAN Top Albums Salesの年間で2010年19位→2011年77位と推移するロングヒットを記録した。
5月には16th「ポニーテールとシュシュ」を発売。本曲はフル配信100万ダウンロード、MV8,000万再生を記録する大ヒットとなった。
フル配信ダウンロード売上推移は以下のとおり。
- 配信開始1ヶ月後の2010年6月に10万ダウンロード突破
- 2010年8月に25万ダウンロード突破
- 2010年10月に35万ダウンロード突破
- 2011年1月に60万ダウンロード突破
- 2011年2月に75万ダウンロード突破
- 2014年1月にミリオン達成
当時の自己最速である1ヶ月での10万ダウンロード突破となったほか、2010年の年末歌番組でAKB48のブレイクが大きく取り上げられたこともあり、2011年初に再びペースアップしたことがミリオンに繋がった。
メンバーが水着とポニーテール姿で踊るMVも人気となり、YouTubeでは2010年のMV再生回数年間1位を獲得している。(ただし当時はCD売上ばかりが注目されており、MV再生回数の年間ランキングはほとんど注目されていなかった)

【MV full】 ポニーテールとシュシュ / AKB48 [公式]
本作のc/wからは「マジジョテッペンブルース」がフル配信10万ダウンロードを記録。本曲はCDでは通常盤Type-Bと劇場盤に収録されており、通常版Type-Aには収録されていない。
8月には17thシングル「ヘビーローテーション」を発売。この曲は達成順では自身初にして自身最速でフル配信ダウンロードミリオン突破を果たした楽曲であり、冒頭に示したデジタル人気楽曲ランキングで1位となる自身最大ヒットを記録した。フル配信ダウンロード売上推移は以下のとおり。
- 配信開始から27日で10万ダウンロード認定受領
- 配信開始1ヶ月後の2010年9月に25万ダウンロード突破
- 2010年10月に35万ダウンロード突破
- 2010年12月に60万ダウンロード突破
- 配信開始8ヶ月後の2011年4月にミリオン突破
- 2011年12月に125万ダウンロード突破
- 2012年1月に150万ダウンロード達成*3
本曲は2010年選抜総選挙によって選ばれたメンバーによる歌唱で、センターは大島優子。当時一番の知名度の高さだった前田敦子が総選挙で2位という結果になり、大島優子が1位になったことは番狂わせとして大きな話題となった。
メンバーがナポレオンジャケットやランジェリーに身を包んだMVも人気となり、累計はMV1.8億再生を突破している。以下記事のとおり、この曲の1億突破を以てAKB48が国内史上初のMV1億突破を果たしたこととなっている。今でこそ多くの楽曲がMV1億再生を達成しているが、本曲はその先駆けでもあった。
この他、着うた75万ダウンロードも記録している。Billboard JAPAN Hot 100の年間では2010年の3位を獲得し、AKB48の楽曲としてはこの年唯一のTOP10入りを果たした。
【MV full】 ヘビーローテーション / AKB48 [公式]
本作のc/wからは「野菜シスターズ」がフル配信10万ダウンロードを記録。この曲も通常盤Type-Aと劇場盤の収録曲で、通常盤Type-Bには収録されていない。
10月には18thシングル「Beginner」をリリース。こちらもフル配信100万ダウンロード、MV4,000万再生を記録する大ヒットとなった。フル配信ダウンロード売上推移は以下のとおり。
- 配信開始から18日で10万ダウンロード認定受領
- 配信開始2ヵ月後の2010年12月に25万ダウンロード突破
- 2011年1月に35万ダウンロード突破
- 2011年3月に60万ダウンロード突破
- 2011年7月に75万ダウンロード突破
- 2014年1月に配信ミリオン達成
ダウンロード売上の大半は2011年以降に稼がれている。背景には、年末歌番組で度々歌われた効果のほか、AKB商法によるCD売上の増加が報道された効果等が挙げられる(「ヘビーローテーション」の大ヒット等を受けたファンの増加はAKB商法の効果を倍々ゲームのごとく加速させていた)。本曲では、初心者でも恐れずに挑戦することが力強く歌われている。
【MV full】 Beginner / AKB48 [公式]
12月にはじゃんけん大会によって選ばれたメンバーによる歌唱曲「チャンスの順番」が19thシングル表題曲として発売され、フル配信10万ダウンロードを記録した。
2011年
2月に発売された20thシングルCD表題曲「桜の木になろう」はフル配信50万ダウンロードを記録。Billboard JAPAN Hot 100の年間では2011年の4位に入った。Billboard JAPANは当時劇場盤の売上を集計していなかったが、これを除いたCD売上でも年間上位にランクインできるほど、当時のAKB48の人気規模は拡大していた。本曲は卒業ソングであり、学校に立つ桜の木を軸に友情や別れを歌ったバラードナンバーとして支持を集めた。
【MV full】 桜の木になろう / AKB48 [公式]
4月には、東日本大震災を受けて「誰かのために-What can I do for someone?-<配信限定チャリティソング>」が期間限定配信され、フル配信10万ダウンロードを記録した。
5月発売の21thシングル表題曲「Everyday、カチューシャ」はメンバーがカチューシャと水着で踊るMVが人気となるなど大ヒットし、フル配信100万ダウンロード、着うた50万ダウンロード、MV1億再生を記録した。フル配信ダウンロード売上推移は以下のとおり。
- 配信開始から13日で10万ダウンロード認定受領
- 配信開始1ヶ月後の2010年6月に25万ダウンロード突破
- 2011年10月に50万ダウンロード突破
- 2011年12月に75万ダウンロード突破
- 2014年1月に配信ミリオン達成
Billboard JAPAN Hot 100の年間では2011年の1位を獲得した。自身初の年間1位となる。
【MV full】 Everyday、カチューシャ / AKB48[公式]
本作のc/wからは、Type-Aのみに収録されている「ヤンキーソウル」がフル配信10万ダウンロードを記録。やはりType-B及び劇場盤には未収録である。
8月発売の22thシングル表題曲「フライングゲット」は総選挙選抜メンバーによる歌唱で、センターは総選挙1位に返り咲いた前田敦子。CD購入の慣習である「フラゲ」に例えて恋愛感情を歌う歌詞などが話題となり、フル配信100万ダウンロード、着うた50万ダウンロード、MV1億再生を記録した。フル配信ダウンロード売上推移は以下のとおり。
- 配信開始から14日で10万ダウンロード認定受領
- 配信開始1ヶ月後の2011年9月に25万ダウンロード突破
- 2011年12月に50万ダウンロード突破
- 2012年9月に75万ダウンロード突破
- 2014年1月に配信ミリオン達成
Billboard JAPAN Hot 100の年間では2011年の2位を獲得し、「Everyday、カチューシャ」の1位と併せて年間ワンツーを達成した。
また、本曲で2011年の日本レコード大賞を受賞するに至った。*4
【MV full】 フライングゲット (ダンシングバージョン) / AKB48 [公式]
続く10月には23thシングル「風は吹いている」が発売され、フル配信50万ダウンロードを記録した。本曲は「震災復興応援ソング」として制作されており、アコースティックギターサウンドが効いたクールなロックサウンドに乗せて復興への真摯な決意が届けられた。
【MV full】 風は吹いている(DANCE! DANCE! DANCE! ver.)/AKB48[公式]
12月にはじゃんけん大会によって選ばれたメンバーによる歌唱曲「上からマリコ」が発売され、フル配信25万ダウンロードを記録した。タイトルのとおりセンターは篠田麻里子が務めた。
姉妹グループ・派生ユニット・ソロ作品の売上
2011年は本体の活躍だけでなく、多くの姉妹グループや派生ユニット、メンバーのソロ作品も発売され、人気のピークを迎えていた。そこで、姉妹ユニット、派生ユニット、メンバーソロのデジタル人気楽曲を以下に完全網羅した。
名古屋市栄を拠点にした姉妹グループ。以下の4曲がフル配信10万ダウンロードを売り上げている。

大阪市難波を拠点にした姉妹グループ。以下の1曲がフル配信10万ダウンロードを売り上げている。

渡辺麻友を中心とした派生ユニット。以下の1曲がフル配信10万ダウンロードを売り上げている。

神7と呼ばれたメンバーの一人。「Dear J」がフル配信25万ダウンロード、他2曲がフル配信10万ダウンロードを売り上げている。

2度のAKB総選挙優勝を達成したAKB48の顔。以下の3曲がフル配信10万ダウンロードを売り上げている。

2012年-2015年 ~成熟期~
この時期になるとAKB48の1年の活動サイクルも定着し、安定期を迎えた。全盛期を支えた人気メンバーも徐々に卒業していくようになるが、前田敦子に代わり指原莉乃が絶対的センターとして君臨し、AKB48のブランド維持に貢献した。この時期に発表された楽曲に絞ってリリース順に並べたデジタル人気データは以下のとおり。

2月に発売された25thシングル「GIVE ME FIVE!」はメンバーがバンドスタイルで歌唱するMVも話題となり、フル配信50万ダウンロードを記録。Billboard JAPAN Hot 100の年間では2012年の2位を獲得した。
【MV full】 GIVE ME FIVE ! / AKB48[公式]
5月には、この時期の発売が恒例となった総選挙投票券付きシングル「真夏のSounds good!」が発売され、フル配信50万ダウンロード、MV4,000万再生を記録した。投票券付きCD表題曲はメンバーが水着で歌唱するMVも定番人気化していた。
同じ50万ダウンロード認定でも、到達所要日数では「GIVE ME FIVE!」の方が2年半速いのだが、CD売上では投票券がついていた本作が自身最大売上であったことから、本曲が2012年のAKB48の代表曲として扱われることが多かった。実際、Billboard JAPAN Hot 100の年間では2012年の1位を獲得し、2012年の日本レコード大賞も受賞した。*5
本曲は卒業を発表していた前田敦子が参加する最後のシングルとなっている。この曲より後にフル配信50万ダウンロードを突破した曲は2曲しかないことからも、絶対的エースが抜けた穴の大きさが垣間見える。
【MV full】 真夏のSounds good ! (Dance ver.) / AKB48[公式]
8月には、大島優子が総選挙1位となりセンターを務めた27thシングル「ギンガムチェック」が発売され、表題曲はフル配信25万ダウンロード、MV4,000万再生を記録した。Billboard JAPAN Hot 100の年間では2012年の年間3位を記録。この年はAKB48が年間TOP3独占を達成した。
9月には、京楽産業.のパチンコ機『CRぱちんこAKB48』のために結成されたユニット「チームサプライズ」が歌唱する「重力シンパシー」がリリースされ、フル配信10万ダウンロードを記録した。本曲はCDシングルでは一般発売されていない。
続く28thシングル「UZA」、29thシングル「永遠プレッシャー」、30thシングル「So long!」はフル配信10万ダウンロードを記録した。31thシングル「さよならクロール」もフル配信10万ダウンロードを記録。本曲は恒例の総選挙投票券付きCDシングル表題曲であったことからCD売上を稼ぎ、Billboard JAPAN Hot 100の年間では2013年の2位を記録した。
そして8月に放たれた32ndシングル「恋するフォーチュンクッキー」はフル配信100万ダウンロード、MV2.5億再生を記録し、自身の新たな代表曲となるまでに至った。フル配信ダウンロード売上推移を以下に示す。
- 配信開始1ヶ月で10万ダウンロード突破
- 3ヶ月後の2013年11月に20万ダウンロード突破
- 2013年12月に35万ダウンロード突破
- 2014年1月に50万ダウンロード突破
- 2014年2月に75万ダウンロード突破
- 配信開始から1年7ヶ月後の2015年3月に配信ミリオン達成
ミリオン到達所要日数は「ヘビーローテーション」に次ぐ自身2位のスピード記録であるが、実はダウンロード売上の過半が2014年以降に稼がれている。ディスコサウンドに乗せた誰もが踊れるナンバーとして忘年会需要が多数あったことや、年末歌番組で多く歌唱されたことで、ダウンロード売上はむしろリリースの翌年に大きく増加した。
実際に、「恋チュンを踊ってみた」という動画が様々な団体から多数投稿され、そのうちのいくつかはファンによる動画として公式認定されている。
MV再生回数は「ヘビーローテーション」を上回る自身最多記録を樹立している。ダウンロード売上ランキング1位の「ヘビーローテーション」とMV再生回数1位の「恋するフォーチュンクッキー」がAKB48の二大ヒット曲として双璧を成していることは間違いない。
本曲のセンターは初の総選挙1位となった指原莉乃で、この曲の大ヒットが指原莉乃を絶対的センターとして確立させることに寄与した。
Billboard JAPAN Hot 100の年間では2013年1位→2014年20位と推移。2013年も、「さよならクロール」と併せてAKB48が年間ワンツーを達成した。
【MV full】 恋するフォーチュンクッキー / AKB48[公式]
続いて10月に発売された33rdシングル「ハート・エレキ」はフル配信10万ダウンロードを記録。
翌2014年は4枚のシングル「前しか向かねえ」、「ラブラドール・レトリバー」、「心のプラカード」、「希望的リフレイン」がリリースされ、4曲すべてフル配信10万ダウンロードを記録した。
2015年も4枚のシングルがリリースされ、表題曲からは「ハロウィン・ナイト」がフル配信10万ダウンロードを記録した。
この年はシングル表題曲ではなくc/wからフル配信75万ダウンロードを記録するヒット曲が誕生した。『唇にBe My Baby』のc/wで、NHK連続テレビ小説『あさが来た』の主題歌に起用された「365日の紙飛行機」である。『あさが来た』は朝ドラとしては21世紀最高の視聴率を記録するほどの人気であり、その中で本曲は人生を紙飛行機に例えた歌詞が心に染みるものであったことや、センターを務めた山本彩の歌唱力などから顕著な人気曲となった。
【MV full】 365日の紙飛行機/ AKB48 [公式]
なお本曲は2015年12月リリースだったため、2015年11月に発売されたベストアルバム『0と1の間』には収録されていない。ベストアルバムはBillboard JAPAN Top Albums Salesの年間で2015年28位→2016年58位と推移した。
2016年-
フル配信10万ダウンロードを超えたAKB48の楽曲は、「365日の紙飛行機」が最後となっている。また、MVやストリーミングで5,000万再生を超えるような楽曲も以降は誕生していない。引き続きAKB商法によって稼がれているCD売上は楽曲人気指標として使用することができないため、「365日の紙飛行機」を最後にAKB48は人気楽曲を輩出できていない、とする主張に反論することは困難となっている。
この時期の楽曲人気を把握するうえでは、Billboard JAPAN Hot 100の集計方法の変化を誤解なく押さえておくことも欠かせない。このヒットチャートは合算対象とする指標を時代に応じて変化させ続けているほか、指標ごとの反映率や反映方法も適宜変更を重ねている。
2015年以前のBillboard JAPAN Hot 100では、AKB48の楽曲が2011年から2013年にかけて3年連続1位を獲得しているが、その集計対象指標となるCD売上においては、劇場盤が集計対象外となっていた。このため、AKB48のCD売上は嵐と拮抗する程度の枚数に収まっており、必ずしもAKB48が毎年年間チャートを独占するという状況にはなっておらず、一般流通分のCD売上が減少し始めた2014年から2015年にかけてAKB48の年間順位は下降気味となっていた。
2016年からは集計方法に大きな変化が生じた。劇場盤のCD売上を集計対象に追加したのである。この背景については、ブログ『イマオト』管理人のKei氏が直接Billboard JAPANに問い合わせをしたことで判明している。
この結果、AKB48の年間順位は一気に再浮上。「翼はいらない」が年間1位、「君はメロディー」が年間4位、「LOVE TRIP」が年間7位、「ハイテンション」が年間8位となり、2016年に発売されたシングル表題曲4曲はすべて年間TOP10入りを果たした。
特に、フル配信ダウンロード売上10万未満・MV再生回数3,000万未満である「翼はいらない」が、フル配信100万ダウンロード、MV3億再生を突破しているRADWIMPS「前前前世」を抑えて年間1位となったことは、集計方法の試行錯誤の過程で生じたヒットチャートの失敗であった。
2016年の結果を受け、2017年には非常に重要な集計方法の変更が成された。多すぎるCD売上に対しては反映率を大幅に減少させる措置を取り始めたのである。具体的には以下のとおりに公式アナウンスされている。
JAPAN HOT100ではシングルセールスを合算するときにどのように合算していますか。
各指標のレシオ(非公開)の平均値(半期毎)と、実数値とがかけ離れていないか毎週一般公表前に確認しています。その乖離が大きくなり過ぎる場合、全指標の計算係数を見直し、実数値と乖離が小さく、かつマーケットの占有率からも乖離が小さい計算係数を設定し、全指標を再計算しています。
そのため2017年度以降、前述の理由のためシングルポイントに係数をかける場合があります。
「係数」は非公開だが、当時の手元計算では、一週間に30万を超える分のCD売上の反映率を通常の1/10とすると、総合ポイントに近い値が算出できるようになっていた。
この措置によって、例え総選挙投票券付CDを初動で250万枚売っても、係数処理後は52万(30万+220万/10)にしかならなかった。発売2週目以降に30万ほど積み増したとしても、合計で80万強である。
当時の年間TOP10のボーダーラインは通常のCD売上換算で80万~100万程度であることから、AKB商法だけでは、総選挙投票券付CD表題曲でも年間TOP10に入れるか否か微妙なラインという状況になっていた。
通常のAKB商法だと、初動で150万CDを売ったとして、係数処理後は42万(30万+120万/10)。翌週以降10万積み増したとしても50万強。これは当時の年間チャートで言えば40位前後の水準であった。
2017年以降の年間チャートにおけるAKB48の最高位は、2017年が「願いごとの持ち腐れ」の15位、2018年が「Teacher Teacher」の10位で、いずれも総選挙投票券付CD表題曲。総選挙がなかった2019年は、「ジワるDAYS」の45位であった。
2020年以降はストリーミング市場が拡大したことでチャートのポイント水準が大幅に上昇したため、AKB48の年間最高順位は相対的に大きく下落した。2020年は「失恋、ありがとう」の93位が最高となり、2021年以降はついに一曲も年間TOP100圏内にランクインしなくなった。こうしてCD売上だけでBillboard JAPAN Hot 100年間チャートに入ることは不可能になったことで、Billboard JAPAN Hot 100の楽曲人気指標としての権威は強固となった。
AKB48は、再びBillboard JAPAN Hot 100年間上位を目指したい場合、CD売上以外の指標へのプロモーションを強化し、楽曲人気の獲得に努めることが必須である。
まとめ
2019年に発生したNGT48山口真帆暴行被害事件や2020年代前半に発生した新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、AKB商法にも変革が迫られたAKB48だが、楽曲人気を知るうえでは、AKB商法によるCD売上の情報はほぼ不要であった。CD売上指標ではなく、デジタル指標で全盛期の圧倒的な人気は証明されている。AKB48が後世まで語られて然るべき活躍をしていたことは疑いの余地がない。
以上までに紹介したヒット曲を手元に所有したい場合は、入り口として2015年に発売されたベストアルバム『0と1の間<COMPLETE SINGLES>』がおすすめ。
この記事で紹介したデータのうちストリーミング再生回数やダウンロード売上はBillboard JAPANの公式サイトや日本レコード協会の公式サイトから検索することができる。新たな発見の宝庫なので、時間があれば好きな曲やアーティストのデータを検索してみることをお勧めする。
*1:この際、「ヒット」という、「高人気」「高売上」どちらにも解釈可能な言葉がよく用いられたことも、「人気」と「売上」を区別する必要性が増す中で、違和感の増長を加速させた。当ブログにおいては「ヒット」を前者の意味で用いている。
*2:この点が改善しさえすれば、CDチャート1位という事実を楽曲の宣伝の場に利用することに一定の理解を示すことは可能である。ただし、不特定多数への広告宣伝となる以上、必ずしも需要に応じた楽曲情報の提供とはならない点において、音楽文化の受容・理解・発展には寄与し難い動きであることは意識する必要がある。また、明確に「CD売上」と「楽曲人気」に因果関係をつけている内容の宣伝記事が出てきたときは批判せざるを得ない。CD売上チャート1位という事実に付随した広告宣伝であれば良いが、例えば「CD売上1位となるほど人気曲となっている理由は〜」などとはっきり言ってしまうと論理破綻となる。
*3:当時のダウンロード売上の集計においては、着うたフルによる売上とPC配信による売上を区別しており、150万の内訳は着うたフル100万、PC配信50万である。2014年以降は合算してダウンロード売上を認定するようにしており、認定のボーダーラインは100万の次が200万となっている。このため、当時は現在よりも細かくダウンロード売上を把握できる楽曲も存在した。
*4:他のノミネート作品には、2011年9月の時点で75万ダウンロード、のちにフル配信ダウンロードミリオンを達成するJUJU「この夜を止めてよ」がおり、当時のダウンロード売上の比較ではJUJUが大賞でもおかしくないが、「フライングゲット」も最終的にJUJUの3年2ヵ月を上回る2年5ヶ月でのフル配信ダウンロードミリオン認定となった。
*5:ただし他のノミネート作品には、同時期すでにフル配信ダウンロード売上75万に達しており、のちにフル配信100万ダウンロードを突破する斉藤和義「やさしくなりたい」がいた。
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