AKB48は2006年に「桜の花びらたち」でデビューした女性アイドルグループ。2008年下旬から勢いを増しはじめ、2010年代前半にかけて大ヒット曲を大量輩出した。日本レコード協会によれば、これまでにダウンロード売上10万以上を記録した曲は38曲で、認定総ダウンロード売上は1,440万(歴代3位)となっている。ダウンロードミリオン6曲はEXILEの8曲、西野カナの7曲に次ぐ歴代3位記録である。これらのデータをランキング化した表は以下のとおりである。この表をもとにしながら、AKB48のヒット史を振り返る。
(ランキング作成方法および歴代ダウンロード売上ランキングはこちら↓)
(歴代アーティスト別ダウンロード売上ランキングはこちら↓)
はじめに ~AKB商法の捉え方~
しばしば批判の対象となるAKB商法については次のように捉えると良い。
AKB商法によるCD売上チャートの独占自体は何の問題もない
AKB48が最も多くCDを売っていることは事実なので、CD売上を集計するチャートであれば、その枚数は漏れなく把握し、反映させなければならない。
市場が縮小する中でも利益率が高いCDを売り続ける手法として、AKB商法はビジネスモデルとしては大成功したといえる。その利益が音楽業界の発展への投資に使われるなら願ってもないことである。
CD売上チャートを独占していることが気に入らないという理由は個人の好き嫌いの域を出ない。*1
では何が問題なのかというと、次の点である。
CD売上チャートを楽曲人気指標として使用し続けることが問題である
AKB商法の発明は、CDの売上を音楽ではない付属品に頼るというものであった。
従来は、楽曲人気が高い曲を知りたいときには、シングルCD売上チャートを見れば良かったのだが、AKB商法の普及に伴い、「売上」と「楽曲人気」の間に相関関係がなくなった。
また、音楽の聴き方がCDから配信に移行したことで、楽曲人気は配信ダウンロード数に表れるようになっていった。
しかし、CD売上の集計で有名なオリコンはダウンロードチャートを作らず、CD売上チャートが中心的な楽曲人気指標であるという理論を押し通した。
音楽業界としては、CDで売ったほうがダウンロードで売るよりも利益率が良かったため、CDチャート上位に入った者が脚光を浴びるシステムとなるようにしたいという思惑があったものと思われる。
オリコンはそもそも業界誌であるため、一般消費者の「人気曲が知りたい」というニーズよりも、(売上が生活に直結する)音楽業界関係者の「売れている曲が知りたい」というニーズや上記論理を優先したようである。
このため、ダウンロード売上を稼いでいた人気曲が脚光を浴びづらい状況となる一方、依然としてCD売上チャートが、実態と異なり、楽曲人気指標として扱われ続けた。CD販促商法に長けたグループはチャート上位進出によって、今流行しているのは私たちだとして、広告宣伝の良い機会として利用した。*2
この動きに対して情報の受け手である一般消費者が違和感を抱くことは自然の流れであった。AKB商法の是非が盛んに議論されたが、悲しいことにそのほとんどは「売上」と「人気」の論点が混同したもので、噛み合っていないことが多かった。
※例えば以下記事のように「CDチャート上位だが本当に人気なのか」という問いに対して「売れていれば良い」という論点のズレた回答がよく見られた。前段の疑問がしばしば「日本の音楽は腐った」などと過激な口調で表現されることも問題であった。
売上指標と人気指標を区別して考える
CD売上チャート1位獲得を広告宣伝の場として利用する動きは今後も継続していくと思われる。ここで問題なのは、オリコンが発信するCDチャート1位記事において、CD売上の増加要因としてAKB商法に一切触れないことである。CD売上指標の中身の変質に触れないことが、CD売上の楽曲人気指標としての役割を不適切に延命させることを助長した面は否めない。最低でも一言「このCDには握手券が付属している」という事実を書くくらいは必要であり、この点は早急な改善を要する。*3
ただ、もう10年以上、上記問題点への改善が見られないことを考えれば、もはや情報の発し手であるオリコンには期待できない。したがって、情報の受け手である一般消費者が意識して「売上指標」と「楽曲人気指標」をしっかり区別する必要がある。
一般消費者にとって、音楽チャートを見る目的の多くは「今人気となっている曲が知りたい」「自分が好きな曲がどれほど人気となっているのか知りたい」である。
その場合、楽曲人気と相関していない売上指標は見る必要がない。見るべきは人気指標(Billboard JAPAN Hot 100など)である。売上指標上位をAKB48が独占していることに対して、「本当に人気なのか分からない」と不満を抱いている人は、そもそも見るべき指標を間違えている。
この記事の目的も、AKB48の何の曲が「人気」となっていたのかを把握することである。AKB48の全盛期に楽曲人気指標として機能していた指標は配信ダウンロード売上であることから、主にそのデータを用いる。シングルCD売上枚数についてはほとんど言及しない。
2006年-2009年 ~発足・体制確立~
この最初の4年の期間に発表された楽曲に絞って配信開始日順に並べたダウンロードデータは以下のとおり。
AKB48は、総合プロデューサー秋元康主導の下、2005年にメンバーを募集し、2006年にレコードレーベルAKSからインディーズデビュー。同年10月にソニーミュージックのレコードレーベルであるデフスターレコーズからメジャーデビューを果たした。
メジャーデビュー作「会いたかった」は、「会いに行けるアイドル」をコンセプトとして掲げているAKB48を象徴するアイドルポップス。本曲は上表のとおり75万ダウンロードを記録しており、デビューしていきなりブレイクしたのかと思ってしまうが実はそうではない。75万に至るまでの推移は以下のとおり。
- 配信開始から3年3ヶ月が経過した2010年1月に10万ダウンロード突破
- 2010年8月に25万ダウンロード突破
- 2011年2月に50万ダウンロード突破
- 配信開始から7年3ヶ月が経過した2014年1月に75万ダウンロード達成
2006年発売曲でありながら、ダウンロード数の大半を2010年〜2011年に稼いでいる。紛れもなく2010年〜2011年の年跨ぎヒット曲である。2010年はAKB48の知名度が急拡大し、AKB48を紹介する曲として、サビで「会いたかった~!」と連呼する本曲がうってつけであったため、メディアで大量OAされた。
本曲のCD売上はたったの5万枚であり、CD売上が過去曲のリバイバルヒットを反映できないことを表す曲にもなっている。
ちなみに2009年に実現したアイドリング!!!とのコラボシングル「チューしようぜ!」がAKBアイドリング!!!名義で発売された際にc/wに収録されたアイドリング!!!による本曲のカバー「会いたかった(アイドリング!!!バージョン)」も10万ダウンロードを記録。ダウンロード認定を受けていない表題曲を差し置いての高売上となった。
2008年にはレコード会社をキングレコードへ移籍。移籍第一弾となるCDシングル「大声ダイヤモンド」も、AKB商法によってCD売上では成果を出し始めてはいたが、ダウンロード数は発売当初は少なかった。この曲は最終的に50万ダウンロードを記録しているが、そこに至るまでの推移は以下のとおり。
- 配信開始から1年8ヶ月が経過した2010年6月に10万ダウンロード突破
- 2011年6月に35万ダウンロード突破
- 配信開始から5年3ヶ月が経過した2014年1月に50万ダウンロード達成
この曲も「会いたかった」同様、ダウンロード数の大半を2010年~2011年に稼いでいる。
【MV full】 大声ダイヤモンド / AKB48 [公式]
2009年に発売された4曲のシングルCD表題曲もすべて2010年になってから売上が10万ダウンロードを突破した。CD売上はAKB商法の本格的な顕在化で2009年の段階から高売上となった。4曲の両者の売上は以下のとおり。
既述のとおり、当時はCDチャート上位に入った者が脚光を浴びるシステムとなっていたことから、AKB48の知名度は、AKB商法によってCD売上が拡大を始めた2009年になって上昇した。特に初のCD売上チャート週間1位となった「RIVER」が注目を浴びた。
なおBillboard JAPAN Hot 100では平井堅「僕は君に恋をする」(累計配信売上50万)が1位となり、「RIVER」は2位となっている。この理由は、当時のビルボードではいわゆる劇場盤(販路限定握手券付きCD)を集計対象外としていたことによる。
また、「RIVER」のc/wである「君のことが好きだから」も10万ダウンロードを記録している。
2010年-2011年 ~全盛期~
2010年になるとAKB商法の効果が顕著に発現するようになり、CDチャートにおける存在感に比例し知名度も急上昇。2011年にかけて大量の配信ミリオンナンバーを輩出するに至った。前述のとおり2009年までの楽曲にも脚光が当たり、AKB48の楽曲が総じてダウンロード数を積み増した。
この全盛期である2年の期間に発表された楽曲に絞って配信開始日順に並べたダウンロードデータは以下のとおり。
2010年
2月に発売された15thシングルCD表題曲「桜の栞」は発売4ヶ月後の2010年6月に10万ダウンロードを記録。初めて発売年のうちに10万ダウンロードを達成した曲となった。最終的には2014年1月に25万ダウンロードを記録。なおCD売上は40万枚だった。Billboard JAPAN Hot 100では2010年の年間43位。また、本作のc/w「マジスカロックンロール」も10万ダウンロードを記録している。
4月には2ndアルバム『神曲たち』を発売し、56万枚をセールス。Billboard JAPAN Top Albums Salesの年間では2010年19位→2011年77位と推移するロングヒットを記録した。
5月には16th「ポニーテールとシュシュ」を発売。本曲は最終的に配信ミリオンを記録する大ヒットとなった。推移は以下のとおり。
- 配信開始1ヶ月後の2010年6月に10万ダウンロード突破
- 2010年8月に25万ダウンロード突破
- 2010年10月に35万ダウンロード突破
- 2011年1月に60万ダウンロード突破
- 2011年2月に75万ダウンロード突破
- 2014年1月にミリオン達成
当時の自己最速である1ヶ月での10万ダウンロード突破となったほか、2010年の年末歌番組でAKB48のブレイクが大きく取り上げられたこともあり、2011年初に再びペースアップしたことがミリオンに繋がった。
なおCD売上は74万枚となったほか、Billboard JAPAN Hot 100では2010年の年間13位を記録している。メンバーが水着×ポニーテールで踊るMVも人気となり、YouTubeでは2010年のMV再生回数年間1位を獲得している(ただし当時はCD売上ばかりが注目されており、MV再生回数の年間ランキングはほとんど注目されていなかった)。
累計ではMV8,000万再生を突破している。
【MV full】 ポニーテールとシュシュ / AKB48 [公式]
本作のc/wからは「マジジョテッペンブルース」が10万ダウンロードを記録。本曲はCDでは通常盤Type-Bと劇場盤に収録されており、通常版Type-Aには収録されていない。
7月には1stアルバムの完全版『SET LIST~グレイテストソングス~完全盤』を発売し、17万枚をセールス。また、派生ユニットチームドラゴン from AKB48によるシングル「心の羽根」も発売され、14万枚を売り上げた。
8月には17thシングル「ヘビーローテーション」を発売。この曲は自身初にして自己最速の配信ミリオンとなった楽曲であり、この「最速」を以て冒頭に示したAKB48ダウンロード数ランキングでは1位としている。推移を以下に示す。
- 配信開始から27日で10万ダウンロード認定受領
- 配信開始1ヶ月後の2010年9月に25万ダウンロード突破
- 2010年10月に35万ダウンロード突破
- 2010年12月に60万ダウンロード突破
- 配信開始8ヶ月後の2011年4月にミリオン突破
- 2011年12月に125万ダウンロード突破
- 2012年1月に150万ダウンロード達成*4
本曲は2010年選抜総選挙によって選ばれたメンバーによる歌唱で、センターは大島優子。当時一番の知名度の高さだった前田敦子が総選挙で2位という結果になり、大島優子が1位になったことは番狂わせとして大きな話題となった。
メンバーがナポレオンジャケットやランジェリーに身を包んだMVも人気となり、2014年2月にはMV1億再生を突破。以下記事のとおり、この曲の1億突破を以てAKB48が国内史上初のMV1億突破を果たしたこととなっている。今でこそ多くの楽曲がMV1億再生を達成しているが、この曲はその先駆けでもあった。
CD売上は88万枚。Billboard JAPAN Hot 100の年間では嵐「Troublemaker」「Monster」に続く2010年の3位を獲得し、AKB48の楽曲としてはこの年唯一のTOP10入りとなった。
【MV full】 ヘビーローテーション / AKB48 [公式]
本作のc/wからは「野菜シスターズ」が10万ダウンロードを記録。この曲も通常盤Type-Aと劇場盤の収録曲で、通常盤Type-Bには収録されていない。
10月には18thシングルCD「Beginner」が発売され、表題曲は配信ミリオンの大ヒットを記録した。推移は以下のとおり。
- 配信開始から18日で10万ダウンロード認定受領
- 配信開始2ヵ月後の2010年12月に25万ダウンロード突破
- 2011年1月に35万ダウンロード突破
- 2011年3月に60万ダウンロード突破
- 2011年7月に75万ダウンロード突破
- 2014年1月に配信ミリオン達成
ダウンロード売上の大半は2011年に稼がれている。背景には、年末歌番組で度々歌われた効果のほか、2011年1月にAKB商法によって「千の風になって」以来3年ぶりのCDミリオンを達成し、その事実が報道された効果があったことも挙げられる。
「ヘビーローテーション」の大ヒットを受けたファンの増加はAKB商法の効果を倍々ゲームのごとく加速させ、CD売上では本曲がAKB48初のミリオンセラーとなる103万枚となり、2010年のオリコン年間1位となっている。このCD売上を以てか、日本レコード大賞にも本曲がノミネートされた。
実際にはダウンロード売上やMV再生回数で「ヘビーローテーション」が「Beginner」を大きく上回っており、「ヘビーローテーション」の方が人気であることは明らかである。とはいえ、「Beginner」も全盛期を代表する一曲として押さえるべき楽曲であることは間違いない。Billboard JAPAN Hot 100では2010年の年間11位。
【MV full】 Beginner / AKB48 [公式]
12月にはじゃんけん大会によって選ばれたメンバーによる歌唱曲「チャンスの順番」が19thシングルCD表題曲として発売され、10万ダウンロードを記録した。CD売上は69万枚。なお、この曲より後に発売されたシングルはCDミリオンが当たり前となり、シングルCD売上の楽曲人気指標としての役割が完全に終了した。そのため、2011年以降の作品の具体的なシングルCD売上枚数については一切言及しない。
2011年
2月に発売された20thシングルCD表題曲「桜の木になろう」は50万ダウンロードを記録した。この年になると劇場盤を除いたCD売上でも年間上位にランクインできるようになり、本曲はBillboard JAPAN Hot 100において2011年の年間4位に入っている。
【MV full】 桜の木になろう / AKB48 [公式]
4月には、東日本大震災を受けて「誰かのために-What can I do for someone?-<配信限定チャリティソング>」が配信され、2014年1月に10万ダウンロードを記録した。
5月発売の21thシングルCD表題曲「Everyday、カチューシャ」はメンバーがカチューシャ×水着で踊るMVが人気となるなど大ヒットし、配信ミリオンを達成した。推移は以下のとおり。
- 配信開始から13日で10万ダウンロード認定受領
- 配信開始1ヶ月後の2010年6月に25万ダウンロード突破
- 2011年10月に50万ダウンロード突破
- 2011年12月に75万ダウンロード突破
- 2014年1月に配信ミリオン達成
2011年に発売された楽曲で、年内に75万ダウンロード以上を突破した曲はこの曲が唯一であり、もし当時網羅的ダウンロードチャートが存在していたとしてもこの曲が年間1位争いに絡んでいた可能性が高い。
Billboard JAPAN Hot 100ではこの曲で2011年の年間1位を獲得した。自身初の年間1位となる。YouTubeでもMV9,000万回を突破している。
CD売上ではこの曲でMr.Children「名もなき詩」の初動売上記録を更新したことが騒がれたが、既述のとおり2011年以降CD売上指標が示す意味は変化したので、比較しても楽曲人気上の示唆は何も得られない。ダウンロード売上やMV再生回数の推移に目を向けていた方がよほど有益な示唆を得られていた。
【MV full】 Everyday、カチューシャ / AKB48[公式]
本作のc/wからは、Type-Aのみに収録されている「ヤンキーソウル」が10万ダウンロードを記録。やはりType-B及び劇場盤には未収録である。
6月には3rdアルバム『ここにいたこと』が88万枚をセールス。Billboard JAPAN Top Albums Salesでは2011年の年間4位を獲得した。
8月発売の22thシングルCD表題曲「フライングゲット」は総選挙選抜メンバーによる歌唱で、センターは総選挙1位に返り咲いた前田敦子。フラゲに例えて恋愛感情を歌う歌詞などが話題となり、配信ミリオンを達成した。推移は以下のとおり。
- 配信開始から14日で10万ダウンロード認定受領
- 配信開始1ヶ月後の2011年9月に25万ダウンロード突破
- 2011年12月に50万ダウンロード突破
- 2012年9月に75万ダウンロード突破
- 2014年1月に配信ミリオン達成
Billboard JAPAN Hot 100では2011年の年間2位を獲得し、「Everyday、カチューシャ」の1位と併せて年間ワンツーフィニッシュを達成。YouTubeではMV1億再生を突破している。
2011年の日本レコード大賞には本曲がノミネートされ、大賞を受賞するに至った。*5
【MV full】 フライングゲット (ダンシングバージョン) / AKB48 [公式]
続く10月には23thシングル「風は吹いている」が発売された。「震災復興応援ソング」として制作され、50万ダウンロードを記録。Billboard JAPAN Hot 100では2011年の年間6位に入っている。
【MV full】 風は吹いている(DANCE! DANCE! DANCE! ver.)/AKB48[公式]
12月にはじゃんけん大会によって選ばれたメンバーによる歌唱曲「上からマリコ」が発売。タイトルのとおりセンターは篠田麻里子。25万ダウンロードを記録した。Billboard JAPAN Hot 100では2012年の年間12位。
姉妹グループ・派生ユニット・ソロ作品の売上
2011年は本体の活躍だけでなく、多くの姉妹グループや派生ユニット、メンバーのソロ作品も発売され、配信売上のピークを迎えていた。そこで、姉妹ユニット、派生ユニット、メンバーソロの楽曲の中で10万ダウンロード以上を売り上げたヒット曲を以下に完全網羅した。
名古屋市栄を拠点にした姉妹グループ。2010年11月発売の4thシングル「1!2!3!4! ヨロシク!」で初の10万超えとなる17万枚を記録して以降、AKB商法でCD10万超えは当然となったが、10万ダウンロード超えは以下の4曲のみ。
大阪市難波を拠点にした姉妹グループ。10万ダウンロード超えは以下の1曲のみ。
姉妹ユニットは、AKB商法におけるAKB48のCDミリオンセラーを維持するための握手人員増を目的として次々と誕生している側面もあり、国内ではこの後他にもHKT48、NGT48、STU48が作られたが、この3組は10万ダウンロードを超えた楽曲が1曲もない。
渡辺麻友を中心とした派生ユニット。10万ダウンロード超えは以下の1曲。
派生グループは他にもノースリーブスやNot yet、DiVAなどが作られたが、10万ダウンロードを超えた楽曲を持つグループは渡り廊下走り隊7のみ。
神7と呼ばれたメンバーの一人。10万ダウンロード超えは以下の3曲。
2度のAKB総選挙優勝を達成したAKB48の顔。10万ダウンロード超えは以下の3曲。
メンバーのソロデビューはこの後高橋みなみや渡辺麻友、指原莉乃も果たしているが、10万ダウンロードを超えた曲を持つメンバーは板野友美と前田敦子の2名。
また、これら勢力のCDアルバム売上10万枚以上を2021年度集計期間内までに記録した作品も以下にまとめた。アルバムも商法の影響は大きいが、短いサイクルでの廉価販売がシングルよりし難い商品性質のためAKB商法との相性が悪く、発売作品数自体が非常に少ないという特徴がある。
- ノースリーブス『ノースリーブス』10万枚(2011年1月発売)
- SKE48『この日のチャイムを忘れない』15万枚(2012年9月発売)
- NMB48『てっぺんとったんで!』42万枚(2013年2月発売)
- NMB48『世界の中心は大阪や ~なんば自治区~』39万枚(2014年8月発売)
- SKE48『革命の丘』12万枚(2017年2月発売)
- NMB48『難波愛~今、思うこと~』20万枚(2017年8月発売)
- HKT48『092』16万枚(2017年12月発売)
2012年-2015年 ~成熟期~
この時期になると、さすがに配信ミリオンナンバーは出にくくなったが、AKB48の1年の活動サイクルも定着し、安定期を迎えた。全盛期を支えた人気メンバーも徐々に卒業していくようになるが、前田敦子に代わり指原莉乃が絶対的センターとして君臨し、AKB48のブランド維持に貢献した。この時期に発表された楽曲に絞って配信開始日順に並べたダウンロードデータは以下のとおり。
2月に発売された25thシングルCD表題曲「GIVE ME FIVE!」はメンバーがバンドスタイルで歌唱するMVも話題となり、50万ダウンロードを記録。Billboard JAPAN Hot 100では2012年の年間2位。
【MV full】 GIVE ME FIVE ! / AKB48[公式]
5月には、この時期の発売が恒例となった総選挙投票券付きシングルCD「真夏のSounds good!」が発売された。投票券付きCD表題曲はメンバーが水着で歌唱するMVも恒例化。配信売上は50万ダウンロードを記録した。
同じ50万ダウンロード認定でも、到達所要日数では「GIVE ME FIVE!」の方が2年半速いのだが、CD売上では投票券がついていた本作が2012年発売曲最大の売上となったことから、本曲が2012年のAKB48の代表曲として扱われることが多かった。
Billboard JAPAN Hot 100では2012年の年間1位を獲得。2012年の日本レコード大賞にも本曲がノミネートされ、2年連続の大賞を受賞するに至った。*6
本曲は卒業を発表していた前田敦子が参加する最後のシングルCD表題曲となっている。この曲より後に50万ダウンロードを突破した曲は2曲しかないことからも、絶対的エースが抜けた穴の大きさが垣間見える。
【MV full】 真夏のSounds good ! (Dance ver.) / AKB48[公式]
8月には、4thアルバム『1830m』を発売し、アルバムでは初のミリオンセラーとなる104万枚をセールス。Billboard JAPAN Top Albums Salesでは、劇場盤が集計対象外だったが、2011年の年間9位を獲得した。
アルバム発売の2週間後には、大島優子が総選挙1位となりセンターを務めた27thシングルCD「ギンガムチェック」が発売され、表題曲は25万ダウンロードを売り上げた。Billboard JAPAN Hot 100では2012年の年間3位。この年は年間3位までをAKB48が独占した。年間TOP3独占は2012年が唯一である。
9月には、京楽産業.のパチンコ機「CRぱちんこAKB48」のために結成されたユニット「チームサプライズ」が歌唱する「重力シンパシー」が発売され、10万ダウンロードを達成した。シングルCDでは一般発売されていない。
10月には28thシングル「UZA」が発売され、表題曲が10万ダウンロードを記録するヒットとなった。ただ、10万ダウンロード認定に留まったシングルCD表題曲は「チャンスの順番」以来となった。とはいえ、劇場盤を除いたCD売上は引き続き好調であったことから、しばらくはBillboard JAPAN Hot 100の年間チャートで高順位を維持することになる。本曲は2012年の年間7位。
続く同29th「永遠プレッシャー」も10万ダウンロードを記録し、ビルボードでは2013年の年間9位。同30th「So long!」も10万ダウンロードで、ビルボード年間6位。同31th「さよならクロール」も10万ダウンロードで、恒例の総選挙投票券付きシングルCD表題曲であったことから、ビルボード年間2位を記録した。
そして8月に放たれた32ndシングルCD表題曲「恋するフォーチュンクッキー」は配信ミリオンの大ヒットを記録した。ダウンロード数の推移を以下に示す。
- 配信開始1ヶ月で10万ダウンロード突破
- 3ヶ月後の2013年11月に20万ダウンロード突破
- 2013年12月に35万ダウンロード突破
- 2014年1月に50万ダウンロード突破
- 2014年2月に75万ダウンロード突破
- 配信開始から1年7ヶ月後の2015年3月に配信ミリオン達成
ミリオン到達所要日数では「ヘビーローテーション」に次ぐ速さであることから、AKB48のダウンロード数ランキングでは本曲を2位とした。
実はダウンロード数の過半が2014年以降に稼がれている。ディスコサウンドに乗せた誰もが踊れるナンバーとして忘年会需要が多数あったことや、年末歌番組で多く歌唱されたことで、ダウンロード数への効果はむしろ翌年に強く表れた。
実際に、「恋チュンを踊ってみた」という動画が様々な団体から多数投稿され、そのうちのいくつかはファンによる動画として公式認定されている。
YouTubeではMV2.5億再生を突破しており、これは自身2位の「ヘビーローテーション」を上回る自身最多MV再生回数となる。ダウンロード売上ランキング1位の「ヘビーローテーション」とMV再生回数1位の「恋するフォーチュンクッキー」がAKB48の二大ヒット曲として双璧を成していることは間違いない。当ブログでは「恋するフォーチュンクッキー」を2010年代のヒット曲十選に選出している。
本曲のセンターは初の総選挙1位となった指原莉乃で、この曲の大ヒットが指原莉乃を絶対的センターとして確立させることに寄与した。
2013年発売曲としては本曲が唯一の配信ミリオン突破曲となっており、Billboard JAPAN Hot 100では文句なしの2013年の年間1位。翌2014年も20位に入った。
日本レコード大賞も当然本曲が受賞…
【MV full】 恋するフォーチュンクッキー / AKB48[公式]
…することはなく、なぜか「EXILE PRIDE」が受賞した。*7
続いて10月に発売された33rdシングルCD表題曲「ハート・エレキ」は10万ダウンロード認定となり、Billboard JAPAN Hot 100では2013年の年間10位に入った。
12月に発売された同34th「鈴懸の木の道で「君の微笑みを夢に見る」と言ってしまったら僕たちの関係はどう変わってしまうのか、僕なりに何日か考えた上でのやや気恥ずかしい結論のようなもの」は、長いタイトルが話題になったものの、ダウンロード認定は受けていない。シングルCD表題曲がダウンロード10万未満となったのはキングレコード移籍以降では初めてのことである。ビルボードでは2014年の年間20位。
2014年はまず1月に5thアルバム『次の足跡』を発売し、104万枚をセールス。Billboard JAPAN Top Albums Salesでは、劇場盤が集計対象外だったほか、TypeAとTypeBでDisc2の収録内容が全曲丸々異なっていたため別商品扱いとなり、TypeAが年間16位、TypeBが年間91位を獲得した。
以降は4枚のシングルCDが発売されたが、表題曲4曲はすべて10万ダウンロード認定となった。Billboard JAPAN Hot 100の年間順位は、「心のプラカード」が2位、「ラブラドール・レトリバー」が3位、「前しか向かねえ」が14位、「希望的リフレイン」が2015年の年間26位。
前年までと比べ年間順位がやや下がっている理由は、CD売上に占める劇場盤の割合が増加し、一般流通CDの売上が徐々に減少を始めていたためである。
2015年もまず1月にアルバムを発売。5thアルバム『ここがロドスだ、ここで跳べ!』は78万枚をセールス。この作品もTypeAとTypeBでDisc2が全曲丸々異なる収録内容だったためBillboard JAPAN Top Albums Salesでは別商品扱いとなり、TypeAのみ2015年の年間37位を記録した。劇場盤は引き続き集計対象外だった。
以降に発売されたシングルCD表題曲でダウンロード認定を受けた曲は「ハロウィン・ナイト」の1曲のみ(10万ダウンロード)。Billboard JAPAN Hot 100の年間順位では「僕たちは戦わない」が7位、「ハロウィン・ナイト」が25位、「Green Flash」が38位、「唇にBe My Baby」が2016年の48位。
そんな中で、75万ダウンロードを記録するヒット曲がなんとc/wから誕生した。『唇にBe My Baby』のc/wで、NHK連続テレビ小説『あさが来た』主題歌「365日の紙飛行機」である。「あさが来た」は朝ドラとしては21世紀最高の視聴率を記録するほどの人気だったこと、人生を紙飛行機に例えた歌詞が心に染みるものであったこと、センターを務めた山本彩の歌唱力などから、恋チュン以降では顕著な人気曲となった。
Billboard JAPAN Hot 100では、c/wゆえCD売上のポイント加算がないながらも2016年の年間23位を記録している。この曲も収録した6thアルバム『サムネイル』は2017年に発売され63万枚をセールスし、Billboard JAPAN Hot Albumsでも2017年の年間6位を獲得した。
【MV full】 365日の紙飛行機/ AKB48 [公式]
なおこの曲は2015年12月発売だったため、2015年11月に発売されたベストアルバム『0と1の間』への収録タイミングはギリギリ逃してしまった。ベストは61万枚をセールスしており、Billboard JAPAN Top Albums Salesの年間チャートでは集計割れを起こしたものの2015年28位→2016年58位と推移した。
2016年-
AKB48の配信ダウンロード数認定は、2015年12月発売の「365日の紙飛行機」が最後となっている。
2016年以降の音楽環境はストリーミングサービスの台頭で激変しており、ダウンロード市場は縮小し、MVやオーディオ・ストリーミングの再生回数が新たな楽曲人気指標の主役に躍り出た。
CD売上は引き続きAKB商法によってCDミリオンが当たり前となっており、人気指標として使用することはできない。したがって、2016年以降のAKB48の人気曲を把握するためには、ストリーミング再生回数やビルボード総合チャートの動きも把握する必要がある。
AKB48とMV再生回数
ストリーミングサービスの先駆けとなっていたのがYouTubeである。2010年代後半になるにつれ、スマートフォンの普及で、気軽にMVを見ながら楽曲を再生することが可能となったことで、MV再生回数が楽曲人気指標として台頭するようになった。
現在、MV再生回数を用いた大ヒットの基準は1億回再生とされることが一般的である。AKB48でも、MV1億再生を記録している曲は「ヘビーローテーション」や「恋するフォーチュンクッキー」等の代表曲である。
では、大ヒットとはいかずとも、何回再生されれば「ヒット」と言えるのかについては、日本レコード協会のストリーミング認定基準が参考になる。この認定の下限値は5,000万再生となっている。
つまり、5,000万再生を超えないと名前が載らないことから、この数字をMV再生回数にも適用し、ヒットしているか否かの判断の分かれ目とすることができる。
そこで、2016年以降に公開されたAKB48のMVで、5,000万再生を超えたMVがあるかチェックすると、残念ながら該当MVは存在しない。「365日の紙飛行機」を最後にAKB48はヒット曲が出なくなったとする説に反論することは難しい状況になっている。
強いて挙げるとすれば、2018年に発売され61万枚をセールスした9thアルバム『僕たちは、あの日の夜明けを知っている』収録曲中最高のMV1,000万再生を記録している「#好きなんだ」をアルバムセールスを牽引したヒット曲として見做すことはできるかもしれない。
ただ、この論法は今でもCDアルバム売上を楽曲人気指標として使用できるかという問いに「0か100か」で考え「使用できる」としたときにのみ展開できる。個別具体的な話になり「このアルバム売上だってAKB商法による成果に過ぎないじゃないか」と言われれば終わりである。
一応個人的には上記の「0か100か」で言えばCDアルバム売上はまだ辛うじて楽曲人気指標としての役割を保っていると考えているので、考え方の一つとして提示しておく。
なお上記アルバムはBillboard JAPAN Hot Albumsで2018年の年間6位を獲得した。
AKB48とBillboard JAPAN Hot 100
Billboard JAPAN Hot 100は楽曲人気を反映することを明確に設計思想として掲げている音楽チャートで、CD、ダウンロード、ストリーミングなどの多くの指標を合算して作成されている。合算対象とする指標は時代に応じて変化させ続けているほか、指標ごとの反映率や反映方法も適宜変更を重ねている。
一つの指標で楽曲人気を測ることができなくなった今、ビルボードの試みは重要で、今やCDTVもビルボードの合算方法を一部取り入れており、楽曲人気を語る上では参照が欠かせないツールとなっている。
そんなビルボードも最初から完璧な楽曲人気指標だったわけではなく、試行錯誤を重ねた末に現在の集計方法が確立され、楽曲人気指標としての権威を強めている。この集計方法の変遷を誤解なく押さえることは、楽曲人気を把握するうえで非常に重要なステップである。
2015年以前の動向
2015年以前のビルボード年間ランキングにおいて、AKB48の楽曲は軒並み上位入りしており、2011年から2013年にかけては3年連続1位を獲得している。
当時の年間順位の決定要因として最も大きかった集計対象指標はやはりCD売上であった。ラジオやiTunesも要素となっていたことで、CD売上のみのチャートと比べれば偏りが緩和されてはいたが、ドラスティックな違いをもたらすまでには至っていない。
ただし、劇場盤が集計対象外となっていたことで、AKB48のCD売上は嵐と拮抗する程度の枚数に収まっていた。そのため、必ずしもAKB48が毎年年間チャートを独占するという状況にはならなかった。一般流通分のCD売上が減り始めた2014年から2015年にかけてAKB48の年間順位は下降気味となった。
2016年
2016年からは集計方法に大きな変化が生じた。劇場盤を集計対象に加えたのである。この背景については、下記ブログを執筆されている方が直接ビルボードに問い合わせをしたことで判明している。
この結果、AKB48の年間順位は一気に再浮上。「翼はいらない」が1位、「君はメロディー」が4位、「LOVE TRIP」が7位、「ハイテンション」が8位となり、2016年に発売されたシングルCD表題曲4曲がすべてTOP10入りとなった。
ダウンロード売上10万未満・MV再生回数3,000万未満である「翼はいらない」が、ダウンロードミリオン・MV3億再生を突破しているRADWIMPS「前前前世」を抑えて年間1位となったことは、集計方法の試行錯誤の過程で生じたビルボードの失敗であった。
2017年以降
2016年の結果を受け、2017年には非常に重要な集計方法の変更が成された。多すぎるCD売上に対しては反映率を大幅に減少させる措置を取り始めたのである。具体的には以下のとおりに公式アナウンスされている。
JAPAN HOT100ではシングルセールスを合算するときにどのように合算していますか。
各指標のレシオ(非公開)の平均値(半期毎)と、実数値とがかけ離れていないか毎週一般公表前に確認しています。その乖離が大きくなり過ぎる場合、全指標の計算係数を見直し、実数値と乖離が小さく、かつマーケットの占有率からも乖離が小さい計算係数を設定し、全指標を再計算しています。
そのため2017年度以降、前述の理由のためシングルポイントに係数をかける場合があります。
「係数」は非公開だが、当時の手元計算では、一週間に30万を超える分のCD売上の反映率を通常の1/10とすると、総合ポイントに近い値が算出できるようになっていた。
この措置によって、例え総選挙投票券付CDを初動で250万枚売っても、係数処理後は52万(30万+220万/10)にしかならなかった。発売2週目以降に30万ほど積み増したとしても、合計で80万強である。
当時のビルボードの年間TOP10のボーダーラインは通常のCD売上換算で80万~100万程度であることから、AKB商法だけでは、総選挙投票券付CD表題曲でも年間TOP10に入れるか否か微妙なラインという状況になっていた。
通常のAKB商法だと、初動で150万CDを売ったとして、係数処理後は42万(30万+120万/10)。翌週以降10万積み増したとしても50万強。これは当時のビルボード年間40位前後の水準であった。
2017年以降の各年のビルボード年間ランキングにおけるAKB48の最高位は、2017年が「願いごとの持ち腐れ」の15位、2018年が「Teacher Teacher」の10位で、いずれも投票券付CD表題曲。総選挙がなかった2019年は、「ジワるDAYS」の45位である。
2020年以降はストリーミング市場が拡大したことでビルボードのチャート水準が大幅に上昇したため、AKB48の年間最高順位は相対的に大きく下落した。2020年は「失恋、ありがとう」の93位が最高となり、2021年にはついに一曲も年間TOP100にランクインしなくなった。こうしてCD売上だけでビルボード年間TOP10に入ることは不可能になったことで、ビルボードの楽曲人気指標としての権威は強固となった。
AKB48は、現状より上のビルボード年間順位を再び目指す場合、CD売上以外の指標へのプロモーションを強化し、楽曲人気の普及に努めることが必須である。
まとめ
2019年に発生した山口真帆暴行未遂事件や2020年以降のコロナ禍突入により、AKB商法にも変革が迫られているAKB48だが、楽曲人気を知るうえでは、AKB商法によるCD売上の情報はほとんど必要がなかった。CD売上枚数ではなく、配信ダウンロード売上で全盛期の圧倒的な人気は証明されている。AKB48が後世まで語られて然るべき活躍をしていたことは疑いの余地がない。
以上までに紹介した大量のヒット曲を一気に入手するには、2015年に発売されたベストアルバム『0と1の間<COMPLETE SINGLES>』がおすすめ。
ただし既述のとおり「365日の紙飛行機」は時期的に未収録なので注意したい。本曲はシングル『唇にBe My Baby』のc/wに収録されている。
この記事で紹介したダウンロードデータは日本レコード協会HP内の下記サイトで検索することができる。新たな発見の宝庫なので、時間があれば好きな曲やアーティストのダウンロード数を検索してみることをおすすめする。
*1:ただし、2019年に発生したNGT48山口真帆のファンによる暴行未遂事件が大きな社会問題となったことにより、ファンとアイドルの距離感の見直しが迫られている。この視点からは、現状のAKB商法の維持には賛成し難くなっている。
*2:この際、「ヒット」という、「高人気」「高売上」どちらにも解釈可能な言葉がよく用いられたことも、「人気」と「売上」を区別する必要性が増す中で、違和感の増長を加速させた。むろん当ブログにおいては「ヒット」=「高人気」と定義する。
*3:この点が改善しさえすれば、CDチャート1位という事実を楽曲の宣伝の場に利用することに一定の理解を示すことは可能である。ただし、不特定多数への広告宣伝となる以上、必ずしも需要に応じた楽曲情報の提供とはならない点において、音楽文化の受容・理解・発展には寄与し難い動きであることは意識する必要がある。また、明確に「CD売上」と「楽曲人気」に因果関係をつけた宣伝記事が出てきたときは批判せざるを得ない。CD売上チャート1位という事実を言うついでに広告宣伝するくらいなら目を瞑れるが、例えば「CD売上1位となるほど人気曲となっている理由は〜」などとはっきり言ってしまうと論理破綻となる。
*4:当時のダウンロード数の集計は着うたフルとPC配信を区別しており、150万の内訳は着うたフル100万、PC配信50万である。2014年以降は合算してダウンロード数を認定するようにしており、認定のボーダーラインは100万の次が200万なので、当時は今よりも細かくダウンロード数を把握できる楽曲もあった。
*5:他のノミネート作品には、2011年9月の時点で75万ダウンロード、のちに配信ミリオンを達成するJUJU「この夜を止めてよ」がおり、当時のダウンロード数の比較ではJUJUが大賞でもおかしくないが、「フライングゲット」も最終的にJUJUの3年2ヵ月を上回る2年5ヶ月での配信ミリオン認定となった。
*6:ただし他のノミネート作品には、同時期すでにダウンロード数75万、のちにミリオンを記録する斉藤和義「やさしくなりたい」がいた。
*7:「EXILE PRIDE~こんな世界を愛するため~」は2013年末時点で10万ダウンロード未満、最終累計売上は25万ダウンロードである。他のノミネート作品には、きゃりーぱみゅぱみゅ「にんじゃりばんばん」がおり、2013年末時点のダウンロード数は「恋するフォーチュンクッキー」を上回っていたので、きゃりーぱみゅぱみゅの受賞でもおかしくはなかった。ただ、前述のとおり当時はまだまだCD売上の差がメディアの扱いに大きく影響していたため、「にんじゃりばんばん」はAKB48ほど年末歌番組効果を享受できず、2013年12月の60万ダウンロード認定を最後に認定は受けていない。