清水翔太は2008年に「HOME」でメジャーデビューした男性シンガーソングライター。同年にブレイクを果たし、2010年代中盤にかけてヒット曲を大量輩出した。日本レコード協会によれば、これまでにダウンロード売上10万以上を記録した曲は12曲(加藤ミリヤ×清水翔太及び清水翔太×加藤ミリヤ名義も含めれば16曲)で、認定総ダウンロード売上は255万(歴代45位タイ)となっている。これらのデータをランキング化した表は以下のとおりである。この表をもとにしながら、清水翔太のヒット史を振り返る。
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上表を発売日順に並べたダウンロード売上データは以下のとおり。
デビュー前
清水翔太のデビューは2008年だが、初めて世にその才能を知らしめたのは2006年(当時17歳)。この年に主催された、HIPHOP・R&Bダンスユニットのデビューメンバーを選ぶオーディションプロジェクトREAL STREET PROJECTに参加し、TOP10ファイナリストに残ったことが、後のソニーとのメジャー契約に繋がった。
ちなみにこのオーディションで選ばれた面々によってデビューしたグループがRSPであり、こちらも2007年に発売した「Lifetime Respect -女編-」が75万ダウンロードを売り上げるなどの活躍を残している。
清水翔太はデビュー前から複数のメジャーアーティストとコラボで交流を深めており、このうち童子-T「ONE LOVE feat.清水翔太」、加藤ミリヤ×清水翔太「I'M YOUR ANGEL」が10万ダウンロードを突破している。このような活動によってデビュー前から一定の知名度を獲得していた。
ちなみに童子‐Tは他にも2008年に発売した「もう一度...feat.BENI」が60万ダウンロードを売り上げるなどの活躍を残している。
2008年
そして清水翔太は2008年2月に満を持してデビューを果たした。デビュー曲「HOME」は泣きのメロディーや自身の実体験に基づいた歌詞、感情豊かな歌唱が支持される形でいきなり配信75万ダウンロード、CD12万枚を売り上げた。配信売上推移は以下のとおり。
- 発売1週間で10万ダウンロード突破
- 発売1ヶ月で25万ダウンロード突破
- 発売5ヶ月後の2008年7月に50万ダウンロード突破
- 発売5年11ヶ月後の2014年1月に75万ダウンロード達成
見てのとおりデビュー曲にして初動10万ダウンロードという猛烈な勢いとなり、2008年内に50万ダウンロードにまで到達。参考までにCD売上12万枚と合計すれば、2008年内に少なくとも62万という数字が記録されたことになるが、これは2008年にCD売上年間1位を記録した嵐『truth/風の向こうへ』の年間集計期間内の売上61万枚を超える数字である。
嵐は当時ダウンロード未解禁だったので、もし当時CD売上と配信売上を合計したチャートが存在していれば、「HOME」をはじめとした多くの配信ヒット曲が嵐を超える数字を出していたのだが、当時は音楽の聴き方がCDから配信に移行していることが考慮されず、CD売上だけで楽曲人気を計る旧来手法が不適切に用いられ続けていたため、「truth」が2008年の楽曲人気1位として扱われ、配信ヒット曲の多くは人気を過小評価された。
「HOME」もCD売上12万枚、CD売上チャート年間50位という、実際にはもっと大きかった楽曲人気を反映できていないデータが最前面で用いられ、人気が過小評価された。もし当時CDと配信を合算したチャートがあれば年間TOP10入りしていたと当ブログでは推定している。
なお2008年から新たに始まった音楽チャートBillboard JAPAN Hot 100は当時CD売上以外にラジオエアプレイ数も集計対象としていたため、CD売上だけのチャートよりも楽曲人気指標に近い結果を出すことに成功していた。「HOME」もこのチャートの年間では2008年の21位となっており、楽曲人気の過小評価が多少改善されている。当時はビルボードも開始したばかりだったため、オリコンと比較して知名度が乏しかったことは残念であった。
ちなみに同じ2008年2月には木山裕策が全く別の曲ながら偶然同じタイトルの「home」という曲を発売しヒットさせていたが、その売上は配信75万ダウンロード、CD14万枚で、曲名だけでなく売上までもがほとんど同じだった。木山裕策は帰ろうか もう帰ろうよと歌っているが清水翔太は今更帰れないよと歌っている。
この勢いで6月に発売した2ndシングル「「アイシテル」」も25万ダウンロードを突破した。なおCDシングル売上は「HOME」が自身唯一の10万枚超えとなっているが、音楽の聴き方のCDから配信への移行に伴い、清水翔太もこの後配信で10万ダウンロード以上のヒットを連発することになる。CD売上だけ見て清水翔太を「HOME」の一発屋と評することは誤りである。
10月には3rdシングル「My Treasure」を発売し、10万ダウンロードを記録。11月にはここまでの3曲のヒットシングルを収録した1stオリジナルアルバム『Umbrella』を発売し、12万枚を売り上げた。
2009年
2009年はまず5月に加藤ミリヤとのコラボレーションシングル「Love Forever」を加藤ミリヤ×清水翔太名義で発売。4つ打ちの曲調や、男女それぞれの目線で描かれた歌詞による二人の掛け合いが大きな支持を受け、配信ミリオンを記録する大ヒットとなった。
配信売上推移は以下のとおり。
- 配信開始2週間で25万ダウンロード突破
- 配信開始2ヶ月後の2009年7月に50万ダウンロード突破
- 配信開始9ヶ月後の2010年2月に75万ダウンロード突破
- 配信開始4年8ヶ月後の2014年1月に配信ミリオン達成
見てのとおり、発売から2週間で25万ダウンロードを売り上げる勢いを見せ、2009年内に50万ダウンロードを突破。その後も売り上げを積み上げ続け、2014年1月にミリオン認定を受けるに至った。配信ミリオン達成は加藤ミリヤと清水翔太双方にとってこの曲が唯一である。
例によってCD売上はこの大人気を全く反映しておらず、10万枚超えや週間1位は達成できていないが、Billboard JAPAN Hot 100では週間1位を獲得している。この週のCD売上1位はモーニング娘。「しょうがない 夢追い人」だったが、前述のとおりラジオエアプレイ数が大人気を拾いあげたことで総合では逆転した。ビルボード週間1位も加藤ミリヤと清水翔太双方にとってこれが自身唯一である。
当時は青山テルマやJUJUなど男女のコラボレーションナンバーが流行していた時代だったこともヒットの後押しになった。余談だがBillboard JAPAN Hot 100ではこの曲の1位の1週前にはJUJU with JAY'ED「明日がくるなら」が週間1位になっている。こちらも配信ミリオンを記録している。
本作の大ヒットもあり、二人のコラボ活動はこの後も暫く積極的に行われ、全国ツアーも開催されていた。この活動は二人の名前を切り貼りした「ミリショー」という愛称で親しまれた。
2009年は他にも9月に発売されたm-floのトリビュートアルバム『m-flo TRIBUTE ~maison de m-flo~』への参加が実現。2004年に発売されCD12万枚、配信50万ダウンロードを売り上げたm-floの代表曲「let go」を「let go ~maison de m-flo~」という形でカバーした。このカバーは後に清水翔太の3rdオリジナルアルバムやカバーソングアルバムに収録されたことで定期的に注目が集まったこともあり、2014年になって10万ダウンロードを突破した。
12月には5thシングル「君が好き」を発売。片想いの一途な気持ちをストレートに描いた歌詞などが支持され、自身2位の配信売上となる50万ダウンロードを記録した。CD売上は1万枚、CD売上チャート最高位も9位だったので例によって楽曲人気は過小評価されたが、Billboard JAPAN Hot 100では週間2位を記録している。ビルボード2位はコラボ曲を除けば「HOME」の3位を上回る自己最高位である。
なお「君が好き」はストリーミングでも日本レコード協会から5,000万再生認定を受けている。ストリーミングはダウンロードに代わって2010年代に普及し始めた新しい音楽の聴き方なので、このデータは2010年代に入って以降もこの曲の人気が持続していることを示している。ここまでの人気曲であるにも拘わらず、本曲は公式MVが一切アップロードされていないのが唯一残念である。
2010年
2010年2月には再び加藤ミリヤとのコラボレーションが実現し、清水翔太×加藤ミリヤ名義で「FOREVER LOVE」を発売した。大ヒット曲「Love Forever」のアンサーソングということで本曲も50万ダウンロードを売り上げるヒットを記録した。
当時の流行だった男女のコラボレーションナンバーはアンサーソングとして第二弾のコラボ曲を制作することもセットになっており、青山テルマとSoulJa、JUJUとSpontaniaといった組み合わせがすでにこのパターンで2曲ヒットを出していた。このコラボでもこのヒットの方程式をなぞり、2曲目のヒットを輩出することに成功した。
2010年3月には2ndオリジナルアルバム『Journey』を発売。「君が好き」「FOREVER LOVE」という配信50万ヒット2曲を収録していたこともあり、11万枚を売り上げて前作と遜色ないヒットを記録。Billboard JAPAN Top Albums Salesでは自身初の週間1位を獲得した。アルバム曲の中でも、発売1週前に先行配信された「桜」が10万ダウンロードを突破する人気となった。
7月には7thシングル「GOODBYE」を発売し、勢いが持続する形で10万ダウンロードを記録した。
2011年-2014年
2011年1月には9thシングル「YOU & I」を発売し、10万ダウンロードを記録した。本曲はウォークマンのCMソングに起用された。
同年7月には加藤ミリヤとの3作目のコラボシングル「BELIEVE」が加藤ミリヤ×清水翔太名義で発売され、10万ダウンロードを記録した。
2012年9月には14thシングル「366日」が清水翔太 feat.仲宗根 泉(HY)名義で発売され、25万ダウンロードを記録した。本曲は言わずと知れたHYのヒット曲「366日」のカバーである。カバーでも25万ダウンロードを売り上げていることからしてHYの原曲はもっと大きなダウンロード売上になっている可能性が高いが、残念ながら原曲の配信売上は不明である(経緯は下記記事参照)。
清水 翔太 feat.仲宗根 泉(HY) 『366日 Short Ver.』
2012年は他にも加藤ミリヤの楽曲への客演参加が実現。小沢健二「今夜はブギー・バック」のカバー曲「今夜はブギー・バック feat.清水翔太&SHUN」が10万ダウンロードを突破した。
2014年1月には15thシングル「DREAM」を発売し、10万ダウンロードを記録した。なお2014年になると音楽の聴き方はダウンロードからYouTubeに移行してきていたが、「DREAM」はMV再生数で「Love Forever」や「HOME」を上回り自身1位となる2,300万再生を突破している。このデータから「DREAM」はダウンロードの数字だけでは計れない高い人気を得ていることが読み取れる。
2015年以降
2015年以降は音楽の聴き方のダウンロードからストリーミングへの移行が本格化。楽曲人気を計るためにはダウンロード売上だけなくストリーミング再生数も把握することが必須となった。
ストリーミングサービスの先駆けとして普及していたYouTubeでは先ほど述べたとおり「DREAM」が自身1位の再生数となっているが、Spotifyなどの音源ストリーミングサービスもYouTubeに遅れて普及した。この音源ストリーミング再生数は日本レコード協会やBillboard JAPANが発表する数字で把握できるが、このデータを見ると、清水翔太が2015年以降ストリーミングでも人気曲を2曲輩出していることが分かる。
2015年10月に発売された20thシングル「花束のかわりにメロディーを」がそのうちの1曲で、本曲はウェディングソングとしても人気となったことにより配信10万ダウンロード、ストリーミング3,000万再生を記録した。
もう1曲は2016年9月に発売された22ndシングル「My Boo」で、本曲は発売当時ノンタイアップながらも男性目線のラブソングとして多くの共感を呼び、配信10万ダウンロード、ストリーミング5,000万再生を記録した。英語のスラングを織り込んだ歌詞やオートチューンを前面に使用した曲調も挑戦的であり、これまでのシングル表題曲とは異なる新鮮さも寄与してか、既存の枠を超えた人気の広がりを見せた。
自身の楽曲でストリーミング5,000万再生認定を受けた曲は「My Boo」と「君が好き」の2曲で、これが自己最高認定再生数となるが、配信開始から認定までに要した日数を考えれば、「My Boo」が自己最高の累計再生数となっている可能性が高い。
実際「My Boo」は2017年から公開が始まったストリーミングチャートBillboard JAPAN Streaming Songsの年間で2017年6位→2018年10位→2019年56位と推移しており、2年連続TOP10入りとなるほどのロングヒットとなっていた。総合チャートBillboard JAPAN Hot 100でも自己最高となる登場週数37週を記録している。
まとめ
以上まで見てきたとおり清水翔太は音楽チャートが楽曲人気指標として機能不全を起こしていた2000年代後半~2010年中盤にかけてヒット曲を大量輩出しており、平成20年代のヒットシーンを彩ったアーティストとして扱われて然るべき活躍を残していた。ダウンロード売上データはその人気の証拠であり、配信指標で人気を計る手法が確立した今こそ人気再評価の流れが進むことを期待したい。
この記事で紹介したダウンロードデータは日本レコード協会HP内の下記サイトで検索することができる。新たな発見の宝庫なので、時間があれば好きな曲やアーティストのダウンロード数を検索してみることをおすすめする。