清水翔太は2008年に「HOME」でメジャーデビューした男性シンガーソングライター。同年にブレイクを果たし、以降10年以上に渡りヒット曲を大量輩出している。
清水翔太がブレイクした2000年代中盤はiTunesやレコチョクなどで楽曲をダウンロード購入して視聴する方法が普及した時期であったため、楽曲人気は主にダウンロード売上を通じて把握する。ただし現在に至るまで非常に息の長い活躍を見せていることから、2010年代中盤以降新たな楽曲視聴方法として普及したSpotify等におけるストリーミングでも無視できない再生回数を叩き出している。ここではダウンロード、ストリーミングの2指標をメインとしながら、清水翔太のヒット史を振り返る。
まずダウンロード売上ランキングは以下のとおり。日本レコード協会によれば、これまでにダウンロード売上10万以上を記録した曲は12曲(加藤ミリヤ×清水翔太及び清水翔太×加藤ミリヤ名義も含めれば16曲)で、認定総ダウンロード売上は255万(歴代47位タイ)となっている。
(ランキング作成方法および歴代ダウンロード売上ランキングはこちら↓)
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そしてストリーミング再生回数ランキングを以下に示す。こちらは日本レコード協会のストリーミング認定と、Billboard JAPANが公表している再生回数を基に作成した。これまでにストリーミング5,000万再生を突破した曲は10曲で、認定総再生数は6.8億となっている。
上記データの他、CD・着うた・MV指標のデータも追加したうえで清水翔太の楽曲を配信開始日順で並べた楽曲人気データ一覧表も以下に示す。
デビュー前
清水翔太のデビューは2008年だが、初めて世にその才能を知らしめたのは2006年(当時17歳)。この年に主催された、HIPHOP・R&Bダンスユニットのデビューメンバーを選ぶオーディションプロジェクトREAL STREET PROJECTに参加し、TOP10ファイナリストに残ったことが、後のソニーとのメジャー契約に繋がった。
ちなみにこのオーディションで選ばれた面々によってデビューしたグループがRSPであり、こちらも2007年に発売した「Lifetime Respect -女編-」が75万ダウンロードを売り上げるなどの活躍を残している。
清水翔太はデビュー前から複数のメジャーアーティストとコラボで交流を深めており、このうち童子-T「ONE LOVE feat.清水翔太」、加藤ミリヤ×清水翔太「I'M YOUR ANGEL」が10万ダウンロードを突破している。このような活動によってデビュー前から一定の知名度を獲得していた。
ちなみに童子‐Tは他にも2008年に発売した「もう一度...feat.BENI」が60万ダウンロードを売り上げるなどの活躍を残している。
2008年
そして清水翔太は2008年2月に満を持してデビューを果たした。デビュー曲「HOME」は泣きのメロディーや自身の実体験に基づいた歌詞、感情豊かな歌唱が支持される形でいきなりミリオンセールス相当の大ヒットを記録した。その指標別内訳はCD12万枚、着うた50万ダウンロード、フル配信75万ダウンロード、ストリーミング5,000万再生となっている*1。このうちフル配信ダウンロード売上の推移は以下のとおり。
- 発売1週間で10万ダウンロード突破
- 発売1ヶ月で25万ダウンロード突破
- 発売5ヶ月後の2008年7月に50万ダウンロード突破
- 発売5年11ヶ月後の2014年1月に75万ダウンロード達成
見てのとおりデビュー曲にして初動10万ダウンロードという猛烈な勢いとなり、2008年内に50万ダウンロードにまで到達。参考までにCD売上12万枚と合計すれば、2008年内に少なくとも62万という数字が記録されたことになるが、これは2008年にCD売上年間1位を記録した嵐『truth/風の向こうへ』の年間集計期間内の売上61万枚を超える数字である。
嵐は当時ダウンロード未解禁だったので、もし当時CD売上と配信売上を合計したチャートが存在していれば、「HOME」をはじめとした多くの配信ヒット曲が嵐を超える数字を出していたのだが、当時は音楽の聴き方がCDから配信に移行していることが考慮されず、CD売上だけで楽曲人気を計る旧来手法が不適切に用いられ続けていたため、「truth」が2008年の楽曲人気1位として扱われ、配信ヒット曲の多くは人気を過小評価された。
「HOME」もCD売上12万枚、CD売上チャート年間50位という、実際にはもっと大きかった楽曲人気を反映できていないデータが最前面で用いられ、人気が過小評価された。もし当時CDと配信を合算したチャートがあれば年間TOP10入りしていたと当ブログでは推定している。
なお2008年から新たに始まった音楽チャートBillboard JAPAN Hot 100は当時CD売上以外にラジオエアプレイ数も集計対象としていたため、CD売上だけのチャートよりも楽曲人気指標に近い結果を出すことに成功していた。「HOME」もこのチャートの年間では2008年の21位となっており、楽曲人気の過小評価が多少改善されている。当時はビルボードも開始したばかりだったため、オリコンと比較して知名度が乏しかったことは残念であった。
ちなみに同じ2008年2月には木山裕策が全く別の曲ながら偶然同じタイトルの「home」という曲を発売しヒットさせていたが、その売上はフル配信75万ダウンロード、CD14万枚で、曲名だけでなく売上までもがほとんど同じだった。木山裕策は『帰ろうか もう帰ろうよ』と歌っているが清水翔太は『今更帰れないよ』と歌っている。
この勢いで6月に発売した2ndシングル「「アイシテル」」も25万ダウンロードを突破した。なおCDシングル売上は「HOME」が自身唯一の10万枚超えとなっているが、音楽の聴き方のCDから配信への移行に伴い、清水翔太もこの後配信で10万ダウンロード以上のヒットを連発することになる。CD売上だけ見て清水翔太を「HOME」の一発屋と評することは誤りである。
10月には3rdシングル「My Treasure」を発売し、10万ダウンロードを記録。11月にはここまでの3曲のヒットシングルを収録した1stオリジナルアルバム『Umbrella』を発売し、12万枚を売り上げた。
2009年
2009年はまず5月に加藤ミリヤとのコラボレーションシングル「Love Forever」を加藤ミリヤ×清水翔太名義で発売。4つ打ちの曲調や、男女それぞれの目線で描かれた歌詞による二人の掛け合いが大きな支持を受け、着うた100万ダウンロード、フル配信100万ダウンロード、MV3,000万再生、ストリーミング5,000万再生を記録する大ヒットとなった。
このうちミリオンを記録したフル配信ダウンロード売上の推移は以下のとおり。
- 配信開始2週間で25万ダウンロード突破
- 配信開始2ヶ月後の2009年7月に50万ダウンロード突破
- 配信開始9ヶ月後の2010年2月に75万ダウンロード突破
- 配信開始4年8ヶ月後の2014年1月に配信ミリオン達成
見てのとおり、発売から2週間で25万ダウンロードを売り上げる勢いを見せ、2009年内に50万ダウンロードを突破。その後も売り上げを積み上げ続け、2014年1月にミリオン認定を受けるに至った。配信ミリオン達成は加藤ミリヤと清水翔太双方にとってこの曲が唯一である。
例によってCD売上はこの大人気を全く反映しておらず、10万枚超えや週間1位は達成できていないが、Billboard JAPAN Hot 100では週間1位を獲得している。この週のCD売上1位はモーニング娘。「しょうがない 夢追い人」だったが、前述のとおりラジオエアプレイ数が大人気を拾いあげたことで総合では逆転した。ビルボード週間1位も加藤ミリヤと清水翔太双方にとってこれが自身唯一である。
当時は青山テルマ feat.SoulJaやJUJU with JAY'EDなど男女のコラボレーションナンバーが流行していた時代だったこともヒットの後押しになった。余談だがBillboard JAPAN Hot 100ではこの曲の1位の1週前にはJUJU with JAY'ED「明日がくるなら」が週間1位になっている。こちらも配信ミリオンを記録している。
本作の大ヒットもあり、二人のコラボ活動はこの後も暫く積極的に行われ、全国ツアーも開催されていた。この活動は二人の名前を切り貼りしたミリショーという愛称で親しまれた。
2009年は他にも9月に発売されたm-floのトリビュートアルバム『m-flo TRIBUTE ~maison de m-flo~』への参加が実現。2004年に発売されCD12万枚、配信50万ダウンロードを売り上げたm-floの代表曲「let go」を「let go ~maison de m-flo~」という形でカバーした。このカバーは後に清水翔太の3rdオリジナルアルバムやカバーソングアルバムに収録されたことで定期的に注目が集まったこともあり、2014年になって10万ダウンロードを突破した。
12月には5thシングル「君が好き」を発売。片想いの一途な気持ちをストレートに描いた歌詞などが支持され、自身2位の配信売上となる50万ダウンロードを記録した。CD売上は1万枚、CD売上チャート最高位も9位だったので例によって楽曲人気は過小評価されたが、Billboard JAPAN Hot 100では週間2位を記録している。ビルボード2位はコラボ曲を除けば「HOME」の3位を上回る自己最高位である。
なお「君が好き」はストリーミング1億再生も記録している(RIAJ)。ストリーミングはダウンロードに代わって2010年代に普及し始めた新しい音楽の聴き方なので、このデータは本曲が2010年代に入って以降「HOME」を上回るペースで人気が普及し続していることを示している。ここまでの人気曲であるにも拘わらず、本曲は公式MVが一切アップロードされていないのが唯一残念である。
2010年
2010年2月には再び加藤ミリヤとのコラボレーションが実現し、清水翔太×加藤ミリヤ名義で「FOREVER LOVE」を発売した。大ヒット曲「Love Forever」のアンサーソングということで本曲も着うた75万ダウンロード、フル配信50万ダウンロードを売り上げるヒットを記録した。
当時の流行だった男女のコラボレーションナンバーはアンサーソングとして第二弾のコラボ曲を制作することもセットになっており、青山テルマとSoulJa、JUJUとSpontaniaといった組み合わせがすでにこのパターンで2曲ヒットを出していた。このコラボでもこのヒットの方程式をなぞり、2曲目のヒットを輩出することに成功した。
2010年3月には2ndオリジナルアルバム『Journey』を発売。「君が好き」「FOREVER LOVE」というフル配信50万ヒット2曲を収録していたこともあり、11万枚を売り上げて前作と遜色ないヒットを記録。Billboard JAPAN Top Albums Salesでは自身初の週間1位を獲得した。アルバム曲の中でも、発売1週前に先行配信された「桜」が10万ダウンロードを突破する人気となった。
7月には7thシングル「GOODBYE」を発売し、勢いが持続する形で10万ダウンロードを記録した。
2011年-2014年
2011年1月には9thシングル「YOU & I」を発売し、10万ダウンロードを記録した。本曲はウォークマンのCMソングに起用された。
同年7月には加藤ミリヤとの3作目のコラボシングル「BELIEVE」が加藤ミリヤ×清水翔太名義で発売され、10万ダウンロードを記録した。
2012年9月には14thシングル「366日」が清水翔太 feat.仲宗根 泉(HY)名義で発売され、25万ダウンロードを記録した。本曲は言わずと知れたHYのヒット曲「366日」のカバーである。カバーでも25万ダウンロードを売り上げていることからしてHYの原曲はもっと大きなダウンロード売上になっている可能性が高いが、残念ながら原曲の配信売上は不明である(経緯は下記記事参照)。
清水 翔太 feat.仲宗根 泉(HY) 『366日 Short Ver.』
2012年は他にも加藤ミリヤの楽曲への客演参加が実現。小沢健二「今夜はブギー・バック」のカバー曲「今夜はブギー・バック feat.清水翔太&SHUN」が10万ダウンロードを突破した。
2014年1月には15thシングル「DREAM」を発売し、フル配信10万ダウンロード、ストリーミング5,000万再生を記録した。
2015年以降
2015年以降は音楽の聴き方のダウンロードからストリーミングへの移行が本格化。楽曲人気を計るためにはダウンロード売上だけなくストリーミング再生回数も把握することが必須となったが、このデータを見れば、清水翔太が2015年以降ストリーミングでも人気曲を大量輩出していることが分かる。
ストリーミング市場黎明期はそもそも国内にDSP自体が少なかったこともあり、CD・ダウンロード発売から少し時間を空けてストリーミング解禁する手法を採っていたこともある清水翔太だが、既述曲を除く時間差解禁曲の中では、2014年3月に発売された『ENCORE』収録曲の「ナツノオワリ」と、同年11月に発売されたシングル『SNOW SMILE』収録c/w曲の「側に...」が2015年6月に解禁されて以降の積み上げでストリーミング5,000万再生を突破している。
そして2015年10月に発売された20thシングル「花束のかわりにメロディーを」ではCD・ダウンロード・ストリーミング同時解禁が実現。本曲は男性目線で綴られた女性への愛を贈る『究極のラブソング』で、新たなウェディングソングの定番となったこともあって人気楽曲となり、フル配信10万ダウンロード、MV3,000万再生、ストリーミング1億再生を記録した。
なおBillboard JAPANの集計で達成された本曲のストリーミング1億再生は一度もストリーミングチャート週間TOP100圏内を記録していない中での達成であった。これは200曲以上存在する同1億突破曲の中ではこの曲とVaundy「life hack」の2曲しか達成していない記録である。水面下での人気の長さが際立った楽曲であると言える。これは本曲が発売から5年以上が経過した2020年代突入以降も、INIを輩出したオーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN SEASON2』内でのカバーや、人気YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」での披露等、良曲として定期的にスポットライトが当たっていることも大きい。
清水翔太 『花束のかわりにメロディーを』 MV (Full Size)
2016年9月には22ndシングル「My Boo」を発売。本曲は発売当時ノンタイアップながらも男性目線のラブソングとして多くの共感を呼び、フル配信10万ダウンロード、ストリーミング1億再生(RIAJ)を記録した。英語のスラングを織り込んだ歌詞やオートチューンを前面に使用した曲調も挑戦的であり、これまでのシングル表題曲とは異なる新鮮さも寄与してか、既存の枠を超えた人気の広がりを見せた。
実際「My Boo」は2017年から公開が始まったストリーミングチャートBillboard JAPAN Streaming Songsの年間で2017年6位→2018年10位→2019年56位と推移しており、2年連続TOP10入りとなるほどのロングヒットとなっていた。当時は市場黎明期だったためこの偉業に注目が集まる機会はあまりなかったが、これはストリーミングの楽曲人気指標としての普及が進んだ今こそ振り返っておきたい記録である。
2018年1月には24thシングル「Good Life」を発売し、ストリーミング3,000万再生を記録。
2020年には新型コロナウィルスの感染拡大によって暗い世相となる中、同世代のアーティストの想いを一つにしたプロジェクト[re:]をかねてより交流のあったONE OK ROCKのTakaとともに発起した。プロジェクトには両名の他、阿部真央、絢香、Aimer、KENTA(WANIMA)、Nissy(西島隆弘)、三浦大知が集まり、8人のアーティストによって誕生した「もう一度」はYouTube限定配信ながらMV4,000万再生を突破した。
2021年5月には6th配信シングル「恋唄」を発売し、ストリーミング5,000万再生を記録。
同年7月にリリースされた9thオリジナルアルバム『HOPE』では、前年のプロジェクト[re:]で親交を深めていたONE OK ROCKのTakaとのコラボレーションが実現。収録曲「Curtain Call feat. Taka」はMVも制作されるなど主要曲として位置づけられ、苦悩しながら日々を生きる人々を励ます応援歌として支持を広げていき、ストリーミング1億再生、MV3,000万再生を突破した。
清水翔太 『Curtain Call feat.Taka』 MV
まとめ
以上まで見てきたとおり清水翔太は平成後期のヒットシーンを彩ったアーティストであるだけでなく令和に突入してもなお存在感を示し続けている。ダウンロード売上やストリーミング再生回数のデータはその人気の証拠であり、配信指標で人気を計る手法が確立した今、これらの活躍と功績を見逃さないようにしたい。
この記事で紹介したデータのうちストリーミング再生回数やダウンロード売上はBillboard JAPANの公式サイトや日本レコード協会の公式サイトから検索することができる。新たな発見の宝庫なので、時間があれば好きな曲やアーティストのデータを検索してみることをお勧めする。
(参考)清水翔太の総合ヒット曲ランキング
最後に、清水翔太の各楽曲・各指標数値を当ブログが採用する一定の計算式で総合ランキング化した表を参考として掲載する。
(ランキング作成方法および歴代総合ヒット曲ランキングはこちら↓)
*1:ミリオンセールス相当と言うにあたっての各指標換算率の考え方は次の記事「歴代ヒット曲ランキング【1989-2023】」等で説明している。