UVERworldは2005年に「D-tecnoLife」でデビューした男性ボーカルロックバンド。デビュー早々にブレイクし、以降2010年代に渡ってヒット曲を大量輩出した。日本レコード協会によれば、これまでにダウンロード売上10万以上を記録した曲は21曲で、認定総ダウンロード売上は380万(歴代29位)となっている。これらのデータをランキング化した表は以下のとおりである。この表をもとにしながら、UVERworldのヒット史を振り返る。
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2005年-2009年
UVERworldがデビューした2005年は既存のCD市場に代わって配信市場が拡大している最中だった。この年を起点としたアーティストは人気の拡大と配信市場拡大が重なっているため、楽曲人気は配信売上に表れており、CD売上では殆ど人気を計れないケースが多い。
UVERworldも、シングルCD売上10万枚以上を記録した作品はたった2作に留まる一方で、配信10万ダウンロード以上を記録した曲は21曲も存在する。CD売上だけ見るのでは2作しかヒットがないという大きな誤認識を抱いてしまいかねないので要注意である。
デビューから2009年までの楽曲を配信開始日順に並べたダウンロード売上データは以下のとおり。
Timeless
UVERworldはボーカルTAKUYA∞を中心に滋賀県で結成され(当時のバンド名はSOUND極ROAD)、2000年から既に多数のライブ活動を通じて実績を重ねていた。2004年に当時のソニーミュージックレコーズの社長に見出され、メジャーデビューが決定。当時から大きな期待をかけられており、7月に発売されたデビュー曲「D-tecnoLife」はいきなり人気アニメBLEACHのオープニングテーマという好タイアップが付いた。その甲斐あって売上もCD10万枚を記録していきなりのブレイクを果たした。配信でも長きに渡り売上を重ね、2012年9月に25万ダウンロードを突破している。
10月に発売された2ndシングル「CHANCE!」もBLEACHのゲームのテーマソングとなったが、アニメと比べればタイアップ効果は劣ることもあり、CD売上は10万枚を割った。しかし配信ではコツコツと売上を積み上げ、2012年10月になって10万ダウンロードを突破している。この曲はメンバーの思い入れが強く、2010年代に入って以降もライブの定番曲として披露し続けていることも、長いスパンで配信売上を重ねられている理由の一つかもしれない。
2006年は更なる飛躍の年となった。2月にはここまでのヒット曲を収録した1stオリジナルアルバム『Timeless』を発売し、再発盤も含めた売上でいきなり10万枚を超えるセールスを記録した。
BUGRIGHT
5月に発売された4thシングル「Colors of the Heart」は人気アニメ「BLOOD+」主題歌に起用されたこともあり、これまたコツコツと売上を重ねて2015年12月に25万ダウンロードを突破。
そして8月に発売された5thシングル「SHAMROCK」は自身初のドラマタイアップが付き、最高視聴率11.0%を記録した「ダンドリ。〜Dance☆Drill〜」主題歌に起用された。打ち込みとバンドサウンドを融合させた聴きやすいロックサウンドに爽やかなボーカルが乗った本曲は、青春を描写したドラマにもマッチした前向きさやノリの良さを有しており、人気を博した。
配信売上をコツコツと重ねて2010年2月に25万ダウンロードを突破。さらにMV再生数は自己最高となる2,000万再生を突破している。カラオケでもトップクラスの人気を誇っており、代表曲の一つとして挙げることに違和感はない。これまではアニメタイアップをベースに人気を拡大してきていたが、この曲によって更なるファン層の開拓に成功した。
なお楽曲の途中に挟まれているラップパートで披露されているダミ声もTAKUYA∞によるものであり、とても爽やかな声と同一人物とは思えない。TAKUYA∞のボーカルテクニックの広さを感じることができる楽曲でもある。
続いて11月には6thシングル「君の好きなうた」を発売。本曲はシングルCD表題曲としては初のバラードナンバーで、想い人への告白を前にした男性の気持ちを描写しており、冬にも合う楽曲の雰囲気や歌詞に対し多くの支持が集まった。恋愛バラエティ番組「恋するハニカミ!」主題歌というタイアップも本曲の魅力にマッチした。
配信売上は発売1ヶ月で10万ダウンロードを突破。その後も売上が積み上げられ、2008年8月には自身初めて25万ダウンロードを突破、そして発売10年9ヶ月後の2017年8月には自身初の50万ダウンロード超えを達成した。
50万ダウンロードを超えた曲はこの曲と「儚くも永久のカナシ」の2曲だけだが、発売から認定までに要した期間は僅かに「君の好きなうた」が上回っており、このことを以て冒頭に示したダウンロード売上ランキングでは本曲を1位としている。これまでのヒット曲は全てアップテンポナンバーだったUVERworldだが、シングルでは初のバラードとなった本曲でそれらに並ぶどころか自身最大のヒットとなったことは大きな収穫であった。
翌2007年2月には前作以降のヒット曲を網羅した2ndオリジナルアルバム『BUGRIGHT』を発売。売上のアベレージが上がったことで本作の売上も1stを上回る14万枚を記録した。
PROGLUTION
2007年はこの後3枚のシングルがリリースされたが、「endscape」「シャカビーチ~Laka Laka La~」が10万ダウンロード、「浮世CROSSING」が25万ダウンロードを記録し、好調な売上が維持された。2008年1月にはこれらのヒット曲を収録した3rdオリジナルアルバム『PROGLUTION』を発売。順調に固定ファンを獲得していたことで前作を更に上回る15万枚を売り上げた。
AwakEVE
2008年はこの後6月に10thシングル『激動/Just break the limit!』を発売し、このうち1曲目の「激動」が25万ダウンロードを記録。8月には11thシングル「恋いしくて」が発売され、10万ダウンロードを売り上げた。
11月には12thシングル「儚くも永久のカナシ」を発売。この曲は人気アニメ「機動戦士ガンダム00」主題歌に起用された。絶大なタイアップ効果だけでなく、キャッチーなメロディーとサウンドに加え、愛や憎しみをテーマにした歌詞も支持されたことで頭一つ抜けたヒットとなり、配信50万ダウンロード、CD18万枚を売り上げた。
このうちCD売上はデビュー曲「D-tecnoLife」を上回り自己最高の枚数となる。配信でも発売1週間で10万ダウンロードを突破し、その後も長期に渡り売れ続けて翌2009年10月には25万ダウンロード、そして発売から11年が経過した2019年11月に50万ダウンロードを達成した。
50万ダウンロード達成までに要した日数は「君の好きなうた」に3ヶ月ほど及ばなかったものの、配信とCDの売上を合計した数字では自己最高の68万となるため、この曲が自身最大のヒットと言うことも間違いにはならない。
Billboard JAPAN Hot 100では自身初の週間1位も獲得している。
翌2009年1月には4thオリジナルアルバム『AwakEVE』を発売。「儚くも永久のカナシ」のヒットもあって1stからの売上右肩上がりを継続させ、16万枚を売り上げた。
Neo SOUND BEST
2009年はこの後2枚のシングルを発売したが、そのうち14thシングルの「哀しみはきっと」が10万ダウンロードを突破した。
2009年12月には自身初のベストアルバム『Neo SOUND BEST』を発売。これまでのオリジナルアルバムを上回り自身最大のセールスとなる18万枚を売り上げた。
2010年以降
ここまで順調に実績を積むことができたUVERworldは、2010年代に入るとより自由な楽曲制作が出来るようになり、TAKUYA∞自身の思想や体験を基にした主張を強く楽曲に反映させていくようになる。その男臭いメッセージ性の強さは多くの新規男性ファンを獲得することに繋がり、アニメタイアップを活用する既存戦略とも相まって長期に渡り安定した人気を維持することに成功している。
2010年代はシングルCD売上が楽曲人気指標としての役目を終えたが、配信ダウンロード売上はその機能を維持しており、UVERworldの楽曲人気は引き続き配信売上で可視化されている。
この時期の楽曲を配信開始日順に並べたダウンロード売上データは以下のとおり。
LAST
2010年3月に発売された15thシングル「GOLD」は上述したUVERworldの変化の口火を切ったと言えるような高いテンションの楽曲になっていたが、路線変更の浸透とともに徐々に配信売上を積み上げ、2014年6月になって10万ダウンロードを突破している。この曲も収録した5thオリジナルアルバム『LAST』は11万枚を売り上げた。
LIFE 6 SENSE
2010年9月には16thシングル「クオリア」を発売。「儚くも永久のカナシ」のタイアップ「機動戦士ガンダム00」の続編映画の主題歌に起用された効果もあり、所要4ヶ月で10万ダウンロードを突破した。
2011年は3枚のシングルを発売したが、このうち19thシングル「CORE PRIDE」がアニメ「青の祓魔師」主題歌に起用された効果で久々に25万ダウンロードを突破した。この曲の歌詞はタイアップ先のイメージに沿いつつもTAKUYA∞の実体験を基に書かれており、その熱血漢ぶりと攻撃的なバンドサウンドが強い印象を残して支持を広げていった。アニメタイアップを活用してUVERworldのパーソナリティを広めることに成功した楽曲と言える。この曲も収録した6thオリジナルアルバム『LIFE 6 SENSE』は前作を上回る13万枚を売り上げた。
UVERworld 『LIVE at Avaco Studio』
THE ONE
2012年8月には22thシングル「THE OVER」が発売され、10万ダウンロードを記録。この曲は最高視聴率12.9%を記録したドラマ「黒の女教師」主題歌にも起用されたラブソングで、非常に純粋一途な想いがロマンティックかつ個性的に表現された歌詞や、その世界観を表現したMVに感動が集まった。2018年に実施されたファン投票では1位を獲得するほどの支持となっている。
2012年11月にはこの曲も収録した7thオリジナルアルバム『THE ONE』が発売され、13万枚をセールスした。収録曲のうち、アニメ「青の祓魔師」の劇場版主題歌に起用された「REVERSI」が12月に23rdシングルとしてシングルカットされ、配信で10万ダウンロードを突破している。
Ø CHOIR
2013年は2枚のシングルが発売され、このうち24thシングル『Fight For Liberty/Wizard CLUB』の1曲目に収録された「宇宙戦艦ヤマト2199」主題歌「Fight For Liberty」が10万ダウンロードを記録した。
2014年はシングル1枚とアルバム1枚を発売。26thシングル「7日目の決意」はダウンロード認定を受けていないものの、Billboard JAPAN Hot 100で「儚くも永久のカナシ」以来自身2曲目となる週間1位を獲得した。オリコンではキム・ヒョンジュン「HOT SUN」が1位だったが、ビルボードはキム・ヒョンジュンの握手会イベントにおける売上が集計対象外だったため、異なる結果となった。
また、本作よりサックス担当のサポートメンバーだった誠果が6人目の正式なメンバーとして加入した。誠果はデビュー前からバンド活動を共にしていたがデビューにあたり正式メンバーから外されたという経緯があったが、「CORE PRIDE」等で印象的なサックスパートを見せる活躍を続けたことや、UVERworldが長きに渡り実績を積んだことで以前よりも主張が通りやすくなったことから、念願のメンバー入りが実現した。
7月に発売された8thオリジナルアルバム『Ø CHOIR』は11万枚を売り上げた。
TYCOON~ALL TIME BEST
2015年は2枚のシングルが発売され、このうちアニメ「アルスラーン戦記」主題歌に起用された27thシングル「僕の言葉ではない これは僕達の言葉」が10万ダウンロードを記録。
2017年には2枚のシングル「一滴の影響」「DECIDED」が発売され、ともに10万ダウンロードを記録。「一滴の影響」はアニメ「青の祓魔師」主題歌、「DECIDED」は興行収入38億円を記録した実写映画「銀魂」主題歌として支持を広げた。8月には9thオリジナルアルバム『TYCOON』が発売され、11万枚を売り上げている。
2018年には自身2枚目のベストアルバム『ALL TIME BEST』を発売し、11万枚をセールスした。
UNSER~
2019年には10thオリジナルアルバム『UNSER』を発売。売上は10万枚を割ったもののBillboard JAPAN Hot Albumsでは自身初の週間1位を獲得。アルバムの週間1位獲得はオリコンを含めてもデビュー14年目にして自身初となった。長く人気を維持していなければ実現できない快挙である。
さらに同年には4万5千人を収容する東京ドームで史上初となる男性限定ライブを開催し、見事に成功させている。
まとめ
以上まで見てきたとおりUVERworldはCDではなく配信を中心にしてヒット曲を大量輩出しており、21世紀を代表するロックバンドの一組といっても誇張ではない活躍を残している。実態を見れば、アニメタイアップを効果的に活用しつつ徐々に音楽性を変化させ、熱い自我を惜しみなく表現するようになっていったことで常に新規ファンを獲得し続けていた。売上の数字だけ見ると非常に安定しているが、その内訳は女性ファンがメインだった初期から男性ファンがメインになる中後期にかけ変化している。男祭りの規模がどんどん拡大していったことからも分かるとおり、挑戦的な変化を続けていたことがこの結果に繋がっていると言える。
変化への貪欲な姿勢は今なお継続しており、2018年のベストアルバム発売を区切りとして以降は打ち込み要素を強めた盛り上がり方の異なる楽曲も増えてきている。まだまだ新しい一面を見せてくれるであろう今後の活躍にも大いに期待したい。
以上までに紹介したヒット曲を手っ取り早く入手するには、2009年に発売されたベストアルバム『Neo SOUND BEST』がおすすめ。ヒット曲が特に多く輩出されていた2000年代の楽曲をCD1枚にまとめている。*1
2018年に発売された『ALL TIME BEST』はオールタイムベストと謳われているが、実は『Neo SOUND BEST』の続編的要素が強く、2010年代の楽曲が収録曲のメインとなっており、2000年代の楽曲はファン投票で補完するような内容になっている。『Neo SOUND BEST』に続けて入手すれば、2010年代のヒット曲も網羅することができる。*2
この記事で紹介したダウンロードデータは日本レコード協会HP内の下記サイトで検索することができる。新たな発見の宝庫なので、時間があれば好きな曲やアーティストのダウンロード数を検索してみることをおすすめする。
*1:ただし、配信10万ダウンロード以上を記録した楽曲の中では、「Colors of the Heart」と「endscape」が未収録となった。
*2:配信10万ダウンロード以上を記録している曲のうち、2010年代発売曲では、「REVERSI」「僕の言葉ではない これは僕たちの言葉」が未収録。2000年代発売曲は多くのヒットシングルが未収録になっているが、『Neo SOUND BEST』で未収録だった「Colors of the Heart」は収録された。