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ORANGE RANGEの配信ダウンロード売上ランキング

ORANGE RANGEは2003年に「キリキリマイ」でデビューした男性5人組ロックバンド*1。デビューしてすぐに大ブレイクを果たし、2000年代中盤に一時代を築いた。日本レコード協会によれば、これまでにダウンロード売上10万以上を記録した曲は17曲で、認定総ダウンロード売上は420万(歴代23位)となっている。これらのデータをランキング化した表は以下のとおりである。この表をもとにしながら、ORANGE RANGEのヒット史を振り返る。

 

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(ランキング作成方法および歴代ダウンロード売上ランキングはこちら↓)

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(歴代アーティスト別ダウンロード売上ランキングはこちら↓)

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2005年まで ~CD売上全盛期~

 

ORANGE RANGEがブレイクし、人気のピークを迎えた2003年から2005年は、まだCD売上が主流楽曲人気指標だったものの、徐々に配信市場が拡大していき、ダウンロードでの販売数がCDの売上枚数を上回りつつあるという時期だった。そのため、この時期の楽曲の人気を把握するためには、CD売上を中心に見ることになるが、人気が長期に渡り持続している曲は配信売上認定も受けている。

 

この時期に発売された楽曲のダウンロード売上データは以下のとおり。

 

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ORANGE RANGEはもともとデビュー前から地元沖縄のライブハウスやストリートで多くのライブ実績を積んでおり、人気の下地を作っていた。2003年6月に1stシングル「キリキリマイ」でデビューを果たすと、翌月には早くも2ndシングル「上海ハニー」を発売。この曲がラジオ局でパワープレイを獲得したことで、いきなりCDで24万枚を売り上げるヒットを記録した。

 

配信では2005年に初めて解禁されたが、そこからの積み上げで2012年になって10万ダウンロードを突破した。この曲はORANGE RANGEのパブリックイメージであるコミカルなノリの良い夏うたに仕上がっており、根強い人気を得ていることが窺える。


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10月には3rdシングル「ビバ★ロック」を発売し、16万枚をセールス。12月にはここまでのヒット曲を収録した1stオリジナルアルバム『1st CONTACT』を発売し、登場週数94週のロングヒットで69万枚を売り上げた。

 

デビュー2年目の翌2004年は一世を風靡するほどの人気大爆発となった。まず2月に発売した5thシングル「ミチシルベ~a road home~」が自身初の週間1位を獲得し、27万枚をセールス。「上海ハニー」を超えるヒットを記録した。配信でも発売11年後の2015年になって10万ダウンロードを突破している。

 

6月には6thシングルロコローションを発売し、前作を更に上回る49万枚をセールス。配信でも発売10年後の2014年になって10万ダウンロードを突破した。この曲は「上海ハニー」と同系統の盛り上がる夏うたとなっており、連続でこの系統がヒットしたことでORANGE RANGEのパブリックイメージが確立した。なおこの曲はリトル・エヴァの1962年のヒット曲「ロコ・モーション」のカバーとなっているが、シングル発売時点では原曲側への申し入れがなく、オリジナル曲として発表され、後に原曲側から抗議を受けたことでカバー扱いに変更されたという経緯がある。

 

8月には7thシングル「チェスト」をリリース。10万枚限定生産とされていたが、なぜか売上は11万枚となった。要は完売したということであり、当時の人気の凄まじさを象徴するデータである。

 

「花」配信75万ヒット

 

極めつけは10月に発売された8thシングル「花」の特大ヒットである。この曲は優しく前向きな歌詞で綴られたバラードナンバーとなっており、興行収入48億円を記録したヒット映画「いま、会いにゆきます」の主題歌への起用も相まって、これまでノリの良い曲を多くヒットさせてきたORANGE RANGEの新しい一面がクローズアップされたことで自身最大のセールスを記録した。年間チャートでは集計割れを起こしたが、2004年4位→2005年21位と推移した。

 

CD売上は99万枚となっており、ミリオン未達曲の中では最高売上となっていることでも有名だが、週間200位圏外の売上を集計しないCD売上チャートの性質上、実売数はミリオンに達している可能性はかなり高い。出荷枚数では日本レコード協会からミリオン認定を受けている。

 

一方で配信売上でも75万ダウンロードを記録していることはあまり知られていないのではないだろうか。この記録が知られていれば、CDと配信の合算売上は174万となるので、CDミリオン未達を残念がる必要性はほとんどなくなるはずだ。ほぼCDしか音楽発売媒体がなかった90年代と、CDと配信の二媒体となった00年代では、CD売上だけで人気を比較することは不可能である。

 

配信売上推移は以下のとおりである。

 

  • 発売2年後の2006年10月に25万ダウンロード突破
  • 発売5年10ヶ月後の2010年8月に50万ダウンロード突破
  • 発売10年11ヶ月後の2015年9月に75万ダウンロード達成

 

見てのとおり、ほぼ5年25万ダウンロードのペースで配信売上を積み上げ続けている。更に2022年にはストリーミング5,000万再生も突破した。こうしたデータから言って、本曲が時代を跨いで支持されている特大ヒット曲であることに疑いの余地はない。

 

ここまでのヒットとなっていたにも拘わらず、年末の紅白歌合戦ではこの曲ではなく「ロコローション」が歌唱曲に選ばれた。いくらORANGE RANGEのパプリックイメージが後者であるとはいえ、融通の利いていない選曲であったと言える。結果的に紅白で「ロコローション」を披露した際に表示された作詞作曲者のクレジットでこの曲がカバー扱いに変更されたことが広く知れ渡り、これが盗作騒動を大きくする一因となってしまった。素直に「花」を歌っていれば紅白効果でCDミリオンも達成できていたのではないかと思える。 


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「花」の人気が牽引する形で、12月に発売された2ndオリジナルアルバムmusiQ264万枚を売り上げる特大ヒットとなり、2005年の年間1位も獲得した。収録曲のうち、携帯電話のCMソングになった「以心電信」が配信で25万ダウンロードを売り上げている。

 

2004年の圧倒的な勢いは2005年に入っても続き、まず2月に発売された9thシングル「*~アスタリスク~」CD62万枚、配信25万ダウンロードをセールスした。合計すれば87万となる。CD売上チャートでは年間でも2005年の4位を獲得した。この曲は人気アニメ「BLEACH」の主題歌となったこともあり、コミカルさを排したミクスチャーロックサウンドが広く普及し支持された。


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続けて5月には10thシングル「ラヴ・パレード」が発売され、CD44万枚、配信25万ダウンロードを売り上げた。CD売上チャートでは2005年の年間8位となっている。

 

「ラヴ・パレード」から僅か2週間後には早くも次のシングル「お願い!セニョリータ」が発売され、CD41万枚、配信25万ダウンロードをセールス。この曲は「上海ハニー」「ロコローション」に続くノリの良い夏うたにカテゴライズされる。

 

8月にはこの年4枚目のシングルキズナを発売し、CD41万枚、配信25万ダウンロードをセールス。この年発売の4シングルは全て配信25万以上、CD40万以上の売上となり、絶大な人気が示された。

 

10月にはこれら4枚のシングルを収録した3rdオリジナルアルバムИATURALを発売し、93万枚をセールスした。

 

2006年以降 ~配信売上全盛期~

 

2006年に入ると、ブーム的な人気が終息したことやネット上の盗作騒動によるイメージダウンが影響し始め、CD売上が大きく減少した。このことから世間一般でも2006年からORANGE RANGEの人気は大きく下がったものとして認識されているが、実は配信売上を見ると一概にそうとも言えない。CD売上の減少は音楽環境のCDから配信へのシフトが本格化したという外的要因もあり、CD売上の減少分が配信売上に移行していることや、高人気を得た曲は抜けた配信売上となっていることが読み取れる。

 

この時期に発売された楽曲のダウンロード売上データは以下のとおり。

 

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2006年はまず5月に13thシングルチャンピオーネを発売。この曲はNHKサッカーW杯テーマソングという強力なタイアップを得て、配信25万ダウンロード、CD22万枚を売り上げた。CD売上は減少したものの配信売上は維持され、初めてCDと配信の数字が逆転した。また、このシングルのc/w「Walk on」も複数のタイアップがついて人気となり、配信で10万ダウンロードを売り上げた。

 

10月には15thシングル「SAYONARA」が発売され、配信10万ダウンロード、CD10万枚をセールス。

 

12月にはこの年発売のヒット曲を集めた4thオリジナルアルバムORANGE RANGEを発売し、34万枚をセールス。収録曲のうち、ポッキーのCMソングに起用された「DANCE2 feat.ソイソース」が配信で10万ダウンロードを売り上げた。

 

2007年はまず4月に16thシングルイカSUMMER」を発売。タイトルから分かるとおりこの曲は盛り上がる夏うたにカテゴライズされる曲で、前年にこの系統の楽曲を出さなかったこともあってか、まだ季節は春であるにも拘わらずこのタイミングで発売された。CD売上は限定生産を除けばブレイク以降では初めて10万枚を割りこみ、ヒットしなかった曲として扱われることが多いが、実は配信で10万ダウンロードを売り上げており、ヒットしていた。当時は数字が分かる配信売上チャートが存在しなかったため、配信中心のヒットが可視化されず、CD売上だけに基づいた誤ったヒット認識が横行することとなった。

 

イケナイ太陽」配信75万ヒット

 

そして7月には頭一つ抜けた配信ヒットナンバーが誕生した。17thシングルとして発売されたイケナイ太陽は前作に続く陽気なサマーソングで、最高視聴率21.0%を記録したドラマ「花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜」主題歌に起用されたこともあり、75万ダウンロードを売り上げた。配信売上推移は以下のとおり。

 

  • 発売1週間で10万ダウンロード突破
  • 発売1ヶ月で25万ダウンロード突破
  • 発売4ヶ月後の2007年11月に50万ダウンロード突破
  • 発売6年6ヶ月後の2014年1月に75万ダウンロード達成

 

見てのとおり配信から1週間で10万を突破する好調な初動を見せ、年内に50万ダウンロードを達成。なお2007年の年間CD売上チャートの水準は3位で44万枚だったため、もし合算チャートでもあれば年間TOP10クラスのヒットになっていたと思われる。CD売上は16万枚となっており、2005年までの水準には達していないため、当時はドラマ効果で多少売上が回復したというヒットの扱われ方をしていたが、実際は売上の急回復が起きていた

 

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CDと配信の売上を合計した数字は91万であり、同系統路線の曲と比べれば「上海ハニー」の34万、「ロコローション」の59万、「お願い!セニョリータ」の66万を超え、自身最大の夏うたヒットと言うことも出来る。更にストリーミング5,000万再生も突破しており、配信だけで言えば自身最大のヒット曲である「花」と同成績を記録している。


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イケナイ太陽」発売の1週間後には自身初のベストアルバム『ORANGE』『RANGE』を2枚同時発売し、前者が38万枚、後者が40万枚を売り上げた。なお「イケナイ太陽」は残念ながら両作ともにショートバージョンでの収録となった。

 

イケナイ太陽」のヒットは、その人気がCD売上だけで過小に評価されたことも影響したのか、ORANGE RANGEの人気再浮上のきっかけとはならず、2008年3月に発売された次のシングル「君station」はCD、配信ともに10万に達しなかった。しかし、5月に発売された次のシングル「O2」はアニメ「コードギアス」主題歌となったこともあり売上が回復。配信25万ダウンロード、CD10万枚を売り上げた。7月には5thオリジナルアルバム『PANIC FANCY』を発売し、12万枚をセールスした。

 

11月には20thシングル「おしゃれ番長 feat.ソイソース」を発売。この曲は配信10万ヒットとなっていた「DANCE2 feat.ソイソース」に続きポッキーのCMソングに起用されたこともあり、配信25万ダウンロードを売り上げるヒットとなった。しかし、CD売上が10万枚に達しなかったことでその人気は過小評価された。

 

ここまで見てきて分かるとおり、ORANGE RANGEは2000年代後半にCDから配信への売上シフトを順調に進めていたのだが、数字が見える配信売上チャートが当時存在しなかったために、CD売上の減少だけが目立つ結果となってしまい、人気の失速が過大に捉えられたことは非常に残念であった。

 

結果的にORANGE RANGEは2009年を最後に一時メジャーを離れることになり、以降はインディーズレーベルを立ち上げるなどして、地元でのライブを中心とした活動に切り替えた。しかし現在でも時折地上波音楽番組への出演を果たすなど、全盛期の活躍にスポットが当たる機会も見られている。

 

まとめ

 

以上のとおり、ORANGE RANGEの全盛期はCD主体のヒットだった2005年までとされることが多いが、2006年以降も配信を中心に多くのヒット曲を輩出しており、2000年代を代表するアーティストであることに疑いの余地はない。

 

ここで紹介した曲を手っ取り早く入手するには、2009年に発売されたシングルコレクション『ALL the SINGLES』がおすすめ。「イケナイ太陽」のフルバージョンを収録したベストアルバムはこれしかない。

 

ALL the SINGLES

ALL the SINGLES

  • アーティスト:ORANGE RANGE
  • 発売日: 2010/07/14
  • メディア: CD
 

 

この記事で紹介したダウンロードデータは日本レコード協会HP内の下記サイトで検索することができる。新たな発見の宝庫なので、時間があれば好きな曲やアーティストのダウンロード数を検索してみることをおすすめする。

 

www.riaj.or.jp

 

 

*1:デビューから2005年までは6人組