Billion Hits!

フル配信ダウンロード売上、MV再生回数、ストリーミング再生回数、Billboard JAPANランキングデータなどを通じて国内の人気楽曲を把握するブログ

西野カナの人気曲【配信ダウンロード売上ランキング】

西野カナは2008年に「I」でデビューした女性ソロアーティスト。デビューから1年でブレイクを果たし、2019年に活動を休止するまでコンスタントにヒット曲を出し続けた。日本レコード協会によれば、これまでにダウンロード売上10万以上を記録した曲は39曲で、認定総ダウンロード売上は1,555万EXILEに次ぐ歴代2位)となっている。ダウンロードミリオン7曲EXILEに次ぐ歴代2位記録である。これらのデータをランキング化した表は以下のとおりである。この表をもとにしながら、西野カナのヒット史を振り返る。

 

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(ランキング作成方法および歴代ダウンロード売上ランキングはこちら↓)

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(歴代アーティスト別ダウンロード売上ランキングはこちら↓)

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2008年-2010年 ~ブレイク、第一の全盛期~

 

西野カナはデビューから僅か3年の間に大ヒット曲を大連発し、ダウンロードミリオンを6曲輩出した。この最初の3年の期間に発表された楽曲に絞って配信開始日順に並べたダウンロードデータは以下のとおり。

 

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2008年-2009年

 

西野カナといえどもさすがにデビューしてすぐ売れたというわけではなく、デビュー年の2008年はダウンロード認定曲がない。デビュー曲「I」オリコンでは最高155位に終わっている。ただ、Billboard JAPAN Hot 100ではいきなり最高10位を記録。この理由は、当時のビルボードはCD売上に加えて、ラジオオンエア数をチャート構成要素としていたことによる。ラジオは西野カナのブレイクを予見していたと言える。

 

ブレイクのきっかけとなった曲は、2009年3月に発売された5thシングルCD表題曲「遠くても feat.WISE」。中京テレビ「SAKAE TA☆RO」の2009年3月度エンディング・テーマに起用され、遠距離恋愛を歌った歌詞が番組内容とマッチしたことで、いわゆるギャルと呼ばれる若い女性からの支持を得てヒット。発売1ヶ月で10万、8ヶ月で25万ダウンロードを突破。7年10ヶ月が経過した2017年1月には50万ダウンロード認定を受領するに至った。

 

男性ヒップホップミュージシャンをフィーチャーした曲でブレイクしたことも当時の流行に則っており、青山テルマやJUJUも同様であった(この曲もMVでもそうだが当時の西野カナのメイクはJUJUと見紛うものであった)。なおオリコンはこの曲の人気を捕捉できず、最高40位に終わらせている。Billboard JAPAN Hot 100では前述したとおりラジオ指標の加算があり、最高17位と少しマシな結果になっている。


西野カナ 『遠くても feat.WISE (short ver.)』

 

このブレイクを受けて、次の6thシングルCD表題曲「君に会いたくなるから」ではさらにステップアップ。レコチョクのCMソングなどのタイアップを受け、前曲を大きく上回るペースでダウンロード数を積み上げ、配信開始から僅か11日で10万、2ヶ月で25万、9ヶ月で50万ダウンロードを達成するヒットを記録した。引き続きオリコンでは人気を捕捉できておらず、この曲の最高位は17位。Billboard JAPAN Hot 100ではラジオ人気の加算で7位に入った。


西野カナ 『君に会いたくなるから (short ver.)』

 

この上昇気流に乗ったところで1stアルバム『LOVE one』が6月に発売され、22万枚をセールス。アルバム曲の中でも特に「君の声を feat.VERBAL(m-flo)」が人気となり、25万ダウンロードを記録した。この後に続くシングルから、配信ミリオン大連発の快進撃が始まっていく。

 

10月に発売された7thシングルCD表題曲「もっと…」は前作に引き続きレコチョクのCMソングなどのタイアップを受け、当時のガラケー世代に訴求。前作をさらに上回るハイペースでダウンロード数を積み上げることとなり、半月で25万、1ヶ月で50万、5ヶ月で75万ダウンロードを突破。最終的に2014年1月に配信ミリオン認定を受領する大ヒットになった。

 

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ここまでのヒットになればさすがにCDチャートでの存在感も向上し、オリコンではようやく自身初のTOP10入りとなる6位となった。Billboard JAPAN Hot 100では3位を獲得している。


西野カナ『もっと…』 FULL-サブスク全曲解禁記念

 

12月には早くも8thシングル『Dear…/MAYBE』を発売。1曲目の「Dear...」レコチョクタイアップのほか、NTTドコモ「がんばれ受験生 '09-'10」公式ソングにも起用された。「もっと…」からややペースは落としたもののダウンロード数を積み上げ、配信開始から1週間で10万、3ヶ月で50万、11ヶ月で75万ダウンロードを突破。最終的に2014年4月に配信ミリオンを達成した。

 

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オリコン最高位は7位だが、Billboard JAPAN Hot 100では3位を獲得している。


西野カナ『Dear…』 FULL-サブスク全曲解禁記念

 

なお2曲目の「MAYBE」も人気となり、10万ダウンロードを記録した。

 

2010年 ~「会いたくて 会いたくて」大ヒット~

 

2010年は発売された4枚の全シングルCD表題曲が配信ミリオンを記録するという偉業を達成。シングルCDミリオンでも1年に4枚輩出したアーティストはCDバブル期に一人もいない*1。まさに全盛期となる圧倒的な人気を誇った。

 

2月に発売された9thシングルCD表題曲「Best Friend」は前作に続きNTTドコモ「ガンバレ受験生'09-'10」公式キャンペーン・ソングに起用され、ターゲットとするリスナーをブレさせることはなかった。それが功を奏したか、ダウンロード数は絶好調を維持。配信開始2週間で10万、1ヶ月で25万、2ヶ月で50万、7ヶ月で75万ダウンロードを突破。最終的に2014年1月に配信ミリオンを達成した。

 

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この頃になると全く流行歌を押さえることができなくなっていたオリコンでも、この曲でようやく自身初のTOP3入りを記録。Billboard JAPAN Hot 100でも3位を記録した。


西野カナ 『Best Friend(short ver.)』

 

なおc/wの「ONE WAY LOVE」もノンタイアップながら人気となり、10万ダウンロードを記録している。

 

そして5月は自身最大規模のヒットとなった代表曲が誕生。10thシングルCDの表題曲となった「会いたくて 会いたくて」は宝飾品のCMソングに起用されたことや、「会いたくて震える」という歌詞が強い印象を残したことで、これまで以上にダウンロード数が爆発。なんと配信開始2週間で25万、1ヶ月で75万を突破。3ヶ月後の2010年8月にはあっという間に配信ミリオンを突破した。

 

ミリオン到達所要3ヶ月はダントツで自己最速であるだけでなく、歴代十傑に入るほどの速さである。

 

2010年の年間CD売上チャートはTOP10をAKB48と嵐が独占し、CD売上を楽曲人気指標として用いることが不可能となったが、年間1位のAKB48「Beginner」94万枚とミリオン未満(後にミリオン達成)なので、現代のようにダウンロード数がチャートに加算されていれば、2010年発売曲で唯一年内に配信ミリオンを突破した「会いたくて 会いたくて」が年間1位になっていてもおかしくない

 

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この曲はオリコンビルボード双方の年間チャートでTOP50圏外になっており、楽曲人気指標として機能する数値付き音楽チャートが当時存在しなかったことを証明する曲にもなっている。


西野カナ 『会いたくて 会いたくて(short ver.)』

 

なおc/wの「LOVE IS BLIND」もイオン「2010 Yukata & Mizugi キャンペーン」TV-CFソングに起用され人気となり、25万ダウンロードを記録している。

 

この大ヒットの直後の6月には、2ndオリジナルアルバム『to LOVE』が発売された。配信ミリオンの大ヒット曲が4曲も収録されているこのアルバムが売れないはずがなく、CD売上は自身最大セールスとなる72万枚を記録し、Billboard JAPAN Top Albums Salesの年間でも2010年3位→2011年78位と推移するロングヒットを記録した。アルバム曲の中では、KBC「第14回KBC水と緑のキャンペーン」テーマソングの「このままで」25万ダウンロード、フジテレビ系列「めざましテレビpresentsにゃんこTHE MOVIE大みそかSP」主題歌の「love & smile」10万ダウンロードを記録する人気曲になっている。

 

続いて8月に発売された11thシングルCD表題曲「if」は劇場版「NARUTO -ナルト- 疾風伝 ザ・ロストタワー」主題歌。前作およびアルバムの大ヒットの流れもありダウンロード数の積み上げペースがそれ以前と比べてギアアップしており、配信開始から1ヶ月で25万、2ヶ月で50万、4ヶ月後の2010年11月には早々に75万ダウンロードを突破。最終的には2014年1月に配信ミリオンを突破した。

 

2010年発売曲で年内に75万ダウンロードを突破した曲は前述の「Best Friend」「会いたくて 会いたくて」と本曲の3曲しかなく、もし当時網羅的ダウンロードチャートが存在していたならば西野カナがTOP3を独占していた可能性が高い。

 

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75万という数字はの2010年発売曲「Troublemaker」「Monster」の年間集計期間内のCD売上70万枚を上回るものであり、嵐並みのVIP待遇を受けて然るべきほどの人気であったが、当時なかなかこの偉業が音楽チャートやTV出演待遇で可視化されることはなかった。


西野カナ『 if 』 FULL-サブスク全曲解禁記念

 

11月には2010年では4枚目となる12thシングルCD「君って」が発売。表題曲は最高視聴率19.2%を記録した人気ドラマ「フリーター、家を買う。」主題歌となり、好タイアップを受けたこともあり相変わらずダウンロード数は絶好調。配信開始から1週間足らずで10万、1ヶ月で25万、5ヶ月で75万ダウンロードを突破。2014年1月に配信ミリオンを突破した。これでなんとシングルCD表題曲が6曲連続で配信ミリオンを記録したことになり、B'zやMr.Childrenが90年代に樹立した連続CDミリオン記録を彷彿とさせる大活躍であった。

 

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なお地味にCD売上では本曲がギリギリ「会いたくて 会いたくて」を上回り自己最高の9万枚を記録している。しかし上述のとおり配信では明らかに「会いたくて 会いたくて」が最もダウンロードされており、ヒット曲はダウンロード市場から中心に生み出されるようになっていた。


西野カナ 『君って(short ver.)』

 

2011年-2013年

 

2011年~2013年はダウンロード市場にも変化が生じていた。従来の主流であった着うたフルでの楽曲ダウンロードがスマートフォンの普及とともに縮小。代わってPC配信でのダウンロードが普及した。ただ、ストリーミング視聴の先駆けと言える、YouTubeでMVを再生する聴き方も普及し、ダウンロードからストリーミングへの移行が始まったことで、ダウンロード市場全体ではCDバブル崩壊のごとく縮小傾向となった。

 

そんな中でも西野カナのダウンロード数は堅調な推移を記録しており、さすがにミリオンは出なくなったものの、安定して最低10万以上のダウンロード数は確保していた。この3年の期間に発表された楽曲に絞って配信開始日順に並べたダウンロードデータは以下のとおり。

 

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2011年第一弾シングル「Distance」25万ダウンロードを記録。

 

続く14thシングルCD表題曲Esperanzaはラテン調を取り入れた既存曲からは一線を画す曲調の楽曲。この変化がダウンロード数にどう表れるかは注目であったが、結果は前作「Distance」を上回る50万ダウンロードを記録し、成功を収めた。

 

CD売上で見ると「Distance」を下回る売上になっており、当時はこの路線は失敗であったとする向きも多かったが、このダウンロード売上の結果とCD売上市場の縮小状況から言って、その見解は的を得ていなかったと言える。


西野カナ『Esperanza』 FULL-サブスク全曲解禁記念

 

6月には配信限定シングル「Alright」を発売し、10万ダウンロードを記録。配信限定でありながら配信成績が前後作品を下回っているのは、アルバム発売2週間前の先行シングルだったからと思われるが、CDで発売することがまだ当時は新曲発売の主要宣伝材料だったということもありそうだ。

 

こうして発売された3rdオリジナルアルバムThank you, Loveは配信ミリオン2曲を収録していたこともあり37万枚のセールスをマークした。

 

11月には、15thシングルたとえ どんなに…が発売。表題曲はSONY WALKMAN「Play You.」CMソングに起用された。西野カナの真骨頂と言えるラブバラードであったこともあり、前後作品と比較して抜けたヒットとなり、75万ダウンロードを記録した。


西野カナ 『たとえ どんなに...(short ver.)』

 

2012年に入ると、16thシングルCD表題曲SAKURA, I love you?、同17th「私たち」が続けて25万ダウンロードを記録。

 

同18th「GO FOR IT!!」山崎製パン「ランチパック」CMソングに起用された恋愛を前向きに後押しするポップな応援歌。どちらかというとこれまでのヒット曲は切なげなラブソングバラードが多かった中で本曲のポジティブな雰囲気は新鮮であった。それもあったのか明確に前後作品と比べ目立ったヒットとなり、50万ダウンロードを記録した。

 

なお本曲のWikipediaにはCDの歌詞カードのフォントがゴシック体なのは自身としては珍しいという極めてニッチな着眼点からの言及がある。


西野カナ『GO FOR IT !!』 FULL-サブスク全曲解禁記念

 

9月には4thオリジナルアルバム『Love Place』が発売され、前作とほぼ変わらない34万枚をセールス。リード曲であった「Be Strong」10万ダウンロードを記録した。

 

11月には19thシングル「Always」が発売され、10万ダウンロードを記録。c/wである「Happy Song」10万ダウンロードを記録した。

 

2013年は発売された全シングルCD表題曲3曲「Believe」「涙色」「さよなら」がすべて25万ダウンロードを記録するという抜群の安定感であった。9月には初のベストアルバム『Love Collection 〜pink〜』『Love Collection 〜mint〜』が2枚同時発売となり、前者が31万枚、後者が32万枚を売り上げた。

 

2014年-2018年 ~第二の全盛期~

 

2014年以降になると曲調や歌詞の変化が顕著になり、カントリー調の幸せオーラ全開のラブソングが増えていくようになる。また化粧がブレイク期のギャルメイクからナチュラルメイクに徐々に変わっていったことも変化を印象づけた。この変化が当たることとなり、西野カナ第二の全盛期とも言うべき時期が形成されることとなった。

 

この時期はダウンロードだけでなく、ストリーミング市場の拡大に伴いMV再生数でも自己最高再生数を次々と更新していった。また、2014年以降Billboard JAPAN Hot 100の集計方法が改善され、楽曲人気指標としてステップアップしたことから、ようやく西野カナのヒットが音楽チャートで可視化されるようになっていった。

 

この期間に発表された楽曲に絞って配信開始日順に並べたダウンロードデータは以下のとおり。

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2014年

 

2014年は第一弾シングル「We Don't Stop」が引き続き25万ダウンロードを記録する安定感抜群のスタートダッシュを切る。しかし次曲からこの安定以上の配信成績が次々と生み出されていく。

 

2014年8月に発売された24thシングルCD表題曲「Darling」は自身初のカントリー調の楽曲で、多少目につくところはあっても大好きだと幸せを全開に綴る歌詞と相まって、ブレイク期の得意分野だった切ないラブバラードとは違った多幸感に包まれた楽曲となった。この曲調はタイアップであるフジテレビ系「めざましテレビ」のテーマソングとして朝から流れる曲にはピッタリであった。

 

この路線が当たり、本曲は「たとえ どんなに…」以来2年9ヶ月ぶりとなる75万ダウンロード達成曲となった。Billboard JAPAN Hot 100では最高2位・登場週数52週となり、年間でも2014年11位→2015年29位と推移。前述の通りビルボードが集計対象指標を増やすなど楽曲人気指標として進化したことで、これが西野カナ自身初のビルボード年間TOP50入りとなった。

 

なお、この時期すでに楽曲人気指標としての機能を失っていたCD売上は本作を以てしても前作からほとんど変動がなく、そのためオリコンでは本曲のヒットの捕捉に失敗し、年間TOP100へのランクインすら実現できなかった。75万人が購入するようなヒット商品を無視したことになる。


西野カナ 『Darling』MV(Short Ver.)

 

続いて10月に発売された25thシングルCD表題曲「好き」25万ダウンロードを記録するヒットとなる。この曲はBillboard JAPAN Hot 100で面白いチャートアクションをしている。以下に本曲のchart insightを示す。

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黒線がHot 100、黄線はCD売上、紫線はダウンロード、青線は当時歌詞表示回数(後にストリーミングに置き換わる)

 

見てのとおり、2014年10月発売以来2015年3月までHot 100でロングヒットしたのち、一度圏外となるが、そこから15週後の2015年6月に再び顔を出し、翌2016年までロングランしている。

 

この理由は、2015年6月にLINEが音楽ストリーミングサービスLINE MUSICをローンチした際、CMソングに本曲が採用されたことで、再び楽曲人気に火がついたためである。実際に本曲は、「2015年にLINE MUSICで最もシェアされた曲」第1位となっている。

 

linecorp.com

 

この結果、ビルボードでは「Darling」をも上回る登場週数58週(自身2位となる記録)となり、年間でも2014年60位→2015年42位と2年連続TOP100入りを記録した。ストリーミング時代到来の先駆け的な1曲であったといえるだろう。

 

こうして好調な流れで11月に発売された5thオリジナルアルバム『with LOVE』26万枚をセールスした。Billboard JAPAN Top Albums Salesでは集計割れを起こし、2014年21位→2015年22位と推移した。

 

2015年 ~「トリセツ」大ヒット~

 

翌2015年は前年からさらにギアアップした活躍となる。まず2015年第一弾となる26thシングル「もしも運命の人がいるのなら」が4月に発売された。表題曲はカントリー調のアップテンポナンバーで、まだ見ぬ運命の人への期待に胸を膨らませる内容の歌詞になっており、前向きかつ多幸感にあふれた一曲。この路線が当たり、50万ダウンロードを記録した。Billboard JAPAN Hot 100では最高2位・登場週数44週を記録し2015年の年間14位に入った。 


西野カナ 『もしも運命の人がいるのなら』MV(Short Ver.)

 

そして2015年9月には「会いたくて 会いたくて」と双璧を成す代表曲が誕生。27thシングルとして発売された「トリセツ」は、興行収入24億を記録した人気映画「ヒロイン失格」の主題歌に起用され、歌詞が女性版「関白宣言」のようだと話題になるなど人気を集めた。

 

配信開始3週間で10万ダウンロードを突破するスタートダッシュとなり、この勢いもあってBillboard JAPAN Hot 100自身初となる週間1位を獲得。11月には25万ダウンロードを突破。年末歌番組でこの曲の歌唱機会が増えると勢いが増し、12月には50万ダウンロードを突破。特に紅白効果が顕著で、歌唱直後のビルボードではなんと週間1位返り咲きを達成した。その後も2016年4月に75万、そして2019年1月にはついに配信ミリオンを達成。年間では2015年11位→2016年11位と推移し、2年連続TOP20入りとなった。

 

ストリーミング市場の拡大でダウンロード市場が縮小していた中での配信ミリオンはブレイク期のミリオンとはまた違った捉え方ができる。実際、ミリオン到達所要日数はダントツで「会いたくて 会いたくて」が自己最速だが、「トリセツ」はMV再生数自己最高記録となる6,000万回を突破している。音楽の聴かれ方が変化した中でも人気曲を輩出し続けた対応力は特筆に値する。

 

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上記数々の偉業により、当ブログでも「トリセツ」を2010年代のヒット曲十選に選出している。

 

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西野カナ 『トリセツ』MV(Short Ver.)

 

2015年11月にはc/w曲やアルバム曲を集めた裏ベストアルバム『Secret Collection 〜RED〜』『Secret Collection 〜GREEN〜』を発売。GREENに収録された新曲「No.1」は最高視聴率12.9%を記録したドラマ「掟上今日子の備忘録」主題歌となったことから人気となり、25万ダウンロードを記録した。このためかGREENのアルバムセールスが13万枚、REDが同11万枚となり両者のCD売上には若干の差がついている。

 

2016年-2018年

 

2016年4月には28thシングル「あなたの好きなところ」が発売され、10万ダウンロードを記録。それだけでなく、なんとこの曲で自身初の日本レコード大賞を受賞した。*2

 

楽曲はやはり多幸感に満ち溢れた内容で、MVも、52枚のトランプに好きな人の好きなところを一点ずつ書いて本人がめくりながら歌うキュートな仕上がりとなっている。炭酸飲料のCMソングに起用されたことも楽曲の普及に寄与し、Billboard JAPAN Hot 100では週間2位を獲得。年間でも2016年の36位に入った。


西野カナ 『あなたの好きなところ』MV(Short Ver.)

 

2016年7月に発売された6thオリジナルアルバム『Just LOVE』は前作を上回る30万枚をセールス。Billboard JAPAN Hot Albumsでも2016年の年間7位→2017年42位と推移した。リード曲「Have a nice day」はフジテレビ系『めざましテレビ』テーマソングとして起用された朝にピッタリの爽やかな応援歌となっており、10万ダウンロードを記録した。

 

10月には29thシングル「Dear Bride」を発売し、25万ダウンロードを記録。この曲は第49回日本有線大賞を受賞している。2016年は何かと賞レースに縁のある年となった。

 

以降の楽曲は最高でも10万ダウンロードに留まっており(「パッ」「Bedtime Story」の2曲が記録)、全盛期の勢いからは落ち着きが見られたとも言えるが、前述のとおり、音楽の聴き方の変化によりダウンロード市場そのものが縮小しており、逆にYouTubeに代表されるMV再生数市場が拡大している。ダウンロード数だけでヒット規模を評価できなくなっていることは押さえるべきポイントである。ただし西野カナのMVはすべてショートバージョンの公開に留まっており、この点は非常に惜しい。

 

2017年以降発売されたアルバムでは、7thオリジナルアルバム『LOVE it』13万枚を売り上げ、Billboard JAPAN Hot Albums2017年56位→2018年42位と推移した。ベストアルバムも発売され、『Love Collection 2 〜pink〜』11万枚『Love Collection 2 〜mint〜』10万枚をセールスした。 

 

まとめ

 

こうして2010年代のトップシーンを走り続けた西野カナだが、2019年1月に活動休止を発表。休止期間は趣味の旅行などやってみたいことにトライするとしたほか、将来的な復帰も示唆しており、前向きな理由であったことはこの10年の活動の充実の裏返しとも言えるだろう。

 

結果的にラストシングルとなった2018年10月発売の「Bedtime Story」はMV再生数は500万程度だがダウンロード10万を記録。1DLと100回再生を等価とすると、最近の曲はMV再生数>ダウンロード数となっていることがほとんどだった中で、この曲がダウンロード数>MV再生数となっているのは、図らずもダウンロード市場全盛期を駆け抜けた西野カナを象徴するような終わり方であった。

 

以上で紹介したヒット曲を手軽に入手できるベストアルバムは『Love Collection 〜pink〜』『Love Collection 〜mint〜』『Love Collection 2 〜pink〜』『Love Collection 2 〜mint〜』の4枚。ベストアルバムはこの4枚しか発売されておらず、互いに収録曲の重複もないため、4枚すべてマストアイテムである。

  

Love Collection ~pink~(通常盤)

Love Collection ~pink~(通常盤)

  • アーティスト:西野カナ
  • 発売日: 2013/09/04
  • メディア: CD
 
Love Collection ~mint~(通常盤)

Love Collection ~mint~(通常盤)

  • アーティスト:西野カナ
  • 発売日: 2013/09/04
  • メディア: CD
 
Love Collection 2 〜pink〜(通常盤)(特典なし)

Love Collection 2 〜pink〜(通常盤)(特典なし)

  • アーティスト:西野 カナ
  • 発売日: 2018/11/21
  • メディア: CD
 
Love Collection 2 〜mint〜(通常盤)(特典なし)

Love Collection 2 〜mint〜(通常盤)(特典なし)

  • アーティスト:西野 カナ
  • 発売日: 2018/11/21
  • メディア: CD
 

 

ちなみに、ここで紹介したダウンロードデータは日本レコード協会HP内の下記サイトで検索することができる。ダウンロード売上はCD売上と比べデータがあまり知られていないので、時間があれば検索して新たな発見を楽しむのも良いかもしれない。

 

www.riaj.or.jp

 

 

*1:任意の12ヶ月間であればB'zなどが達成している

*2:ただ、10万ダウンロードはヒットしたとは言えるものの、なぜこれまで配信ミリオンの大ヒット曲を大量輩出していたのにそれらで受賞できず、このタイミングでの初受賞となったのか、と疑問に思うことは当然である。ダウンロード売上で考えれば他候補の中でノミネート時すでに配信ミリオンを突破する大ヒットとなっていた浦島太郎(桐谷健太)「海の声」が最有力であった。なお西野カナは前年に「トリセツ」が大賞候補にノミネートされており、ダウンロード売上で考えれば候補作中最有力だったところ、三代目 J Soul Brothers「Unfair World」が受賞。翌年週刊文春に、三代目が1億円でレコード大賞を買ったことが記事となり騒動に。大賞受賞には前年の詫びの意味も込められているのではないか…との憶測もある。