Billion Hits!

ダウンロード売上、ストリーミング再生回数、Billboard JAPAN Hot 100などのデータを通じて国内の楽曲人気動向を把握するブログ

西野カナのデジタル人気曲【売上・再生回数ランキング】

西野カナは2008年に「I」でデビューした女性ソロアーティスト。デビューから1年でブレイクを果たし、2019年に活動を休止するまでコンスタントにヒット曲を出し続けた。

 

西野カナがブレイクした2000年代終盤はダウンロード購入が楽曲視聴方法の主流であったため、楽曲人気は主にダウンロード売上を通じて把握できる。西野カナの累計フル配信ダウンロード売上1,580万となっており、これはEXILEに次ぐ歴代2位記録である。また、2020年代以降に新たな楽曲人気指標として台頭したストリーミング再生回数においても無視できない規模を記録している。

 

ここではデジタル指標を参照しながら西野カナのヒット史を振り返る。当ブログ独自の計算式により作成した、西野カナの人気楽曲ランキングは以下のとおりである。

 

 

 

(ランキング作成方法および歴代デジタルヒット曲ランキングは以下記事参照↓)

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2008年-2010年 ~ブレイク、第一の全盛期~

 

西野カナはデビューから僅か3年の間に大ヒット曲を大連発し、フル配信ダウンロード売上指標においてミリオンセラーを6曲輩出した。この最初の3年の期間に発表された楽曲に絞ってリリース順に並べたデジタル人気データは以下のとおり。

 

 

2008年-2009年

 

西野カナといえどもさすがにデビューしてすぐ売れたというわけではなく、デビュー年の2008年はダウンロード認定曲がない。ただ、デビュー曲「I」Billboard JAPAN Hot 100ではいきなり最高10位を記録した。この理由は、当時のビルボードはCD売上に加えて、ラジオエアプレイをチャート構成指標としていたことによる。ラジオは西野カナのブレイクを予見していたと言える。

 

ブレイクのきっかけとなった曲は、2009年3月に発売された5thシングル「遠くても feat.WISE」。中京テレビのバラエティ番組SAKAE TA☆ROの企画から誕生した本曲は、遠距離恋愛の寂しさを歌った歌詞が番組内容とマッチしたことで、いわゆるギャルと呼ばれる若い女性からの支持を獲得し、フル配信50万ダウンロードを記録した。男性ヒップホップミュージシャンをフィーチャーした曲でブレイクしたことも当時の流行に則っていた。


西野カナ 『遠くても feat.WISE (short ver.)』

 

このブレイクを受けて、次の6thシングル「君に会いたくなるから」ではさらにステップアップ。失恋の切なさを歌った内容はレコチョクのCMソングなどのタイアップ効果もあって共感を集め、フル配信75万ダウンロード、着うた50万ダウンロードを突破するヒットを記録した。


西野カナ 『君に会いたくなるから (short ver.)』

 

この上昇気流に乗ったところで1stアルバム『LOVE one』が6月に発売された。アルバム曲の中でも特に「君の声を feat.VERBAL(m-flo)」が人気となり、フル配信25万ダウンロードを記録した。

 

10月に発売された7thシングル「もっと…」は恋人の想いが自分から離れているのではないかという不安を歌った内容で、前作に引き続きレコチョクのCMソングなどのタイアップを受け、当時のガラケー世代に訴求。フル配信100万ダウンロード、着うた75万ダウンロード、ストリーミング5,000万再生を記録する大ヒットになった。

 

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西野カナ『もっと…』 FULL-サブスク全曲解禁記念

 

12月には早くも8thシングル『Dear…/MAYBE』を発売。1曲目の「Dear...」遠距離恋愛となっている中でも恋人を強く想う気持ちを表現した内容で、レコチョクCMタイアップのほか、NTTドコモ『がんばれ受験生 '09-'10』公式ソングに起用されたこともあって共感を集め、フル配信100万ダウンロード、着うた75万ダウンロード、ストリーミング1.0億再生を突破する大ヒットを記録した。


西野カナ『Dear…』 FULL-サブスク全曲解禁記念

 

なお2曲目の「MAYBE」も人気となり、フル配信10万ダウンロードを記録した。

 

2010年 ~「会いたくて 会いたくて」大ヒット~

 

2010年は発売された4枚の全CDシングル表題曲がフル配信ダウンロードミリオンを記録する偉業を達成。CDバブル期の1990年代でも、CDシングルミリオンを1年に4枚輩出したアーティストは一組もいない*1。まさに全盛期となる圧倒的な人気を誇った。

 

2月に発売された9thシングル「Best Friend」は前作に続きNTTドコモ『ガンバレ受験生'09-'10』公式キャンペーン・ソングに起用され、ターゲットとするリスナーをブレさせることはなかった。それが功を奏したか、親友との強い絆を歌った内容が広く共感を集め、フル配信100万ダウンロード、着うた100万ダウンロード、ストリーミング5,000万再生を記録した。


西野カナ『Best Friend』MV Full

 

なおc/wの「ONE WAY LOVE」もノンタイアップながら人気となり、フル配信10万ダウンロードを記録している。

 

そして5月は自身最大規模のヒットとなった代表曲が誕生。10thシングル「会いたくて 会いたくて」は宝飾品ジェムケリーのCMソングに起用されたことや、「会いたくて震える」という歌詞が強い印象を残し、フル配信110万ダウンロード、着うた100万ダウンロード、ストリーミング1.1億再生を記録した。なおフル配信ダウンロード売上は配信開始から僅か3ヶ月でミリオンセラーを達成したが、これは自身最速記録であるだけでなく、歴代十傑に入るほどの速さである。

 

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当時は現代のようにダウンロード売上を集計対象とするヒットチャートが存在していなかったが、もし存在していれば「会いたくて 会いたくて」が年間1位になっていてもおかしくなかったと当ブログでは推定している。

 

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西野カナ 『会いたくて 会いたくて(short ver.)』

 

なおc/wの「LOVE IS BLIND」イオン『2010 Yukata & Mizugi キャンペーン』のCMソングに起用され人気となり、フル配信25万ダウンロードを記録している。

 

この大ヒットの直後の6月には、2ndオリジナルアルバム『to LOVE』をリリース。Billboard JAPAN Top Albums Salesの年間では2010年3位→2011年78位と推移するロングヒットを記録した。アルバム曲の中では、KBC『第14回KBC水と緑のキャンペーンテーマソングの「このままで」フル配信25万ダウンロード、ストリーミング5,000万再生めざましテレビpresentsにゃんこTHE MOVIE大みそかSP』主題歌の「love & smile」フル配信10万ダウンロードを記録する人気曲になっている。

 

続いて8月に発売された11thシングル「if」は、運命的な偶然の出会いから生まれた強い愛情を歌ったラブソングとなっており、アニメ映画NARUTO -ナルト- 疾風伝 ザ・ロストタワー』主題歌に起用されたこともあって多くの共感を集め、フル配信100万ダウンロード、着うた75万ダウンロード、ストリーミング1.2億再生を記録した。


西野カナ『 if 』 FULL-サブスク全曲解禁記念

 

11月には2010年では4枚目となる12thシングル「君って」をリリース。本曲は大切な相手を深く理解し優しく寄り添うバラードナンバーで、恋人に対象を限らない普遍性を有していたことや、最高視聴率19%を記録した人気ドラマフリーター、家を買う。主題歌に起用されたこともあり多くの共感を集め、フル配信100万ダウンロード、着うた100万ダウンロード、ストリーミング5,000万再生を記録した。

 

西野カナはこれでなんとCDシングル表題曲が6曲連続でフル配信ダウンロードミリオンを記録したことになり、B'zやMr.Childrenが90年代に樹立した連続CDミリオン記録を彷彿とさせる大活躍であった。


西野カナ 『君って(short ver.)』

 

2011年-2013年

 

2011年~2013年はデジタル市場に変化が生じ始めており、従来の主流であったダウンロード市場が縮小し、ストリーミング市場への移行が始まっていた。そんな中でも西野カナのダウンロード売上は堅調に推移した。この3年の期間に発表された楽曲に絞ってリリース順に並べたデジタル人気データは以下のとおり。

 

 

2011年第一弾シングル「Distance」フル配信25万ダウンロード、着うた50万ダウンロードを記録。

 

続く14thCDシングル表題曲Esperanzaはラテン調を取り入れた既存曲からは一線を画す曲調であり、この変化がどう影響するかは注目されたが、結果は前作「Distance」を上回るフル配信50万ダウンロードを記録し、支持を集めた。


西野カナ『Esperanza』 FULL-サブスク全曲解禁記念

 

6月には3rdオリジナルアルバムThank you, Loveをリリース。アルバム発売2週間前には配信限定シングル「Alright」を先行配信しており、こちらがフル配信10万ダウンロードを記録している。

 

11月には、15thシングルたとえ どんなに…が発売。表題曲はSONY WALKMAN『Play You.』CMソングに起用された。西野カナの真骨頂と言えるラブバラードであったこともあり、前後作品と比較して抜けたヒットとなり、フル配信75万ダウンロード、着うた50万ダウンロード、ストリーミング5,000万再生を記録した。


西野カナ『たとえどんなに...』MV Full

 

2012年に入ると、16thシングルSAKURA, I love you?、17thシングル「私たち」が続けてフル配信25万ダウンロードを記録。

 

続く18thシングル「GO FOR IT!!」は恋愛を前向きに後押しするポップな応援歌で、『ランチパック』のCMソングにも起用された。どちらかというとこれまでのヒット曲は切なげなラブソングバラードが多かった中で本曲のポジティブな雰囲気は新鮮であった。それもあったのか明確に前後作品と比べ目立ったヒットとなり、フル配信50万ダウンロード、ストリーミング5,000万再生を記録した。


西野カナ『GO FOR IT !!』 FULL-サブスク全曲解禁記念

 

9月には4thオリジナルアルバム『Love Place』を発売。リード曲であった「Be Strong」フル配信10万ダウンロードを記録した。

 

11月には19thシングル「Always」をリリースし、フル配信10万ダウンロード、ストリーミング5,000万再生を記録。c/wである「Happy Song」フル配信10万ダウンロードを記録した。

 

2013年は発売された全CDシングル表題曲「Believe」「涙色」「さよなら」フル配信25万ダウンロードを記録するという抜群の安定感であった。9月には初のベストアルバム『Love Collection 〜pink〜』『Love Collection 〜mint〜』を2枚同時リリースした。

 

2014年-2018年 ~第二の全盛期~

 

2014年以降になると曲調や歌詞の変化が顕著になり、幸福感に満ちたカントリー調のラブソングが増えていく。また化粧がブレイク期のギャルメイクからナチュラルメイクに徐々に変わっていったことも変化を印象づけた。この変化が新たな支持を呼び、西野カナの第二の全盛期とも言うべき時期が形成されることとなった。

 

この時期はダウンロード売上だけでなく、ストリーミング市場の拡大に伴いMV再生回数でも自身最多再生回数を更新していった。また、新たなヒットチャートであるBillboard JAPAN Hot 100の台頭により、これまで不当に軽視されてきた西野カナの大活躍がようやく音楽ヒットチャート上で可視化されるようになっていった。

 

この期間に発表された楽曲に絞ってリリース順に並べたデジタル人気データは以下のとおり。

 

 

2014年

 

2014年はまず第一弾シングル「We Don't Stop」フル配信25万ダウンロードを記録。

 

続いて2014年8月に発売された24thシングル表題曲「Darling」は自身初のカントリー調の楽曲で、多少目につくところはあっても大好きだと幸せを全開に綴る歌詞と相まって、ブレイク期の得意分野だった切ないラブバラードとは違った多幸感に包まれた楽曲となった。本曲はめざましテレビのテーマソングにも起用されており、爽やかな朝を彩った。

 

この内容が支持され、本曲はフル配信75万ダウンロード、ストリーミング5,000万再生を記録した。当時ヒットチャートとして台頭し始めていたBillboard JAPAN Hot 100の年間では2014年11位→2015年29位と推移し、自身初の年間TOP50入りを果たした。


西野カナ『Darling』MV Full

 

続いて10月に発売された25thシングル「好き」フル配信25万ダウンロードを記録。Billboard JAPAN Hot 100の年間でも2014年60位→2015年42位と推移した。

 

こうして好調な流れで11月に発売した5thオリジナルアルバム『with LOVE』Billboard JAPAN Top Albums Salesの年間で2014年21位→2015年22位と推移するロングヒットとなった。

 

2015年 ~「トリセツ」大ヒット~

 

翌2015年はさらなる大活躍を見せた。まず2015年第一弾となる26thシングル「もしも運命の人がいるのなら」をリリース。表題曲はカントリー調のアップテンポナンバーで、まだ見ぬ運命の人への期待に胸を膨らませる内容の歌詞になっており、前向きかつ多幸感にあふれていたことが支持を集めた。各指標の累計はフル配信50万ダウンロード、ストリーミング5,000万再生、MV4,000万再生を記録した。


西野カナ 『もしも運命の人がいるのなら』MV(Short Ver.)

 

そして2015年9月には「会いたくて 会いたくて」と双璧を成す代表曲が誕生。27thシングルとして発売された「トリセツ」は、興行収入24億を記録した人気映画ヒロイン失格の主題歌に起用され、歌詞が女性版「関白宣言」のようだと話題になるなど人気を集めた。

 

Billboard JAPAN Hot 100では本曲で自身初週間1位を獲得。年末には紅白歌合戦にて本曲を披露した効果もあり週間1位に返り咲きを果たし、通算2週1位を獲得した。

 

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各指標の累計はフル配信100万ダウンロード、ストリーミング1.6億再生、MV7,000万再生を記録。Billboard JAPAN Hot 100の年間では2015年11位→2016年11位と推移した。

 

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西野カナ『トリセツ』MV Full

 

2015年11月にはc/w曲やアルバム曲を集めた裏ベストアルバム『Secret Collection 〜RED〜』『Secret Collection 〜GREEN〜』を発売。GREENに収録された新曲「No.1」は最高視聴率12%を記録したドラマ掟上今日子の備忘録』主題歌となったことから人気となり、フル配信25万ダウンロード、ストリーミング5,000万再生を記録した。

 

2016年-2018年

 

2016年4月には28thシングル「あなたの好きなところ」が発売され、フル配信10万ダウンロードを記録。それだけでなく、この曲で2016年の日本レコード大賞を自身初めて受賞した。*2

 

楽曲はやはり多幸感に満ち溢れた内容で、MVも、52枚のトランプに好きな人の好きなところを一点ずつ書いて本人がめくりながら歌うキュートな仕上がりとなっている。『ビタミン炭酸MATCH』のCMソングに起用されたことも楽曲の普及に寄与した。


西野カナ 『あなたの好きなところ』MV(Short Ver.)

 

2016年7月に発売された6thオリジナルアルバム『Just LOVE』Billboard JAPAN Hot Albums2016年の年間7位→2017年42位と推移。アルバム曲の中では「Have a nice day」、「君が好き」フル配信10万ダウンロードを記録した。

 

10月には29thシングル「Dear Bride」を発売し、フル配信25万ダウンロード、ストリーミング5,000万再生を記録。この曲は第49回日本有線大賞を受賞しており、2016年は何かと賞レースに縁のある年となった。

 

以降の楽曲では「パッ」「Bedtime Story」の2曲がフル配信10万ダウンロード「アイラブユー」ストリーミング5,000万再生を記録した。7thオリジナルアルバム『LOVE it』Billboard JAPAN Hot Albumsの年間で2017年56位→2018年42位と推移した。

 

まとめ

 

こうして2010年代のトップシーンを走り続けた西野カナだが、2019年1月には活動休止を発表した。休止期間は趣味の旅行などやってみたいことにトライするとしたほか、将来的な復帰も示唆しており、前向きな理由であったことはこの10年の活動の充実の裏返しとも言えた。そして5年後の2024年6月、満を持しての活動再開を発表し、以降も存在感を発揮し続けている。

 

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以上で紹介したヒット曲を手元に所有したい場合は、入り口として2024年に発売されたベストアルバム『ALL TIME BEST 〜Love Collection 15th Anniversary〜』がおすすめ。

 

 

この記事で紹介したデータのうちストリーミング再生回数やダウンロード売上はBillboard JAPANの公式サイト日本レコード協会の公式サイトから検索することができる。新たな発見の宝庫なので、時間があれば好きな曲やアーティストのデータを検索してみることをお勧めする。

 

 

*1:任意の12ヶ月間であればB'zなどが達成している

*2:ただ、10万ダウンロードはヒットしたとは言えるものの、なぜこれまでミリオンセラーを大量輩出していたのにそれらの楽曲で受賞できず、このタイミングでの初受賞となったのか、と疑問に思うことは当然である。ダウンロード売上で考えれば他候補の中でノミネート時すでにフル配信ダウンロードミリオンを突破する大ヒットとなっていた浦島太郎(桐谷健太)「海の声が最有力であった。なお西野カナは前年に「トリセツ」が大賞候補にノミネートされており、ダウンロード売上で考えれば候補作中最有力だったところ、三代目 J Soul Brothers「Unfair World」が受賞。翌年週刊文春三代目 J Soul Brothersが1億円でレコード大賞を買ったことが記事となった。大賞受賞には前年の詫びの意味も込められているのではないか…との憶測もある。