Billion Hits!

ダウンロード売上、ストリーミング再生回数、Billboard JAPAN Hot 100などのデータを通じて国内の楽曲人気動向を把握するブログ

2015年Billboard JAPAN Hot 100週間チャート回顧

この記事では2015年に公開されたBillboard JAPAN Hot 100週間チャートのうち、オリコンと1位が異なった全12週をピックアップして回顧する。

 

この一年間の週間1位変遷表は以下のとおり。回顧対象週には色をつけている。

 

 

Billboard JAPAN Hot 100とは、「社会への浸透度を計る」ことを明確に理念に掲げ、複数の要素も加味して作成されている総合チャートである。2015年の集計対象は上半期まではCD売上ラジオエアプレイiTunesダウンロード売上、ルックアップ(PCによるCD読取り数)、Twitterの5指標。下半期になると歌詞表示回数、MVの2指標が追加され合計7指標となった。

 

しかし、長い歴史を持つオリコンが既に権威と知名度を確立していた中で発足した後発サービスであったこともあって、当時のBillboard JAPANは権威と知名度をほとんど有していなかった。

 

2006年以降は新たな音楽の聴き方としてダウンロードでの購入が無視できない規模に普及しており、RIAJのダウンロード認定もこの年より発足している。よって、ヒットチャートであれば、2006年以降はCD売上だけでなくダウンロード売上も集計すべきだったのだが、オリコンはそれを一向に開始しなかった。結果、この年以降10年以上に渡り「日本音楽ヒットチャートのCD偏重問題」が生じることとなってしまった。

 

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2006年以降は、CD売上チャートだけを見ていても、ヒットの全貌を把握することはできないのであるしかし結局、全国網羅的にダウンロード売上を集計し指数も公開するようなチャートは当時誰も作成しなかったため、2006年以降はヒットチャートが存在せず、オリコンがヒットチャートとして誤使用される時期が長く続いた。

 

そのような中でも、Billboard JAPAN Hot 100をオリコンと比較しながら振り返ることにより、当時のヒット認識を少しでも多面的に捉え直すことは可能である。なぜなら、ダウンロードでの人気をiTunesやラジオエアプレイ指標等によって捕捉することに成功しているケースがいくつか見られているためである。本記事ではこの違いに着目しながら振り返りを行っていく。

 

(2015年のBillboard JAPAN年間チャートは以下記事参照↓)

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4/8公開週1位 NMB48Don’t look back!」

 

 

4/8公開週1位はNMB48「Don't look back!」オリコンではSKE48「コケティッシュ渋滞中」が1位だったが、ビルボードサウンドスキャン)では劇場盤及びMUSIC CARDを集計対象外としていたためその売上は7万枚程度にまで減少した。NMB48も劇場盤が集計対象外となる条件は同じだったが、MUSIC CARD商法を実施しなかったオリコンと比較した売上減少幅がSKE48よりも小さかったため、NMB48がCD売上1位となり、そのまま総合でも1位となった。

 

4/15公開週1位 ST☆RISHマジLOVEレボリューションズ

 

 

4/15公開週1位はST☆RISHマジLOVEレボリューションズオリコンではJuice=Juice『Wonderful World/Ca va?Ca va?(サヴァサヴァ)』が1位だったが、2位以下との差は数千枚程度しかないほどの僅差だったため、ビルボードサウンドスキャン)ではニャーKB with ツチノコパンダ「アイドルはウーニャニャの件」がCD売上1位となった。ST☆RISHもこれらの2曲に近い売上となっていたが、この2曲と異なりCD以外の指標でも一定の加点を得ていたことで総合では1位となった。

 

4/29公開週1位 BUMP OF CHICKEN「Hello, world!」

 

 

4/29公開週1位はBUMP OF CHICKEN「Hello, world!」オリコンではHKT48「12秒」が1位だったが、ビルボードサウンドスキャン)では劇場盤が集計対象外だったためその売上は7万枚程度に留まった。その結果、約13万枚の売上を記録したBUMP OF CHICKENがCD売上1位となり、そのまま総合でも1位となった。

 

「Hello, world!」はMV5,000万再生を突破している人気曲である。この時期のBUMP OF CHICKENの楽曲は電子音を駆使したサウンドが多くなっていたが、シンプルなバンドサウンドで構成されたアップテンポナンバーの本曲はその音への需要を満たすものとなっており、従来のファンから支持された。他方でアニメ血界戦線主題歌に起用されたことで新規リスナーも取り込んでおり、人気の拡大に繋げていた。


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6/3公開週1位 UNISON SQUARE GARDENシュガーソングとビターステップ

 

 

6/3公開週1位はUNISON SQUARE GARDENシュガーソングとビターステップCD売上では発売2週目AKB48「僕たちは戦わない」が前週に続き2週連続1位となっていたが、その売上は推定6万枚程度と多くはなかった。「シュガーソングとビターステップ」もCD発売2週目だったが、ダウンロード販売はCD発売から1週遅れた当週に解禁されており、その加点を得た結果、CD発売週の前週よりも総合ポイントを大きく伸ばしてAKB48を逆転し総合1位に浮上した。

 

本曲はiTunesダウンロード売上で年間5位を記録。全体累計ではフル配信50万ダウンロード*1を記録しており、2015年屈指の人気曲である。アニメ『血海戦線』のエンディングテーマに起用されており、このアニメとの親和性の高さや、明るくテンポの良いメロディーや玄人感のあるテクニカルなバンドサウンド等が支持された。


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7/8公開週1位 μ's「Angelic Angel

 

 

7/8公開週1位はμ's「Angelic AngelオリコンではSexy ZoneCha-Cha-Cha チャンピオン」が1位だったが、ビルボードサウンドスキャン)ではSexy Zone Shop盤3種が集計対象外だったためその売上は5万枚程度に留まった。その結果、約8万枚の売上を記録したμ'sがCD売上1位となり、そのまま総合でも1位となった。

 

7/22公開週1位 μ's「僕たちはひとつの光

 

 

7/22公開週1位はμ's「僕たちはひとつの光オリコンではNMB48「ドリアン少年」が1位だったが、ビルボードサウンドスキャン)では劇場盤が集計対象外だったためその売上は8万枚程度に留まった。その結果、約9万枚の売上を記録したμ'sがCD売上1位となり、そのまま総合でも1位となった。

 

8/26公開週1位 家入レオ君がくれた夏

 

 

8/26公開週1位は家入レオ君がくれた夏CD売上では福山雅治「I am a HERO」が1位で、その売上は10万枚程度と決して低くない水準だったが、主にiTunesダウンロード売上で圧倒的な数値を記録した家入レオが総合では逆転する番狂わせを演じた。

 

君がくれた夏」はiTunesダウンロード売上で年間6位を記録。全体累計ではフル配信50万ダウンロードを記録しており、2015年屈指の人気曲である。最高視聴率11%を記録した月9ドラマ『恋仲』主題歌に起用された本曲は、切ない夏の恋を描きつつ前を向くことを優しく後押ししてくれる歌詞や歌声がドラマとともに人気を集めた。


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9/23公開週1位 西野カナ「トリセツ」

 

 

9/23公開週1位は西野カナ「トリセツ」オリコンではGENERATIONS from EXILE TRIBE「ALL FOR YOU」が1位だったが、ビルボードサウンドスキャン)では販路限定ハイタッチ券付CDの売上を集計対象外としていたためその売上は1万枚程度にしかならず、代わりにでんば組.inc「あした地球がこなごなになっても」がCD売上1位となった。しかしその売上も3万枚程度と多くはなかったため、CD以外の指標で大きな加点を得ていた西野カナが総合では逆転した。

 

「トリセツ」は興行収入24億を記録した人気映画ヒロイン失格の主題歌に起用された。歌詞が女性版「関白宣言」のようだと話題になるなど人気を集めたことなどから楽曲は大人気を博し、フル配信100万ダウンロードを記録するに至った。

 

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また、2015年発売曲としては唯一2015年内にRIAJ50万ダウンロード認定を受けている曲でもある。つまり「トリセツ」は2015年の楽曲人気年間1位となっていてもおかしくなかったのである。当時網羅的なダウンロード売上チャートが国内に存在しなかったことは残念であった。何れにしてもここまで大規模な人気を示している曲が週間1位となることは楽曲人気チャートとして当然である。


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10/7公開週1位 サカナクション新宝島

 

 

10/7公開週1位はサカナクション新宝島オリコンではA.B.C-Z「Moonlight walker」が1位だったが、ビルボードサウンドスキャン)ではA.B.C-Z SHOP盤5種の売上を集計対象外としていたためその売上は3万枚程度にしかならず、代わりに春日未来(山崎はるか),最上静香(田所あずさ),伊吹翼(Machico)『THE IDOLM@STER LIVE THE@TER DREAMERS 01 Dreaming!』がCD売上1位となった。しかしその売上も4万枚程度と多くはなかったため、CD以外の指標で大きな加点を得ていたサカナクションが総合では逆転した。

 

新宝島」はフル配信50万ダウンロード、MV2億再生を突破しており、2015年屈指の大人気曲である。興行収入17億円を記録した映画バクマンの主題歌として書き下ろされた本曲は、映画の内容に沿って漫画作品を生み出す熱意が印象的な歌詞で表現されているほか、曲調にも新たな境地を求める冒険心を反映する形で自身のそれまでの曲の流れとは異なるアッパーチューンに仕上がっている。そのノリの良さや歌詞のフックのほか、ドリフのオマージュとなっていたMVなど随所に話題性が散りばめられていたことで息の長い人気となった。


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11/25公開週1位 back number「クリスマスソング」

 

 

11/25公開週1位はback number「クリスマスソング」CD売上ではKinKi Kids「夢を見れば傷つくこともある」が1位だったが、主にiTunesダウンロード売上で圧倒的な数値を記録したback numberが総合では逆転する大番狂わせを演じた。

 

本曲は片想いの男性目線で書かれたクリスマスソングとなっていて、最高視聴率12%を記録した月9ドラマ5→9〜私に恋したお坊さん〜主題歌に起用されたこともあり、配信開始から僅か4ヶ月という猛烈な勢いでフル配信100万ダウンロードを突破した。この勢いを踏まえればKinKi Kidsを上回り週間1位となったことも納得である。YouTubeでもMV1億再生を突破している。

 

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12/2公開週1位 back number「クリスマスソング」

 

 

12/2公開週back number「クリスマスソング」が前週に続き2週連続1位を獲得した。CD売上ではHKT48 feat.氣志團「しぇからしか!」が1位だったが、引き続きiTunesダウンロード売上で圧倒的な数値を記録していたback numberが総合では逆転した。

 

12/30公開週1位 back number「クリスマスソング」

 

 

クリスマス真っ只中の12/30公開週back number「クリスマスソング」が4週ぶりに返り咲き通算3週目の1位を獲得した。オリコンではCD発売3週目AKB48唇にBe My Babyが返り咲き1位となっていたが、これは劇場盤が当週追加発送されたことによるものである。劇場盤を集計対象外としていたビルボードではこのようなことは起きず、代わりにlily white〜園田海未(三森すずこ),星空凛(飯田里穂),東條希(楠田亜衣奈)from μ's〜「思い出以上になりたくて」がCD売上1位となっていたが、その売上も多くはなかったため、back numberが総合では逆転した。

 

まとめ

 

以上が2015年に公開されたBillboard JAPAN Hot 100週間チャートのうちオリコンと1位が異なる週の振り返りとなる。

 

オリコンはダウンロード売上の集計を一向に開始しなかったが、既にこの年はダウンロード売上の集計なしに楽曲人気を正確に把握することは不可能になっていた。オリコンはこの説明をせずにCD売上だけのチャートをヒットチャートとして世に提示し続け、多くの楽曲の人気を過大小にミスリードし続けた。

 

ビルボードも、まだ全国網羅的なダウンロード売上を集計対象にできていなかったものの、ラジオやiTunesダウンロード売上等の指標で人気を拾うことで、CD売上だけのチャートよりは楽曲人気チャートに近い存在になっていた。

 

当時は知名度がなく、ほとんど注目されていなかったビルボードだが、2010年代後半になると知名度が高まり、楽曲人気指標としての権威を確立した。2015年の週間チャートも、最も楽曲人気指標に近い公式なチャートとして、今からでも押さえておきたいところである。

 

(次年2016年のBillboard JAPAN Hot 100週間チャート回顧に続く↓)

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(前年2014年のBillboard JAPAN Hot 100週間チャート回顧はこちら↓)

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*1:ダウンロード売上は日本レコード協会認定値。以下同様。