この記事では2017年に公開されたBillboard JAPAN Hot 100週間チャートのうち、オリコンと1位が異なった全10週をピックアップして回顧する。
この一年間の週間1位変遷表は以下のとおり。回顧対象週には色をつけている。

Billboard JAPAN Hot 100とは、「社会への浸透度を計る」ことを明確に理念に掲げ、複数の要素も加味して作成されている総合チャートである。2017年の集計対象はCD売上、ラジオエアプレイ、ダウンロード、ストリーミング、ルックアップ(PCによるCD読取り数)、MV、Twitterの7指標であった。
2006年以降は、既存のCD購入に取って代わり、新たな音楽の聴き方としてダウンロード購入やストリーミング再生が主流となったため、ヒットチャートであれば後者のデジタル指標群を重視した設計に変わるべきであったが、オリコンをはじめとした日本のヒットチャートの動きは遅かった。結果、この年以降10年以上に渡り「日本音楽ヒットチャートのCD偏重問題」が生じることとなってしまった。
そのような中でも、Billboard JAPAN Hot 100をオリコンと比較しながら振り返ることにより、当時のヒット認識を少しでも多面的に捉え直すことは可能である。Billboard JAPANはオリコンに先んじて全国網羅的なダウンロード売上・ストリーミング再生回数の集計体制を確立し、デジタル市場で大ヒットしている楽曲の動向を捕捉できるようになっていたからである。本記事ではこの違いに着目しながら振り返りを行っていく。
(2017年のBillboard JAPAN年間チャートは以下記事参照↓)
- 1/4公開週1位 星野源「恋」
- 1/11公開週1位 星野源「恋」
- 1/18公開週1位 星野源「恋」
- 1/25公開週1位 星野源「恋」
- 2/8公開週1位 星野源「恋」
- 5/31公開週1位 GOT7「MY SWAGGER」
- 6/28公開週1位 米津玄師「ピースサイン」
- 8/30公開週1位 DAOKO×米津玄師「打上花火」
- 9/27公開週1位 DAOKO×米津玄師「打上花火」
- 10/11公開週1位 モーニング娘。'17「邪魔しないで Here We Go!」
- まとめ
1/4公開週1位 星野源「恋」

1/4公開週は星野源「恋」が4週連続通算7週目の1位を獲得した。CD売上ではNMB48「僕以外の誰か」が約36万枚の売上で1位だったが、紅白歌合戦をはじめとした年末歌番組への出演効果が出た当週の「恋」はMV指標で週間1,476万再生を記録するなどCD以外の6指標全てで1位を獲得したことで文句なしの総合1位となった。
最高視聴率20%を記録した大人気ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の主題歌に起用された「恋」は、前年10月発売曲でありながら、ドラマの最終回の盛り上がりや年末歌番組出演効果によりむしろ2017年初頭に人気がピークを迎えることとなり、当年の年間1位にも輝いた。
楽曲人気に全く関係しない要因でCD売上250万枚以上を記録したAKB48の総選挙投票券付シングル表題曲ではなく、歴史的大人気となった「恋」が年間1位となったBillboard JAPAN Hot 100は、当年に楽曲人気チャートとして必要最低限の合格ラインを突破した。引き続きCD売上だけを集計し配信指標の集計を開始しなかったオリコンは相変わらずAKB48を年間1位としており、両チャートの違いは決定的となった。
オリコンが「恋」の大人気すら可視化できなかったためか、2017年からは地上波で最も有名な音楽ランキング番組『COUNT DOWN TV』もオリコンをベースとした集計方法を変更し、ビルボードの集計方法を導入した。こうした動きにより、2017年を境にビルボードは一気に知名度を拡大させ、名実ともに楽曲人気チャートとしての権威を確立したのである。
1/11公開週1位 星野源「恋」

1/11公開週も星野源「恋」が5週連続通算8週目の1位を獲得した。CD売上では舞祭組「道しるべ」が約11万枚の売上で1位だったが、前週までの圧倒的な勢いの余韻がまだ残る「恋」が当週も2位以下に十分な差をつけ総合1位を継続した。
1/18公開週1位 星野源「恋」

1/18公開週も星野源「恋」が6週連続通算9週目の1位を獲得した。CD売上ではMr.Children「ヒカリノアトリエ」が約9万枚の売上で1位だったが、Mr.Childrenは当週時点で配信未解禁だったためCD以外の加点源が乏しく、前週までの勢いの余韻がまだ残る「恋」が当週も2位以下に十分な差をつけ総合1位を継続した。
1/25公開週1位 星野源「恋」

1/25公開週も星野源「恋」が7週連続通算10週目の1位を獲得した。CD売上では三浦大知「EXCITE」が1位だったが、その売上は約2万枚と多くなかったため、前週までの勢いの余韻がまだ残る「恋」が当週も2位以下に十分な差をつけ総合1位を継続した。
2/8公開週1位 星野源「恋」

前週ついに連続1位がストップした星野源「恋」だが、2/8公開週は返り咲き通算11週目の1位を獲得した。オリコンではA.B.C-Z「Reboot!!!」が1位だったが、2位以下との差は僅差であり、ビルボードではUVERworld「一滴の影響」がCD売上1位となった。しかし両曲とも売上は約4万枚と多くなかったため、未だ余力を残していた「恋」が両曲を上回り当週も総合1位を継続した。
「恋」の週間1位は当週が最後となったが、通算11週1位は当時の歴代最多記録であった。オリコンでは該当11週全て別の曲が週間1位になっており、どちらが楽曲人気指標として相応しいかは論を待たない。「恋」の絶大な勢いを支えたデジタル指標の累計はフル配信200万ダウンロード*1、MV2億再生を突破しているが、CD指標では年間TOP30入りすらしていない。CD売上は楽曲人気指標として一切機能していないのである。
5/31公開週1位 GOT7「MY SWAGGER」

5/31公開週の1位はGOT7「MY SWAGGER」。オリコンでは渋谷凛(福原綾香),上条春菜(長島光那),神谷奈緒(松井恵理子),神崎蘭子(内田真礼),三船美優(原田彩楓)『THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS LITTLE STARS! エチュードは1曲だけ』に僅差で1位を攫われたが、これはオリコンの販売施策イベントにおける売上の反映を抑制する措置によりGOT7の売上が減らされたためである。ビルボードではこのような措置を取っていないためオリコンより約2倍多い6万枚の売上が計上されGOT7がCD売上1位となり、そのまま総合でも1位となった。
ビルボードは2016年以降、こうした販売施策イベントによるCD売上の集計網羅性を高めたが、その代わりに当年よりCD売上が多すぎる場合に総合ポイントへの換算率を抑える措置を取っている。この措置の導入もビルボードが楽曲人気チャートとしての合格点を満たすこととなった大きなきっかけである。
つまり、オリコンは最初からCD売上を減少させている一方、ビルボードは一度CD売上を全て集計したうえで総合チャートへの反映率を抑えるという二段階の措置を講じているのである。
この方法によりBillboard JAPAN Hot 100は当年以降特定アーティストが楽曲人気に関係なく年間チャート上位を独占する状況とはならなくなった。CDが実際に何枚売れたか知りたいという売り手の需要と、CD売上に関係なくどの曲が人気なのか知りたいというユーザーの需要を両立させたのである。
一方オリコンはCD売上を減少させているといってもその減少幅は年間チャートの行方に大きな影響を与えない程度のものとなっており、措置導入後も特定アーティストが年間チャート上位を独占する状況を改善できておらず、上述した売り手とユーザーの両需要に応えられないチャート設計となってしまった。
6/28公開週1位 米津玄師「ピースサイン」

6/28公開週の1位は米津玄師「ピースサイン」。CD売上ではWEST.『おーさか☆愛・EYE・哀/Ya!Hot!Hot!』が約14万枚の売上で1位だったが、ダウンロード指標とMV指標で大きな加点を得ていた米津玄師が総合では逆転した。両指標の累計はフル配信75万ダウンロード、MV3億再生を突破しており、デジタル指標での大人気が当週の結果に表れた形となる。
本曲はアニメ『僕のヒーローアカデミア』の主題歌に起用された。本曲は「大人になっても記憶に残るパワーのある曲」をコンセプトに制作されており、疾走感溢れるロックナンバーに仕上がっている。打ち込み要素も多い自身の楽曲の中ではこのバンドサウンドが新鮮さをもたらしており、アニメの人気も手伝う形で大きな人気を獲得した。
8/30公開週1位 DAOKO×米津玄師「打上花火」

8/30公開週の1位はDAOKO×米津玄師「打上花火」。オリコンではFlower「たいようの哀悼歌」が1位だったが、これは同週発売されたMONSTA X「Beautiful」の売上を上述した措置に伴い約2万枚減少させたことによるものであり、この措置がなかったビルボードではMONSTA XがCD売上1位となった。しかし両曲ともその売上は6万枚程度と多くなかったため、ダウンロード、MV、ストリーミングの各指標で大きな加点を得ていたDAOKO×米津玄師が総合では逆転した。3指標の累計はフル配信50万ダウンロード、MV6億再生、ストリーミング2億再生*2を突破しており、デジタル指標での大人気が当週の結果に表れた形となる。
本曲はアニメ映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』主題歌に起用されたコラボレーションシングル。和を感じさせるテイストが花火の情景と見事にマッチしたことなどから、本曲は2017年を代表する大ヒット曲となった。
9/27公開週1位 DAOKO×米津玄師「打上花火」

9/27公開週はDAOKO×米津玄師「打上花火」が4週ぶり返り咲き通算2週目の1位を獲得した。CD売上ではHappiness「GOLD」が1位だったが、その売上は3万枚程度と多くなかったため、引き続き各指標の高得点が持続していたDAOKO×米津玄師が総合では逆転した。
10/11公開週1位 モーニング娘。'17「邪魔しないで Here We Go!」

10/11公開週の1位はモーニング娘。'17「邪魔しないで Here We Go!」。オリコンではSexy Zone「ぎゅっと」が1位となり、モー娘。は数千枚差の僅差で2位だったが、これは上述したオリコンの措置によりモー娘。の売上が減らされた結果である。ビルボードではこのような措置を取っていないため、オリコンより約6万枚多い17万枚の売上が計上されたモー娘。がCD売上1位となり、そのまま総合でも1位となった。なおモー娘。のBillboard JAPAN Hot 100首位は今回が初となる。
ちなみにSexy Zoneはオリコンではデビューからのシングル連続1位記録を持っているが、Billboard JAPAN Hot 100では当週のようにシングル表題曲が度々1位を逃している。しかしBillboard JAPAN Hot 100はオリコンと異なり○作"連続"1位記録という概念がない。総合楽曲チャートであるビルボードは、CDシングル表題曲だけでなく、アルバム曲やc/w曲など全楽曲がランクイン対象だからである。
そもそもたった一度1位を逃しただけで途切れてしまうような記録がアーティスト人気持続指標として使用できるはずもなく、○作連続1位記録は運が良いというだけの話に過ぎない。アーティスト人気持続指標としては、"連続"ではなく"通算"1位記録を参照することが適切である。
当週の結果に対しては、「オリコンのCD売上減少措置は連続1位記録を持つ芸能事務所SMILE-UP.所属アーティストに対しての忖度ではないか」とする記事も出る事態となった。
真偽は不明だが、少なくともオリコンの連続1位記録の権威が必要以上に肥大化してしまっていることはこの記事からも読み取れる。上述したとおり指標として重要なのは「連続」ではなく「通算」であり、オリコンの連続1位記録を強調する姿勢は無用な忖度を生むという意味でも極めて不適切である。
Billboard JAPAN Hot 100では、例えCDシングル表題曲に限ったとしても、その全曲で首位を獲得しているアーティストはほとんどいない。B'z、KinKi Kids、嵐といった1位常連組ですら1位を逃したことがある。週間1位が必ず約束されているアーティストは存在しない。これが自然な音楽チャートの姿である。
まとめ
以上が2017年に公開されたBillboard JAPAN Hot 100週間チャートのうちオリコンと1位が異なる週の振り返りとなる。
2017年はビルボードが楽曲人気チャートとして必要最低限の合格ラインを突破した音楽チャート史の転換点といえる年であるが、ここからビルボードは一気に普及を進めていき、週間チャートの注目度や重要性がますます高まっていくこととなる。
(次年2018年のBillboard JAPAN Hot 100週間チャート回顧に続く↓)
(前年2016年のBillboard JAPAN Hot 100週間チャート回顧はこちら↓)