Billion Hits!

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2016年Billboard JAPAN Hot 100週間チャート回顧

この記事では2016に公開されたBillboard JAPAN Hot 100週間チャートのうち、オリコンと1位が異なった全12週をピックアップして回顧する。

 

Billboard JAPAN Hot 100とは、「社会への浸透度を計る」ことを明確に理念に掲げ、複数の要素も加味して作成されている総合チャートである。2016年の集計対象はCD売上ラジオエアプレイダウンロード*1、ストリーミング*2、ルックアップ(PCによるCD読取り数)、MVTwitterの7指標であった。

 

なお2016年のBillboard JAPAN年間チャートは下記記事内で総括している。

 

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1/6公開週1位 西野カナ「トリセツ」

 

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1/6公開週西野カナ「トリセツ」が15週ぶり返り咲き通算2週目の1位を獲得した。オリコンではモーニング娘。'15冷たい風と片思い/ENDLESS SKY/One and Only』が1位だったが、ビルボードでは販路限定イベント券付CD複数枚セットの売上が集計対象外となっていた分オリコンよりも売上が少なくなり、代わりに刀剣男士team三条 with 加州清光「刀剣乱舞」がCD売上1位となった。しかしその売上も多くはなかったため、紅白歌合戦等年末歌番組での歌唱効果で勢いが回復していた西野カナが総合では逆転した。

 

「トリセツ」は興行収入24億を記録した人気映画「ヒロイン失格」の主題歌に起用された。歌詞が女性版「関白宣言」のようだと話題になるなど人気を集めたことなどから楽曲は大人気を博し、配信ミリオンを達成するに至った。YouTubeにおいても、ショートver.での公開であるにも拘らずMV6,000万再生を突破している。

 

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2/3公開週1位 GENERATIONS from EXILE TRIBEAGEHA

 

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2/3公開週1位はGENERATIONS from EXILE TRIBEAGEHAオリコンではGLAY『G4・Ⅳ』が1位だったが、ビルボードではG-DIRECT販売分が集計対象外となっていたため、GENERATIONSがCD売上1位となり、そのまま総合でも1位となった。

 

2/24公開週1位 手嶌葵「明日への手紙」

 

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2/24公開週1位は手嶌葵「明日への手紙」CD売上ではこぶしファクトリー『桜ナイトフィーバー/チョット愚直に!猪突猛進/押忍!こぶし魂』が1位だったが、その売上は4万枚程度と多くはなかったため、ダウンロードやMVでポイントを稼いだ手嶌葵が総合では逆転した。

 

この曲は元々2014年発売のオリジナルアルバム『Ren'dez-vous』に収録されていた曲だが、2016年1月より放送された月9ドラマ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」のプロデューサー村瀬健の耳に留まる形で主題歌に抜擢され、ドラマ用に新録音した音源がドラマバージョンとして発売された。ドラマが最高視聴率11.6%を記録する人気となると楽曲も普及し、25万ダウンロードを突破。都会の波にもまれながらも懸命に生きる若者を描写したドラマと、歌詞や透明感のある切ない歌声がマッチし、人気曲となった。


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6/1公開週1位 back number「僕の名前を」

 

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6/1公開週1位はback number「僕の名前を」CD売上では発売2週目嵐『I seek/Daylight』が1位だったが、その売上は5万枚程度と多くはなかったため、配信指標でポイントを稼いだback numberが総合では逆転した。

 

本曲は興行収入12億円を記録した映画「オオカミ少女と黒王子」の主題歌として普及し、10万ダウンロードを突破する人気曲となった。らしさ溢れる女々しいミディアムラブバラードに仕上がっており、「僕の全ては君のものだ」という歌詞も多くの共感を呼んだ。

  

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9/28公開週1位 RADWIMPS前前前世

 

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9/28公開週1位はRADWIMPS前前前世CD売上ではEXILE THE SECOND「WILD WILD WILD」が約5万枚の売上で1位だったが、チャート初登場から13週が経過しているにも拘わらず当週のダウンロード売上でこれを上回る数値を叩き出したRADWIMPSが総合では逆転した。

 

本曲は新海誠が監督を務めたアニメ映画「君の名は。」の劇中歌で、映画公開1ヶ月前の7月から配信のみで先行発売された。映画は興行収入250億円を記録するほどの社会現象となり、楽曲も勢いのあるキャッチーなメロディーや映画にリンクした歌詞が支持され配信ミリオン、MV2.6億再生を突破する大ヒットとなった。

 

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10/19公開週1位 星野源「恋」

 

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10/19公開週星野源「恋」がCD発売2週目にして1位に浮上した。前週はCDゲリラ発売で1位を獲得したHi-STANDARD「ANOTHER STARTING LINE」に次ぐ2位だったが、この時点ではまだ配信未解禁となっており、CD発売から1週遅れた当週に配信が解禁された。CD売上では関ジャニ∞「パノラマ」が約16万枚の売上で1位だったが、猛烈な配信初動売上を記録した「恋」が総合でこれを上回り、前週より総合ポイントを大きく伸ばす形で1位となった。

 

本曲は最高視聴率20.8%を記録した大人気ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」の主題歌に起用された。前向きになれる明るい曲調や「恋ダンス」と呼ばれたキャッチーな振り付け、対象を限定しない普遍性の高い歌詞が支持され、配信ダブルミリオン、MV2.3億再生を記録する特大ムーブメントを巻き起こした。

 

初動の勢いは凄まじく、ダウンロードミリオンは発売3ヶ月後の2017年1月に突破した。発売3ヶ月以内での配信ミリオン達成は、2010年代発売曲では他に米津玄師「Lemon」、松たか子「レット・イット・ゴー~ありのままで~」、西野カナ「会いたくて 会いたくて」の3曲しかない。

 

また、MVの1億再生突破も所要143日で達成された。これは当時歴代2位のスピード記録である。このMVは途中で広告が被せられているが、もし広告がなかったら記録はもっと伸びていたかもしれない。


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こうして滅多に出ない規模の特大人気を獲得した「恋」はBillboard JAPAN Hot 100で歴代1位記録となる週間1位獲得週数通算11週を記録した。一方オリコンでは配信指標の集計を一向に開始せずCD売上だけでチャートを構成し続けていたため「恋」は週間最高位2位となり、オリコンの楽曲人気指標としての機能が失われていることが改めて露呈した。

 

既に10年以上前の2006年の段階でダウンロード売上の集計なしに楽曲人気を正確に把握することは不可能になっていたが、オリコンはこの説明をせずにCD売上だけのチャートをヒットチャートとして世に提示し続け、多くの楽曲の人気を過大小にミスリードし続けていた。

 

そんな中で2008年に誕生したBillboard JAPAN Hot 100は楽曲人気の可視化を目指してひっそりと試行錯誤を続けていたが、「恋」のチャートアクションが大きく異なる結果となったことも後押しとなり、楽曲人気チャートとしての有用性への注目度が当年以降本格的に上昇した。いよいよビルボードは新時代の楽曲人気チャートとしてその知名度と権威を確立し始めたのである。

 

ということで、オリコンビルボードで1位が異なる週をピックアップしている当記事のシリーズでは、2016年から2017年にかけて「恋」がビルボード1位となった11週全てをピックアップして回顧することになる。

 

10/26公開週1位 星野源「恋」

 

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10/26公開週も前週に続き星野源「恋」2週連続1位を獲得した。CD売上ではSexy Zone「よびすて」が約11万枚の売上で1位だったが、引き続き猛烈な配信指標動向を記録していた「恋」が総合でこれを上回った

 

11/9公開週1位 ピコ太郎「PPAPペンパイナッポーアッポーペン)」

 

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11/9公開週1位はピコ太郎「PPAPペンパイナッポーアッポーペン)」CD売上ではKinKi Kids「道は手ずから夢の花」が約19万枚の売上で1位だったが、ピコ太郎は当週新たなMV「PPAP(Long Version)」及び死神リュークとコラボした死神リュークfeat.ピコ太郎名義のMVを新規公開し、前者をMステでも披露したことによりMV指標を急伸させ、週間2,677万再生という歴史的な数値を叩き出したことでKinKi Kidsを上回り総合1位に浮上した。

 

本曲はお笑いタレント古坂大魔王が扮するピコ太郎が2016年8月に動画配信した1分少々の楽曲である。9月にジャスティン・ビーバーがお気に入りの動画としてTwitterで取り上げたことなどにより、中毒性の高いリズムが世界的に人気を広げ、MV1.4億再生を記録した。なお公開から所要113日での1億達成は国内MVとしては当時歴代1位のスピード記録であった。

 

当週に公開された「PPAP (Long Version)」は2017年頃から原曲を大きく上回るMV再生数ペースとなり、今では3.9億再生を突破しダントツで自己最高再生数となっている。ちなみにこの動画は世界の名門レーベルUltra Musicから配信されたもので、これとは別にピコ太郎個人のチャンネルから配信された同内容の動画もあり、こちらも別途1億再生を突破している。参考までに原曲と全部合計すれば6億再生を超える。


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11/30公開週1位 星野源「恋」

 

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11/30公開週星野源「恋」が5週ぶり返り咲き通算3週目の1位を獲得した。CD売上ではモーニング娘。'16『セクシーキャットの演説/ムキダシで向き合って/そうじゃない』が約19万枚の売上で1位だったが、星野源は当週一般ユーザーによる踊ってみた動画のアップロードの許諾を公式アナウンスしたことなどからMV指標を週間1,126万再生にまで伸ばしており、他の配信指標動向も高水準で高止まりしていたことから総合でモーニング娘。'16を大きく上回った

 

12/14公開週1位 星野源「恋」

 

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12/14公開週星野源「恋」が2週ぶり返り咲き通算4週目の1位を獲得した。CD売上では関ジャニ∞「NOROSHI」が約21万枚の売上で1位だったが、ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」も佳境に差し掛かり盛り上がりが高まる中で「恋」の猛烈な勢いも止まらず、当週もMV1,142万再生を記録するなど配信指標で圧倒的な数値を記録し、関ジャニ∞を総合で上回った

 

12/21公開週1位 星野源「恋」

 

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12/21公開週星野源「恋」が2週連続通算5週目の1位を獲得した。CD売上ではHey!Say!JUMP「Give Me Love」が約25万枚の売上で1位だったが、ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」最終回まで残り1週となった当週も「恋」の各指標の数値は圧倒的水準で高止まりしており、総合でHey!Say!JUMPを上回った

 

12/28公開週1位 星野源「恋」

 

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12/28公開週星野源「恋」が3週連続通算6週目の1位を獲得した。CD売上ではQUARTET NIGHT「God's S.T.A.R.」が約11万枚の売上で1位だったが、ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」最終回を迎えた当週「恋」はMV指標を週間1,701万再生にまで伸ばすなど異次元の人気規模に突入し2位以下に大差をつけ総合1位となった

 

まとめ

 

以上が2016年に公開されたBillboard JAPAN Hot 100週間チャートのうちオリコンと1位が異なる週の振り返りとなる。 当時はまだ知名度が乏しかったビルボードだが、2010年代後半になると知名度が高まり、楽曲人気指標としての権威を確立した。2016年の週間チャートも、最も楽曲人気指標に近い公式なチャートとして、今からでも押さえておきたいところである。

 

(次年2017年のBillboard JAPAN Hot 100週間チャート回顧はこちら↓)

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(前年2015年のBillboard JAPAN Hot 100週間チャート回顧はこちら↓)

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*1:1月まではiTunes売上のみが集計対象だったが、2月からは全国網羅的なダウンロード売上の集計体制を実現させた。

*2:11月までは歌詞表示回数から推計する形での集計だったが、12月からは各サブスクサービスの実数の合算も開始した。