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2018年Billboard JAPAN Hot 100週間チャート回顧

この記事では2018に公開されたBillboard JAPAN Hot 100週間チャートのうち、オリコンと1位が異なった全7週をピックアップして回顧する。

 

Billboard JAPAN Hot 100とは、「社会への浸透度を計る」ことを明確に理念に掲げ、複数の要素も加味して作成されている総合チャートである。2018年の集計対象はCD売上ラジオエアプレイダウンロード、ストリーミング、ルックアップ(PCによるCD読取り数)、MVTwitterの7指標であった。

 

2018年のBillboard JAPAN年間チャートは下記記事内で総括している。

  

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オリコンは長らくCD売上だけのチャートを大々的に発表し続けており、ダウンロード売上などの配信指標の集計を一向に開始しなかったため、楽曲人気チャートとしては一切機能していない。前年にBillboard JAPAN Hot 100が楽曲人気チャートとしての合格点を満たすようになると、両チャートの結果は特に年間チャートにおいて一段と乖離するようになった。

 

しかしビルボードの普及を意識してか、オリコンは当年、それまで一貫してダウンロード売上集計の必要性を否定し続けていた姿勢を覆し、ダウンロード売上チャートを発足させた。この動きは少なからずダウンロード売上の楽曲人気指標としての知名度を高めることに繋がった。ただビルボードのような総合チャートはまだ発足していなかったうえ、CD売上チャートを最前面で取り上げる姿勢に変化はなかった。

 

そのため、本記事で取り上げるBillboard JAPAN Hot 100週間チャート7週の比較対象とするオリコンチャートはCDシングルチャートとする。ただ、オリコンのダウンロードチャートと比較すれば、この7週のうち6週の1位が一致する結果となっている。10年以上に渡り人気が過小評価されていた「ダウンロード売上を主力とした人気曲」にもようやく光が当たり始めたのである。

 

 

 

1/10公開週1位 安室奈美恵「Hero」

 

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1/10公開週の1位は安室奈美恵「Hero」オリコンでは乃木坂46「逃げ水」全国握手会での売上を計上したことに伴い返り咲き1位を果たしたが、その売上は1万枚程度で2位以下とも僅差だったため、ビルボードでは約2万枚を売り上げたB.A.P「HANDS UP」がCD売上1位となった。何れにしてもCD指標の加点は多くなかったため、総合では紅白歌合戦出演効果によるダウンロードとストリーミングの両指標の上昇を主力とした安室奈美恵が1位となった。

 

前年に衝撃の引退発表をした安室奈美恵は2017年の紅白歌合戦の目玉であり、歌唱曲に選ばれた「Hero」も再注目された。2016年の発売当時は週間1位未獲得だったが、引退を惜しむ声は大きく、今回の浮上によりこの曲初の1位を獲得するまでに至った。各指標の数値は配信75万ダウンロード、MV4,000万再生に伸びている。


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3/28公開週1位 米津玄師「Lemon」

 

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3/28公開週米津玄師「Lemon」配信6週目、CD発売2週目にして1位に浮上した。CD売上では祭nine.「HARE晴れカーニバル」が約12万枚の売上で1位だったが、「Lemon」は当週既に累計80万ダウンロードを突破するほどの圧倒的なダウンロード売上を積み重ねていたほか、MVも週間1,000万再生を突破するほどの超特大人気となっており、これらの指標が牽引する形で総合1位となった

 

本曲は最高視聴率13.3%を記録した人気ドラマ「アンナチュラル」主題歌に起用された。他界した祖父への想いをベースに「死」をテーマに作られた本曲はドラマの内容ともリンクし、とてつもない支持を獲得した。各指標の数値は配信300万ダウンロード、MV6.8億再生にまで伸びているが、ダウンロード数は歴代三傑に入る記録であるほか、MV再生数はダントツの国内歴代1位記録である。

 

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なおCD指標では累計60万枚程度に留まっており、年間TOP10入りすらしていない。Billboard JAPAN Hot 100では「Lemon」はこの後週間1位を通算7週獲得するが、オリコンCD売上ランキングでは一度も1位を獲得していない。CDシングル売上は楽曲人気指標として一切機能していないのである。「Lemon」の歴史的人気規模は音楽チャートを見ていなくとも体感可能だったため、この結果によりようやくこの機能不全への理解が進むようになった。


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4/4公開週1位 米津玄師「Lemon」

 

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4/4公開週米津玄師「Lemon」が前週に続き2週連続1位を獲得した。CD売上ではBiSH「PAiNT it BLACK」が約4万枚の売上で1位だったが、「Lemon」は当週も6万ダウンロード、MV800万再生を記録したことからBiSHらを上回り総合1位となった

 

6/27公開週1位 GOT7「THE New Era」

 

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6/27公開週の1位はGOT7「THE New Era」CD売上ではMAG!C☆PRINCE「SUMMER LOVE」が約8万枚の売上で1位だったが、GOT7とは1万枚程度しか差が無く、ルックアップとTwitterの両指標でこの差を覆したGOT7が総合では1位となった。

 

8/29公開週1位 星野源「アイデア

 

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8/29公開週の1位は星野源「アイデアCD売上ではENDRECHERI「one more purple funk... -硬命 katana-」が約7万枚の売上で1位だったが、配信限定シングルとして発売された「アイデア」は初動19万ダウンロード、MV400万再生を突破するほどの勢いとなり、これらの指標が牽引して総合1位となった。累計では配信50万ダウンロード、MV6,000万再生を突破するヒットを記録した。 

 

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本曲はNHK朝の連続テレビ小説半分、青い。」の主題歌に起用された。配信発売前までは、マリンバを用いたイントロや自然と体が踊るリズムで奏でられた1コーラスしか全容が判明していなかったが、フル解禁で判明した2コーラス目はそれとは真逆のネガティブな歌詞や最新鋭の打ち込みを多用したトラックで構成されており、リスナーに驚きを与えた。さらにラスサビ前には初期の楽曲を彷彿とさせる弾き語りパートも挿入されており、まさに星野源の今昔が詰まった楽曲に仕上がっていた。

 

未だにCD売上が重視されていた当時、CDシングル未発売でBillboard JAPAN Hot 100首位を獲得することは極めて稀なことであったが、「アイデア」が結果を出したこともCDから配信へのヒット認識基準の変革に少なからず貢献した。 


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9/5公開週1位 星野源「アイデア

 

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9/5公開週星野源「アイデアが前週に続き2週連続1位を獲得した。CD売上ではA.B.C-Z「JOYしたいキモチ」が約4万枚の売上で1位だったが、「アイデア」は配信2週目の当週もダウンロード指標等で強さを見せ総合1位となった。

 

なお当週「アイデア」に総合ポイントで僅か40点差に迫ったDA PUMPの大ヒット曲「U.S.A.」は当週を含め通算11週2位を獲得したが、週間1位は終ぞ獲得できないままだった。これは「週間チャート単位」で見たときには依然として高CD売上曲が過度に有利なチャート設計になっていることが影響しており、「U.S.A.」も度々高CD売上曲に週間1位を阻まれた。オリコンよりはマシだったとはいえ、この「高人気曲が高CD売上曲に阻まれ週間1位を獲得できない問題」Billboard JAPAN Hot 100のチャート設計上の欠陥として長らく未解決となっており、事態改善は2021年下半期のチャート設計変更まで待たなければならなかった。


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11/28公開週1位 back number「オールドファッション」

 

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11/28公開週の1位はback number「オールドファッション」CD売上では東方神起「Jealous」が約8万枚の売上で1位だったが、「オールドファッション」は配信3週目の当週も4万ダウンロードを記録し3週連続ダウンロード売上1位となっており、そこに当週のCD発売によるCD売上5万枚が加わったことで東方神起を総合で上回った。 

 

「オールドファッション」は最高視聴率13.2%を記録したドラマ「大恋愛~僕を忘れる君と」の主題歌に起用されたラブソングである。相手への想いをback numberらしさ溢れる言葉回しで表現した歌詞や温かみのあるバンドサウンドが支持され、累計は25万ダウンロードを突破するヒットになった。

 

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まとめ

 

以上が2018年に公開されたBillboard JAPAN Hot 100週間チャートのうちオリコンと1位が異なる週の振り返りとなる。 2018年になると楽曲人気指標としてのBillboard JAPAN Hot 100やダウンロード売上、MV再生数の知名度がようやく本格的に普及し始めるようになったが、その普及速度は次年以降もますます高まっていくこととなる。

 

(次年2019年のBillboard JAPAN Hot 100週間チャート回顧はこちら↓)

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(前年2017年のBillboard JAPAN Hot 100週間チャート回顧はこちら↓)

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