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2019年Billboard JAPAN Hot 100週間チャート回顧

この記事では2019に公開されたBillboard JAPAN Hot 100週間チャートのうち、オリコンと1位が異なった全13週をピックアップして回顧する。

 

Billboard JAPAN Hot 100とは、「社会への浸透度を計る」ことを明確に理念に掲げ、複数の要素も加味して作成されている総合チャートである。集計対象は、2019年からは新たにカラオケが集計対象に加わり、CD売上ラジオエアプレイダウンロード、ストリーミング、ルックアップ(PCによるCD読取り数)、MVTwitter、カラオケの8指標であった。

 

2019年のBillboard JAPAN年間チャートは下記記事内で総括している。

  

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オリコンは長らくCD売上だけのチャートを大々的に発表し続けており、ダウンロード売上などの配信指標の集計を一向に開始しなかったことなどから、楽曲人気チャートとしては一切機能していない。2017年にBillboard JAPAN Hot 100が楽曲人気チャートとしての合格点を満たすようになると、両チャートの結果は特に年間チャートにおいて一段と乖離するようになった。

 

しかしこうしたビルボードの動きを意識してか、オリコンは前年、それまで一貫してダウンロード売上集計の必要性を否定し続けていた姿勢を覆し、ダウンロード売上チャートを発足させた。そして当年からはストリーミングランキングも発足させるとともに、ついにCD、ダウンロード、ストリーミングの3指標を集計対象とした合算ランキングも発足させるに至った。

 

これらの動きは少なからずダウンロード売上及びストリーミング再生数の楽曲人気指標としての知名度を高めることに繋がった。しかし、ストリーミングランキングの集計対象の網羅性はビルボードに大きく劣っていたほか、合算ランキングのチャート設計はCD売上を重視したものとなっており、何れも楽曲人気指標として使用できるものではなかった。そのうえ、CD売上チャートを最前面で取り上げる姿勢も変化はしなかった。

 

本記事で取り上げるBillboard JAPAN Hot 100週間チャート13週の比較対象はオリコン合算ランキングとするが、合算ランキングのCD重視設計により、オリコンの合算ランキングとCD売上ランキングの週間上位はほとんど同一の結果になっている。実際、両者で週間1位が異なった週は2019年では僅か1週しかない。そのため、実質的にはビルボード総合チャートとCD売上チャートの比較となる。

 

なお本記事連載シリーズの執筆意図は、音楽チャート設計上、高CD売上曲の陰に隠れてしまう「配信指標を主力とした人気曲」に適切に光を当てることにある。*1

 

 

 

1/2公開週1位 米津玄師「Lemon」

 

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この週は米津玄師「Lemon」直前の紅白歌合戦出場決定報道効果による浮上で39週ぶり通算3週目の1位を獲得した。CD売上ではD/Zeal「THE IDOLM@STER MILLION THE@TER GENERATION 12 D/Zeal」が約7万枚の売上で1位だったが、「Lemon」は当週配信5万ダウンロード、MV691万再生を記録し総合でD/Zealを上回った

 

本曲は最高視聴率13.3%を記録した人気ドラマ「アンナチュラル」主題歌に起用された。他界した祖父への想いをベースに「死」をテーマに作られた本曲はドラマの内容ともリンクし、とてつもない支持を獲得した。各指標の数値は配信300万ダウンロード、MV6.8億再生にまで伸びているが、ダウンロード数は歴代三傑に入る記録であるほか、MV再生数はダントツの国内歴代1位記録である。

 

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なおCD指標では累計60万枚程度に留まっており、年間TOP10入りすらしていない。Billboard JAPAN Hot 100では「Lemon」は通算7週1位を獲得するが、オリコンCD売上ランキングでは一度も1位を獲得していない。CD売上は楽曲人気指標として一切機能していないのである。「Lemon」の歴史的人気規模は音楽チャートを見ていなくとも体感可能だったため、この結果によりようやくこの機能不全への理解が進むようになった。


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1/16公開週1位 米津玄師「Lemon」

 

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この週は米津玄師「Lemon」3週連続通算5週目の1位を獲得した。CD売上ではAimer「I beg you/花びらたちのマーチ/Sailing」が約3万枚の売上で1位で、特に「I beg you」は当週配信でも7万ダウンロードを記録する好調ぶりであったが、紅白歌合戦出演の反響が大きかった「Lemon」は当週も7万ダウンロード、MV1,041万再生を記録しており、Aimerにとっては相手が悪かった。

 

1/23公開週1位 米津玄師「Lemon」

 

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この週も米津玄師「Lemon」が4週連続通算6週目の1位を獲得した。CD売上ではV6「Super Powers/Right Now」が約8万枚の売上で1位だったが、歴史的な勢いを保持していた「Lemon」は当週も5万ダウンロード、MV894万再生を記録し総合でV6を上回った

 

1/30公開週1位 米津玄師「Lemon」

 

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この週も米津玄師「Lemon」が5週連続通算7週目の1位を獲得した。CD売上ではAqours「僕らの走ってきた道は…/Next SPARKLING!!」が約8万枚の売上で1位だったが、歴史的な勢いを保持していた「Lemon」は当週も3万ダウンロード、MV731万再生を記録し総合でAqoursを上回った

 

5/8公開週1位 あいみょんマリーゴールド

 

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この週はあいみょんマリーゴールド登場43週目にして初の1位を獲得した。オリコンでは日向坂46「キュン」全国握手会での売上を計上したことに伴い返り咲き1位を果たしたが、その売上は1万枚程度で2位以下とも僅差だったため、ビルボードではCD発売2週目も約1万枚を売り上げたジャニーズWEST「アメノチハレ」がCD売上1位となった。何れにしてもCD指標の加点は多くなかったため、総合では前年末よりロングヒットを続け当週もMV442万再生、ストリーミング345万再生を記録した「マリーゴールド」が1位となった

 

この曲は2018年8月に発売され、ノンタイアップでありながらも、音楽フェスでの披露を重ねながらストリーミングを中心に懐かしさを感じさせるサウンドが支持を広げていき、年末歌番組での連続的な披露を決定打に大ヒットに至った。そのため2018年よりも2019年に人気のピークを迎えることとなった。

 

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なお当週は令和第一週目のチャートでもあるが、1位となった「マリーゴールド」は国内アーティスト史上初のストリーミング1億再生突破曲となった。新時代の幕開けを告げるかのような週間1位結果である。「マリーゴールド」は各指標の累計数値でも配信75万ダウンロード、MV2.4億再生、ストリーミング3億再生を突破するほどの大ヒットとなった。


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6/12公開週1位 米津玄師「海の幽霊」

 

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この週の1位は米津玄師「海の幽霊」CD売上ではV6「ある日願いが叶ったんだ/All For You」が約9万枚の売上で1位となったが、当週にダウンロード解禁された「海の幽霊」は初動13万ダウンロードを記録し、公開2週目となったMVでも570万再生を記録したことでV6を上回り総合1位となった

 

「海の幽霊」はアニメ映画「海獣の子供」主題歌として制作されており、その美しい世界観が表現されたサウンドやMVが支持される形で配信25万ダウンロード、MV9,000万再生を突破する人気曲となった。


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7/31公開週1位 TWICE「Breakthrough」

 

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この週の1位はTWICE「Breakthrough」CD売上ではSKE48「FRUSTRATION」が約36万枚の売上で1位となり、TWICEは約8万枚差で2位だったが、CD以外の7指標中6指標でTWICEがSKE48を上回ったことで総合では逆転が生じた

 

この曲はクールなサウンドに乗せたセクシーなダンスが魅力となっており、カラフルなステージで踊るMVや、力強く自己主張する歌詞も人気となった。この曲を収録した日本2ndオリジナルアルバム「&TWICE」15万枚をセールスした。


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8/14公開週1位 三代目 J SOUL BROTHERS「SCARLET feat.Afrojack」

 

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この週の1位は三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE「SCARLET feat.Afrojack」CD売上ではBEYOOOOONDS「眼鏡の男の子」が約9万枚の売上で1位となり、三代目 J SOUL BROTHERSは約3万枚差で2位だったが、ダウンロードとストリーミングでCD売上差を埋める形で総合では逆転が生じた

 

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9/18公開週1位 米津玄師「馬と鹿」

 

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この週の1位は米津玄師「馬と鹿」。当週は嵐「BRAVE」と米津玄師のCDシングルが同時発売されたため類稀なハイレベル週となり、CD売上では嵐が約70万枚で1位、米津玄師が43万枚で2位という結果となった。しかしビルボードでは多すぎるCD売上に対し「係数」を掛けて総合ポイント換算点を低くする措置を取っていた。具体的には以下のとおりアナウンスされている。

 

2017年度以降、私たちは各指標のレシオの平均値(半期毎)を基準とし、週間チャートにおける実数値が大きく乖離していると判断した場合、全指標の計算係数を見直し、その乖離をできる限り抑え、なおかつマーケットの占有率とも乖離しないレシオになるよう、独自の計算公式による個別の係数を設定する場合があります。

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「係数」は非公開だが、当時の手元計算では、一週間に30万を超える分のCD売上の反映率を通常の1/10とすると、総合ポイントに近い値が算出できるようになっていた。このため、CD売上差27万枚は実質的に約2.7万枚差にしかならなかった。米津玄師は当週配信でも8万ダウンロードを売り上げていたため、総合でこの差を逆転した。

 

2017年から導入されたこの措置によって、Billboard JAPAN Hot 100はCD売上を稼ぐだけでは年間チャート上位に進出できないチャートになり、特定アーティストが楽曲人気に関係なく年間チャート上位を独占する状況とはならなくなった。こうしてビルボードは楽曲人気チャートとして最低限必要な合格ラインを突破し、その知名度や権威を高めることとなった。

 

「馬と鹿」は最高視聴率13.8%を記録した人気ドラマ「ノーサイド・ゲーム」主題歌として書き下ろされた楽曲。ドラマはラグビーをテーマにした内容になっており、この後に控えていた国内開催のラグビーワールドカップへの機運を高めるものであった。逆境に立ち向かうさまを重厚かつ壮大なサウンドに乗せて歌った本曲は、ワールドカップにおける日本代表の快進撃とともに強い印象を残し、大ヒットを記録。配信100万ダウンロード、MV1.6億再生、ストリーミング5,000万再生を突破した。 


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10/23公開週1位 Official髭男dism「Pretender」

 

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この週はOfficial髭男dism「Pretender」登場27週目にして初の1位を獲得した。CD売上ではONE N' ONLY「Category/My Love」が1位だったが、その売上は6万枚程度と多くなかったため、総合では下半期に渡りロングヒットを続け当週もMV466万再生、ストリーミング593万再生を記録した「Pretender」が1位となった。なお当週は「イエスタデイ」も2位となりOfficial髭男dismのワンツーフィニッシュとなった。

 

「Pretender」は切ないラブソングになっており、印象的な韻を踏むメロディーや共感性の高い歌詞が支持されたことや、タイアップ先の映画「コンフィデンスマンJP -ロマンス編-」が興行収入29億円を記録する人気となったことなどから特大ヒットとなった。現在までの累計は配信100万ダウンロード、ストリーミング5億再生、MV3.2億再生となっており、爆発的な売上と再生数を記録した。

 

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なおCD指標では累計10万枚未満となり、年間TOP100入りすらしていない。Billboard JAPAN Hot 100では「Pretender」は通算7週1位を獲得するが、オリコンCD売上ランキングでは一度も1位を獲得していない。CD売上は楽曲人気指標として一切機能していないのである。


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11/27公開週1位 Official髭男dism「Pretender」

 

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この週はOfficial髭男dism「Pretender」が5週ぶりに返り咲き通算2週目の1位を獲得した。CD売上ではアンジュルム「私を創るのは私/全然起き上がれないSUNDAY」が1位だったが、その売上は8万枚程度と多くなかったため、引き続きロングヒットを続けていた「Pretender」が当週もMV651万再生、ストリーミング584万再生を記録してCD売上差を逆転し総合1位となった。 

 

12/18公開週1位 Official髭男dism「Pretender」

 

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この週はOfficial髭男dism「Pretender」が3週ぶりに返り咲き通算3週目の1位を獲得した。CD売上ではMAG!C☆PRINCE「Try Again」が1位だったが、その売上は7万枚程度と多くなかったため、引き続き各指標で高水準を維持していた「Pretender」が当週もストリーミング539万再生を記録するなどして総合1位となった。 

 

12/25公開週1位 Official髭男dism「Pretender」

 

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この週もOfficial髭男dism「Pretender」が前週に続き2週連続通算4週目の1位を獲得した。CD売上では豆柴の大群「りスタート」が1位だったが、その売上は6万枚程度と多くなかったため、引き続き各指標で高水準を維持していた「Pretender」が当週もMV559万再生、ストリーミング564万再生を記録するなどして総合1位となった。 

 

まとめ

 

以上が2019年に公開されたBillboard JAPAN Hot 100週間チャートのうちオリコンと1位が異なる週の振り返りとなる。 この年はストリーミング指標の普及で新たなヒット認識基準として1億再生が明確に印象づけられ、このヒットを可視化することに成功したビルボード知名度と権威がますます高まった一年であった。2020年以降はいよいよストリーミング時代に本格的に突入していくこととなる。

 

(次年2020年のBillboard JAPAN Hot 100週間チャート回顧はこちら↓)

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(前年2018年のBillboard JAPAN Hot 100週間チャート回顧はこちら↓)

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*1:CD売上指標は楽曲人気指標としては一切使用できなくなっているが、アーティスト人気の濃度を計る目的や、各アーティストがどれほどの利益を生んでいるのかを計る目的としては有用である。