Billion Hits!

ダウンロード売上、ストリーミング再生回数、Billboard JAPAN Hot 100などのデータを通じて国内の楽曲人気動向を把握するブログ

2019年Billboard JAPAN Hot 100週間チャート回顧

この記事では2019に公開されたBillboard JAPAN Hot 100週間チャートのうち、オリコンと1位が異なった全13週をピックアップして回顧する。

 

この一年間の週間1位変遷表は以下のとおり。回顧対象週には色をつけている。

 

 

 

Billboard JAPAN Hot 100とは、「社会への浸透度を計る」ことを明確に理念に掲げ、複数の要素も加味して作成されている総合チャートである。集計対象は、2019年度から新たにカラオケが集計対象に加わっており、CD売上ラジオエアプレイダウンロード、ストリーミング、ルックアップ(PCによるCD読取り数)、MVTwitter、カラオケの8指標であった。

 

2006年以降は、既存のCD購入に取って代わり、新たな音楽の聴き方としてダウンロード購入ストリーミング再生が主流となったため、ヒットチャートであれば後者のデジタル指標群を重視した設計に変わるべきであったが、オリコンをはじめとした日本のヒットチャートの動きは遅かった。結果、この年以降10年以上に渡り「日本音楽ヒットチャートのCD偏重問題」が生じることとなってしまった。

 

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オリコンは長らくCD売上だけのランキングを大々的に発表し続けており、ダウンロード売上などのデジタル指標の集計を一向に開始しなかったが、ビルボードの普及を意識してか、前年にそれまで一貫してダウンロード売上集計の必要性を否定し続けていた姿勢を覆し、ダウンロード売上ランキングを発足させた。そして当年からはストリーミングランキングも発足させるとともに、ついにCD、ダウンロード、ストリーミングの3指標を集計対象とした合算ランキングも発足させるに至った。

 

これらの動きは少なからずダウンロード売上やストリーミング再生回数の楽曲人気指標としての知名度を高めることに繋がった。しかし、合算ランキングのチャート設計はCD売上を重視したものとなっていたうえ、CD売上ランキングを最前面で取り上げる姿勢も変化しなかった。

 

本記事で取り上げるBillboard JAPAN Hot 100週間チャート13週の比較対象はオリコン合算シングルランキングとするが、合算ランキングのCD重視設計により、オリコンの合算ランキングとCD売上ランキングの週間上位はほとんど同一の結果になっている。実際、両者で週間1位が異なった週は2019年では僅か1週しかない。そのため、実質的にはCD売上チャートの比較となる。

 

Billboard JAPAN Hot 100はオリコン合算シングルランキングよりもCD偏重チャート設計が改善されていたため、両者を比較しながら振り返ることにより、デジタル市場で大ヒットしている楽曲の動向を捕捉し、当時のヒット認識を少しでも多面的に捉え直すことが可能となっているのである。

 

(2019年のBillboard JAPAN年間チャートは以下記事参照↓)  

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1/2公開週1位 米津玄師「Lemon」

 

 

1/2公開週米津玄師「Lemon」直前の紅白歌合戦出場決定報道効果による浮上で39週ぶり通算3週目の1位を獲得した。CD売上ではD/Zeal『THE IDOLM@STER MILLION THE@TER GENERATION 12 D/Zeal』が約7万枚の売上で1位だったが、「Lemon」は当週配信5万ダウンロード、MV691万再生を記録し総合でD/Zealを上回った

 

本曲は最高視聴率13%を記録した人気ドラマ『アンナチュラル』主題歌に起用された。他界した祖父への想いをベースに「死」をテーマに作られた本曲はドラマの内容ともリンクし、とてつもない支持を獲得した。各指標の数値はフル配信300万ダウンロード*1、MV9億再生にまで伸びているが、フル配信ダウンロード売上歴代三傑に入る記録であるほか、MV再生回数はダントツ国内史上最多記録である。

 

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なおCD指標では年間TOP10入りすらしていない。Billboard JAPAN Hot 100では「Lemon」は通算7週1位を獲得するが、オリコンCD売上ランキングでは一度も1位を獲得していない。CD売上は楽曲人気指標として一切機能していないのである。「Lemon」の歴史的人気規模は音楽チャートを見ていなくとも体感可能だったため、この結果によりようやくこの機能不全への理解が進むようになった。


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1/16公開週1位 米津玄師「Lemon」

 

 

1/16公開週米津玄師「Lemon」3週連続通算5週目の1位を獲得した。CD売上ではAimer『I beg you/花びらたちのマーチ/Sailing』が約3万枚の売上で1位で、特に「I beg you」は当週配信でも7万ダウンロードを記録する人気を見せていたが、紅白歌合戦出演の反響が大きかった「Lemon」は当週も7万ダウンロード、MV1,041万再生を記録していたため総合で「I beg you」を上回った。

 

1/23公開週1位 米津玄師「Lemon」

 

 

1/23公開週米津玄師「Lemon」が4週連続通算6週目の1位を獲得した。CD売上ではV6『Super Powers/Right Now』が約8万枚の売上で1位だったが、歴史的な勢いを保持していた「Lemon」は当週も5万ダウンロード、MV894万再生を記録し総合でV6を上回った

 

1/30公開週1位 米津玄師「Lemon」

 

 

1/30公開週米津玄師「Lemon」が5週連続通算7週目の1位を獲得した。CD売上ではAqours『僕らの走ってきた道は…/Next SPARKLING!!』が約8万枚の売上で1位だったが、歴史的な勢いを保持していた「Lemon」は当週も3万ダウンロード、MV731万再生を記録し総合でAqoursを上回った

 

5/8公開週1位 あいみょんマリーゴールド

 

 

5/8公開週あいみょんマリーゴールド登場43週目にして初の1位を獲得した。オリコンでは日向坂46「キュン」全国握手会での売上を計上したことに伴い返り咲き1位を果たしたが、2位以下とは僅差だったため、ビルボードではCD発売2週目も約1万枚を売り上げたWEST.「アメノチハレ」がCD売上1位となった。何れにしてもCD指標の加点は多くなかったため、総合では前年末よりロングヒットを続け当週もMV442万再生、ストリーミング345万再生を記録した「マリーゴールド」が1位となった

 

この曲は2018年8月に発売され、ノンタイアップでありながらも、音楽フェスでの披露を重ねながらストリーミングを中心に懐かしさを感じさせるサウンドが支持を広げていき、年末歌番組での連続的な披露を決定打に大ヒットに至った。そのため2018年よりも2019年に人気のピークを迎えることとなった。

 

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なお当週は令和第一週目のチャートでもあるが、1位となった「マリーゴールド」は国内アーティスト史上初のストリーミング1億再生突破曲となった。新時代の幕開けを告げるかのような週間1位結果である。各指標の累計はフル配信75万ダウンロード、MV3億再生、ストリーミング8億再生*2を突破するほどの大ヒットとなった。


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6/12公開週1位 米津玄師「海の幽霊」

 

 

6/12公開週の1位は米津玄師「海の幽霊」CD売上ではV6『ある日願いが叶ったんだ/All For You』が約9万枚の売上で1位となったが、当週にダウンロード解禁された「海の幽霊」は初動13万ダウンロードを記録し、公開2週目となったMVでも570万再生を記録したことでV6を上回り総合1位となった

 

「海の幽霊」はアニメ映画海獣の子供主題歌として制作されており、その美しい世界観が表現されたサウンドやMVが支持される形でフル配信25万ダウンロード、MV1億再生を突破する人気曲となった。


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7/31公開週1位 TWICE「Breakthrough」

 

 

7/31公開週の1位はTWICE「Breakthrough」CD売上ではSKE48「FRUSTRATION」が約36万枚の売上で1位となり、TWICEは約8万枚差で2位だったが、CD以外の7指標中6指標でTWICEがSKE48を上回ったことで総合では逆転が生じた

 

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8/14公開週1位 三代目 J SOUL BROTHERS「SCARLET feat.Afrojack」

 

 

8/14公開週の1位は三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE「SCARLET feat.Afrojack」CD売上ではBEYOOOOONDS「眼鏡の男の子」が約9万枚の売上で1位となり、三代目 J SOUL BROTHERSは約3万枚差で2位だったが、ダウンロードとストリーミングでCD売上差を埋める形で総合では逆転が生じた

 

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9/18公開週1位 米津玄師「馬と鹿」

 

 

9/18公開週の1位は米津玄師「馬と鹿」。当週は嵐「BRAVE」と米津玄師のCDシングルが同時発売されたため類稀なハイレベル週となり、CD売上では嵐が約70万枚で1位、米津玄師が43万枚で2位という結果となった。しかしビルボードでは多すぎるCD売上に対し「係数」を掛けて総合ポイント換算点を低くする措置を取っていた。具体的には次のとおりアナウンスされている

 

2017年度以降、私たちは各指標のレシオの平均値(半期毎)を基準とし、週間チャートにおける実数値が大きく乖離していると判断した場合、全指標の計算係数を見直し、その乖離をできる限り抑え、なおかつマーケットの占有率とも乖離しないレシオになるよう、独自の計算公式による個別の係数を設定する場合があります。

 

「係数」は非公開だが、当時の手元計算では、一週間に30万を超える分のCD売上の反映率を通常の1/10とすると、総合ポイントに近い値が算出できるようになっていた。このため、CD売上差27万枚は実質的に約2.7万枚差にしかならなかった。米津玄師は当週配信でも8万ダウンロードを売り上げていたため、総合でこの差を逆転した。

 

2017年から導入されたこの措置によって、Billboard JAPAN Hot 100はCD売上を稼ぐだけでは年間チャート上位に進出できないチャートになり、特定アーティストが楽曲人気に関係なく年間チャート上位を独占する状況とはならなくなった。こうしてビルボードは楽曲人気チャートとして最低限必要な合格ラインを突破し、その知名度や権威を高めることとなった。

 

「馬と鹿」は最高視聴率13%を記録した人気ドラマノーサイド・ゲーム』主題歌として書き下ろされた楽曲。ドラマはラグビーをテーマにした内容になっており、この後に控えていた国内開催のラグビーワールドカップへの機運を高めるものであった。逆境に立ち向かうさまを重厚かつ壮大なサウンドに乗せて歌った本曲は、ワールドカップにおける日本代表の快進撃とともに強い印象を残した。各指標の累計はフル配信100万ダウンロード、MV2億再生、ストリーミング2億再生を突破した。 


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10/23公開週1位 Official髭男dism「Pretender」

 

 

10/23公開週Official髭男dism「Pretender」登場27週目にして初の1位を獲得した。CD売上ではONE N' ONLY『Category/My Love』が1位だったが、その売上は6万枚程度と多くなかったため、総合では下半期に渡りロングヒットを続け当週もMV466万再生、ストリーミング593万再生を記録した「Pretender」が1位となった。なお当週は「イエスタデイ」も2位となりOfficial髭男dismがワンツーを達成した。

 

「Pretender」は切ないラブソングになっており、印象的な韻を踏むメロディーや共感性の高い歌詞が支持されたことや、タイアップ先の映画『コンフィデンスマンJP -ロマンス編-』興行収入29億円を記録する人気となったことなどから特大ヒットとなった。各指標の累計はフル配信100万ダウンロード、ストリーミング10億再生、MV5億再生を突破している。

 

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なおCD指標では年間TOP100入りすらしていない。Billboard JAPAN Hot 100では「Pretender」は通算7週1位を獲得するが、オリコンCD売上ランキングでは一度も1位を獲得していない。CD売上は楽曲人気指標として一切機能していないのである。


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11/27公開週1位 Official髭男dism「Pretender」

 

 

11/27公開週Official髭男dism「Pretender」が5週ぶりに返り咲き通算2週目の1位を獲得した。CD売上ではアンジュルム『私を創るのは私/全然起き上がれないSUNDAY』が1位だったが、その売上は8万枚程度と多くなかったため、引き続きロングヒットを続けていた「Pretender」が当週もMV651万再生、ストリーミング584万再生を記録してCD売上差を逆転し総合1位となった。 

 

12/18公開週1位 Official髭男dism「Pretender」

 

 

12/18公開週Official髭男dism「Pretender」が3週ぶりに返り咲き通算3週目の1位を獲得した。CD売上ではMAG!C☆PRINCE「Try Again」が1位だったが、その売上は7万枚程度と多くなかったため、引き続き各指標で高水準を維持していた「Pretender」が当週もストリーミング539万再生を記録するなどして総合1位となった。 

 

12/25公開週1位 Official髭男dism「Pretender」

 

 

12/25公開週Official髭男dism「Pretender」が前週に続き2週連続通算4週目の1位を獲得した。CD売上では豆柴の大群「りスタート」が1位だったが、その売上は6万枚程度と多くなかったため、引き続き各指標で高水準を維持していた「Pretender」が当週もMV559万再生、ストリーミング564万再生を記録するなどして総合1位となった。 

 

まとめ

 

以上が2019年に公開されたBillboard JAPAN Hot 100週間チャートのうちオリコンと1位が異なる週の振り返りとなる。

 

この年はストリーミング指標の普及によりストリーミング1億再生が新たな大ヒット認識基準として明確化し、この大ヒットを可視化することに成功したビルボード知名度と権威がますます高まった一年であった。2020年以降はいよいよストリーミング時代に本格的に突入していくこととなる。

 

(次年2020年のBillboard JAPAN Hot 100週間チャート回顧に続く↓)

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(前年2018年のBillboard JAPAN Hot 100週間チャート回顧はこちら↓)

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*1:累計ダウンロード売上は日本レコード協会認定値。以下同様。

*2:累計ストリーミング再生回数はBillboard JAPAN公表値。以下同様。