ポルノグラフィティは1999年に「アポロ」でメジャーデビューした男性ロックバンド。すぐにブレイクを果たし、以降15年以上に渡りヒット曲を大量輩出している。日本レコード協会によれば、これまでにダウンロード売上10万以上を記録した曲は12曲で、認定総ダウンロード売上は275万(歴代41位タイ)となっている。これらのデータをランキング化した表は以下のとおりである。この表をもとにしながら、ポルノグラフィティのヒット史を振り返る。
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1999-2007年
この期間の楽曲を配信開始日順に並べたダウンロード売上データは以下のとおり。
配信市場は2000年代中盤から後半にかけて拡大・定着していったが、2000年代前半までの過去曲をどのタイミングで配信解禁するかはアーティストそれぞれの判断により異なった。ポルノグラフィティの場合は2007年にそれまでの過去楽曲を一斉にフル配信ダウンロード解禁した。そのため、2007年までの楽曲人気は主にCD売上に表れているが、人気が長期に渡り持続している楽曲はフル配信ダウンロード売上でも多くの数字を積み上げている。
ロマンチスト・エゴイスト
ポルノグラフィティのデビュー当時のメンバーはボーカル岡野昭仁(アキヒト)、ギター新藤晴一(ハルイチ)、ベースTamaの3人で、全員広島県因島市出身の同郷であった。数年間の下積みを経た後、プロデューサー本間昭光(ak.homma)のもと1999年9月に「アポロ」でメジャーデビュー。デビュー曲はak.homma作曲のキャッチーなメロディーとハルイチ作詞のインパクトのある歌詞がタイアップやメディア出演を通じて話題となり、CD42万枚を記録。いきなりブレイクを果たした。配信でも2007年の解禁以降の積み上げで25万ダウンロードを突破している。
続いて2000年1月に発売された2ndシングル「ヒトリノ夜」もCD24万枚を記録。CD売上チャートではTOP10入りを逃しているが、これは発売週が歴史的な高売上水準だったという不運が大きく(初動6万枚で週間12位)、ヒットと言うに十分な売上枚数は維持された。配信でも2007年の解禁以降の積み上げで10万ダウンロードを突破している。
3月には「アポロ」「ヒトリノ夜」を収録した1stオリジナルアルバム『ロマンチスト・エゴイスト』を発売し、40万枚を売り上げた。
foo?
2000年7月に発売された3rdシングル「ミュージック・アワー」は「ポカリスエット」のCMソングにも起用された夏うたで、ラジオ番組でリスナーからの投稿を取り上げるパーソナリティーを描いた歌詞も話題となりロングヒット。CD46万枚を売り上げたほか、配信でも2007年の解禁以降の積み上げで25万ダウンロードを記録した。この曲のヒットにより「アポロ」の一発屋イメージが定着する懸念は完全に払拭された。
「ミュージック・アワー」のロングヒットで注目度が更に高まる中、9月に発売された4thシングル「サウダージ」は自身初のCD売上チャート週間1位を獲得。年間でも2000年28位→2001年68位と推移するロングヒットとなり、累計ではCD98万枚を売り上げた。惜しくもミリオンには届いていないが、配信でも2007年の解禁以降の積み上げで50万ダウンロードを記録しており、合計すれば148万となりミリオンを超えている。
配信50万ダウンロード達成は2021年11月となっており、配信解禁された2007年11月から実に14年を経ての到達となった。それだけ長きに渡り支持されている楽曲と言えるが、到達が2021年11月のタイミングとなった理由の一つには、直前の2021年9月に人気YouTubeチャンネルTHE FIRST TAKEに出演し「サウダージ」を披露した反響が大きかったことが挙げられる。
THE FIRST TAKEはアーティストの歌唱を一発撮りで収録した動画を定期的にアップしており、各アーティストの演奏の魅力を存分に引き出すチャンネルとして支持が高い。YouTubeは2010年代以降に本格的に普及した楽曲視聴方法であり、ポルノグラフィティがブレイクした時期より後の世代に親しまれているが、このチャンネルの出演によりその世代に訴求した。この新たな支持層の開拓が「サウダージ」の50万ダウンロード到達を後押ししたと考えられる。
ポルノグラフィティはそれまでYouTubeへのMV公開に消極的であり、公開したとしてもショートバージョンでの公開に留まっていた。この姿勢はYouTubeに親しむ世代への楽曲普及機会の損失を招いていたが、THE FIRST TAKEへの出演を機に過去MVをフルサイズで解禁。話題になったタイミングでのフルMV解禁はそれまでの機会損失を幾分か取り戻すことに繋がった。
ただしライブ映像は2010年代のころより数曲公開されており、この中で「サウダージ」のライブ映像は自己最高となるMV4,000万再生を記録している。このことからも「サウダージ」が自身の代表曲となっていることに疑いはない。
楽曲は別れの後の心情を描いた歌詞がテンポの速いラテン調のサウンドにのせて歌われており、ノリの良さと哀愁を両立させた仕上がりになっている。
12月には5thシングル「サボテン」を発売し、CD47万枚をセールス。これまでのシングル表題曲は全てak.hommaの作曲だったが、本曲はメンバーTamaの作曲である。翌2001年2月にはこれら3枚のヒットシングルを収録した2ndオリジナルアルバム『foo?』を発売し、自身初のミリオンセラーとなる112万枚を売り上げた。
雲をも掴む民
2001年6月には6thシングル「アゲハ蝶」を発売。本曲の歌詞では高嶺の女性に対する叶わぬ恋をする男性の苦悩が描かれており、ラテン調のサウンドがそれを情熱的に盛り立てている。考察性の高い歌詞はメロディーへのハマり具合も秀逸で、ノリの良さも際立ったこの曲は「サウダージ」同様に大ヒット。CD91万枚を売り上げ、年間でも2001年の10位にランクインした。
CD売上は「サウダージ」に惜しくも及ばず自身2位だが、配信売上では「サウダージ」よりも早い2018年2月のタイミングで50万ダウンロードに到達した。このことを以て冒頭に提示したダウンロード売上ランキングでは本曲を1位としている。売上を合計すれば141万となりミリオンを超えている。「サウダージ」と「アゲハ蝶」がポルノグラフィティの代表曲として双璧を成していることは間違いない。
なお本曲はフルMVが制作されていない。MV撮影地にて悪天候が続くなどスケジュールの都合がつかなかったため、ラスサビの1分弱しか完成しなかったのである。
10月には7thシングル「ヴォイス」を発売し、CD34万枚をセールス。2002年3月にはこれらのヒットシングルを収録した3rdオリジナルアルバム『雲をも掴む民』を発売し、49万枚を売り上げた。
WORLDILLIA
2002年5月には9thシングル「Mugen」を発売し、CD25万枚をセールス。2002年FIFAワールドカップNHK放送テーマ曲として親しまれたことでヒットした。2003年2月にはこの曲を収録した4thオリジナルアルバム『WORLDILLIA』を発売し、21万枚を売り上げた。
PORNO GRAFFITTI BEST BLUE'S
2003年9月には12thシングル「メリッサ」を発売。人気アニメ「鋼の錬金術師」主題歌に起用されたこの曲は、週後半の金曜発売だったこともあり初週売上は低かったものの、そこからロングヒットを記録。CD37万枚をセールスし、年間でも2003年34位→2004年66位と推移した。配信でも2007年の解禁以降の積み上げで25万ダウンロードを記録している。ノリの良い曲調、特にインパクト抜群のサビの入りも支持された本曲はアニメファンに限らず幅広く普及した。
本曲は2004年7月に2枚同時発売されたベストアルバムのうち『PORNO GRAFFITTI BEST BLUE'S』に収録されている。本作は105万枚を売り上げ、年間でも2004年の9位にランクインした。
PORNO GRAFFITTI BEST RED'S
「メリッサ」発売から僅か2ヶ月後の2003年11月には13thシングル「愛が呼ぶほうへ」を発売。「メリッサ」とは曲調が正反対の温かみのあるバラードナンバーだったが、「メリッサ」とともにロングヒット。CD29万枚を売り上げ、年間でも2003年87位→2004年47位と推移した。配信でも2007年の解禁以降の積み上げで10万ダウンロードを記録している。ノリの良いアップテンポナンバーのヒットが多かったポルノグラフィティにとってバラードナンバーのヒットは大きな収穫と言えるものであった。
本曲は2004年7月に2枚同時発売されたベストアルバムのうち『PORNO GRAFFITTI BEST RED'S』に収録されている。本作は93万枚を売り上げ、年間でも2004年の10位にランクインした。
THUMPx
2004年からはメンバーのTamaの脱退によりボーカル岡野昭仁とギター新藤晴一による2人体制での活動が始まった。そんな中でも好調な売上は維持され、15thシングル「シスター」がCD24万枚、16thシングル「黄昏ロマンス」がCD13万枚、17thシングル『ネオメロドラマティック/ROLL』がCD22万枚を記録した。これらのヒットシングルを収録した5thオリジナルアルバム『THUMPx』は41万枚を売り上げた。
m-CABI
2005年8月に発売された18thシングル「NaNaNa サマーガール」はCD11万枚をセールス。
同年11月に発売された19thシングル『ジョバイロ/DON'T CALL ME CRAZY』はCD19万枚をセールス。このうち1曲目の「ジョバイロ」は自身が得意とするラテン系ナンバーになっており、配信でも2007年の解禁以降の積み上げで10万ダウンロードを記録する人気となった。
2006年6月に発売された20thシングル「ハネウマライダー」はCD20万枚をセールス。配信でも2007年の解禁以降の積み上げでフル配信25万ダウンロードを突破した。さらにタイムリーに配信解禁された切り売り販売でも自身最速で着うた50万ダウンロードを突破した。こうした記録から、本曲が2000年代後半以降の楽曲では頭一つ抜けた人気曲となっていることが窺える。
本曲は疾走感が際立つ爽やかなロックナンバーで、歌詞も若い世代が人生を駆け抜けるさまが勢い良く表現されている。「ミュージック・アワー」「サウダージ」以来となる「ポカリスエット」CMソングのタイアップも付いており、新たな夏うたの代表曲としても普及した。
2006年10月には21stシングル「Winding Road」を発売し、CD14万枚をセールス。11月にはこれらのヒットシングルを収録した6thオリジナルアルバム『m-CABI』を発売し、29万枚を売り上げた。
ポルノグラフィティ
2007年7月には22ndシングル「リンク」を発売し、CD11万枚をセールス。翌8月には7thオリジナルアルバム『ポルノグラフィティ』を発売し、18万枚を売り上げた。
2008年以降
2008年以降の楽曲を配信開始日順に並べたダウンロード売上データは以下のとおり。この頃になると、それまでak.hommaの作曲が多かったシングル表題曲をメンバー2人が作曲するようになるなど、メンバーの楽曲制作への関与量が増加し、音楽活動の充実を見せていく。また、音楽を聴く環境が大きく変わり、配信市場の普及と定着によりCD売上よりもダウンロード売上の方が多くなるケースが増えていった。
2008年は5枚ものシングルをリリースする精力的な活動を展開。このうち「あなたがここにいたら」「Love, too Death, too」の2曲はBillboard JAPAN Hot 100の週間1位も獲得した。
この2曲は2008年10月に同時発売された2枚のベストアルバム『PORNO GRAFFITTI BEST ACE』『PRONO GRAFFITTI BEST JOKER』に収録されている。アルバムはそれぞれ15万枚、14万枚を売り上げた。
また、12月に発売した27thシングル「今宵、月が見えずとも」は人気アニメ映画「劇場版BLEACH Fade to Black 君の名を呼ぶ」主題歌に起用されたこともあって普及し、CD14万枚をセールスした。なおCDシングル売上10万超えは今作が最後となっている。ただし既述のとおり配信では以降も10万ダウンロード超えを果たした作品を輩出している。
「今宵、月が見えずとも」は2010年3月に発売された8thオリジナルアルバム『∠TRIGGER』に収録されている。本作は13万枚を売り上げた。
2011年2月には32ndシングル表題曲「EXIT」を配信で先行発売し、10万ダウンロードを記録。最高視聴率12.3%を記録したドラマ「大切なことはすべて君が教えてくれた」の主題歌として普及した。本曲はサビでの岡野昭仁の切ない叫びのようなボーカルが聴きどころのミディアムバラード。また、本曲ではak.hommaが久々に作曲に関与(新藤晴一との共作)しているが、現時点でこれがak.hommaが作曲に関与した最後の楽曲になっている。
2013年にはデビュー15周年を記念したベストアルバム『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary "ALL TIME SINGLES"』を発売し、20万枚をセールス。Billboard JAPAN Top Albums Salesの年間でも2013年63位→2014年38位と推移するロングヒットとなった。
2015年4月には42ndシングル「オー!リバル」を発売。この曲は興行収入44億円を記録した人気アニメ映画「名探偵コナン 業火の向日葵」の主題歌。この映画では主人公の探偵江戸川コナンとそのライバル怪盗キッドの対決が描かれているが、楽曲もそれに合わせてこのライバル関係を歌詞のテーマにしているほか、映画の設定に沿って曲調も自身の得意とするラテン調になっている。こうした要素が人気を呼び、本曲は配信で25万ダウンロードを超え、2人体制となって以降の楽曲では「ハネウマライダー」に並ぶ自己最高タイ、2010年代以降の楽曲では自身最大の売上を記録した。
2016年5月には43rdシングル「THE DAY」を発売し、10万ダウンロードを記録。人気アニメ「僕のヒーローアカデミア」の初代オープニングテーマである。このアニメはヒーローになる才能に恵まれなかった主人公が、それでもヒーローになることへの強い憧れと信念により未来を切り拓くストーリーだが、本曲の歌詞にその世界観が秀逸に落とし込まれており、テンポの速いロックサウンドと合わせて前向きなエネルギーを有した仕上がりになっている。
まとめ
以上まで見てきたとおりポルノグラフィティはデビューから15年以上に渡ってヒット曲を大量輩出しており、その人気は2000年代まではCD、2010年代からはダウンロード売上で把握することができた。2020年代に入ってからもYouTubeでのフルMV公開やTHE FIRST TAKEへの出演など積極的な訴求が続いており、今後の更なる活躍にも期待がかかる。
ここで紹介したヒット曲を手っ取り早く入手するには、2013年に発売されたベストアルバム『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary "ALL TIME SINGLES"』がおすすめ。
この記事で紹介したダウンロードデータは日本レコード協会HP内の下記サイトで検索することができる。新たな発見の宝庫なので、時間があれば好きな曲やアーティストのダウンロード数を検索してみることをおすすめする。