MISIAは1998年に「つつみ込むように…」でデビューした女性ソロアーティスト。すぐに大ブレイクを果たし、以降20年以上に渡り存在感を発揮し続けている。
MISIAは活躍期間が長く、その間音楽業界もダイナミックな変化を複数回遂げているため、楽曲人気を計るうえで見るべき指標は一つではない。最も有名な記録はCD売上だが、2000年代以降の主要楽曲人気指標であるダウンロード売上やストリーミング再生回数も見なければ人気規模を十分に把握できない楽曲もあるため注意しなければならない。
よってここではCD売上に比べ認知度が低いデジタル指標のデータを強調しながら、MISIAのヒット史を振り返る。当ブログ独自の計算式により作成した、MISIAのデジタル人気楽曲ランキングは以下のとおりである。

(ランキング作成方法および歴代デジタルヒット曲ランキングは以下記事参照↓)
1998年-2001年
MISIAがデビューした1998年はCD市場全盛期であり、当時の楽曲人気指標の主流はCD売上だった。したがって、デビュー初期の楽曲人気を把握するには、CD売上を中心に見ることになる。一方で2000年代に入ると、デジタル市場でも人気が継続している初期楽曲が売上や再生回数を積み上げている。
なおCD売上も含む各時代の楽曲人気指標を総合的に考慮した人気楽曲ランキングTOP5は以下のとおりとなる。

Mother Father Brother Sister
1998年1月に発売されたデビュー曲「つつみ込むように…」も特に人気が継続している楽曲の一つである。本曲はまだ当時の日本では珍しかったR&B調の楽曲だったが、全編日本語詞で構成した歌詞やリズム感が親しみやすさを有しており、MISIAの歌唱力がそれを際立たせていたことで、クラブ・シーンを中心にして支持を広げていき、デビュー曲にしてCD67万枚*1、フル配信10万ダウンロードを売り上げた。
これはR&Bという新しい音楽文化をメジャーシーンに昇華させた衝撃のデビューであった。5オクターブの音域を存分に見せつけた冒頭のホイッスルボイスも、そのインパクトを象徴する圧巻の歌唱である。本曲の存在感は20年以上に渡り維持されており、最近では2018年の『NHK紅白歌合戦』でこの曲が事前予告なしにサプライズ歌唱され、大きな反響を呼んだ。
この曲がヒットしている最中の5月には2ndシングル「陽のあたる場所」を発売し、こちらは22万枚を売り上げた。なお本曲では8cmCDでの発売はなく、12cmサイズのみでの発売であった。
このヒットシングル2曲を引っ提げて6月には1stオリジナルアルバム『Mother Father Brother Sister』を発売。注目度の高まりはこのアルバムセールスの爆発を呼び、いきなり258万枚*2を記録する大ヒットとなった。アルバム曲の中では「キスして抱きしめて」が特に人気となり、2003年10月に配信解禁されると、そこからの息の長いセールスの積み上げで2015年11月にフル配信10万ダウンロードを突破した。これはCDシングル売上だけを見ていては気づけない楽曲人気である。
LOVE IS THE MESSAGE
1999年4月には3rdシングル「BELIEVE」を発売し、34万枚*3を売り上げた。
11月には4thシングル「忘れない日々」と5thシングル「sweetness」を同時発売し、前者が40万枚、後者が22万枚をセールス。複数のCMタイアップが付いていた「忘れない日々」の方が好調な売上となった。
2000年元旦にはこれら3枚のヒットシングルを収録した2ndオリジナルアルバム『LOVE IS THE MESSAGE』を発売し、229万枚を売り上げた。
MARVELOUS ~「Everything」~
続いて7月には6thシングル「Escape」を発売し、25万枚を記録。
そして10月には大ヒット曲が誕生した。7thシングルとして発売された「Everything」である。本曲は最高視聴率34%を記録した特大ヒットドラマ『やまとなでしこ』主題歌に起用されたことで人気が爆発し、188万枚*4をセールス。CDシングル売上では自身最多記録となり、サウンドスキャン年間シングルチャートでは2000年の3位を記録した。
この大人気は当時だけに留まらなかった。2000年代以降普及したデジタル市場でも順次本曲のリリースが実現していくと、そこからの積み上げで各指標の累計はフル配信50万ダウンロード、ストリーミング1.1億再生、MV9,000万再生を突破するに至っている。
ここまでの特大人気となったことにはもちろんドラマタイアップ効果も大きいが、これまでのヒット曲で見せていた高音域を抑えて常人でもカラオケを楽しめる音域となっていたことで親しみやすさが一層増していたことや、強い愛を描いた歌詞が時代を選ばない普遍性を有していたこと、それがMISIAの歌唱で説得力を持って表現されていたことが挙げられる。
翌2001年元旦にはDREAMS COME TRUEとのコラボが実現。MISIA+DCT名義で8thシングル「I miss you 〜時を越えて〜」を発売し、43万枚を売り上げた。
4月にはこれらのヒットシングルを収録した3rdオリジナルアルバム『MARVELOUS』を発売し、163万枚を売り上げた。
2002年-2009年
2002年からは所属レコード会社を移籍。3月には自身初のベストアルバム『MISIA GREATEST HITS』を発売し、185万枚を売り上げた。このベストアルバムは移籍前のレコード会社BMG JAPANから発売されており、所謂移籍に伴うベストアルバムである。
8月には10thシングル「眠れぬ夜は君のせい」を発売。表題曲は最高視聴率14%を記録したドラマ『恋愛偏差値』主題歌に起用されたことで人気が広がり、32万枚をセールス。それだけでなく、デジタル指標でも徐々に売上が積み上がり、発売14年1ヶ月後の2016年9月になってフル配信10万ダウンロードを突破するに至っている。
2007年7月には17thシングル『ANY LOVE』を発売。本作のc/wに収録されていた「そばにいて...」は松嶋菜々子も出演するコーセー『雪肌精』CMソングに起用されたこともあり、フル配信10万ダウンロードを突破する人気となった。なお本作から所属レコード会社をBMG JAPANに戻している。
「逢いたくていま」
そして2009年11月には再び大ヒット曲が誕生した。23rdシングル表題曲として発売した「逢いたくていま」である。この曲は最高視聴率25%を記録したドラマ『JIN-仁-』の主題歌に起用されたことで人気が広がり、フル配信100万ダウンロード、着うた50万ダウンロードを達成した。ダウンロード売上では自身最多記録となる。
フル配信ダウンロード売上推移は以下のとおり。
- 配信開始から3週間で10万ダウンロード突破
- 3ヶ月後の2010年2月に25万ダウンロード
- 4年2ヶ月後の2014年1月に75万ダウンロード
- 配信開始から9年2ヶ月後の2019年1月にミリオン達成
発売1ヶ月足らずで10万を突破する勢いはこれまでにないダウンロード売上ペースであり、CD売上で考えても、最後に10万枚を超えた「眠れぬ夜は君のせい」以来のこととなった。以降も長きに渡り支持が続いた結果、売上が積み上がり続け、2014年1月には75万ダウンロードを突破する。
ダメ押しは2018年末で、この年の『日本レコード大賞』最優秀歌唱賞を受賞したことで同番組に出演し、この年のヒット曲「アイノカタチ feat. HIDE (GReeeeN)」とともに「逢いたくていま」も披露。この際の圧巻の歌唱が話題となったことでダウンロード売上を伸ばし、2019年1月のミリオン突破に至った。
ここまで息の長い大人気となったことには、大切な人との別れを描いた歌詞がドラマの内容にマッチしていたことのほか、その悲しみがサビのロングトーンをはじめとした各所の歌唱で表現されていたことが多くの感動を誘ったことが挙げられる。
なお本作のCDシングル売上は前後作品比では好調だったとはいえ僅か4万枚であり、CDシングル売上の楽曲人気指標としての機能はこの頃既にほとんど消失していたことが分かる。前述のとおりMISIAのCDシングル10万枚超えは「眠れぬ夜は君のせい」が最後であるが、既にこの頃音楽の聴き方はCD市場からデジタル市場に相当程度移行しており、MISIAもこの後デジタル市場で楽曲人気を示していくことになる。
2010年以降
2014年1月には30thシングル「僕はペガサス 君はポラリス」をデジタル先行リリース。本曲は最高視聴率18%を記録したドラマ『S -最後の警官-』の主題歌に起用されたことで人気が普及し、フル配信10万ダウンロードを突破した。
2015年11月には33rdシングル「オルフェンズの涙」を発売。本曲はアニメ『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』のエンディングテーマに起用された。これまでドラマタイアップを中心にヒットを出してきたMISIAだったが、このアニメタイアップにより新たな支持領域が開拓され、フル配信10万ダウンロードを突破するヒットとなった。この年の『NHK紅白歌合戦』に出場してこの曲を披露したことも楽曲の普及を後押しした。
「アイノカタチ」
2018年7月にはまたも大ヒット曲が生み出された。35thシングル表題曲としてデジタル先行リリースした「アイノカタチ feat.HIDE(GReeeeN)」である。本曲は最高視聴率19%を記録したドラマ『義母と娘のブルース』主題歌に起用されたことで人気が普及し、フル配信75万ダウンロード、ストリーミング3.0億再生、MV1.0億再生*5を記録した。この時期は音楽の聴き方がダウンロード市場からストリーミング市場へ移行しつつあったが、そのストリーミング・MV再生回数では自身最多記録を樹立している。
本曲はGReeeeNから楽曲提供を受けたことでも話題となり、コーラスにHIDEも参加している。ドラマにもマッチした温かい愛を描いた歌詞がMISIAの優しい歌唱で表現されていたことで2010年代の自身の楽曲では突出したヒットとなった。2018年から連続出場している『NHK紅白歌合戦』でもこの曲が頻繁に歌唱曲に選ばれており、こうしたTV出演の増加も楽曲の普及を後押ししている。
MISIA - アイノカタチ feat.HIDE(GReeeeN)(Lyric Ver.)
まとめ
ここまで見てきたとおり、MISIAは1998年に19歳でデビューして以降20年以上に渡り活躍を続けている。TV番組で歌唱を披露することは2012年に『NHK紅白歌合戦』に初出場するまで一切なかったが、近年では徐々に出演機会を増やし始め、その圧倒的な歌唱表現力を再認識する機会も増えてきている。社会貢献活動も活発に行っており、今後も多岐に渡る活躍の一層の可視化が期待される。
ここで紹介したヒット曲を手元に所有したい場合は、2023年に発売されたベストアルバム『MISIA THE GREAT HOPE BEST』がおすすめ。
この記事で紹介したデータのうちストリーミング再生回数やダウンロード売上はBillboard JAPANの公式サイトや日本レコード協会の公式サイトから検索することができる。新たな発見の宝庫なので、時間があれば好きな曲やアーティストのデータを検索してみることをお勧めする。
*1:累計シングル売上は、2012年オリコン・リサーチ社出版『SINGLE CHART-BOOK COMPLETE EDITION 1968~2010』p.745記載値を引用し、1万枚未満切り捨て表示。以下同様。なお「つつみ込むように…」は8cmCDと12cmCDの両形態で発売されていたが、当時は別々に売上が集計され、8cmCDが40万枚、12cmCDが26万枚となっている。
*2:累計アルバム売上は、2006年オリコン・リサーチ社出版『ALBUM CHART-BOOK COMPLETE EDITION 1970~2005』p.621記載値を引用し、1万枚未満切り捨て表示。以下同様。
*3:本作は8cmCDと12cmCDの両形態で発売されたが、8cmCDが6万枚、12cmCDが28万枚となり、8cmCDの方が売れた1stシングルとは逆に12cmCDの方が圧倒的に高いセールスとなった。この後徐々に8cmCDは時代の流れとともに姿を消すことになる。
*4:アナログ盤とCDの売上を合算
*5:MV再生回数はLive Videoの視聴回数を参照
