Billion Hits!

フル配信ダウンロード売上、MV再生回数、ストリーミング再生回数、Billboard JAPANランキングデータなどを通じて国内の人気楽曲を把握するブログ

BTSの人気曲【ストリーミング再生回数ランキング】

BTS防弾少年団は2014年に「No More Dream (Japanese Ver.)」で日本デビューした韓国の男性7人組ダンス&ボーカルグループ。世界規模で着実に人気を積み上げ、2020年には日本でも大ブレイクを果たし、その後も現在進行形でヒット曲を大量輩出している。これまでにストリーミング再生数3,000万以上を記録した曲は42曲(歴代1位)で、認定総再生数は43.9億(歴代3位)となっている。これらのデータをランキング化した表は以下のとおりである。この表をもとにしながら、BTSのヒット史を振り返る。

 

 

上記の他、メンバーのソロ活動でも以下のデータが記録されている。

 

 

  

なおこの記事では「日本国内人気となっているBTS楽曲は何か」に焦点を当てるため、CDシングル売上枚数及びMV再生回数データには言及しない。CDシングル売上枚数は2011年以降、市場縮小と各種商法の普及により、BTSに限らず誰であっても楽曲人気指標として全く機能していないため、楽曲人気を計る目的で参照するデータとしては不適切である*1YouTubeのMV再生回数データは海外からの再生回数も含まれており、BTSなどの海外アーティストのMVは海外からのアクセスが過半を占める場合がほとんどであるため、日本国内に限った人気規模を計る目的上、調査対象から外した。

 

ここで取り上げるストリーミング再生回数データは全て、Billboard JAPAN日本レコード協会によって認定された、日本国内の再生回数を集計したデータである。詳しいランキング作成方法および各種歴代ランキングは以下記事で解説している。*2

 

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デビュー~2016年

 

この時期の楽曲のストリーミング認定は下表のとおり。「I NEED U」「DOPE」「RUN」「Burning Up (FIRE)」「Save ME」「Blood Sweat & Tears」の6曲が5,000万再生を突破している。なお表中一部楽曲の「配信開始日」は2020年2月22日となっているが、これは日本での所属レーベルの移籍に関係した配信一時停止措置が解除された再配信日である。本認定は移籍後のレーベルであるユニバーサルがRIAJに申請している関係でこのような表記となったと思われる。

 

 

BTSは2013年に韓国の芸能事務所Big Hit Entertainment(現 BIGHIT MUSIC)から韓国デビューを果たした。Big Hit Entertainmentは音楽プロデューサーパン・シヒョクが韓国最大芸能事務所であるJYPエンターテインメントから独立して立ち上げた音楽プロダクションである。BTSはパン・シヒョクが開催したオーディションで選ばれた7人によって結成された。

 

BTSはデビュー年に韓国の主要な賞レースで新人賞を受賞こそしたものの、所属事務所の規模がまだ大きくなかったことなどから、当初から絶大な人気を誇っていたわけではなく、韓国内では中堅どころのポジションに収まっていた。

 

そんな中でBTS陣営が注力した戦略がSNSの活用である。特に動画コンテンツのSNS投稿量は非常に多く、その種類はMVやライブ映像に限らず、ライブ前後の模様やメンバーが仲良く交流する様子など多岐に渡っている。大きくない所属事務所ならではの費用もさほどかからないこの戦略でBTSは自身の存在感を高めると共にARMYと呼ばれるファンとの距離も縮めていった。忠誠心が高まったARMYによる自主的な広報活動もBTS人気拡大を促した。

 

並行して楽曲やダンスパフォーマンスにも磨きをかけた。2015年にはそれまでのヒップホップを主体とした音楽を進化させ、よりメロディアスに、かつストーリー性を強く持たせた楽曲を展開し人気を拡大させていった。2016年末には既に韓国内でトップアイドルの地位を確立させた。*3

 

2010年代前半の東方神起KARA少女時代の活躍で韓国文化に親しみを深めていた日本でも韓国内のBTS人気が徐々に伝播し、日本4thシングル「FOR YOU」Billboard JAPAN Hot 100週間1位も獲得した。これは個別握手会で稼がれたCD売上を主力とした結果であるため楽曲人気の証拠にはならないが、既に日本国内のBTS人気もヒットチャート上位に進出するほど高濃度になっていた。

 

2017年~2020年上半期

 

2017年からは世界進出を見据えた活動を本格化。グループ名の通称を従来の防弾少年団からローマ字表記の頭文字を取ったBTSに統一した。この年から世界規模で人気を拡大させていったBTSは日本でも多くの楽曲が支持されるようになる。なお2017年から日本での所属レーベルをユニバーサルに移籍している。

 

2017年から2020年初め頃までの楽曲を配信開始日順に並べたストリーミング再生回数データは以下のとおり。

 

 

2017年2月に配信された「Spring Day」「Not Today」は何れも5,000万再生を突破している。この2曲は前年に発売された韓国2ndオリジナルアルバム『WINGS』のリパッケージアルバム『YOU NEVER WALK ALONE』の収録曲である。

 

3月には『WINGS』のタイトルナンバー「Blood Sweat & Tears」を日本語詞にした「血、汗、涙 (Japanese ver.)」を日本7thシングルとしてCD発売し、個別握手会で稼がれたCD売上を主力とする形でBillboard JAPAN Hot 100週間1位を獲得した。当時は楽曲人気の証拠がなかったが、2021年10月になってストリーミング3,000万再生を突破。継続的に楽曲が聴かれていることが証明された。

 

2017年9月には韓国5thミニアルバム『LOVE YOURSELF 承 'Her'』を発売。収録曲のうち「DNA」1億再生「Best Of Me」「MIC Drop」「Go Go」5,000万再生を記録した。

 

このうちリード曲としてプッシュされた「DNA」「MIC Drop」の2曲は日本語バージョンも制作されており、日本で『MIC Drop/DNA/Crystal Snow』のトリプルA面シングルのうち2曲としてCD化もされた。Billboard JAPAN Hot 100では、個別握手会で稼がれたCD売上のポイントが1曲目の「MIC Drop」に加算され、この曲が週間1位を獲得。しかしストリーミング再生回数を見れば楽曲人気は明らかに「DNA」が「MIC Drop」を上回っており、Billboard JAPAN Hot 100でも「DNA」はCD売上ポイントがないながらも週間5位、登場週数81週のロングヒットとなった(「MIC Drop」は登場週数19週)。ストリーミングでも「DNA (Japanese ver.)」3,000万再生を突破している。

 

この時期は女性K-POPグループTWICEの楽曲「TT」が日本で人気となっており、日韓関係の悪化で一時沈静化していたK-POPブームが再び到来していた。その追い風も受けたBTSは年末のMステスーパーライブに初出演を果たし、「DNA」の日本語バージョンを披露した。

 

「DNA」は冒頭の口笛も印象深い軽快なEDMナンバー。アルバムタイトルが示すとおり「LOVE YOURSELF」というコンセプトの起承転結のうちの「承」に位置づけられた楽曲である。運命的な恋に落ちた少年の強い想いを描いた歌詞やそれを表現するダンス、カラフルな衣装に身を包んだMVなどが人気となった。


BTS (방탄소년단) 'DNA' Official MV
 

なお、このトリプルA面シングル3曲目に収録されている「Crystal Snow」は日本オリジナル曲。こちらも5,000万再生を突破する人気となっている。

 

2018年4月には「DNA」日本語バージョンや「Crystal Snow」などを収録した日本3rdオリジナルアルバム『FACE YOURSELF』を発売し、33万枚をセールスBillboard JAPAN Hot Albumsの年間でも2018年の9位を獲得した。アルバム曲の中では、日本オリジナル曲「Let Go」「Don't Leave Me」5,000万再生を突破している。

 

5月には韓国3rdオリジナルアルバム『LOVE YOURSELF 轉 'Tear'』を発売。日本では19万枚を売り上げるヒットとなった。日本で特に人気となったのはリード曲「FAKE LOVE」で、2018年5月18日付の日本Spotifyデイリーチャートでは異例の初登場1位デビューを飾っている 。総合ストリーミングチャートBillboard JAPAN Streaming Songsでも自身初となる週間1位3週連続で獲得。累計では1億再生を突破した。本曲は相手に好かれるために自分を偽る主人公の苦悩が歌詞に綴られている。


BTS (방탄소년단) 'FAKE LOVE' Official MV

 

Billboard JAPAN Hot 100では、11月に日本語バージョンがCDシングルとして発売された際に個別握手会で稼がれたCD売上を主力として週間1位を獲得している。また、「FAKE LOVE」の他、「Anpanman」「Magic Shop」5,000万再生を突破している。

 

8月には韓国4thリパッケージアルバム『LOVE YOURSELF 結 'Answer'』を発売。本作は「LOVE YOURSELF」シリーズの完結作であり、『LOVE YOURSELF 承 'Her'』と『LOVE YOURSELF 轉 'Tear'』から収録曲を抜粋し更に新曲を追加した内容となっている。日本では22万枚を売り上げるヒットとなった。新曲の中ではリード曲「IDOL」1億再生(RIAJ)を突破しているほか、「Answer: Love Myself」「I'm Fine」Jung Kookのソロ曲Euphoria5,000万再生を突破している。

 

2019年4月には韓国6thミニアルバム『MAP OF THE SOUL : PERSONA』を発売。新シリーズ「MAP OF THE SOUL」の幕開けを告げるアルバムであり、本シリーズはユング心理学の「心の地図」をベースに自らの心の成長過程を描くものとなっている。日本では33万枚を売り上げるヒットとなった。

 

収録曲のうち特に人気となったのは「Boy With Luv (feat. Halsey)」。メンバーが社会的成功を収め大きな存在となったが故のトラブルや苦悩・葛藤を乗り越え自己の拠り所を見つけるさまが少年の恋に投影されている本曲は、ミュージカル調のMVと併せて支持され2.2億再生を突破した。


BTS (방탄소년단) '작은 것들을 위한 시 (Boy With Luv) (feat. Halsey)' Official MV

 

また、「Boy With Luv (feat. Halsey)」以外にも、「Mikrokosmos」「Make It Right」5,000万再生「Dionysus」3,000万再生を突破する人気となっている。

 

7月には日本10thシングル『Lights/Boy With Luv -Japanese ver.-』を発売。両A面1曲目の「Lights」は日本オリジナル曲で、BTSとARMYの絆を光に例え、心が弱ったときにお互いが光を照らし支え合っていることを歌っている。Billboard JAPAN Hot 100では個別握手会で稼がれたCD売上を主力に週間1位を獲得。この時点では楽曲人気の証拠は何も無かったが、翌年以降も日本での大ブレイクとともに愛聴され続け、発売から2年1ヶ月後の2021年8月に1億再生を突破した。


BTS 'Lights' Official MV

 

両A面2曲目の「Boy With Luv -Japanese ver.-」は文字通り上述した「Boy With Luv」の日本語バージョンで、こちらも原曲とは別に5,000万再生を突破している。

 

2020年2月には韓国4thアルバム『MAP OF THE SOUL : 7』を発売。日本では45万枚を売り上げたBillboard JAPAN Hot Albumsの年間では2020年の10位を獲得している。収録曲の中では、リード曲「ON」及びV, JIMINのユニットによる楽曲「Friends」の2曲が5,000万再生「Black Swan」3,000万再生を突破している。

 

2020年下半期~

 

2020年8月にはついにBillboard週間1位を獲得するなど、世界規模での存在感を確立。日本でもこの動向が注目され大ブレイクに至った。2020年中盤以降の楽曲を配信開始日順に並べたストリーミング再生回数データは以下のとおり。

 

 

2020年6月には日本オリジナル曲「Stay Gold」を配信限定発売。この曲は2020年4月放送開始予定だった田中圭主演ドラマ「らせんの迷宮〜DNA科学捜査〜」のタイアップが付いたものの、コロナ禍へ突入した影響を受けてドラマの放送開始が1年半後の2021年10月に延期されるという憂き目に遭い、実質ノンタイアップのような状況となった。それでも「良いことばかりではない世の中にあっても、いつまでも輝きを失わないでほしい」というメッセージを持つ本曲は2.1億再生を突破するほど支持された。


BTS (방탄소년단) 'Stay Gold' Official MV
 

7月には日本4thアルバム『MAP OF THE SOUL : 7〜THE JOURNEY〜』を発売し、65万枚をセールスBillboard JAPAN Hot Albumsの年間では2020年の4位を獲得した。本作には「Stay Gold」や「FAKE LOVE」以降の楽曲の日本語バージョンなどが収録されている。アルバム曲の中では、映画「きみの瞳が問いかけている」主題歌に起用された日本オリジナル曲「Your eyes tell」1億再生(RIAJ)を突破している。

 

そして8月にはシングル「Dynamite」を全世界に配信。この曲は、新型コロナウィルスの流行で落ち込みがちな世相を元気づけてくれるようなポジティブなダンスナンバーとして人気を博した。自身初の全英詩曲であるこの曲はアメリカでも受け入れられ、Billboard Hot 100でアジア圏のアーティストとしては坂本九以来57年ぶりの週間1位を獲得した。日本でもこの快挙が大きく話題になったことで完全に特大ヒットの軌道に乗り、当時の歴代最速記録となる初登場から所要11週という早さで1億再生を突破した。

 

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その後も「THE MUSIC DAY」「日本レコード大賞」への出演が話題となったほか、多くの踊ってみた動画が投稿されるなどUGCも盛り上がりを見せたことでロングヒットとなり、累計では8.7億再生を記録している。Billboard JAPAN Hot 100の年間では2020年18位→2021年2位→2022年14位→2023年86位と推移している。

 

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BTS (방탄소년단) 'Dynamite' Official MV

 

11月には「Dynamite」も収録した韓国5thアルバム『BE』を発売し、33万枚をセールスBillboard JAPAN Hot Albumsでは2021年の年間7位を獲得した。

 

収録曲の中では、リード曲「Life Goes On」1億再生を突破している。本曲は「Dynamite」とは対照的に、新型コロナウィルスの流行による世界の変容がもたらす悲しみに焦点を当てている。そんな中でも日々が続いていくこと、一筋の光に向かって進んでいくことを歌っており、悲しさと暖かさが同居したバラードナンバーになっている。


BTS (방탄소년단) 'Life Goes On' Official MV

 

他、「Blue & Grey」3,000万再生を突破している。

 

2021年4月には日本オリジナル曲「Film out」を配信。本曲は坂口健太郎主演の映画「劇場版シグナル 長期未解決事件捜査班」の主題歌に起用されたほか、back numberが楽曲提供・プロデュースを行ったことでも話題となり、1億再生を突破した。楽曲は失恋を歌うメロディアスなバラードナンバーで、壮大なアレンジも相まってBTSの各メンバーの歌声の美しさが映える仕上がりになっている。


BTS (방탄소년단) 'Film out' Official MV

 

なお「Film out」は6月に発売された日本ベストアルバムBTS, THE BEST』に収録される形でCD化された。「Dynamite」も(CD限定ながら)収録しているこのベストアルバムはBTSの日本での歴史を辿れる作品として高需要を示し、Billboard JAPAN Hot Albumsの年間では2021年1位→2022年56位と推移した。CD売上は100万枚を突破した。

 

5月にはシングル「Butter」を全世界に配信。日本では「Dynamite」の特大ヒットにより、それに続く自身2曲目の全英詞シングルとなった「Butter」への期待が発売前から高まっていたため、「Butter」は配信されるや否や歴史的な再生数を叩き出した。2021年5月21日付の日本Spotifyデイリーチャートでは初登場1位デビューを記録。登場2週目のBillboard JAPAN Streaming Songsでは週間再生数歴代1位となる2,993万再生を記録した。累計は5.8億再生を突破している。

 

この歴史的高初動はBillboard JAPAN Hot 100にも反映され、日向坂46NEWSなどの1位常連組を退ける形で通算4週1位を獲得した。当時のBillboard JAPAN Hot 100の週間チャートは楽曲人気チャートであるにもかかわらず楽曲人気に全く関係しないCDシングル売上に過度な高比重をかけた欠陥チャート設計となっていたため*4、これまでのBTSの週間1位獲得曲も全てCD売上を主力としていたことは既述のとおり(あり得ないことに特大ヒット曲「Dynamite」ですらCDシングル化されなかったことが不利となり週間単位では最高2位に終わっている)であるが、「Butter」では自身初めてCD売上の加点に頼らず週間1位を獲得する快挙を達成した。*5

 

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年間でも2021年6位→2022年12位と推移した。

 

楽曲は思わず体が動くようなダンスポップナンバーで、歌詞はバターの持つ甘さや滑らかさを比喩に用いた可愛らしい告白ソングになっている。重たいメッセージは込められていないうえ楽曲時間も短いため、気軽に何度も聴いて楽しめる仕上がりになっている。


BTS (방탄소년단) 'Butter' Official MV

 

この「Butter」は7月にEPとしてCD化された。EPは日本ではアルバム扱いとなったため、そのCD売上はBillboard JAPAN Hot 100における「Butter」の加点源とはならず、代わりにBillboard JAPAN Hot Albumsに反映される形となった。その集計では1週間に20万枚を売り上げ週間1位を獲得している。

 

このEPにc/wとして収録された新曲が「Permission to Dance」である。自身3曲目の全英詩ナンバーであるこの曲はエド・シーランが制作に参加したことでも話題となり、やはり高初動人気を記録。Billboard JAPAN Hot 100では1位常連のKinKi Kidsを抑え、「Butter」に続きCD加点無しで週間1位を獲得する快挙を達成した。年間でも2021年15位→2022年23位と推移し、累計では4.1億再生を突破した。

 

「Permission to Dance」は長引くコロナ禍で制限の多い生活が続いていた中、タイトルのとおり「踊ることに許可はいらない」というメッセージで人々を元気づける爽やかなダンスナンバーになっている。


BTS (방탄소년단) 'Permission to Dance' Official MV

 

こうした大活躍が反映される形でBTSはアーティスト人気指標Billboard JAPAN Artist 100において2021年の年間1位を獲得した。

 

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2022年には韓国での兵役従事に伴うBTSの活動休止報道が世界を駆け巡る中、アンソロジーアルバム『Proof』が発売され、53万枚をセールスした。このアルバムのリードシングル「Yet To Come」5,000万再生を記録。Billboard JAPAN Hot 100では週間1位も獲得した。

 

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2023年以降はグループとしての活動が休止する中、メンバーのソロ活動が活発化した。中でも最年少メンバーのJung Kookが7月に配信したソロ始動を告げるシングル「Seven (feat. Latto)」は全英詞ながらサビのフレーズやメロディーがキャッチーなこともあり世界的な支持を受け、日本でもストリーミング1億再生を突破する人気となった。本曲では1週7日間毎日常に愛する人と一緒にいたいと歌う情熱的な歌詞が甘美且つ優雅なダンスサウンドとボーカルによって奏でられている。


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まとめ

 

以上まで見てきたとおりBTSは日本国外のアーティストであるにもかかわらず日本国内のアーティストを含めてもトップクラスと言える異例の人気規模を日本国内で示している。しかもその大活躍は各指標の歴代データを塗り替え続ける形で現在進行形で続けられている。今後も各指標に重要なアップデートが生じれば、この記事で言及しているデータも適宜最新のものに置き換えていく予定である。

 

BTSが日本でここまでの大人気となっている理由は、早くからSNSやストリーミング配信という市場を開拓して活躍の場をオープンにしていたこと、そこで見せつけるハイクオリティなダンスや考察性のある楽曲群が多くのリスナーを惹きつけたことが挙げられる。日本国内のアイドルは長きに渡りCD市場を過剰重視していたため、SNSや配信を用いた宣伝に疎いグループが多い。また、作品人気の増減に影響されないCD大量販売商法に過剰適応してきたことなどから、作品の質を磨き人気を競う環境も十分に整備されていない。しかもコロナ禍では握手会などのCD大量販売商法も制限されるなど、CD売上過剰重視の弊害が幾つも露呈した。こうした中で今、高配信売上と高CD売上を両立してきたBTSから学べることは多いはずである。

 

本記事で紹介したBTSのヒット曲を手っ取り早く入手するには、BTS, THE BEST』『Proof』がおすすめ。

 

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この記事で紹介したストリーミングやダウンロードのデータはBillboard JAPANの公式サイト日本レコード協会の公式サイトから検索することができる。新たな発見の宝庫なので、時間があれば好きな曲やアーティストのデータを検索してみることをお勧めする。

 

 

*1:ただしCDアルバム売上枚数には言及する。アルバムもやはり作品人気指標としての機能不全が進行しておりその機能性は風前の灯火であるが、シングルと違いまだ完全には失われていないという判断の下である。

*2:なお、もし「BTSのストリーミング再生回数は楽曲人気指標として信用できるデータなのか」という疑問がある場合、それに対する答えはYESである。かつてCD売上指標の年間上位が嵐やAKB48によって過度に独占されたように、楽曲人気に関係しない要因で年間チャート上位が過度に独占されればその指標の楽曲人気指標としての信用は失われるが、現状ではBTSによる日本国内の年間ストリーミングチャート上位独占という状況は生じていない。その限りにおいては、BTSのストリーミング再生回数も楽曲人気を主要因として積み上げられたデータであると言うことができる。例えばBTSのファンによる再生回数工作活動があるのではないかという話が時折見られるが、仮にそういった活動があったとしても、それがどの程度の再生数上積み効果があるのか、全体再生数の何%を占めているのか、といったことを抽出することは不可能である。したがって、当ブログでは、「年間チャート上位の過度な独占」という分かりやすく可視化された問題が発生しているか否かで、そういった「楽曲人気に関係しない要因」の影響力が指標の信頼性を看過できないほど揺らがせているか否かを判断している。ちなみに、もし今後年間ストリーミングチャート上位が特定アーティストにより過度に独占されたとしても、批判されるべきはそのような不適切な結果を生み出した音楽チャートであり、独占したアーティストやそのファンではない。音楽チャート側がチャート設計を調整してそういった要因の影響力を弱めない限り、同じ手法による独占の再現や他のアーティストによる手法の模倣は避けられず、永遠に問題の根本的解決に至らないからである。チャート設計ルールの範囲内でどのような手法で上位進出を狙うかは各アーティスト陣営の自由であり、好きなアーティストを応援すること自体に何も問題は無い。多様なアーティストの楽曲人気を映し出すべき年間チャートの上位が特定アーティストに独占されたとしたら、それは大きくなりすぎたチャート戦略やファンによる応援活動の影響力をチャート設計の調整で抑制すべきところを放置した音楽チャート設計者の怠慢である。

*3:https://www.mottainaihonpo.com/kaitori/contents/cat06/007-bts-ninki.html

*4:尤もこれはBillboard JAPAN Hot 100に限らず日本の音楽チャート全体に蔓延る問題であった。例えばオリコン合算ランキングはもっと激しくCD売上に過度な高比重をかけたチャート設計になっており、それにより「Butter」は一度も1位を獲得できていない。Billboard JAPAN Hot 100は当時の段階で既に日本の総合音楽チャートの中で相対的にはCD売上への過度な高比重が抑えられており、楽曲人気チャートとして必要な最低限のチャート設計は充足し、権威も確立していた。

*5:なおBillboard JAPAN Hot 100は2021年下半期集計期間初週より週間チャートにおける過度なCD偏重設計を多少是正しており、「Butter」にとってはこの措置も偶々タイミング良く作用した。以降も段階的にCD売上の比重が引き下げられたため、この欠陥は既に解決されている。