Billion Hits!

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シェネルの人気曲【配信ダウンロード売上ランキング】

シェネルは2007年に1stアルバム「シェネル」で日本デビューしたオーストラリア出身の女性ソロアーティスト。日本で評判を上げたことで日本国内での活動を活発に行い、2010年代に渡ってコンスタントにヒット曲を輩出した。日本レコード協会によれば、これまでにダウンロード売上10万以上を記録した曲は6曲で、認定総ダウンロード売上は270万(歴代41位)となっている。これらのデータをランキング化した表は以下のとおりである。この表をもとにしながら、シェネルのヒット史を振り返る。

 

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(ランキング作成方法および歴代ダウンロード売上ランキングはこちら↓) 

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(歴代アーティスト別ダウンロード売上ランキングはこちら↓)

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デビュー~「ベイビー・アイラブユー」英詞カバーの配信75万ヒット

 

シェネルは華人の父親とインドとオランダの混血である母親を持つ外国人で、10歳からオーストラリアで育った。2005年にアメリカのレコードレーベルであるキャピトル・レコードと契約し、2007年にシングル「ラブ・ウィズ・DJ」でデビューを果たした。この曲が日本で評判となり、同年発売の1stオリジナルアルバム『シェネル』はCDアルバム売上チャート週間最高12位を獲得。これをきっかけにして日本での活動に重きが置かれるようになる。

 

2010年には日本国内に向けて2ndオリジナルアルバム『フィール・グッド』を発売。Billboard JAPAN Top Albums Salesでは週間最高33位となったが、収録曲のうち、久保田利伸が1986年に発表していたアルバム曲「Missing」の英詞カバーが好評となった。なおこの時期は「Missing」が名曲として多くのアーティストにカバーされたことで原曲である久保田利伸の音源が配信ダウンロード売上を大きく伸ばすこととなり、同曲の現在までの累計は75万ダウンロードとなっている。この人気の普及にシェネルも英詞カバーという新たなアプローチで一役買っていたのである。

 

「Missing」英詞カバーの好評を受け、2011年7月には自身初のカバー・アルバム『ラヴ・ソングス』を発売。この企画が当たり、本作の累計は35万枚を記録。Billboard JAPAN Top Albums Salesでは初登場7位のあと一度はTOP10圏外に下がるも再浮上で9月に本作最高位となる3位を2週連続で獲得。その後も1年以上に渡りTOP100圏内にランクインし続け、2013年1月14日付を最後にTOP100圏外になるまで登場週数合計75週を記録した。年間では2011年26位→2012年28位と推移した。

 

このアルバムセールスを牽引した曲が、リードトラックとして6月に先行配信されたベイビー・アイラブユー(English Ver.)」である。本曲は日本のシンガーソングライターTEEが2010年10月に発売してBillboard JAPAN Hot 100最高位2位、フル配信累計売上75万ダウンロードのヒットを記録したベイビー・アイラブユーの英詞カバー。


TEE - ベイビー・アイラブユー

 

シェネルのカバーが配信された2011年6月の時点では原曲の配信認定は25万ダウンロードであったが、シェネルのバージョンも評判になると両曲が競うように高配信売上を積み上げた。推移を以下に示す。

 

  • 2011年8月にシェネルver.が10万ダウンロード突破
  • 同月にTEEの原曲が35万ダウンロード突破
  • 2011年9月にシェネルver.が20万ダウンロード突破
  • 2011年12月シェネルver.が35万ダウンロード突破
  • 2012年1月にシェネルver.が50万ダウンロード突破
  • 2012年4月にTEEの原曲が60万ダウンロード突破
  • 2013年10月シェネルver.が75万ダウンロード達成(カバー配信開始から所要2年4ヶ月
  • 2014年2月TEEの原曲が75万ダウンロード達成(原曲配信開始から所要3年4ヶ月

 

見てのとおりシェネルver.も原曲と同じ75万ダウンロードを記録。しかも原曲より僅かに早いタイミングでの達成となっている。2010年代前半は「ベイビー・アイラブユー」という楽曲が異なる2名のアーティストによって一世を風靡することとなった。

 

原曲はTEEによる優しい歌声で奏でられたストレートなラブソングとして人気を博したが、シェネルによる情感溢れる歌唱によっても本曲の魅力が存分に引き立てられたことで、全英詞カバーながらも原曲に匹敵する人気となった。この曲のヒットでシェネルの存在が知れ渡った。 


シェネル(Che’Nelle) - ベイビー・アイラブユー (English Ver.) [Official Video]

 

「ビリーヴ」配信ミリオン

 

2011年の活躍を受けて2012年は活動がより活発になり、まず4月には自身初となるCDシングル「ストーリー」をリリース。表題曲は英詞と日本語詞を織り交ぜたオリジナルナンバーで、配信で10万ダウンロードを記録するヒットを飛ばした。

 

そして6月には大ヒット曲が誕生した。3rdオリジナルアルバムのリードトラックとして先行配信された「ビリーヴ」である。本曲は映画「海猿」シリーズの第4作「BRAVE HEARTS 海猿」の主題歌に抜擢された。映画が興行収入73億円の大ヒットを飛ばしたこともあり本曲の魅力も広く普及し、配信ミリオンを突破した。

 

配信売上推移は以下のとおり。

 

  • 配信1ヶ月で20万ダウンロード突破
  • 配信2ヶ月で35万ダウンロード突破
  • 配信4ヶ月後の2012年10月に50万ダウンロード突破
  • 配信9ヶ月後の2013年3月に75万ダウンロード突破
  • 配信5年10ヶ月後の2018年4月に配信ミリオン達成

 

見てのとおり発売1ヶ月で20万ダウンロードを突破する勢いのある初動を見せると、そのまま年内に50万ダウンロードを突破。以降も人気の持続とともにコツコツと売上を積み上げた結果、配信から5年10ヶ月後の2018年4月にミリオンを突破するに至った。

 

なお2012年に発売された曲で年内にフル配信50万ダウンロード以上の認定を受けた曲はこの「ビリーヴ」が唯一である。ミリオンとなった曲も、この年は他にテイラー・スウィフト私たちは絶対に絶対にヨリを戻したりしないカーリー・レイ・ジェプセン「CALL ME MAYBE」miwa「ヒカリヘ」しかなく、僅か4曲しか出なかった大ヒット曲のうちの一角を「ビリーヴ」が占めている。

 

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2012年に発売された曲でMV1億再生を達成している曲も今のところONE OK ROCK「The Beginning」しかおらず、この年は大ヒット曲数が大きく落ち込んだ不作の年であった。そのような中で「ビリーヴ」の需要は間違いなく高まっていたと思われるが、依然当時は実態と異なりCD売上が楽曲人気指標として最前面に用いられており、消費者の潜在需要と音楽業界の供給内容に乖離が生じていた。実際、「ビリーヴ」を含む上記で挙げた大ヒット曲5曲は何れも年末の紅白歌合戦やMステスーパーライブの歌唱曲に選ばれず、異論の声も大きくならなかった。

 

ベイビー・アイラブユー(English Ver.)」もそうだが、「ビリーヴ」もCDシングル化はされなかったため、CDシングル売上だけを見ていては本曲の大ヒットに気づくことができない。当時本曲が脚光を十分に浴びることができなかったことは大きな機会損失であったと言う他ない。

 

本曲はシェネルの圧倒的な歌唱力で聴かせる壮大なバラードナンバー。英詞と日本語詞を織り交ぜたオリジナル曲であるが、外国人とは思えないほどの表現力で日本語詞も歌われており、映画が持つ力強さとも密接にリンクする楽曲になっている。時代を選ばない普遍的なナンバーでもあるので、当時十分に脚光を浴びることが出来なかった分、今後いつ再評価されてもおかしくない。今からでもこの曲の大ヒットを確実に認知しておきたい。


シェネル(Che’Nelle) - Believe

 

本作の大ヒットが牽引する形で3rdアルバム『ビリーヴ』も累計27万枚をセールスするヒットを記録。Billboard JAPAN Top Albums Salesでは自己最高位となる2位を2週連続で獲得したほか、11週連続TOP10入りを記録した。

 

「Happiness」配信50万ヒット~現在

 

2013年はダウンロード認定10万以上を受ける曲は出なかったが、翌2014年には再びヒット曲を生み出すことに成功した。11月発売・10月先行配信された2ndCDシングル表題曲「Happiness」である。本曲は最高視聴率12.0%を記録したドラマ「ディア・シスター」の主題歌として親しまれ、フル配信50万ダウンロードを記録した。

 

配信売上推移は以下のとおり。

 

  • 配信2ヶ月後の2014年12月に25万ダウンロード突破
  • 配信5ヶ月後の2015年3月に50万ダウンロード達成

 

見てのとおりドラマが放送されていた秋クールの間に売上を伸ばしその勢いのまま50万ダウンロードに到達した。本曲は大切な人への想いを歌うミディアムバラードで、姉妹仲の深まりを描いたドラマにマッチしていたほか、その普遍性から結婚式の場でも使われる機会が多く、ここまでのヒットに結び付いた。本曲も英詞を交ぜつつも日本語詞を主体にしているが、やはり外国人とは思えないような歌唱表現力でリスナーを惹きつけた。

 

しかし2014年当時も相変わらず実態と異なりCDシングル売上が楽曲人気指標として最前面で用いられており、本曲の配信ヒットはやはり脚光を十分には浴びなかった。音楽の聴き方がCDから配信に移行している状況が適切に考慮されないままで、本曲もシングルCD売上チャート最高位TOP10圏外・累計売上10万枚未満という結果だけが不当にヒットの判断材料とされた。2014年末の紅白歌合戦やMステスーパーライブにも引き続き選ばれなかった。

 

そんな中でも、総合音楽チャートBillboard JAPAN Hot 100は相対的に本曲のヒットを可視化できている。当時CD以外にiTunesでの売上やラジオエアプレイ数、MV再生数、SNSでのメンション数も集計対象にしていた本チャートでは「Happiness」は自己最高位となる週間2位を獲得。年間でも2015年の23位に入った。今では楽曲人気指標としての権威がほぼ確立しているビルボードだが、当時はまだほとんど知名度がなかったことは惜しかった。


シェネル(Che’Nelle) - Happiness ft. Nao Matsushita

 

2015年2月には5thオリジナルアルバム『シェネル・ワールド』のリードトラックとして「君に贈る歌 ~Song For You」を先行配信。こちらも評判を呼び、フル配信10万ダウンロードを記録した。

 

2017年4月には3rdCDシングル表題曲「Destiny」を先行配信。この曲は最高視聴率10.5%を記録したドラマ「リバース」の主題歌に起用されたこともあり、フル配信で25万ダウンロードを売り上げるヒットを飛ばした。

 

まとめ

 

ここまで見てきたとおり、シェネルは海外のアーティストでありながら日本で高い支持を獲得し、日本の名曲の英詞カバーや日本語詞を主体としたオリジナルナンバーの双方でヒットを出していた。洋楽と邦楽の垣根を越えたアーティストと形容されることも多いが、その名のとおり類い稀な存在として2010年代の音楽シーンに欠かせない活躍を見せていたことを配信ダウンロード売上データが証明してくれている。*1

 

ここで紹介したヒット曲を手っ取り早く入手するには、2017年に発売されたベストアルバム『10th Anniversary ALL TIME BEST』がおすすめ。10万ダウンロード以上を記録した6曲全てを1枚のDiscで押さえることができる。

 

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  • アーティスト:シェネル
  • 発売日: 2017/12/06
  • メディア: CD
 

 

この記事で紹介したダウンロード売上データは日本レコード協会HP内の下記サイトで検索することができる。新たな発見の宝庫なので、時間があれば好きな曲やアーティストのダウンロード売上を検索してみることをおすすめする。

 

www.riaj.or.jp

 

 

*1:ちなみに日本レコード協会の認定では2013年まで洋楽扱いだったが2014年以降は邦楽扱いに変更されている。この判断に準じて当ブログでもシェネルは邦楽として扱っている。