Billion Hits!

フル配信ダウンロード売上、MV再生回数、ストリーミング再生回数、Billboard JAPANランキングデータなどを通じて国内の人気楽曲を把握するブログ

第71回(2020年)NHK紅白歌合戦歌唱曲の楽曲人気データ

年末の音楽の祭典、紅白歌合戦が今年もやってくる。歌唱曲も発表されたので、見所の整理も兼ね、各曲がどれほどの人気となっているのか、楽曲人気を示すデータを集め、調べてみた。

 

なおメドレー表記となっているものについては、歌唱曲がタイトルや事前情報から推測できるものに関しては推測した楽曲を記載し、推測できないものは「?」としている。この「?」や、当日サプライズ歌唱された楽曲は、判明し次第翌日以降に表に追加したうえで振り返り記事を上げる予定である。

 

歌唱曲順に並べた全体表は以下のとおり。過去2年以内に発売された楽曲は発売年を赤字表記している。各項目で大ヒット基準を超えている数字も赤字で記載している。過去2年以内に発売された大ヒット曲は行を黄色にしている。

 

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2020年の楽曲人気指標

 

各歌唱曲の人気を測るために今回用いるデータは以下のとおりである。

 

 

2000年代後半~2010年代前半の音楽視聴方法の主流。日本レコード協会のダウンロード認定では10万ダウンロードを超えて初めて認定対象となるため、10万以上ならヒット曲=人気曲と言ってよい。100万以上となればかつてのCD同様大ヒットである。

 

 

最近になって爆発的に普及、定着してきた音楽視聴方法。日本レコード協会のストリーミング認定では3,000万再生を超えて初めて認定対象となるため、3,000万以上ならヒット曲と言える。1億以上となれば大ヒットであり、実際Billboard JAPANでは1億を超えた楽曲が誕生したらその旨がアナウンスされる。

 

 

2010年代の音楽視聴方法の主流。ヒットの考え方はストリーミング再生数に準じる。

 

  • 紅白歌唱回数

 

売上がさほど高くない過去の曲でも、長く歌い継いでいくにつれて人気が出る曲もある。紅白で複数回歌われているということは、それだけ世間の需要も大きいということであるとみなせる。過去1回以上歌われているならば人気曲と言えるだろう。

 

  • シングル売上枚数

 

昔でいうレコードやカセット、今でいうCDシングル売上枚数のこと。CDシングル売上枚数は2011年以降楽曲人気指標として用いることができなくなっていることから、2010年以前のデータのみ記載する。かつては10万枚以上ならヒット曲、100万枚以上なら大ヒット曲だった。

 

  • アルバム売上枚数

 

シングルではなくアルバムの売上が中心となって世間に広まったヒット曲もある。対象曲がアルバム収録曲中最大ヒット曲であれば、アルバムの売上を牽引した曲だったとみなせるので、アルバム売上も対象曲の人気を示すデータとする。10万枚以上ならヒット曲、100万枚以上なら大ヒット曲と言える。

 

なお、上記で示した基準に達していない曲は紅白出場の資格なしなどと言うつもりは毛頭ない。秋川雅史千の風になって」のように、紅白出場前はほとんど知名度がなくとも、紅白歌唱をきっかけに大ヒットに至る曲もある。そのような楽曲も視聴者を満足させる自信があってこその選出であると考えたい。

 

前半歌唱曲ピックアップ

 

前半の歌唱曲を抜粋した楽曲人気データは以下のとおりである。

 

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紅組のトップバッターを務めるFoorin「パプリカ」は、前半歌唱曲の中では唯一ストリーミング1億再生を突破している楽曲である。2018年発売曲で、その年の紅白で企画枠として初出場したところ、その反響で2019年になってから人気に火が付き、MVは2億1,300万再生を突破するまでに至った。配信でも50万ダウンロードを突破したほか、2019年の日本レコード大賞も受賞している。

 

ここまでの大ヒットとなった理由は、作詞作曲を担当した米津玄師による凝っていながらも自然と耳に入るメロディーが支持されたことや、元気な笑顔で歌い踊る子供たちの姿が各所の幼稚園や学校で歌い踊る機会を作る意欲を促したことなどが挙げられる。

 

Billboard JAPAN Hot 100の年間では2019年7位→2020年40位と推移。大ヒットの余波が2020年も続く形で、3年連続での紅白出場となった。元々この曲はNHK〉2020応援ソングプロジェクト(2020年とその先の未来に向かって頑張っている全ての人を応援するプロジェクト)として制作されたものなので、2020年の紅白歌合戦で披露することは自然である。


<NHK>2020応援ソング「パプリカ」ダンス ミュージックビデオ

 

紅組2番手のmiletは紅白初出場となったシンガーソングライター。ミレイと読む。披露するのは2019年に発売された「inside you」。この曲はデビュー曲ながらドラマ「スキャンダル専門弁護士 QUEEN」主題歌に抜擢されたことや、個性的なハスキーボイスに英詞を歌いこなすグローバル感が支持さたことでいきなり10万ダウンロードを売り上げるヒットとなった。

 

2020年にはこの曲も収録した1stオリジナルアルバム「eyes」が発売され、CDと配信双方で好調なセールスとなり、Billboard JAPAN Hot Albums週間1位を獲得。この活躍などを踏まえて今回紅白初出場が実現したものと思われる。


milet「inside you」MUSIC VIDEO(先行配信中!竹内結子主演・フジテレビ系ドラマ『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』OPテーマ)

 

白組4番手に登場するSixTONESは2020年1月にデビューした6人組男性ダンス&ボーカルグループ。紅白ではそのデビュー曲「Imitation Rain」を披露する。

 

CD売上が楽曲人気指標として一切機能していない中で、CD限定発売曲の楽曲人気を把握することは大変困難になっているが、SixTONESYouTubeでMVを公開しているので、その再生数で楽曲人気規模を推し量ることが可能である。

 

フルではなくエディットバージョンとなっていることが再生数を稼ぐ上で不利でありながらも、「Imitation Rain」の再生数は2,900万回を突破している。押さえておきたい1曲である。


SixTONES - Imitation Rain (Music Video) [YouTube Ver.]

 

後半歌唱曲ピックアップ

 

後半の歌唱曲を抜粋した楽曲人気データは以下のとおりである。後半は外せないナンバーが目白押しとなる。

 

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後半の幕開けを飾るのはNiziU「Make you happy」である。NiziUは日韓合同オーディションプロジェクトNizi Projectを経て6月に結成された日本人9人によるガールズアイドルグループ。オーディションの模様は4月から5月にかけて朝の情報番組「スッキリ」でも定期的に特集されていた。オーディションでは、参加メンバーが仲間とともに励まし合いながら課題に取り組む様子や、プロデューサーJ.Y.Parkによるメンバーの個性を尊重した指導法などが感動を呼び、結成前からメンバーは一定の人気と知名度を獲得することとなった。

 

その結果、結成直後にリリースされたプレデビュー曲「Make you happy」はいきなりBillboard JAPAN Streaming Songsで初登場1位を飾るスタートダッシュを切ることに成功した。以降も元気が出る曲調やサビの縄跳びダンスが話題になったことで大ヒットの軌道に乗り、ストリーミング1億再生を突破した。MVも国内楽曲としては異例のスピードで足元1億9,900万再生を突破している。

 

このプレデビューという概念はやや謎であり、正式デビューは1stCDシングル「Step and a Step」が発売された12/2に果たされたことになっているが、デビュー前にここまでの大人気曲が出てしまったことで正式デビューがやや形骸化した感もある。正式デビュー前に紅白出場が決定したことにもなり、その点は疑問の声も発生した。とはいえ、楽曲人気の観点からは2020年に大人気となった「Make you happy」で2020年の紅白に出場することに疑義を挟む余地はない。

 

なおNiziUはコアファンの熱量を高めるべくLINE MUSICなどのサービスにおいてたくさんストリーミング再生することで特典に応募できるキャンペーンを展開することがあったが、それによる再生数の上乗せ効果は数百万回程度にしかならない。「Make you happy」のBillboard JAPAN Streaming Songsの再生数推移とキャンペーンの影響を以下に示す。

 

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見てのとおりキャンペーンを打った週とそうでない前後の週を比べると上乗せはせいぜい200万回、多く見積もっても500万回程度であり、これは大ヒット基準の1億再生の数%でしかない。AKB商法の実施で大ヒット基準を超える100万枚以上の上乗せが可能なCD売上とは比べものにならないほど軽微な影響である。

 

今後音楽の聴き方の主流がストリーミングになっていくことが確定的であることからしても、再生回数が最も有用な楽曲人気指標であることは揺るがない事実である。再生回数は工作が可能などと謳う陰謀論は論外であり、水増しだけで1億再生という数字を樹立することは不可能である。

 

NiziUが年末にかけてメディアに大量出演していることは、「Make you happy」が1億再生を超える大人気需要を有していることからして当然であり、これは人気需要のない歌手を大量メディア出演させることを指すゴリ押しには該当しない

 

NiziUはCDに頼らず配信指標を中心にして大人気を獲得している。未だに多くのアイドルがCDを中心にしたプロモーションを展開する中で数少ない、音楽の聴き方のCDから配信への移行に対応できているアイドルであることから、今後の日本のアイドル業界を牽引する活躍も期待されている。


NiziU 『Make you happy』 M/V

 

NiziUに続くのはこれも2020年の大ヒット曲として外せない瑛人「香水」。この曲は2019年4月に当時何の事務所にも所属していなかった一般人である瑛人が、誰でも楽曲を配信できるデジタル・ディストリビューション・サービスTuneCore Japanを通じて世に初めて送り込んだ楽曲である。この曲はサビの最も盛り上がるパートにドルチェ&ガッバーナという固有名詞を歌詞に当てたことが強烈なフックになっており、元々大ヒットのポテンシャルを有していた。

 

2020年4月になると、新型コロナウィルスの流行による緊急事態宣言が出され、国民全員がステイホームを余儀なくされた。そんな中、ギター一本の弾き語りというシンプルな構成だった本曲は自宅で再現するハードルが低くTikTokなどのSNSに本曲を用いた動画を投稿する動きが増加。FANTASTICS中島颯太もこの動きに乗ったタイミングで一層の普及が進み、音楽チャートを急上昇。5/25付のBillboard JAPAN Hot 100週間1位に到達した。完全インディペンデントアーティストがHot 100で週間1位を獲得するのは史上初の快挙であった。

 

この突然の上昇劇は本人や広告代理店が全く関与しておらず、能動的なプロモーションも一切されていなかったので、本曲は完全に消費者需要だけでヒットしたと断言できる稀有な曲と言える。本人はドッキリかと思ったと公言しており、当時の本人のツイッターアカウントからの発信も感謝の顔文字の連発になっていた。

 

下半期になるとこのヒットを受けて瑛人は事務所に所属することとなり、音楽番組への出演を本格化させていった。お笑い芸人チョコレートプラネットによるパロディ動画も話題となるなど「香水」の勢いは持続し、ストリーミング2億再生、MV1億3,200万再生を突破する大ヒットとなってBillboard JAPAN Hot 100でも2020年の年間6位を獲得した。

 

例え一般人でも誰でも楽曲を配信でき、それがヒットすれば紅白もあり得ることを瑛人は体現した。音楽業界はアメリカン・ドリームが大きな広がりを見せている。


香水 / 瑛人 (Official Music Video)

 

やさしさで溢れるようには2009年2月に配信されたJUJUの代表曲の一つで、長きに渡る楽曲人気の持続により配信売上を積み上げ続け、発売から10年8ヶ月後の2019年10月に配信ミリオンを突破した大ヒット曲である。

 

JUJUはこの曲を含め合計4曲の配信ミリオンセラーを輩出しており、2009年前後に大活躍していた。当時紅白に出場しなかったことは不可解の極みであり、これは当時蔓延していた、音楽の聴き方がCDから配信に移行していることを考慮しない高配信売上曲の人気過小評価の好例である。例え本人が断っていたのだとしてもNHKは最後まで粘り強く出演交渉をすべきだったほど、当時JUJUが大活躍していたことは配信ダウンロード売上データが証明している。

 

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2020年はJUJU初のオールタイムベストアルバム「YOUR STORY」が発売され、15万枚を売り上げるヒットを記録した。JUJUのこれまでの偉業を振り返るには良いタイミングとなったことにより、2020年の今年に待望の紅白初出場が実現したものと思われる。


JUJU 『やさしさで溢れるように』

 

アニメ「鬼滅の刃」紅白SPメドレーを披露するLiSAのステージは大ヒット曲が続く後半の中でも特に外せない。メドレーの曲目は明言がないが、タイトルからし「紅蓮華」「炎」を連続歌唱することは確実と思われる。

 

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「紅蓮華」は2019年4月に配信されたアニメ「鬼滅の刃」オープニングテーマ。2019年の時点でアニメは既に社会現象と言われるほど人気となり、その主題歌である本曲も2019年末時点で50万ダウンロードを突破するヒット曲となっていたことで、2019年の紅白ではLiSAの初出場が実現し、「紅蓮華」の歌唱が実現した。

 

この紅白出演が大反響を呼んだことや、同時期にストリーミングでも解禁されたこと、一発撮り歌唱映像を配信するYouTubeチャンネルTHE FIRST TAKEへの出演動画が公開されたことで、2020年に入るとむしろ人気は一段と加速。2020年6月には配信ミリオンを突破したほか、2020年10月にはストリーミングも2億再生を突破するほどの大ヒット曲と化した。激しいロックサウンドに乗せて叫んでいるかのような高音域を叩きつける曲調や、アニメにマッチした歌詞への支持が一気にアニメファン以外の領域にも浸透する形となった。 

 

Billboard JAPAN Hot 100の年間では2019年26位→2020年3位と推移。2019年発売曲ながら、2019年より2020年の方が勢いが増したことが可視化されている。2年連続の紅白披露となることは当然と言える大人気ぶりであった。


LiSA 『紅蓮華』 -MUSiC CLiP YouTube EDIT ver.-

 

「炎」は2020年10月に公開された映画「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」の主題歌に起用された重厚なバラードナンバー。映画は公開前から大ヒットが期待されていたが、蓋を開けると公開から僅か73日で興行収入が324億円を突破し、「千と千尋の神隠し」の316億円を抜き興行収入歴代1位に浮上するほどの歴史的ヒットとなった。

 

そんな映画の主題歌とあって「炎」も音楽市場で歴史的なヒットとなり、特にストリーミングでビルボード集計史上最速となる所要7週間で1億再生を突破した。MVも足元で1億1,100万再生を突破。公開から所要2ヶ月での1億再生突破は、米津玄師「Lemon」の所要4ヶ月を上回る異次元のペースである。

 

Billboard JAPAN Hot 100でも猛烈な勢いを見せた。発売週で1位を獲得して以降も、1位常連であるSexy ZoneNMB48を2位止まりにする形で1位街道を驀進し、合計6週1位を獲得。年間では集計期間終了間際の発売という不利もあり2020年の9位となったが、前人未踏の勢いは持続しており、来年2021年の年間1位最有力候補にすらなっている。

 

歌詞も映画に登場するキャラクターの生きざまを描写したものになっており、映画のエンディングで流れる本曲は多くの感動を呼び起こし、ここまでの大ヒットに繋がった。


LiSA 『炎』 -MUSiC CLiP-

 

LiSAの後も外せない今年の大ヒット曲が続く。Official髭男dism「I LOVE...」はドラマ「恋はつづくよどこまでも」主題歌として2020年1月に配信で発売された。恋人に限らない様々な形の愛をテーマにした普遍的な歌詞が支持されたほか、ドラマが最高視聴率15.4%を記録する人気となったことにより、配信から僅か5ヶ月後の6月に配信ミリオンを突破。他にもストリーミング2億再生、MV1億1,200万再生を突破する大ヒットとなった。

 

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Billboard JAPAN Hot 100では通算7週1位を獲得し、年間でも2020年の4位を獲得。これだけの大ヒット曲でありながらも、年末歌番組での披露は控えめになっており、この紅白が唯一の歌唱機会となる。Official髭男dismはアーティスト人気指標であるBillboard JAPAN TOP Artistsでも2020年の年間1位を獲得しており、人気需要が非常に高くなっていることも相まって、この紅白のステージは大変貴重なものになる。


Official髭男dism - I LOVE...[Official Video]

 

YOASOBI「夜に駆ける」もLiSAやOfficial髭男dismと並ぶ今年最大の目玉である。YOASOBIはボカロPのAyaseとシンガーソングライターのikuraにより結成されたユニットで、「夜に駆ける」は2019年12月に発売されたデビュー曲となる。YOASOBIは小説を音楽で表現することを特徴とするユニットで、本曲はネット小説「タナトスの誘惑」が原作になっている。なお「タナトスの誘惑」は無料で4分ほどで読めるショートショートである(注:R15)。

 

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アニメ仕立てのMVや小説を踏まえた歌詞は視聴者の想像を掻き立てるものになっており、中毒性のある速いテンポのリズムとともに支持され、デビュー曲ながら発売後徐々に話題が広がった。2020年4月になると新型コロナウィルスの流行により緊急事態宣言が出され、強制的に増加したおうち時間によりヒット予備群にいた本曲も発掘される機会が増加した。

 

このタイミングで本人らがメディア出演を増加させ、実際に歌唱することは一度もないながらも、トークや作品紹介を精力的に行った。さらに、2019年11月よりスタートした、一発撮り歌唱映像を公開する人気YouTubeチャンネルTHE FIRST TAKEのおうち版THE HOME TAKEの動画も公開された。この企画が当たり、該当動画は7,300万再生を突破。楽曲も大ヒットの軌道に乗ることになった。

 

Billboard JAPAN Hot 100では6/1付から3週連続で週間1位を獲得。その後も楽曲の広がりとともに著名アーティストやYouTuberなどによる歌ってみた動画の投稿が急増したことなどにより、猛烈な勢いで総合ポイントを積み上げ続け、断続的に3週1位を上積みして通算6週1位を獲得した。

 

特にストリーミングの再生数が猛烈な勢いとなり、史上最速のストリーミング3億再生突破を達成。YouTubeでもMV1億3,400万、アートトラック1億、THE HOME TAKE7,300万で合計3億以上の再生数となった。この再生数が牽引し、デビュー曲でいきなり2020年のBillboard JAPAN Hot 100年間1位獲得という快挙を成し遂げた。

 

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年間1位を獲得するほどの特大ヒット曲でありながら、これまでTVで実際に歌唱したことは一度も無く、紅白が満を持しての歌唱初披露の場となる。このプレミア感は今年の全紅白歌唱曲の中でも随一である。


YOASOBI「夜に駆ける」 Official Music Video

 

大ヒット曲のオンパレードはまだまだ続く。あいみょん「裸の心」は最高視聴率19.6%を記録したドラマ「私の家政夫ナギサさん」の主題歌として2020年5月に配信された。本曲は恋をする女性の心情を描いたラブバラードで、ハートフルなラブコメディだったドラマにマッチした内容になっていた。加えてどこか懐かしさを感じさせるシンプルな楽曲アレンジも支持を集めた。

 

ストリーミングでは自己最速で1億再生を突破し、Billboard JAPAN Hot 100の年間でも2020年の10位を獲得した。この曲を収録した3rdオリジナルアルバム「おいしいパスタがあると聞いて」も9月に発売され、総合アルバムチャートBillboard JAPAN Hot Albumsの年間で2020年の8位を獲得。楽曲とアルバムの双方で年間TOP10入りする大活躍となった。

 

昨今のヒット曲は煌びやかな音色や多量の音数を纏ったテンポの速いものが主流となっているが、音数が少なく雰囲気も落ち着いたバラードナンバーの本曲は後半に確かな存在感を放つものと思われる。


あいみょん - 裸の心【OFFICIAL MUSIC VIDEO】

 

Superfly「愛をこめて花束を」も時代を超えて愛されている大人気曲である。2008年2月に配信されたこの曲は猛烈な勢いでダウンロード売上を積み上げ続け、2008年11月には60万ダウンロードを突破。その後も売上が積み上がり、4年2ヶ月後の2012年4月に配信ミリオンを突破した。音楽の聴き方がダウンロードからストリーミングに移行すると、そこでも過去曲とは思えない高再生数を積み上げ、MV1億2,700万再生を突破している。

 

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SuperflyもJUJUと同様、音楽の聴き方がCDから配信に移行していることを考慮しない高配信売上曲の人気過小評価を受けており、大活躍していた2000年代終盤は紅白に出場していない。しかし2015年にようやく初出場を果たすと出場機会も増えており、本曲は2017年以来2度目のパフォーマンスとなる。


Superfly - 愛をこめて花束を

 

星野源「うちで踊ろう」は2020年という年を象徴する一曲として外せない。4月3日に星野源Instagramで初公開された本曲は一分程度の簡潔な弾き語りナンバー。当時緊急事態宣言による閉塞感が国全体を覆っていた中、ステイホームを余儀なくされている状況をポジティブな自然体で楽曲に変換した本曲は動画が公開されると大きな反響を呼んだ。

 

星野源が本動画の概要欄で気さくにコラボレーションを呼び掛けたことに呼応する形で、数々の著名人が楽曲をアレンジした動画を公開する動きが広がった。星野源自身も楽曲の自由な使用OKと明言したことで、一般人にも音源を使用した動画をおうちで制作し、TikTokなどのSNSで公開する動きが広がった。こうした流れを受けて、4月13日には本曲の無料配信が解禁されることとなった。

 

有料販売はされていないためダウンロード数が集計されることはなく、音楽チャートで上位に入るような性質の楽曲ではない本曲だが、SNSを中心とした楽曲の広がりを考えれば多くの人々の記憶に残る楽曲になっているものと思われる。実際、4/20付のBillboard JAPAN Hot 100では、構成要素となる指標のうちツイート数で週間1位を獲得している。

 

紅白では、元々一分少々の長さだったこの曲を2番を追加した形で披露することとなっている。この形での披露は初めてとなるため、どのようなステージとなるか注目である。

 

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星野源 – うちで踊ろう Dancing On The Inside

 

白組のトリは福山雅治家族になろうよは2011年4月に配信されたウェディングソングであり、ゼクシイのCMソングにも起用された大ヒット曲。東日本大震災が発生して以降、身近な存在である家族や恋人の絆が以前にも増してクローズアップされるようになり、それを反映するようにこの曲も長期に渡り人気が持続し売上を積み上げ、配信開始から9年5ヶ月後の2020年9月に配信ミリオンを達成した。トリに相応しいスタンダードナンバーである。

 

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福山雅治 - 家族になろうよ (Full ver.)

 

大トリはMISIA「アイノカタチ feat.HIDE(GReeeeN)」は2018年7月に発売されたバラードナンバーで、最高視聴率19.2%を記録したドラマ「義母と娘のブルース」主題歌にも起用された。ドラマにもマッチした温かい愛を描いた歌詞がMISIAの優しい歌唱で表現されていたことで支持が広がり、配信50万ダウンロード、ストリーミング5,000万再生を突破。2010年代の自身の楽曲では突出したヒットとなった。紅白での本曲の歌唱はこれで3年連続であり、着々とスタンダードナンバーの地位を築いているこの曲で今年の紅白は締められる。

 

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MISIA - アイノカタチ feat.HIDE(GReeeeN)(Lyric Ver.)

 

楽曲人気データを用いた紅白勝敗予想

 

最後に、今年2020年の紅白歌唱曲を紅組と白組で分け、楽曲人気を示す数字の合計(最下行)を比較することで、今年の紅白勝敗予想を行ってみた。結果はなんと紅組が圧倒的優勢となった。

 

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もちろん現時点では歌唱曲不明のものも存在するが、当日白組で大ヒット曲が一曲や二曲追加サプライズ歌唱されたとしても覆らないような大差が生じていた。特にストリーミング再生数とダウンロード売上の合計で紅組が白組に2倍以上の差をつけており、紅組の方が圧倒的に高人気楽曲を揃えることができている状況が可視化された。

 

もっとも、大前提として紅白の勝敗はこれだけで決まるものではない。当日の空気やパフォーマンスにも左右されると思われる。さらに言えばそもそも紅白の勝敗は肩の力を抜いて楽しむ余興である。ただ今年の投票方法は去年までにない工夫を凝らした方式になっているので、その結果がどうなるかは興味深い。

 

無論一番重要なのは各アーティストの素晴らしいパフォーマンスである。今年、歌を披露する機会の減少を余儀なくされた音楽業界にとって、圧倒的高視聴率が見込める紅白歌合戦という番組の存在は非常に重要である。例年以上に大変な状況となった中でも工夫の上で無事紅白歌合戦が開催されるありがたみを噛みしめながら、当日を楽しみたい。

 

1/1追記・楽曲人気データ完全版を掲載↓ 

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