LiSAは2010年にアニメ「Angel Beats!」内のバンド「Girls Dead Monster」の2代目ボーカルとして「Thousand Enemies」でメジャーデビューした女性アーティスト。2011年にソロデビューし、現在まで約10年に渡りアニメソングを中心にしてヒット曲を輩出し続けている。日本レコード協会によれば、これまでにダウンロード売上10万以上を記録した曲は12曲で、認定総ダウンロード売上は390万(歴代28位タイ)となっている。これらのデータをランキング化した表は以下のとおりである。この表をもとにしながら、LiSAのヒット史を振り返る。
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Girls Dead Monsterとしてデビュー
LiSAは幼少より歌うことが好きで、高校を卒業すると歌手を志して上京、ロックバンドのボーカルとしてインディーズで活動を本格的に開始した。なかなかメジャーデビューには至らなかったが、転機となったのはアニメAngel Beats!内のバンドGirls Dead Monsterの2代目ボーカル役のオーディションに参加したことだった。ここでこのアニメの原作者麻枝准の目に留まる形で役に抜擢され、「Thousand Enemies」でメジャーデビューを果たすこととなった。2010年6月に発売されたGirls Dead Monsterとしての唯一のアルバム『Keep The Beats!』は10万枚を突破し、確かなヒットの跡を残した。
ソロデビュー~アニソンシンガーとしての定着
2010年の活躍により翌2011年にはソロデビューが決定。インディーズ時代にメインで活動していたロックバンドを離れることには葛藤がありながらも、メンバーの後押しもあり、本格的にメジャーシーンに繰り出していくこととなる。
11月に発売したソロ初となるCDシングル「oath sign」はアニメ「Fate/Zero」のオープニングテーマに起用されたことで人気が普及し、2015年3月に配信10万ダウンロード、2020年11月に配信25万ダウンロードを突破する息の長いセールスを記録した。前年に続きアニメタイアップが効果的に活用された。
翌2012年8月に発売された2ndシングル「crossing field」はアニメ「ソードアート・オンライン」のオープニングテーマに起用され、こちらは2015年2月になって25万ダウンロードを突破。前作よりも早いペースで売上を積み上げた。
2014年5月に発売された5thシングル「Rising Hope」はアニメ「魔法科高校の劣等生」のオープニングテーマとして人気を獲得し、なんと当時の自己最速記録となる発売1ヶ月での10万ダウンロード突破を達成。以降も売上が積み上がり、2017年5月には25万ダウンロードを突破した。この曲は翌年「シュガーソングとビターステップ」でブレイクしたUNISON SQUARE GARDENのベース田淵智也の作曲で作詞も共作している。なお田淵からはこの曲以外にも度々楽曲提供を受けているほか、サポートメンバーとしても関与している。
2014年12月に発売された7thシングル「シルシ」はアニメ「ソードアート・オンラインII」のエンディングテーマに起用された。既にこのタイアップは「crossing field」でヒットの実績があったこともあって好調な売れ行きとなり、2017年3月に10万ダウンロードを突破した。
この後はしばらくダウンロード認定を受ける曲は出なくなるが、2017年2月に発売された11thシングル「Catch the Moment」では再び「ソードアート・オンライン」とタッグを組み、アニメ映画「ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」主題歌のタイアップが付いた。この映画が深夜アニメ発としては異例の国内興行収入25億円を突破するヒットとなったことで楽曲人気も普及。配信1ヶ月で10万ダウンロードを突破する自己最速タイの勢いを見せ、2019年4月には当時の自己最速を更新する所要2年2ヶ月でのフル配信25万ダウンロード到達を果たした。ストリーミング5,000万再生も記録している。
2017年10月には13thシングル「ASH」を配信で先行発売。この曲はアニメ「Fate/Apocrypha」のオープニングテーマに起用された。「Fate」とのタッグでは既に「oath sign」でヒットの実績を残していたこともあり「ASH」も好調な売れ行きを記録。2018年2月に10万ダウンロードに到達した。本曲はシドから楽曲提供を受けている。
2018年10月には、14thシングル『赤い罠(who loves it?)/ADAMAS』から2曲目の「ADAMAS」を配信で先行発売。この曲は相性の良いアニメ「ソードアート・オンライン」のタイアップが付き、「ソードアート・オンライン アリシゼーション アリシゼーション・ビギニング編」のオープニングテーマとなった。期待に違わぬ売れ行きで配信1ヶ月で10万ダウンロードを突破。2020年4月には当時の自身最速を更新する所要1年6ヶ月での25万ダウンロード突破を達成した。
ここまで見て分かるとおり、ダウンロード認定を受けている曲は全てアニメタイアップが付いた曲になっている。既にここまでの段階でLiSAはアニソンシンガーとしての長きにわたる実績と確固たる地位を築いていた。
「鬼滅の刃」社会現象
「紅蓮華」
これまでの状況からLiSAが更に飛躍するきっかけとなったアニメが「鬼滅の刃」である。2019年4月にこのアニメの主題歌となった15thシングル「紅蓮華」が配信で先行発売されると、アニメの評判の高まりとともに自身これまでにないペースで売上を積み重ね、最終的には配信ミリオンを突破する大ヒットを記録した。
配信売上推移は以下のとおりである。
- 配信1ヶ月で10万ダウンロード突破
- 配信4ヶ月後の2019年8月に25万ダウンロード突破
- 配信8ヶ月後の2019年12月に50万ダウンロード突破
- 発売11ヶ月後の2020年3月に75万ダウンロード突破
- 発売1年2ヶ月後の2020年6月に配信ミリオン達成
当時の自己最速タイである所要1ヶ月での10万ダウンロード突破は過去の好調な楽曲でも見られた勢いだったが、そこからのペースが自身これまでにない勢いとなり、8月には当時の自己最速記録を大幅更新して所要4ヶ月での25万ダウンロード突破を達成。
アニメが社会現象として徐々に認知を高めると、主題歌である本曲にも大きな注目が集まり、年末にはついに自身初の紅白歌合戦の出場が決定。この少し前のタイミングでストリーミングでも本曲の配信が解禁されたことで、アニメファン以外にも気軽に本曲が聴ける環境が整い、既存の枠を超えたヒット規模になってゆく。
年末歌番組で確かな爪痕を残すとそれがセールスにも表れ、12月には自身初の50万ダウンロード突破を達成。勢いは衰えることなく、2020年3月には75万ダウンロードを突破。そして6月には国内史上92曲目となるダウンロードミリオン突破を果たした。*1
ダウンロードだけでなく、遅れて解禁されたストリーミングでも猛烈な勢いで再生された結果、最終累計は4.3億再生を記録した。
YouTubeにアップロードされているMVは残念ながら長らくショートバージョンしかない状態であったが、この動画もショートバージョンとしては異例となるMV1億再生を突破している。また、アーティストの一発撮り歌唱映像を届ける動画チャンネルTHE FIRST TAKEにもこの曲で出演。こちらはフルサイズでの歌唱となったことで大きな注目を集め、公式MVを上回るMV1.3億再生を突破している。なおフルバージョンは2022年12月になってようやく公開された。
これらの勢いを総合的に可視化する形で、ビルボードの総合チャートBillboard JAPAN Hot 100でも長期に渡る楽曲人気動向が反映されており、年間では2019年26位→2020年3位→2021年16位と推移した。発売年である2019年よりもむしろその後のストリーミング解禁や紅白歌合戦出場による楽曲普及の方が大きな勢いとなった結果、楽曲人気は2020年にピークを迎えた。
楽曲は激しいロックサウンドに乗せて叫んでいるかのような高音域を叩きつける曲調となっており、アニメにマッチした歌詞とも相まって支持され、一気にアニメファン以外の領域にも人気が浸透することとなった。
LiSA『紅蓮華』-MUSiC CLiP-(アニメ「鬼滅の刃」竈門炭治郎 立志編 オープニングテーマ)
なおLiSAは「鬼滅の刃」エンディングテーマである「from the edge」においてもFictionJunction feat. LiSAという形で参加しており、こちらも2019年9月に配信されて以降の積み上げで25万ダウンロードを記録している。
2019年10月には16thシングル「unlasting」を配信で先行発売。本曲はアニメ「ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld」のエンディングテーマに起用された。これまでLiSAのヒット曲の中でも顕著な相性の良さを見せていたタイアップ効果も「鬼滅の刃」の前には流石に霞んだが、それでも2020年9月になって10万ダウンロードを突破。堅実にヒットを持続させた。
10月には「ADAMAS」「紅蓮華」「unlasting」を収録した5thオリジナルアルバム『LEO-NiNE』を発売。かつてない収録内容の豪華さもあり、市場縮小が著しいCDアルバム市場の中において自身初の10万超えとなる13万枚のセールス記録した。
「炎」
そしてそのアルバム『LEO-NiNE』と同時発売されたのが、17thシングル「炎」である。この曲は劇場版「鬼滅の刃 無限列車編」の主題歌に起用された。既にアニメが社会現象化していたこともあり、公開前から大ヒットが期待されていたこの映画だが、なんと10月の公開から僅か11週で「千と千尋の神隠し」を抜き興行収入歴代1位を達成するほどの歴史的な大ヒットとなった。
そんな映画の主題歌とあって「炎」も音楽市場で歴史的なヒットを記録した。ダウンロードでは自己最速を更新する所要5ヶ月で配信ミリオンを達成。ダウンロード市場の縮小傾向を考えれば異例のスピード記録と言える。
ストリーミングではビルボード集計史上当時最速となる所要7週間で1億再生を突破。最終的には累計ストリーミング4.6億再生を記録した。
MVも発売と同時にフルバージョンが公開された。これまでLiSAのMVはほとんどショートバージョンでしかYouTubeにアップされておらず、再生数で大きく損をしていた状態であったが、フルバージョンの公開となった本曲では猛烈なペースで再生数を積み上げ、所要2ヶ月でMV1億再生を突破した。これは国内MVとしては当時歴代2位のスピード記録であった。累計ではMV3億再生を突破しているほか、THE FIRST TAKE出演動画も6,000万再生を突破している。
これらの勢いを総合的に可視化する形で、総合チャートBillboard JAPAN Hot 100でも猛烈な勢いを見せた。発売週で1位を獲得して以降も、1位常連であるSexy ZoneやNMB48を2位止まりにする形で1位街道を驀進し、合計8週1位を獲得。
年間では2020年9位→2021年4位→2022年66位と推移。2年連続年間TOP10入りを果たした。
楽曲は映画の内容に合わせた重厚なバラードナンバーになっており、「紅蓮華」とはまた違った方向性をアニメファンを超えた領域に見せつけることに成功した。歌詞も映画に登場するキャラクターの生きざまを描写したものになっており、映画のエンディングで流れる本曲は多くの感動を呼び起こした。
『明け星/白銀』
2021年も「鬼滅の刃」とのタイアップが実現した。映画の歴史的ヒットを受け「鬼滅の刃 無限列車編」がTVアニメとしても制作されることとなり、そのオープニングとエンディングをLiSAが担当。OPテーマ「明け星」は10月に配信され、フル配信25万ダウンロード、ストリーミング5,000万再生を記録した。本曲は「炎」と全く異なる曲調で世界観が表現されており、妖艶な歌唱も聴きどころとなっている。
LiSA 『明け星』 -MUSiC CLiP-(テレビアニメ「鬼滅の刃」無限列車編 オープニングテーマ)
EDテーマ「白銀」も11月に配信され、10万ダウンロードを記録した。この2曲は同月に両A面CDシングルとしても発売されている。
その他
こうしたソロ活動の他にも、YOASOBIのコンポーザーAyaseのプロデュースのもとでUruとコラボした楽曲「再会 (produced by Ayase)」がLiSA, Uru名義で2020年11月に配信されており、こちらはフル配信10万ダウンロード、MV6,000万再生、ストリーミング1億再生(RIAJ)を記録した。
まとめ
以上まで見てきたとおり、LiSAはアニメソングを中心にヒット曲を数多く輩出してきており、その勢いは鬼滅の刃の社会現象化によって既存の枠を超えた歴史的な勢いにまで膨れ上がっていた。シンガーとしての魅力が存分に伝わる充実した楽曲群は、自然と今後の活躍にも期待を抱かせるものである。
以上までに紹介したヒット曲を手元に所有したい場合は、入口として2枚のオリジナルアルバム『LEO-NiNE』『LANDER』がおすすめ。
この記事で紹介したダウンロードデータは日本レコード協会HP内の下記サイトで検索することができる。新たな発見の宝庫なので、時間があれば好きな曲やアーティストのダウンロード数を検索してみることをおすすめする。