Billion Hits!

ダウンロード売上、ストリーミング再生回数、Billboard JAPAN Hot 100などのデータを通じて国内の楽曲人気動向を把握するブログ

DSP別ストリーミングチャートの特徴

この記事では、DSP*1(音楽サブスクサービス)が作成・発信しているストリーミングチャートの特徴を整理する。

 

全てのDSPの再生回数を集計したストリーミングチャートはBillboard JAPANが作成・発表しているが、ユーザーにとってより身近なランキングは、自身が利用しているDSPのランキングではないかと思われる。

 

しかし、DSPごとにランキングの傾向には違いがあるため、DSPのランキングを「全体楽曲人気の相似形」として認識することは、場合によっては深刻な誤解を招く恐れがある。

 

ここでは日本で特に利用者が多いとされるApple Music、Amazon MusicSpotify、LINE MUSICを取り上げる。

 

 

 

なおYouTubeについては以下別記事で詳説している。

billion-hits.hatenablog.com

 

 

Apple Music

 

Apple Music日本で最大のDSPシェアを誇る音楽サブスクサービスである*2。よってそのランキングは全てのDSPの中で最も重要性が高い。ただし、リアルタイムランキング『トップソング』デイリーランキング『トップ100:日本』は新曲の人気を過小評価する設計となっているため、取扱いに注意が必要である。詳細説明は以下個別記事で行う。

 

billion-hits.hatenablog.com

 

Amazon Music

 

Amazon Music日本のDSPシェア2位*3に位置する音楽サブスクサービスである。そのため、重要性はApple Musicに次いで高い。

 

しかし、Amazon Musicはランキングの種類が乏しく、以前はリアルタイムランキングしか存在していなかったため、重要性の割には実態把握があまり進んでいなかった。

 

リアルタイムランキング『人気の楽曲』

music.amazon.co.jp

 

2025年4月になり、ようやく週間ランキングTOP50が発足したため、今後は実態把握が進むことが期待される。集計期間は日曜日から土曜日となっている。

 

週間ランキング『Japan Top 50』

music.amazon.co.jp

 

このプレイリストは毎週上書きされているが、毎週の結果は音楽情報媒体ミュージックマンでも記事発信されているため、過去のチャートはここから参照できる。

 

一部の楽曲においては、同一のトラックが何らかの原因により複製・分裂してしまうことで、再生回数も分散され、週間順位が再生回数実態よりも低くなっていると思しき例も見られている。

 

 

楽曲の順位の低さに疑問がある場合は、PC版リアルタイムランキングの下位を参照し、同一トラックが分裂計上されていないか確認すると良い。

 

なお、不正再生対策はApple Music同様に万全である。

 

Spotify

 

charts.spotify.com

 

Spotify Chartsの大きな特徴は、大手DSPの中で唯一、再生回数を公式発表していることである*4。順位という相対評価だけではなく、絶対評価で楽曲人気を計ることが可能であるほか、過去チャートのアーカイブも充実しているため、分析対象としては選ばれやすい。

 

しかし日本国内のシェアはApple Music・Amazon Musicに劣っているため、特にSpotifyにおいてのみ生じている高水準推移については、それが全体楽曲人気の相似形ではないことに注意する必要がある。

 

代表例がJIMIN「Who」で、本曲はApple Music・Amazon MusicTOP100圏外でありながら、SpotifyにおいてのみTOP10圏内ランクインを長きに渡り継続している。本曲は全体再生回数に占めるSpotify割合が異常値と言えるほどに大きくなっている。

 

 

特定のDSPにここまで再生回数が偏ることがあり得るのかという点も含め、本曲のSpotifyでの高水準推移には不自然な点もあるが、Spotifyは疑問の声を無視し続けている。よって、自らのチャート結果に対する説明責任が果たせているとは言い難い。

 

さらに2025/5/21からは、JIN「Don’t Say You Love Me」が同様に不透明な高水準推移で1位を独走するようになっている。

 

 

JINは「Running Wild」でも不透明な高水準推移を見せていたが、「Don’t Say You Love Me」配信を機に再生回数が一斉移行したかのような動向を見せていた。よって、こうした不透明な高水準推移の主因はアーティストに紐付くことや、楽曲内容の必然性に乏しかったことが濃厚となっている。

 

いずれにしても、こうした推移が今後増加していくようなら、Spotifyのチャートデータを利用することが不適切となる場面も増えてくると思われる。透明性のある説明などによる早期の事態解決が望まれる。

 

不正再生対策については強固だとされているが、上記のような不透明な事例もあるため、本当に十分なのかは疑問である。実際、ごくまれにではあるが、正真正銘の不正再生によるランキング上位進出事例が発生したこともある*5

 

LINE MUSIC

 

LINE MUSICは国内ローカルDSPの中では最大シェアを誇るが、先述した三大グローバルDSPApple Music・Amazon MusicSpotify)には及んでいない。

 

そしてローカルDSPであるがゆえに、再生回数カウント方法がグローバル基準から乖離しており、一言で言えば非常に緩い

 

グローバルDSPは、少人数による大量再生によってチャートの健全性が歪められることを抑制するため、一日にカウントする一人当たり再生回数の上限を設けているとされているが、LINE MUSICはこの上限が圧倒的に緩い設定となっているようである。

 

実際、LINE MUSICでは、再生回数キャンペーンと称して、ファンの大量再生に特典を付与する施策が公然とまかり通っている。これは三大グローバルDSPでは見られない施策である。

 

この再生回数キャンペーンによるチャートへの悪影響は2022年に拡大し問題視されたが、Billboard JAPANが警鐘を鳴らして再生回数カウント方法が改善された経緯がある。当時の詳細は以下記事でも説明している。

 

billion-hits.hatenablog.com

 

2025年以降のBillboard JAPANは、LINE MUSICキャンペーンを実施するだけでストリーミングチャートTOP10圏内規模の再生回数を記録する楽曲に対しては例外なく減算処理を適用するルールとしたようであり、異常値を記録した楽曲の獲得可能再生回数は多くとも週間400万台後半に抑えられている。

 

それでもLINE MUSIC内のランキングでは、再生回数キャンペーンを実施するだけで最上位に進出するケースが依然として頻発している。特に櫻坂46超特急が新曲発売のたびにキャンペーンによって顕著な規模の再生回数を稼いでいるが、この2組はそのたびにBillboard JAPANにおいてストリーミング再生回数の一部異常値が減算処理されている。逆に言えば、櫻坂46超特急が楽曲人気を主因としてストリーミングチャート上位になったことは一度もない。実際に、この2組の楽曲はキャンペーン終了後チャートから跡形もなく姿を消す。

 

つまりLINE MUSICで1位になることは楽曲人気の存在証明とならない。よってLINE MUSICのランキングを楽曲人気指標として使用することは不可能である。

 

また、不正再生対策に関しては、このような緩い再生回数カウント方法で本当に機能するのかと思うであろうが、案の定、生成AIとBOTを駆使した詐欺的再生によるチャート上位進出を2024年に大量発生させたことがある。2025年以降は対策が進んでいるようであるが、不安を完全に拭い切るにはまだまだ圧倒的に材料不足である。

 

まとめ

 

以上が、Apple Music・Amazon MusicSpotify・LINE MUSICそれぞれのランキングの特徴となる。もし自身が利用するDSPのランキング結果に違和感がある際は、本当にそのランキング結果が鵜呑みできるものなのか疑い、立ち止まることが重要である。本記事の内容が何らかの理解促進の一助となれば幸いである。

 

 

*1:Digital Service Platformの略

*2:『音楽産業の新たな時代に即したビジネスモデルの在り方に関する報告書 データ集』p.37「3.2.1. 国内外の音楽配信サービスのサブスクリプション動向」より。以降のシェアに関する言及も同様。

*3:ただしAmazon Prime MusicAmazon Music Unlimitedを単純合計すればシェア1位となる。

*4:デイリーおよび週間の楽曲チャート。週間チャートは金曜日から木曜日までの集計。なお、リアルタイムチャートは作成されていない。

*5:詳細は別ブログ記事『Creepy Nutsが世界でヒットの兆し、そして乱高下するキングリーとは…Spotify直近の注目動向 - イマオト - 今の音楽を追うブログ -』でも言及されている。