Billion Hits!

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2023年度のブログ・SNS更新状況振り返り/2024年度の方針告知

早いもので、2023年度も年度末となり、Billboard JAPAN年間チャートが間もなく発表されようとしています。この一年の間も当ブログ及びSNSをフォローいただいた皆さまに改めて感謝申し上げます。本記事はこの一年間の振り返りと今後のSNS更新予定告知となります。以下記事以来約一年ぶりの内容です。

 

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2023年度振り返り

 

CD偏重問題関連

 

週間1位結果の適切性

 

今年度は、「日本音楽ヒットチャートのCD偏重問題」によって1年間休止していたBillboard JAPAN週間チャート予想・結果分析の発信を、当該問題が解決したと判断したことに伴い全面的に再開した一年となりました。

 

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2023年度のHot 100はOfficial髭男dism「Subtitle」の週間1位独走で幕を開けました。通算13週1位という当時の新記録を樹立するまでの推移を追う日々は興奮の連続でした。

 


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しかし、4月に残念な現象が発生してしまいました。週間1位の翌週TOP100圏外に大暴落する異常推移BiSH「Bye Bye Show」により記録されたことです。

 

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本件に関しては上記上半期結果記事内で私の意見とともに詳しく述べたのでここでは繰り返しませんが、結局今に至るまでチャート設計の改善はなく、また別の曲によって同様の現象が発生してしまうのではないかという懸念は拭えないままです。

 

とはいえ、この後すぐに訪れたYOASOBI「アイドル」の約5ヶ月間に渡る日本音楽史上最大級のヒットによる21週連続1位と、その後に続いたAdo「唱」の歴史的ヒットによる通算9週1位(現在も1位継続中)は、一時でも上記懸念を完全に忘れることのできる圧巻のチャートアクションでした。

 


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www.youtube.com

 

結局2023年の「年間TOP20ランクイン曲の1位獲得週数」は上記3曲で合計43週になり、適正水準の20週を余裕でクリアするとともに、この指標で過去最大週数となる見込みです。これには大満足です。一部欠陥チャートアクションはありましたが、総じて2023年度のHot 100は楽しく追いかけることができました。

 

歴代ランキング

 

2023年は歴代ランキングの形でも過去のCD偏重問題という負の遺産が根深く残っていることが、4月にCDTVライブ!ライブ!が発表した30周年記念歴代ランキングによって改めて顕在化しました。これも詳細は以下記事に書いたのでここでは繰り返しませんが、それでも「歴代ランキングはもう自分で作るしかない」と考えるに至り当ブログオリジナルランキングを以下記事に纏めることができたのは自分の中の整理に役立ち非常に有意義でした。

 

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この当ブログオリジナルランキングの計算式を用いて、時代を超えた人気となっているアーティストの楽曲人気解説記事にも順次当ブログオリジナルの人気楽曲ランキングを参考情報として追記しています。やはり「ダウンロードランキングはこれ、MVランキングはこれ、ストリーミングランキングはこれで、ただしストリーミングは解禁が遅かったのでその点を考慮する必要が云々」と説明しても「で、結局一番人気曲は何なの?」となってしまうので、例え参考程度でも総合ランキングはあると本当に便利だなと実感しました。

 

アルバムチャートのCD偏重問題

 

11月にはブログ更新作業が急遽慌ただしくなりました。アルバムチャートのCD偏重問題が本格的に顕在化する見通しが出たためです。詳細は先週以下記事に纏めました。

 

billion-hits.hatenablog.com

 

こちらの内容についてはBillboard JAPANより検討する旨連絡を頂いていますが、どのような判断になるかは分かりません。もし現状維持という判断なら、私はそういう方向性でアルバム文化を位置づけていくものと捉えますのでこれ以上は何も言いません。もうアルバムチャートには興味が持てなくなりますが、言いたいことは上記記事で全て言い切っています。もちろん本件について引き続き声を上げていく方への応援やサポートは惜しみません。

 

ジャニーズ問題関連

 

2023年は日本音楽業界を震撼させる重大な社会問題が顕在化した年でもありました。2019年に逝去した旧ジャニーズ事務所前社長ジャニー喜多川氏による性加害問題です。

 

www3.nhk.or.jp

 

この問題は紆余曲折を経ながらも事務所が性加害の事実を認め謝罪し、被害者への補償を徐々に始めていますが、例え被害者が1人だけでもあってはならないことである中、なんと被害申出人数834人、うち35人の被害事実が確認され補償手続きが始められているという、想像を絶する被害規模となっています。

 

www.yomiuri.co.jp

 

さらに誹謗中傷を苦にした被害者が自死してしまう事態が発生しており、事務所の誹謗中傷対策が不十分であるとの指摘も出ています。

 

www.chunichi.co.jp

 

なお、11月中に設立すると会見で説明していたタレントのマネジメント業務を担う新会社は12月に入った現在も設立されていません。

 

encount.press

 

この問題は、これまで旧ジャニーズ事務所が半世紀以上に渡り提供してきたコンテンツの数々が、ジャニー喜多川氏の性加害とそれを黙殺するだけに留まらず過剰優遇し続けてきた日本社会の上に成り立っていたことを顕在化させました。ここで「日本社会」と言ってしまっても全く大袈裟ではないことが、本問題が如何に深刻かを表しています。

 

私自身も、この問題への報道が本格化する前は恥ずかしながら事の重大さを認識できておらず、報道によって事実を把握し社会として適切に対処するというフローが機能していなかったことを実感しました。

 

社会が適切に動けているのか定かではない本件においては、私個人も社会の一員として可能な範囲で目に見える行動をしなければならないと思うに至り、今年下半期より以下の対応を採りました。

 

 

この対応に至った私の考えは上記ポストに続く一連のツリーにも書いたとおりです。ヒットチャートには広告宣伝効果もあり、新作を出せばアーティスト人気によりほぼ必ず上位進出していた旧ジャニーズ事務所所属アーティストは特にその恩恵を受けています。社会問題を起こし且つそれへの対応を十分に採っているのか定かでない企業が提供するコンテンツのPRには加担したくないとの思いから、上記対応を採るに至りました。タレントに罪はないのではないかとも思いましたが、少なくともその一言で済むような簡単な話ではないことも確かです。

 

私は客観中立の立場のもとチャート上位にランクインした楽曲やアーティストを公平にピックアップし発信するスタンスを採っていますが、本問題はそれ以前の話であり、ヒットチャートを含むエンターテイメントを楽しむうえでの大前提が揺るがされているものです。よって本措置は私のスタンスとも矛盾はしていないのですが、なるべくあらぬ誤解を生まないよう、実施前にはフォロワーの皆さまに上記考えを説明したうえで意見を伺い、過半数の賛成を確認してから実施した次第でした。

 

 

なおここまで説明してもやはり幾つか「私がジャニーズアンチだからそうするんだろう」的な反応が来ましたが、公的な社会問題を個人の好き嫌いの話に矮小化させようとするその浅慮ぶりには軽蔑の目を向けざるを得ません。

 

今年のNHK紅白歌合戦の出場者発表で旧ジャニーズ事務所所属アーティストが44年ぶりに出場ゼロとなったことも話題となっていますが、人気や経済の指標で好成績となっていることは社会問題の免罪符にはなりませんし、なってはいけません。「旧ジャニーズ事務所所属アーティストは高CD売上なのに紅白不出場となるのはおかしい」といった考えは非常に浅慮です。今年の紅白の視聴率が下がることを懸念する声も既に一部メディアから出ていますが、仮に下がったとしても「旧ジャニーズ事務所所属アーティストを出すべきだった」とはなりません。その場合は「旧ジャニーズ事務所提供コンテンツに代わる人気コンテンツを出せなかった日本芸能界の層の薄さ」こそ問題提起されるべきでしょう。選択肢の乏しさは今回の性加害問題の温床にもなっています。

 

なお、ヒットチャートが自らキャンセルカルチャー的な対応を採り旧ジャニーズ事務所提供コンテンツをチャートから除外することは現実的な難しさがあるとは思いますが、メディアとしてはヒットチャートも本問題の重要関係者であり、何らかの立場表明等は必要でしょう。その中にあって、Billboard JAPANは以下インタビュー記事を通じて圧力や忖度のないチャート作成を宣言するという非常に重要な発信を行いました。

 

kai-you.net

 

一方で、国内で有名なもう一つのランキングであるオリコンは特にそういった宣言はしていません。それどころか、記者会見で都合の悪い記者を当てないようにする旧ジャニーズ事務所の対応が「NGリスト」発覚によって問題化しましたが、オリコンはなんと「当てられない記者からの疑問の声をトーンポリシング*1によって押さえつけた井ノ原副社長」を「神対応」として絶賛する記事を連発しました。動画も公開しており、これらはNGリスト発覚後も削除していません。これはメディアとしての反省が全く感じられないものでした。

 

 

オリコンBillboard JAPANが台頭する以前は日本を代表するヒットチャートでしたが、CD偏重チャート設計の適切な説明を怠り、その結果として旧ジャニーズ事務所所属アーティストが新作を発売すれば高確率で1位となる歪なヒットチャート発信を続けています。KinKi Kidsオリコン連続1位記録はギネス記録にも登録されています。オリコンランキングがジャニーズ忖度によって作成されていたのかどうかは断言できないとしても、オリコンが旧ジャニーズブランドの権威付けに少なからず貢献していた事実には正面から向き合う必要があるでしょう。

 

昨年以前から人気となっていたBE:FIRST、JO1、INIが、本問題が顕在化した今年、立て続けにMステ初登場を果たしたことで、昨年以前までMステに競合アーティストを出演させていなかったジャニーズ忖度ぶりが改めて注目されるなど、TV局の共犯ぶりと自己検証の甘さも多く指摘されていますが、その陰に隠れてオリコンの体制があまり追及されていないのは気掛かりです。上記態度を見れば推して図るべしなのかもしれませんが、今自己検証と変革を行わずにいつ行うのでしょうか。

 

2024年度の更新予定

 

以上を踏まえた2024年度のSNS更新予定ですが、まずHot 100の予想・結果発信は従来通り継続します。

 

他方でCD偏重問題が顕在化する見込みとなったHot Albumsに関しては発信を全面休止します。既に殆ど結果をそのまま伝えるだけのようなやる気の無い発信内容にはなっていましたが、それでも徒労感が残る結果となりました。よってBillboard JAPANのチャート設計変更対応有無に拘らず、2024年度は更新休止とします。Billboard JAPANや日本音楽業界の対応次第では、変質が進行してゆくアルバム文化を眺めるだけとなり、もう一生再開しないかもしれません。*2

 

また、ジャニーズ問題に関しては未だ既述したような状況ですので、対応を継続します。

 

その他、もし余裕ができれば、新しい試みとして、日本のヒットチャートの低流動性を解決しうるリカレントルールの可能性ついても具体的に考える時間が取れればと思っています。また、歴代ヒット曲ランキングと同じ要領で、当ブログオリジナルの歴代アーティストランキングも作成してみたいと思っています。

 

尤もこれらは、適切なヒットチャート設計と気兼ねなくエンターテイメントを楽しめる環境があって初めて腰を据えて検討できるものと私は考えています。その意味では現在どちらも盤石とは言えないため、あまり考える余裕は生まれないかもしれません。とはいえ、何れもヒットチャート好きとしては興味が疼く話なので、余裕があれば取り組んでみたいと思います。

 

 

*1:トーンポリシング(Tone Policing)とは、社会的課題について声を上げた相手に対し、主張内容ではなく、相手の話し方、態度、付随する感情を批判することで、論点をずらすこと(https://ideasforgood.jp/glossary/tonepolicing/より引用)。トーンポリシングは主張内容の検討よりも前面に出た時点で本質的議論の妨げをもたらすため、批判する側も批判を聞く側もそれに陥らないよう十分に注意する必要がある。

*2:ただし、歴史的作品人気動向が発生した場合は例外的に発信する場合があります。これはアルバムチャートに限らず昨年来の私の一貫した方針です。