日頃より当ブログおよびSNSをご愛顧いただきまして誠にありがとうございます。『Billion Hits!』管理人です。本記事は、2024年10月に発信した以下記事以来となる更新内容・方針告知となります。
2024年10月以来、ヒットチャートを巡る環境は激変しました。これを踏まえ今般、タイトルのとおりnoteを開設し、そこで『今週のヒット曲』を連載していくことにしましたので本記事はそのお知らせとなります。
以下より経緯を説明します。
「ヒットチャート」を作成する目的
まず「ヒットチャート」が作成されている目的を改めて整理します。一言で言えば、「多様なヒット曲との出会いの場をユーザーに提供すること」です。
ヒットチャートがなければ、ユーザーは基本的に、新しい楽曲の発掘を自身の興味関心のみに従って行うことになります。これはこれで重要かつ楽しいことですが、その外にある楽曲との出会いがなければ、自身の嗜好が固定化され視野が狭くなってしまう懸念があります。せっかく多くの楽曲が存在するのに、これはもったいないことです。
そして音楽業界としても、ユーザーの興味関心に必ずしも当てはまっていない楽曲を訴求していく場を作ることは重要です。どんなアーティストも、最初はファンがいない状態から始まります。今まで興味関心を向けられていなかったユーザーをいかに振り向かせるか、いかにその場を用意するかは、音楽業界が発展していくうえでいつの時代も変わらず重要な課題です。
とはいえ、ユーザーに興味関心の外にある楽曲を聴いてもらうことは容易ではありません。詳しくない分野から、身元不明の楽曲を訴求されても、怪しんで相手にしないというユーザーは多いでしょう。近年はAI生成楽曲が爆発的に増えており、そもそも本当に人が作った曲であるのかという疑いすらかけられてしまうのが、近年の新曲群の苦しい立場になっています。
こうしたユーザーの心理的障壁を引き下げ、新曲群に権威を与えるのが「ヒットチャート」です。多数のユーザーの耳を通り支持を受けた楽曲として上位表示される新曲が身元不明であることは滅多にありません。ユーザーはヒットチャートを通じて、自身の興味関心の外にある新たな楽曲と出会い、時に新鮮な驚きや感動を覚えます。こうして音楽業界は新たな音楽ファンを獲得していくのです。
私も、ヒットチャートを通じた多様な楽曲との出会いに魅了され、音楽ファンになったユーザーの一人です。
現在の公式ヒットチャートが抱える問題
しかし、現在の公式ヒットチャートは、本当に上記目的を達成できているのか疑ってしまうチャート設計上の問題があります。
Billboard JAPAN Hot 100の『CD偏重問題』
『CD偏重問題』の歴史については以下記事で詳述しています。
現在、ヒットチャートとして最も権威を得ているのはBillboard JAPAN Hot 100です。Billboard JAPANは2020年前後にかけて、当時の日本のチャート全般に蔓延していたCD偏重問題の改善を主導し、日本にヒットチャートを復活させました。この経緯を通じて多くの信頼を獲得してきたことに疑いはありません。
しかし、Hot 100にも依然としてCD偏重チャート設計が残っている部分が存在しています。高CD売上曲が、ほぼCD売上のみを頼りにHot 100週間1位を獲得するも、CD売上ポイントが激減する翌週にHot 100週間TOP100圏外にまで大暴落してしまう事例が今でも時折見られているのです。この点については以下記事で詳述しています。
毎週のヒットチャートの顔となる『週間1位』の権威を揺るがすこの推移を放置することは問題であると当ブログでは一貫して主張しており、Billboard JAPANと意見交換も行ってきましたが、かれこれ問題発生から3年近く経過しても改善の動きは見られておらず、双方の見解の不一致が確定している状況です。Billboard JAPANとしては、ファンダムのCD大量購入も音楽市場の中で生じている多様な「ヒット」の一種と見做しているようです。
しかしこの定義が本当にチャートの多様性に寄与しているのかについては疑義があります。CD購入は基本的にアーティストのファンによって行われるものですが、その規模は短期間に大きく増減するものではないので、当該動向には再現性があります。今や高CD売上を記録できるアーティストは、CD売上を重視する特定勢力のみであるため、この動向を放置すると、結局は上位進出する楽曲の多様性が低下していくことになります。上位進出する楽曲数は多くなる一方、その多くがすぐに圏外となるうえ、上位進出するアーティストが固定化されていくということです。
ストリーミングチャートの『旧譜偏重問題』
CD偏重問題は、Billboard JAPANが考える「ヒット」の定義に「楽曲人気要因ではないユーザーアクティビティ」が多分に含まれていることが原因とも言えます。であれば、楽曲人気で形成される純度がより高い指標別チャートが、ヒットチャートを代替できるのではないかと思考が進みます。それがストリーミングチャートです。
しかし、このストリーミングチャートにも、2025年になって問題が顕在化しました。それが以下記事で詳述した『旧譜偏重問題』です。
要は、リスナーが気に入った楽曲を半永久的に聴き続けるアクティビティも再生回数としてチャートに反映されるようになったことで、定番人気楽曲が半永久的にチャート上位に居座り続けるようになってしまい、チャートを通じた「多様な楽曲との出会い」が阻害されるようになってしまったという問題です。
CD時代では、基本的に売上のみによってヒットチャートが作成され、一度購入したお気に入りのCDを半永久的に聴き続けるユーザーアクティビティはヒットチャートに反映されていませんでしたが、市場全盛期にこれがヒットチャートに問題を及ぼすことはなく、売上チャートだけでヒットチャートとしての役割は十分に果たせていました。大半の視聴行動がオンラインデータ化・チャート化されるようになってしまった現代ならではの新しい問題です。
Billboard JAPANはヒットチャートとしてこの問題に対処し、2025年度下半期より『リカレントルール』(定番人気獲得済の旧譜のポイントを引き下げるルール)を導入しました。この措置は、「ヒットチャート」とはストリーミングチャートではなくBillboard JAPAN Hot 100である、ということを強烈に刻印させるものでした。
『今週のヒット曲 TOP50』
以上までのとおり、Billboard JAPAN Hot 100もストリーミングチャートも、それぞれ異なる問題により、ヒットチャートとして期待される「多様なヒット曲と出会う場を提供する」役割が十分に果たせていないのではないか、というのが現在私が抱いている問題意識です。
私個人としても、こうした問題が重なった2025年は、ヒットチャートを通じた多様なヒット曲との出会いに乏しい一年になってしまいました。
であれば、誰でも気軽にプレイリストを作成できるこの時代、「多様なヒット曲との出会い」の場は自分で用意するしかないという結論に達しました。それがnoteの開設と『今週のヒット曲』連載開始に至った理由です。
なぜnoteで連載するのか
はてなブログでは「過去から現在までに累積しているヒットデータ」を整理する場としています。一方、『今週のヒット曲』は週次で最新のヒット曲をリアルタイムで把握していく内容となります。記事数も週次で増えていくとなると、はてなブログでの連載は記事の整理が難しくなります。Xのような短文投稿SNSで収まる情報量でもないので、noteを開設することにしました。
作成方法
要はCD偏重問題も旧譜偏重問題もないチャートが理想ということで、ストリーミングチャートをベースとしつつも独自にリカレントルールを取り入れる形でチャートを設計します。
ストリーミングチャートといってもその特色はDSPによって様々で、中には不透明な形で再生回数を稼いでいる楽曲や、ファンの大量再生に特典を付与する形で上位進出する楽曲を黙認しているDSPもあります。
ここでは、そのような要素がなく、市場シェアも国内最大規模を誇るApple Music週間ランキングをベースとします。
このApple Music週間ランキングにはリカレントルールがありませんので独自に設定します。
このチャートを作成する第一目的は「多様な新しいヒット曲との出会い」であり、市場動向や楽曲人気動向の把握分析はそれに劣後します。よって、一定の基準を満たした旧譜に対しては、Billboard JAPANのようなポイント減算ではなく、米Billboardのような除外措置を採ることが効果的です。具体的には、「52週ランクインした楽曲は次週以降除外」とします。(Apple Music週間ランキングの一般公開は2020年9月からとなっていますので、それ以降に記録されている登場週数データを用います。)
さらに多様性を確保するため、イギリスのヒットチャートOCC(オフィシャル・チャート・カンパニー)が導入しているルールに倣い、同一アーティスト名義の楽曲ランクイン数は上位3曲までとする制限を設けます。
こうしてApple Music週間ランキングTOP100から定番人気楽曲や同一アーティストの楽曲を除外していくとなんと半分の50曲前後が除外されることになります。いかにストリーミングチャートが多様性に乏しい内容になっているかが実感されます。よって必然的に『今週のヒット曲』はTOP50までの作成が基本となります。
抽出された楽曲数が50曲に満たない場合は、前週ランクインしていて当週圏外となった楽曲を、前週順位が高い曲から順に、楽曲数が50曲になるまで並べます。
こうして作成したランキングプレイリストが『今週のヒット曲 TOP50』となります。ここに入っている50曲は全て、十分な楽曲人気を有し、今まさに流行している「ヒット曲」であると、自信を持って断言できます。
プレイリストは水曜~木曜あたり、noteは木曜~週末までにかけて毎週更新を行います。
まとめ
『今週のヒット曲』プレイリスト作成とnote連載は、多様なヒット曲との出会いを求める私自身の整理のために行うことが主目的です。しかし、何でもシェアできるこの時代にそれを公開しない理由も特にないですし、何らかの発見が私以外の方にも生じるようなことがあれば、ヒットチャートの必要性を信じてやまない私にとっては望外の喜びです。
ヒットチャートの必要性については米津玄師さんも以前発言しています。
――チャートは世の中に必要だと思いますか。
米津玄師:それが全てになってしまうとつまらない世の中になってしまうと思いますが、チャートのようなわかりやすいものは必要だと思います。それが大きく音楽に潜り込んでいくきっかけになると考えています。
もちろんBillboard JAPANやApple Musicなどの公式ヒットチャートも、市場動向や楽曲人気動向把握分析のためには引き続き重要な存在です。今後の更なる発展と音楽業界の活性化、そして何よりも、多種多様なヒット曲の誕生と、それらの楽曲との出会いに、引き続き期待していきたいと思います。