この記事では2025年上半期のヒット曲をBillboard JAPANを通じて振り返る。
Billboard JAPAN Hot 100の2025年上半期TOP20は以下のとおりとなった。

Billboard JAPAN 2025年上半期チャート発表、Mrs. GREEN APPLEが“JAPAN Hot 100” “Hot Albums” “Artist 100”首位 https://t.co/x2VfNWpJNd
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2025年6月5日
Mrs. GREEN APPLE、三大総合チャート完全制覇
Billboard JAPANの三大総合チャートは、楽曲チャートのHot 100、アルバムチャートのHot Albums、アーティストチャートのArtist 100である。2025年上半期はMrs. GREEN APPLEがこの三大チャートを完全制覇した。
Hot 100
上位曲ピックアップ
Mrs. GREEN APPLE「ライラック」
2025年上半期の1位はMrs. GREEN APPLE「ライラック」となった。
2024年4月に配信された本曲は、アニメ『忘却バッテリー』の主題歌に起用されたことや、「青と夏」のアンサーソングとして位置づけられる青春ポップロックナンバーだったことから大人気を博し、2024年の年間5位を獲得していたが、2025年度に入ってからも人気が衰えないどころか、2024年の日本レコード大賞を受賞したことなどをはじめとした年末音楽番組での披露によって人気が再び拡大を始めた。
さらにMrs. GREEN APPLEは、年明けに放送されたバラエティ特番『さんま・玉緒のあんたの夢かなえたろか30周年SP』に出演した。番組は、休校が決まり新年度から離れ離れになることとなった北海道標茶町の小学校の児童4名のもとへメンバーがサプライズ訪問し、児童たちを勇気づける内容。そこでの温かい交流や、児童たちに真摯に向き合うメンバーの人柄は大きな評判を呼んだ。
この番組内では「ライラック」と「ケセラセラ」が児童たちのために演奏され、感動する児童たちの涙にもらい泣きする視聴者も続出した。この番組の大反響と、前年末の音楽特番出演効果が重なり、「ライラック」の楽曲人気は発売から9ヶ月が経過した2025年1月に絶頂を迎えた。Hot 100の総合ポイント週次推移にその模様ははっきりと表れている。

特にバラエティ番組への出演は、普段音楽番組を見ない層へのリーチも可能とし、既存のリスナー層を超えた楽曲認知拡大に寄与したと思われ、それもあってのここにきてのピーク更新となった。
こうした動向によって「ライラック」は高水準の楽曲人気の「持続力」が歴史的な規模となった。Billboard JAPAN Streaming Songsでは、通算31週で週間再生回数1,000万超えを記録したが、これはYOASOBI「アイドル」の29週を上回る歴代最多記録となった。

各指標の累計は既にストリーミング6億再生、MV1.5億再生、フル配信25万ダウンロードを突破しており、今なお自身最速ペースで記録更新を続けている。
ロゼ & ブルーノ・マーズ「APT.」
ロゼ & ブルーノ・マーズ「APT.」は2024年10月に配信されたBLACKPINKのROSÉとBruno Marsによるコラボ曲である。韓国の飲み会でのゲームから着想を得て制作された本曲は、コールのようにタイトルを繰り返すサビが全世界的にインパクトを与え、日本でも大人気を博し、2025年上半期の2位を獲得した。累計はストリーミング2億再生を突破している。
Creepy Nuts「オトノケ」
Creepy Nuts「オトノケ」はアニメ『ダンダダン』主題歌として2024年10月に配信された。本曲はオカルトをテーマにしたアニメの内容から着想が得られており、霊が人間の感情にシンクロして取り憑く設定をアーティストとリスナーの関係に当てはめ、「物の怪」ならぬ「音の怪」として表現している。こうしたユニークさが反響を呼んだ本曲は2025年上半期の7位を獲得。各指標の累計はストリーミング2億再生、MV7,000万再生、フル配信10万ダウンロードを突破している。
CUTIE STREET「かわいいだけじゃだめですか?」
「かわいいだけじゃだめですか?」は、FRUITS ZIPPERなども所属するアイドルプロジェクト「KAWAII LAB.」から誕生したCUTIE STREETが2024年9月に配信したデビュー曲である。このプロジェクトは、メンバー全員が主役という発想で、各自の個性的な可愛さを前面に押し出しながら、印象的かつ自己肯定感を高める歌詞のアイドルソングをパフォーマンスするグループを複数輩出しており、現在一大ムーブメントを築き上げているが、その中でもTikTokでの反響も大きい本曲が2025年の上半期8位を獲得するほどの高人気となった。累計では既にストリーミング1.1億再生、MV5,000万再生を突破している。
このコンセプトはK-POPグループとも差別化されていることで、近年ほとんど楽曲人気を獲得できていなかった国内女性ダンス&ボーカルグループに新たな潮流と久々の活況をもたらしている。これまでストリーミング1億再生突破曲を持つ国内女性ダンス&ボーカルグループはNiziUと新しい学校のリーダーズしかおらず、K-POPに楽曲人気の国内シェアを大きく譲り渡していた。
国内女性ダンス&ボーカルグループが、K-POPをはじめとした国外勢に楽曲人気の国内シェアを大きく譲り渡していることは、日本でのストリーミング1億再生突破曲のジャンル別内訳表を見れば一目瞭然である。男性ダンス&ボーカルグループの状況と見比べても、国内勢の占める割合は一際小さい。 https://t.co/ZidzXxo5Yc pic.twitter.com/tith980rT1
— ブログ『Billion Hits!』管理人(あさ) (@musicnever_die) 2025年3月11日
しかし2025年上半期はCUTIE STREETとFRUITS ZIPPERが立て続けに億超え楽曲を輩出した。1年に2組以上の国内女性ダンス&ボーカルグループがストリーミング1億超え楽曲を輩出したのは2025年が初である。

2025年は、久しく楽曲人気の盛り上がりから遠ざかっていた国内女性ダンス&ボーカルグループにスポットライトが当てられる年となるかもしれない。今後の展開が注目される。
リカレントルール導入
さて、上半期TOP10を見ると、1位の「ライラック」を筆頭に半分の5曲がMrs. GREEN APPLEの新旧大ヒット曲で占められている。それ以外の5枠に入った楽曲は、全て前年度以前に発売された楽曲となった。
この結果に違和感を持つ人も多いのではないだろうか。2025年上半期に新曲をヒットさせたアーティストがMrs. GREEN APPLEしかいないのかというと決してそうではない。サカナクション「怪獣」や米津玄師「Plazma」「BOW AND ARROW」、HANA「ROSE」など、トレンドを窺い知るに欠かせないヒット曲は多く出現した。しかしHot 100の上半期TOP10には、これらの楽曲はランクインできなかった。
これは単純に当該楽曲群のヒット規模がTOP10に及ばなかったという話で片づけられるものではない。2025年上半期は、Hot 100に占める旧譜率が看過できない規模になっていたのである。当ブログでは、2025年上半期のTOP10の様相がほぼ固まったタイミングで、ヒットチャートに占める旧譜率が高まり過ぎている可能性や、チャート設計改善の検討必要性を以下記事で問題提起した。
これはMrs. GREEN APPLEへの批判ではなくヒットチャート設計の問題を取り上げたものであるが、頭抜けた人気を獲得したMrs. GREEN APPLEの旧譜の大量ランクインが、この問題を象徴する具体的な事例となった。
幸いなことに、Billboard JAPANにも同様の問題意識があった模様で、2025年下半期よりリカレントルール(旧譜のポイントを減算するルール)を導入することが発表された。
Billboard JAPANチャート、リカレントルールを2025年度下半期チャートより導入https://t.co/jwsAorQU9Z
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2025年6月2日
このルールの導入により、今後の年間チャートでは、その年に発売された新曲のヒットに適切にスポットが当たるようになっていくことが期待される。もちろんその中では、旧譜だけでなく新曲を次々と大ヒットさせているMrs. GREEN APPLEの圧倒的人気も引き続き可視化されていくものと思われる。適切な新陳代謝の実現による今後の日本音楽業界の活性化がますます期待される。
Hot Albums
2025年上半期TOP20は以下のとおりとなった。

Mrs. GREEN APPLE『ANTENNA』
1位は『ANTENNA』。2023年7月に発売されたMrs. GREEN APPLEの5thオリジナルアルバムであり、Hot 100で4位となった「ケセラセラ」や同6位の「Soranji」、同29位の「Magic」、同83位の「ANTENNA」、同85位の「私は最強」といった大ヒット曲群が収録されている。
「ケセラセラ」
特にアルバム人気を牽引した「ケセラセラ」は幅広い世代の背中を後押ししてくれる人生応援歌であり、前述したバラエティ番組『さんま・玉緒のあんたの夢かなえたろか30周年SP』での演奏が大きな反響を呼んだ。本曲は2023年4月配信曲だが、配信から2年以上が経過した今もなお高水準の人気を維持し続けている。各指標の累計はストリーミング6億再生、MV1億再生を突破している。
「アルバムチャートのCD偏重問題」完全解決
実は『ANTENNA』が上半期1位となったことは非常に大きな意味を持つ。この期間にCD161万枚を売り上げたSnow Man『THE BEST 2020 - 2025』を、CD売上4万枚*1の『ANTENNA』がストリーミングのポイントで上回ったのである。
2023年より当ブログでは、総合アルバムチャートにおけるCD売上のポイント換算率が高くなり過ぎていることを「アルバムチャートのCD偏重問題」として示し、当時集計対象となっていなかったストリーミング指標もHot Albumsの構成要素として追加すべきではないかと主張していたが、2024年12月、ついにHot Albumsへのストリーミング指標の導入が実現した。
ビルボード・ジャパン、12/26より“Hot Albums”チャートの算出方法を変更 https://t.co/jKlIRbSWp3
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2024年12月18日
これによりHot Albumsの様相は劇的に変貌した。2024年までの年間チャートはCD売上チャートとほぼ同等の結果となっており、総合アルバムチャートの存在意義が疑問視されても仕方がない結果となっていたが、2025年上半期チャートでは、「例えCDを161万枚売り上げても総合1位になれるとは限らない」という結果が出力された。これはCDに限らず配信でも支持されているアルバムの人気が漏れなく把握可能になったことを意味しており、「アルバムチャートのCD偏重問題」が完全解決したと言うには十分な結果である。
なおSnow Man『THE BEST 2020-2025』は当初CD限定発売であったためCD指標のポイントしか獲得していなかったが、4月に配信解禁されたことで高水準のストリーミングポイントを上積みするようになっている。そのため、年間では『ANTENNA』を再逆転し1位となる可能性がある。その場合でも、CD売上だけで年間総合1位が確定する状況でなくなったことは揺るがない事実であるため、結論が変わることは無い。
Artist 100
2025年上半期TOP20は以下のとおりとなった。

1位はMrs. GREEN APPLE。Hot 100には「ライラック」や『ANTENNA』収録曲のほかにも、3位に「ビターバカンス」、5位に「ダーリン」、13位に「青と夏」、14位に「点描の唄 feat.井上苑子」、18位に「僕のこと」、19位に「familie」、20位に「ダンスホール」、24位に「クスシキ」、33位に「インフェルノ」、34位に「コロンブス」、42位に「ロマンチシズム」、51位に「StaRt」、64位に「Dear」、100位に「ブルーアンビエンス (feat.asmi)」と、実に20曲もの楽曲をランクインさせた。さらにHot Albumsには『Attitude』も3位にランクインしており、これらのポイントが牽引する形での1位獲得となった。
Mrs. GREEN APPLE「ビターバカンス」
Hot 100で「ライラック」に次ぐ高順位となった「ビターバカンス」は映画『聖☆おにいさん THE MOVIE~ホーリーメンVS悪魔軍団~』の主題歌として書き下ろされ、2024年11月に配信された楽曲である。日常や現実に疲れてしまったときに休息を取ることを優しく後押ししてくれるポップナンバーとして多くの支持を集め、累計は早くもストリーミング1.5億再生を突破している。
まとめ
以上がBillboard JAPANを用いた2025年上半期のヒットシーンの振り返りである。この期間でBillboard JAPANは二つの大きな決断を下した(Hot Albumsへのストリーミング指標追加、Hot 100・Hot Albumsへのリカレントルール導入)。これにより、ヒットチャートの様相は新時代に突入したと言えるほどに激変した。2020年代前半が前年で終わり、後半に突入した今、新たにどのような楽曲が現れていくこととなるのか、目が離せない。
(追記)年間チャート結果が公表されたため、結果分析記事をアップしている。
(前年2024年のヒットシーン振り返り記事はこちら↓)
*1:2024年度以前までの売上も含めた累計は約30万枚と推定される