安室奈美恵は1992年に女性ダンスアイドルグループSUPER MONKEY'Sのメインボーカルとして『恋のキュート・ビート/ミスターU.S.A.』でデビューした女性ソロアーティスト。グループ活動を経て1995年にソロ活動をスタートさせ、2018年に引退するまで第一線で活動を続け、ヒット曲を大量輩出した。日本レコード協会によれば、これまでにダウンロード売上10万以上を記録した曲は37曲で、認定総ダウンロード売上は830万(歴代10位)となっている。これらのデータをランキング化した表は以下のとおりである。この表をもとにしながら、安室奈美恵のヒット史を振り返る。
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1992年-2006年
安室奈美恵がデビューした時期はCDバブル期であり、当時の楽曲人気指標の主流はCD売上だった。ダウンロード市場が拡大し、CDに代わる音楽試聴方法の主流となったのは2000年代中盤である。したがって、デビューから2000年代中盤の楽曲人気を把握するには、CD売上を中心に見ることになる。一方でこの時期の楽曲でも、人気が長期にわたり持続している曲は配信売上認定を受けているほか、2000年代後半になる程に配信売上がCD売上を上回る楽曲が増えてゆく。
デビューから2008年までに発売された楽曲のダウンロード売上データは以下のとおり。
小室哲哉プロデュース時代 ~CD売上全盛期~
安室奈美恵を中心としたグループSUPER MONKEY'Sはデビュー後しばらくヒット曲が出ず、メンバーの入れ替わりも多かった。1994年にはグループ名を安室奈美恵 with SUPER MONKEY'Sに改名し、安室が単独ボーカルを務めるようになる。
初のヒット曲は、1995年1月にユーロビート路線第一弾として発売されたシングル「TRY ME 〜私を信じて〜」。本人出演のミナミスポーツCMソングに起用されたことなどから上昇型ロングヒットとなり、CD売上チャート週間最高8位ながら73万枚を売り上げた。
この曲のヒットでユーロビート路線は第三弾まで続き、第二弾の「太陽のSEASON」は61万枚、第三弾の「Stop the music」は52万枚を売り上げた。なお、第二弾から名義が安室奈美恵単独になっているが、引き続きバックにSUPER MONKEY'Sがいる体制に変更はない。
ユーロビート三曲などを収録した1stアルバム『DANCE TRACKS VOL.1』は186万枚を売り上げる大ヒットとなった。なお年間では1995年21位→1996年22位と集計割れを起こした。この時期までの楽曲をまとめたベストアルバム『ORIGINAL TRACKS VOL.1』も1996年に発売され、41万枚をセールスしている。
1stアルバム発売の僅か9日後となる1995年10月には次のシングル「Body Feels EXIT」をリリースし、88万枚をセールス。この曲から小室哲哉のプロデュースが始まる。
続いて12月にもシングル「Chase the Chance」を発売し、136万枚を売り上げて自身初のミリオンセラーを達成し、年間でも1996年の10位を獲得。この曲までSUPER MONKEY'Sが参加していた。SUPER MONKEY'Sは翌年以降MAXとして活躍していくこととなる。
1996年3月にはシングル「Don't wanna cry」が138万枚を売り上げる大ヒットとなり、年間でも1996年の9位を獲得。この曲で1996年の日本レコード大賞を受賞した。*1
このレコード大賞受賞のインパクトが強かったためか、この曲は配信でも10万ダウンロードを売り上げている。実は90年代に発売された安室奈美恵の楽曲で10万ダウンロード以上を記録した曲はこの曲を含めて2曲しかない。90年代に大ヒット曲を連発した安室奈美恵だが、この曲はその中でも特に人気が高いことが読み取れる。
安室奈美恵 / 「Don't wanna cry」Music Video
6月にはシングル「You're my sunshine」を発売し、109万枚をセールス。ミリオンシングル3曲を収録した2ndオリジナルアルバム『SWEET 19 BLUES』は335万枚を売り上げる超特大ヒットを記録し、年間でも1996年の2位にランクインした。アルバムからのリカットシングル『SWEET 19 BLUES/Joy』も45万枚をセールスした。
1996年11月にはシングル「a walk in the park」を発売し、これも106万枚を売り上げるミリオンヒットに。
そして1997年2月には自身最大のヒット曲「CAN YOU CELEBRATE?」が発売された。この曲は自身初のウェディング・ソングで、最高視聴率28.3%を記録した大ヒットドラマ「バージンロード」の主題歌にも起用されたことで爆発的な人気となり、シングルCD売上229万枚を記録して1997年の年間1位を獲得した。
この曲は配信でも25万ダウンロードを記録しており、90年代に発売された曲では最多の配信売上を記録している。CDと配信の双方で実績を残していることからも、自身の代表曲筆頭であることに疑いの余地はない。
安室奈美恵 / 「CAN YOU CELEBRATE?」Music Video
この年の10月に安室奈美恵がSAMとの結婚を発表すると、安室の将来を予言していた曲として再び話題になり、そのタイミングで結婚記念祝福盤として、この曲のリミックスバージョンを表題曲にしたシングル「CAN YOU CELEBRATE? [Wedding Mix] 」を発売、こちらも別途45万枚をセールスした。*2
1997年は他に、シングル「How to be a Girl」が77万枚、「Dreaming I was dreaming」が55万枚をセールス。3rdアルバム『Concentration 20』も発売され、193万枚をセールスして年間7位をマークした。
1998年は産休に入り、その間にこれまでのヒット曲をまとめたベストアルバム『181920』(読み:ワン・エイト・ワン・ナイン・ツー・ゼロ)が発売され、169万枚をセールスした。年末には活動を再開し、シングル「I HAVE NEVER SEEN」を発売。65万枚をセールスした。
1999年は3枚のシングルを発売。「RESPECT the POWER OF LOVE」が49万枚、「toi et moi」が27万枚を売り上げた。「SOMETHING 'BOUT THE KISS」は8cm盤と12cm盤が発売され別集計となり、12cm盤が25万枚、8cm盤が11万枚を売り上げた。合算すれば36万枚となる。最高位は12cm盤が記録した3位だが、もし合算されていれば初登場1位となっていた。
2000年は2枚のシングルと2枚のオリジナルアルバムを発売。シングルは「NEVER END」が64万枚、「PLEASE SMILE AGAIN」が21万枚をセールス。アルバムは『GENIUS 2000』が80万枚、『break the rules』が33万枚をセールスした。
セルフプロデュースへの移行 ~ダウンロード市場開拓~
2001年にはステップアップのため小室プロデュースを離れることとなり、8月に離脱後初となるシングル「Say the word」を発売した。表題曲はデンマークの歌手、ジャネット・デブの同名曲のカバーで、安室本人が日本語詞を作詞している。安室奈美恵はほとんど作詞をしない歌手で、貴重な本人作詞曲である本曲からは今後に向けた等身大の決意が伺える。CD売上はミリオンヒットを連発していた全盛期と比べると下降していたが、後年になるにつれ小室プロデュース離脱後の新しい路線が受け入れられるようになると、新路線第一弾である本曲にも注目が集まる機会が増えた。その結果、2015年6月になって配信売上が10万ダウンロードを突破。長い時間をかけてじわじわと人気が浸透した楽曲になった。
2002年には2枚のシングルと1枚のベストアルバムを発売。ベストアルバム『LOVE ENHANCED ♥ single collection』は「181920」の続編的内容になっており、収録曲のほとんどがリアレンジされたバージョンになっている。CD売上は30万枚を記録した。
シングル2枚のCD売上は何れも10万枚を割ってしまったが、このうち「Wishing On The Same Star」は2019年3月になって配信売上が10万ダウンロードを突破した。「Say the word」もそうだったように、小室プロデュース離脱と楽曲路線の変更が広く受け入れられるようになるまでには長い時間を要しており、この時期の楽曲は後年になって配信売上認定を受けたケースが多い。
2003年は3枚のシングルと1枚のオリジナルアルバムを発売。アルバム『STYLE』が22万枚をセールスしたが、シングル売上はCD、配信何れも10万を下回った。売上はこの年が底になり、翌年以降は徐々に回復していく。また、日本のヒップホップ/R&Bアーティストおよびプロデューサー陣と組んだスペシャルプロジェクトSUITE CHICとしても活動し、アルバム『WHEN POP HITS THE FAN』を発売。19万枚をセールスした。
2004年は3枚のシングルをリリース。1枚目の「ALARM」はCD売上チャートで自身唯一のTOP10落ちとなってしまったが、売上は前年のシングルから若干回復していた。
2枚目の「ALL FOR YOU」は最高視聴率14.8%を記録したドラマ「君が想い出になる前に」主題歌に起用されたバラードナンバー。この曲は受けが良く、CD売上が7作ぶりに10万枚を突破。配信でも2014年になって10万ダウンロードを突破した。
この勢いに乗り、3枚目の『GIRL TALK/the SPEED STAR』もCD10万枚を記録。徐々にR&Bナンバーが受け入れられるようになってゆく。配信では「GIRL TALK」が2014年になって10万ダウンロードを突破した。
2005年に入ると勢いの復活が鮮明になり、4月発売のシングル「WANT ME, WANT ME」もCD10万枚を記録すると、7月発売の7thオリジナルアルバム『Queen of Hip-Pop』が45万枚をセールスした。11月には両A面シングル『White Light/Violet Sauce』を発売し、「White Light」が2017年になって10万ダウンロードを突破した。
2007年には更に勢いが増すこととなった。そのきっかけとなったのが、1月に発売されたシングル「Baby Don't Cry」のヒットである。表題曲は最高視聴率14.7%を記録したドラマ「ヒミツの花園」主題歌に起用されたミディアムナンバー。切なさを抱えながらも前を向こうとする人を優しく、しかし力強く後押しする歌詞が支持を集め、配信で75万ダウンロードを記録した。配信売上推移は以下のとおり。
- 配信開始1ヶ月後の2007年2月に10万ダウンロード突破
- 配信開始4年3ヶ月後の2011年4月に50万ダウンロード
- 2012年2月に60万ダウンロード
- 配信開始10年2ヶ月後の2017年3月に75万ダウンロード達成
この曲のCD売上は14万枚で、上記のとおり当初はCDと配信は同じくらいのペースで売上を重ねていた。しかし楽曲人気の長期にわたる持続は配信売上によって可視化されており、10年かけて75万ダウンロードに到達している。
安室奈美恵 / 「Baby Don't Cry」Music Video
2007年4月にはシングル「FUNKY TOWN」を発売し、配信で10万ダウンロードを記録。なおCD売上は10万未満。この年以降、CD売上よりもダウンロード売上の方が多くなるケースが増えてゆく。
2007年6月には8thオリジナルアルバム『PLAY』を発売し、54万枚をセールス。2000年発売の『GENIUS 2000』以来7年ぶりとなる50万超えを果たし、セールス復活を印象づけた。アルバム曲のうち、リード曲として扱われた「Hide & Seek」が10万ダウンロードを記録した。
2008年には3曲A面シングル『60s 70s 80s』を発売。このシングルは、60年代、70年代、80年代の洋楽から一曲ずつ選曲し、リメイクした3曲を収録した。この企画がヒットし、CD売上は29万枚となり、2000年の「PLEASE SMILE AGAIN」以来7年ぶりとなる20万超えを達成。1998年の「I HAVE NEVER SEEN」以来10年ぶりとなるCD売上チャート週間1位も獲得した。
収録曲3曲全てが配信でも好成績を残しており、60年代のスプリームスの代表曲「Baby Love」をリメイクした「NEW LOOK」が50万ダウンロード、70年代のアレサ・フランクリンのヒット曲「Rock Steady」をリメイクした「ROCK STEADY」が10万ダウンロード、80年代のアイリーン・キャラのヒット曲「What a Feeling」をリメイクした「WHAT A FEELING」が25万ダウンロードを記録した。
「NEW LOOK」の配信売上推移は以下のとおり。
- 配信開始から僅か5日で10万ダウンロード突破
- 配信開始5ヶ月後の2008年7月に25万ダウンロード
- 配信開始4年9ヶ月後の2012年12月に35万ダウンロード
- 配信開始5年11ヶ月後の2014年1月に50万ダウンロード達成
CDの初動売上も11万枚であり、「Baby Don't Cry」同様初速はCDと配信で大差ない動きだったが、その後の売上の伸ばし方が異なっている。やはり持続的な人気を可視化するのには、時間が経つと店頭から消えてしまうCDの売上よりも、配信売上の方が適している。
「NEW LOOK」はBillboard JAPAN Hot 100でも週間1位を獲得した。
このシングルがヒットした直後という最高のタイミングでベストアルバム『BEST FICTION』が発売され、累計155万枚を売り上げる大ヒットとなった。ミリオンセラーは1998年のベスト『181920』以来10年ぶり。年間チャートでも2008年の年間2位を獲得。1位のEXILE『EXILE LOVE』との差は2万枚と非常に惜しい僅差だった。なお累計では『EXILE LOVE』を上回っている。
ベストアルバムには新曲も2曲収録され、何れも配信売上認定を受けた。売上は「Do Me More」が25万ダウンロード、「Sexy Girl」が10万ダウンロードとなっている。
2009年-2018年
『BEST FICTION』の大ヒットにより、セールスは完全復活したと同時に、小室プロデュース離脱後のR&Bヒップホップ路線への傾倒が完全に受け入れられ、時代が安室に追いついたなどと形容された。2009年以降は、市場そのものが縮小したCDに代わり、配信で安定した売上を残すようになり、引退発表まで売上が衰えることはなかった。この持続的な人気が引退ベスト『Finally』の特大ヒットに繋がった。
この間に発売された楽曲を配信開始日順に並べたダウンロード売上データは以下のとおり。
「Love Story」ミリオンヒット
2009年はまず3月にシングル『WILD/Dr.』を発売し、CD11万枚をセールス。配信でも、「WILD」「Dr.」ともに10万ダウンロードを記録した。「WILD」はBillboard JAPAN Hot 100でも週間1位を獲得している。
12月には両曲を収録した9thオリジナルアルバム『PAST < FUTURE』を発売し、57万枚をセールスした。Billboard JAPAN Top Albums Salesでは2010年の年間7位を獲得。アルバム曲のうち、「The Meaning Of Us」が10万ダウンロードを記録した。
2010年は7月にシングル『Break It/Get Myself Back』を発売。両曲ともに10万ダウンロードを記録した。ただ、「Get Myself Back」は2011年4月に10万に到達したのに対し、「Break It」は2014年1月の到達となっており、「Break It」がCD発売から1週間遅れて配信されたことを考慮する必要はあるとしても、ここから両曲の人気の差を読み取ることが可能である。
2011年は大活躍の年となった。まず4月にコラボレーション楽曲を集めた企画ベスト『Checkmate!』を発売し、48万枚をセールスした。Billboard JAPAN Top Albums Salesでは2011年の年間7位を獲得。収録曲のうち、CD発売に先行して配信開始された楽曲が配信売上認定を受けており、「Wonder Woman feat. AI & 土屋アンナ」が25万ダウンロード、「make it happen feat. AFTERSCHOOL」が10万ダウンロードを記録している。また、2008年に発売されたDOUBLEのベストアルバムに新曲という形で収録され、配信で10万ダウンロードを記録していたコラボレーション楽曲「BLACK DIAMOND」(DOUBLE & 安室奈美恵名義)も収録された。
7月には3曲A面シングル『NAKED/Fight Together/Tempest』を発売し、CD10万枚をセールス。配信売上ではこの3曲の間にかなりの差がついており、1曲目の「NAKED」が10万ダウンロード、2曲目の「Fight Together」が50万ダウンロード、3曲目の「Tempest」が認定なしという結果になっている。
「Fight Together」の配信売上推移は以下のとおり。
- 配信開始から2週間で10万ダウンロード突破
- 配信開始1年4ヶ月後の2012年11月に20万ダウンロード
- 配信開始2年6ヶ月後の2014年1月に25万ダウンロード
- 配信開始6年5ヶ月後の2017年12月に50万ダウンロード達成
この曲のみシングルCD発売に先駆けて2週間前から先行配信されていたことは考慮すべきとしても、申し分ない配信初動売上をマーク。その後は比較的コンスタントに配信売上を積み上げ続けていることが読み取れる推移となっている。
この曲は人気アニメ「ONE PIECE」の主題歌となっており、楽曲に触れる機会が多くあったことから、この好動向に繋がったものと考えられる。楽曲内容もアニメに沿った前向きな曲調と歌詞で構成されており、オープニングを飾る楽曲としてはうってつけであった。
安室奈美恵 / Single「NAKED / Fight Together / Tempest」15sec TV-SPOT
そして12月には大ヒット曲が誕生した。シングル『Sit! Stay! Wait! Down!/Love Story』の2曲目に収録されていた「Love Story」である。この曲は最高視聴率18.4%を記録した月9ドラマ「私が恋愛できない理由」主題歌に起用されたバラードナンバー。女性のライフスタイルが多様化している世相を捉えたドラマにリンクした歌詞などが支持を集め、配信ミリオンを達成した。
この曲がヒットした当時はガラケーからスマホへの移行期で、これに伴い音楽配信も着うたフル市場が急速に縮小し、ダウンロードはiTunesなどのPC配信がメインとなりつつあった。本曲は発売から8ヶ月後の2012年8月に配信ミリオンを突破したが、その内訳は、上記移行期を象徴するように着うたフル50万、PC配信50万と見事に二分された。最終的にPC配信売上は75万まで伸ばし、合計売上は125万ダウンロードとなっている。
上記などの偉業により、当ブログでも「Love Story」を2010年代のヒット曲十選に選出している。
安室奈美恵 / 「Love Story」Music Video
また、シングルCDの1曲目に収録されていた「Sit! Stay! Wait! Down!」も同ドラマ挿入歌に起用され、25万ダウンロードを記録している。
なおシングルCDの売上は16万枚となっており、すでにCD売上で楽曲人気を測る時代は終焉していた。そもそもCD売上だけ見ても「Sit! Stay! Wait! Down!」と「Love Story」のどちらが人気だったのかが分からないので、つくづく楽曲人気指標としては不向きである。
2012年はシングルCD表題曲「Go Round」と配信シングル「Damage」が10万ダウンロードを記録。6月には10thオリジナルアルバム『Uncontrolled』が発売され、54万枚をセールスした。Billboard JAPAN Top Albums Salesでは2012年の年間7位を獲得。アルバム曲のうち、全英詩曲「ONLY YOU」が10万ダウンロードを記録している。
2013年はCDシングル1枚、配信シングル3曲、アルバム1枚を発売。シングルでは、5月に配信された「Contrail」が配信売上認定を受けており、売上は25万ダウンロードとなっている。この曲も収録したアルバム『FEEL』は39万枚をセールス。Billboard JAPAN Top Albums Salesでは2013年の年間9位を獲得した。
2014年はまず1月にCDシングル「TSUKI」を発売し、表題曲は25万ダウンロードを記録。6月には、この曲も収録したバラードベスト『Ballada』を発売し、44万枚をセールス。Billboard JAPAN Top Albums Salesでは2014年の年間3位を獲得した。
11月にはCDシングル「BRIGHTER DAY」を発売し、表題曲が25万ダウンロードを記録。なおこの曲はヒットの実績としては十分であるにもかかわらず、アルバムに収録されることがないまま本人が引退してしまった。アルバム完全未収録となったヒットシングルは、この曲と1999年にCDで27万枚を売り上げた「toi et moi」の2曲しかない。
2015年はCDシングル1枚とアルバム1枚を発売。アルバム『_genic』は全曲新曲で構成するという攻めた内容だったが、25万枚をセールスするヒットとなった。Billboard JAPAN Top Albums Salesでは2015年の年間10位を獲得した。
電撃引退発表、ベストアルバム『Finally』ダブルミリオン
2016年7月には新たな代表曲が誕生した。シングル「Hero」はNHKリオデジャネイロ五輪・パラリンピックのテーマ曲として制作された。アスリートに限らない普遍的な応援歌で、希望をもらえる前向きな楽曲内容が五輪を通じて広く普及し支持されたことから好調な売上を記録し、配信では75万ダウンロードを記録した。推移は以下のとおり。
- 配信開始1ヶ月後の2016年8月に10万ダウンロード突破
- 配信開始6ヶ月後の2017年1月に25万ダウンロード
- 配信開始1年2ヶ月後の2017年9月に50万ダウンロード
- 配信開始1年9ヶ月後の2018年4月に75万ダウンロード達成
この曲が50万ダウンロードを達成した2017年9月は安室奈美恵が引退を発表した月である。この引退発表で売上が再加速し、50万ダウンロードを突破したという推測が成り立つ。実際にBillboard JAPANのChart Insight(楽曲の指標別動向が分かるサービス)でこの曲の配信売上にスポットを当てると、この推測が証明される。
見てのとおり、引退発表前は配信ランキング圏外となっていたところ、発表とともに急浮上し配信1位となっている。
表を見るとこの後にも2回山があり、配信週間1位となっているが、1回は2018年1月で、これは2017年末の紅白歌合戦でこの曲を歌唱した効果が現れたもの。このタイミングでBillboard JAPAN Hot 100でも週間1位を獲得した。
その後の山は2018年9月で、これは引退当日を迎えたことによる注目度の上昇による。
なお75万ダウンロードを突破したタイミングは2018年4月なので、その後も上記のように配信売上を重ねているさまを見ると、将来的な配信ミリオン突破も夢ではないかもしれない。
また、この曲はMVが2種類制作されており、通常のMVのほか、NHKオフィシャルMVが存在し、YouTubeにアップされているが、そのNHK版MVは4,000万再生を突破しており、これは自身1位のMV再生数となる。なお非常に残念なことに、通常のMVはこの曲に限らず引退のタイミングで削除され、ショートバージョンに切り替わってしまったため、再生数を稼げていない。
2016年以降に発売された「Hero」以外のシングルCD表題曲では、「Mint」が25万ダウンロード、「Dear Diary」と「Just You and I」が10万ダウンロードを記録している。
2017年の引退発表後、11月に発売されたベストアルバム『Finally』は特大ヒットを記録した。まず発売1週間でCDミリオンを達成したが、これは2004年の宇多田ヒカルのベストアルバム以来となった。その勢いでBillboard JAPAN Hot Albumsでは2017年の年間1位を獲得。
翌年も売上を積み上げ続け、なんと2018年も年間1位となった。2年連続のアルバム年間1位はビルボードでは初めてで、オリコンを見てもレコード売上で井上陽水『氷の世界』が1974・75年に記録して以来となった。
2019年の年間でも22位にランクインしており、未だ売れ続けている。累計売上は245万枚に達しており、アルバムのダブルミリオンは発売日順ではコブクロ『ALL SINGLES BEST』以来11年ぶりとなった。
ベストアルバムには新曲も6曲収録されており、このうちアニメ「ONE PIECE」主題歌に起用された「Hope」が配信でシングルカット*3され、10万ダウンロードを記録した。
まとめ
以上まで見てきたとおり、安室奈美恵は小室プロデュース期とR&Bヒップホップ期で二度の全盛期を築いており、前者はCD売上で、後者はダウンロード売上で人気を可視化することができた。音楽視聴環境の変化をものともせず、20年以上に渡りヒット曲を出し続けたアーティストはなかなかおらず、絶大な人気を裏付けている。何より自身が変化を恐れず挑戦を続けており、その努力が「Hero」をはじめとした楽曲に説得力を持たせ、大きな支持に繋げていたと言えるだろう。
以上までに紹介した大量のヒット曲を手っ取り早く入手するには、やはり2017年に発売されたベストアルバム『Finally』が最もおすすめである。50万ダウンロード以上を記録した曲はすべて収録されている。
ただし、2013年までの楽曲は全て再レコーディングされているため、当時の音源が欲しいということであれば、1998年のベスト『181920』、2001年のベスト『LOVE ENHANCED ♥ single collection』、2008年のベスト『BEST FICTION』なども選択肢に入ってくるだろう。
この記事で紹介したダウンロードデータは日本レコード協会HP内の下記サイトで検索することができる。新たな発見の宝庫なので、時間があれば好きな曲やアーティストのダウンロード数を検索してみることをおすすめする。
*1:他のノミネート作品にはこの曲を上回るダブルミリオンを記録したglobe「DEPARTURES」がおり、売上だけ見るならばglobeの方が大賞に相応しい。
*2:原曲とは別バージョンなので売上は公式にも合算されることはない。なおSAMとは2002年に離婚している。
*3:当時『Finally』は配信解禁されていなかった。