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Apple Musicランキングの特徴

この記事ではApple Musicの各種ランキングの特徴を整理する。

 

Apple Musicは日本で最大のDSPシェアを誇る音楽サブスクサービスである*1。よってそのランキングは全てのDSPの中で最も重要性が高い

 

ところが、そのランキングを利用するうえでは注意しなければならない点がいくつか存在する。以下、ランキングの種類別に解説する。

 

 

 

 

トップソング(リアルタイムランキング)

 

Apple Musicの『ランキング』ページを開くと真っ先に最上部に表示されるのが、このリアルタイムランキング『トップソング』の最新上位結果である。よってApple Musicユーザーにとってはこのランキングが最も身近であり、最新の人気楽曲を把握するうえで参考にしているのではないかと思われる。

 

しかし、「いつ開いても『トップソング』上位に表示される楽曲が変わらない」と感じるユーザーは多いのではないだろうか。日々多くの有名アーティストにより多種多様な新曲が配信されているにもかかわらず、である。

 

その感覚にこそ、このランキングが孕む重大な問題がある。これは決して新曲の人気が奮っていないとは限らない。そもそも新曲の上位進出を実態よりも抑制するチャート設計になっているのである。

 

『トップソング』では、どれだけ大規模な初動人気を示した新曲でも、配信開始から数時間で1位になることはなく、更新のたびに徐々に下位から浮上していく。つまりこのランキングは純粋な直近リアルタイム再生回数だけで作成されているのではなく、移動平均的な算出方法を用いて作成されていると推測される。

 

この設計は、配信開始直後など短期間に顕著な再生回数を得た楽曲の人気を、実態に比して過小評価するものである。逆に、安定的に聴かれ続けている旧譜の定番曲は相対的に上位進出し、再生回数実態に比して過大評価される。

 

ストリーミング時代はその構造上旧譜率が高まりやすい。いかに新曲を訴求するかは世界の音楽業界で課題となっている中、この設計は課題に逆行し、旧譜率の高まりに拍車をかけるものとなっている。

 

このことから、Apple Musicのランキングは、「ヒットシーンが停滞している」とユーザーに必要以上に印象付けてしまっているのではないかと懸念される。これはユーザーの新曲との出会いやその動機付け、およびそれによる音楽業界の活性化を遠ざけるものである。

 

また、定番曲に至るごく一部のケースを除き、新曲は配信直後が人気のピークとなり、その後の再生回数は下降していくものであるが、『トップソング』はそのダウントレンドを先取りして織り込む傾向もある。該当する新曲は、初動人気を実態よりも低い順位に抑えられるだけでなく、早々に順位を引き下げられていく。具体例は次項で掲載する。

 

トップ100:日本(デイリーランキング

 

music.apple.com

 

Apple Musicのデイリーランキング『トップ100:日本』は、基本的には『トップソング』と同様の結果算出方法が用いられていると推測される。よって『トップソング』が抱える問題は『トップ100:日本』にも共通する。

 

例えば2025/3/10(月)に配信されたKing & Prince「HEART」Apple Music週間・デイリー順位推移は以下のとおりである。

 

 

本曲は既述した傾向が顕著に表れている。

 

  • 配信初週の週間順位は7位であるが、デイリーランキングでは下位から徐々に浮上する形となっている。しかし結局デイリー最高位は19位であり、週間順位とは乖離している。
  • 本曲は配信初週をピークとして再生回数が比較的早いペースで減少しているが、デイリー順位は常に週間順位よりも低く、数週先の週間順位を先取りしているかのように推移する。

 

これらの傾向から、改めて以下の推測を導くことが可能となる。

 

  • 新曲の初動楽曲人気は移動平均的な算出方法により順位上昇ペースが緩やかに抑制される。
  • 他方でダウントレンドは将来を先取りするように反映されるため、結果的に新曲は一貫して再生回数実態よりも低いデイリー順位結果が出力される場合がある。

 

週間ソング・ランキング

 

Apple Musicの週間ランキングは、アプリ内ではページが設けられておらず、ミュージックマンTHE MAGAZINEといった音楽情報媒体を通じて公表されている。集計期間は月曜日から日曜日までである。

 

前項までは、週間順位の方がデイリー・リアルタイム順位よりも再生回数実態に近いという前提を置いて説明していたが、改めてこの点を具体例をもとに推測する。

 

以下はMrs. GREEN APPLE「クスシキ」ライラックが2025/4/7-2025/4/27の3週間に記録した週間・デイリー順位推移表である。Billboard JAPANによる全DSPの再生回数を合計したストリーミングチャートの週間順位も掲載している。

 

 

この表から、以下の推測を導くことが可能となる。

 

  • この3週間の週間成績は一貫して「クスシキ」>「ライラックである。
  • Billboard JAPANの全DSP集計でも再生回数は「クスシキ」>「ライラックである。
  • しかしデイリー成績では全21日中19日がライラック」>「クスシキ」である。
  • よってデイリー順位よりも週間順位の方が再生回数実態に近いと推測される。

 

特に最後の週では、「ライラック」は7日連続デイリー1位であるにもかかわらず週間順位は4位であり、同じApple Musicでもデイリー順位と週間順位が全く整合していない。なお「クスシキ」は新曲、「ライラック」は配信から1年が経過した旧曲である。

 

よって、Apple Musicのランキングを利用する場合は、新曲の人気を過小評価しているリアルタイム・デイリーランキングよりも、週間ランキングを利用する方が良いと考えられる。

 

『トップ25:東京』他(都市別デイリーランキング

 

music.apple.com

 

前項までで、Apple Musicでは新曲の人気を過小評価しているリアルタイム・デイリーランキングよりも、週間ランキングを利用した方が良いと述べた。とはいえタイムリーに新曲の初動人気を宣伝するため、デイリーランキングを利用したいというニーズもあると思われる。その場合には、『トップ25:東京』などの都市別デイリーランキングを利用すると良い。

 

Apple Musicは、同じデイリーランキングでも、『トップ100:日本』と都市別ランキングで異なる結果算出方法を用いていると推測される。都市別ランキングでは、新曲が配信初日から上位にランクインするケースが多く、週間ランキングと近い順位結果が出力される傾向がある。つまり都市別デイリーランキングは再生回数実態に近い結果になっていると推測される。

 

こちらも具体例を示す。以下は2025/4/14-2025/4/20集計週で週間TOP10に入った曲の『トップ25:東京』・『トップ100:日本』デイリー順位推移表である。

 

 

この表から、以下の推測を導くことが可能となる。

 

  • 週間1位HANA「ROSE」は『トップ25:東京』では7日連続1位だが、『トップ100:日本』では7日連続3位となっている。
  • 週途中の2025/4/18に配信されたKing Gnuの新曲「TWILIGHT!!!」は、『トップ100:日本』では緩やかな順位上昇となっているが、『トップ25:東京』では配信初日からTOP3にランクインしている。
  • よって都市別ランキングの方が週間順位と整合しており、新曲の初動人気を抑制する設計にもなっておらず、再生回数実態に近いと推測される。

 

なお日本の都市別ランキングは東京のほかに大阪、名古屋、札幌、福岡、京都、仙台、那覇の合計8都市分が作成されている。上表で週間6位の清水翔太「PUZZLE」は東京のデイリー順位と乖離しているように見えるが、ほか7都市では全て7日間デイリーTOP10に入っていたため、やはり整合性は高い。

 

こうした推測を踏まえ、当ブログのSNSアカウントでは都市別デイリーランキング結果をメインに毎日発信している。具体的には、最も人口が多い東京のデイリーTOP10と、ランクイン曲の他都市順位一覧表を掲載している。

 

 

まとめ

 

以上がApple Musicの各種ランキングの特徴と、そこから導かれる利用上の注意点である。

 

補足すると、リアルタイム・デイリーランキングのチャート設計は不正再生対策としては極めて有効である。短期間に多くの不正な再生回数を獲得した楽曲があっても、すぐにはランキング上位に進出しないため、その間に対策を打つことができる。その観点では群を抜いて強固な信頼感がある。

 

しかし、たとえ不正再生対策の一環だとしても、不正ではない形で多くの初動再生回数を獲得した楽曲を抑えつけるようなチャート設計となっていることについては、再考の余地があるのではないかと思わざるを得ない。

 

もっとも、Apple MusicはグローバルDSPであり、この設計は日本に限らず万国共通と考えられるため、目先の改善は困難かもしれない。よってApple Musicにおいては可能な限り週間ランキングまたは都市別デイリーランキングを利用した方が良く、もし『トップソング』や『トップ100:日本』のデータを利用する場合は、特に新曲の順位を鵜呑みにして人気を過小評価することがないように注意する必要がある